乳房痛はよくみられる症状であり,限局性またはびまん性,片側性または両側性の場合がある。
乳房痛の病因
限局性の乳房痛は通常,乳房嚢胞や乳房感染(例,乳腺炎,膿瘍)など,腫瘤を形成する局所的な疾患によって生じる。大部分の乳癌は疼痛を引き起こさない。
びまん性かつ両側性の乳房痛は,線維嚢胞性変化のほか,まれではあるがびまん性かつ両側性の乳腺炎が原因のことがある。ただし,びまん性かつ両側性の乳房痛は乳房に異常のない女性でも非常によくみられる。これらの女性における最も一般的な原因は以下のものである:
乳腺組織を増殖させるホルモン変化(例,黄体期または妊娠初期,エストロゲンまたはプロゲスチンを使用している女性)
Cooper靱帯を伸展させる大きく下垂した乳房
いくつかの研究では,高脂肪食およびカフェインの摂取が乳房痛と関連していることが明らかにされているが,これらの食事性因子を減らすことで症状が軽減するかどうかは不明である(1)。
病因論に関する参考文献
1.Goyal A: Breast pain. BMJ Clin Evid 2011:0812, 2011.Published 2011 Jan 17.
乳房痛の評価
病歴
現病歴の聴取では痛みの時間的パターンおよび性質(限局性またはびまん性,片側または両側性)について質問すべきである。慢性または再発性の疼痛と月経周期の関係を確認すべきである。
システムレビュー(review of systems)では,妊娠(例,腹部腫大,無月経,朝の悪心)や線維嚢胞性変化(例,多数の腫瘤の存在)を示唆する他の症状がないか検討すべきである。
既往歴の聴取では,びまん性疼痛を起こす疾患(例,線維嚢胞性変化)およびエストロゲンやプロゲスチンの使用を対象に含めるべきである。
身体診察
診察は乳房を中心に行い,腫瘤,陥没乳頭,乳頭分泌物のほか,紅斑,発疹,湿疹様変化,浮腫,陥凹といった皮膚変化(ときに橙皮状[オレンジの皮]と表現される)や,発赤,熱感,圧痛といった感染徴候などの異常がないか調べる。
警戒すべき事項(Red Flag)
以下は特に注意が必要である:
感染の徴候
腫瘤,陥没乳頭,または皮膚変化
所見の解釈
異常所見がなければ,疼痛はホルモン変化,または大きく下垂した乳房によることを示唆する。
検査
痛みの原因が不明で持続期間が数カ月以内であり,特に妊娠と一致する他の症状や徴候がある場合は,妊娠検査を行うべきである。
他の検査が適応となることは少なく,乳房診察で異常所見を認めた場合にのみ行う。
乳房痛の治療
月経に関連する乳房痛には,通常はアセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が効果的である。疼痛が重度の場合は,ダナゾールまたはタモキシフェンを短期間投与してもよい。これらの薬剤はエストロゲンとプロゲステロンを阻害する。エストロゲンまたはプロゲスチンを服用している場合は,中止が必要になることがある。
妊娠に関連する乳房痛には,しっかりした補助的ブラジャー,アセトアミノフェンの服用,または両方が役立つ。
イブニングプリムローズ(月見草)オイルで乳房痛を軽減できることがある。
要点
びまん性かつ両側性の乳房痛は通常,ホルモン変化か下垂した大きな乳房が原因である。
第1選択の治療は,アセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。
ホルモン因子に起因する重度の疼痛は,エストロゲンまたはプロゲスチン(いずれかを服用している場合)の中止か,タモキシフェンまたはダナゾールの投与により治療する。



