カンジダ症はCandida属真菌(最も頻度が高いのはC. albicans)による感染症であり,皮膚粘膜病変や真菌血症,ときに複数部位の病巣感染症として発症する。症状は感染部位に依存し,具体的には嚥下困難,皮膚粘膜病変,失明,外陰腟症状(そう痒,灼熱感,分泌物),発熱,ショック,乏尿,腎機能停止,播種性血管内凝固症候群などがみられる。診断は,本来は無菌の部位からの培養によって確定される。カンジダ血症および侵襲性カンジダ症に対しては,キャンディン系薬剤による初期治療と状況に応じたフルコナゾールまたは他のアゾール系薬剤へのステップダウンが推奨される。
(真菌感染症の概要,カンジダ症[粘膜皮膚],カンジダ腟炎,および慢性皮膚粘膜カンジダ症も参照のこと。)
Candida属真菌は消化管のほか,ときに皮膚にも生息する共生菌である(皮膚粘膜カンジダ症の病因を参照)。他の全身性真菌症とは異なり,カンジダ症は内因性菌が原因である。
大半の感染症はC. albicansによるものであるが,Nakaseomyces glabrata(C. glabrata)やC. albicans以外のCandida属真菌が真菌血症,尿路感染症,ときにその他の病巣感染に関与する例が増加している。
抗菌薬感受性はCandida属内の菌種によって異なる:
N. glabrataは他の菌種よりフルコナゾールに対する感受性が低い。
Pichia kudriavzevii(C. krusei)はそもそもフルコナゾールに耐性である;ボリコナゾールおよびアムホテリシンBに対する耐性の頻度は様々である。P. kudriavzeviiはキャンディン系薬剤に感受性であることが非常に多い。
C. aurisは,病院内でアウトブレイクを引き起こしたことのある新しい多剤耐性の菌種である。
Candida属真菌は,全身性真菌感染症の主な原因菌の1つであり,易感染状態の患者の真菌感染症で最も一般的な原因菌である。カンジダ感染症は,最も頻度の高い院内感染症の1つである。医療施設におけるC. aurisの耐性および伝播が懸念されるようになったことから,C. aurisの定着または感染がみられる患者を対象とする特別な感染制御対策が導入されている。
食道カンジダ症は,AIDS指標疾患とされている日和見感染症である。AIDSの患者では皮膚粘膜カンジダ症が高頻度で認められるが,ほかに特異的な危険因子が存在しない限り,血行性播種はまれである(播種性カンジダ症を参照)。
びまん性の白苔はカンジダ(Candida)食道炎の典型的所見である。
口腔カンジダ症は,口角口唇炎および口腔粘膜上の偽膜性プラークなど多くの病型を示し,この画像(上段)のように義歯と関連したり,舌に発現したり(下段),また咽頭に発生したりする。
口腔カンジダ症は,口角口唇炎および口腔粘膜上の偽膜性プラークなど多くの病型を示し,この画像(上段)のように義歯と関連したり,舌に発現したり(下段),また咽頭に発生したりする。
Images courtesy of Jonathan Ship, MD.
この写真には,強く発赤した口唇粘膜の表面を白色滲出物が覆っている口腔カンジダ症の病変が写っている。
この写真には,強く発赤した口唇粘膜の表面を白色滲出物が覆っている口腔カンジダ症の病変が写っている。
© Springer Science+Business Media
この写真には,HIV感染児の舌に生じたけば状の白色浸出液が写っている。
この写真には,HIV感染児の舌に生じたけば状の白色浸出液が写っている。
© Springer Science+Business Media
Image courtesy of Dr. Hardin via the Public Health Image Library of the Centers for Disease Control and Prevention.
播種性カンジダ症
好中球減少がある患者(例,がん化学療法を受けている)は,生命を脅かす播種性カンジダ症を発症するリスクが高い。
長期入院中には,好中球減少のない患者にカンジダ血症が発生することがある。この血流感染症には,しばしば以下の因子のいずれかまたは複数が関連する:
中心静脈カテーテル
大手術
広域抗菌薬による治療
高カロリー輸液
静脈ラインと消化管が通常の進入門戸である。
カンジダ血症は,しばしば入院を長期化して併発症による死亡率を上昇させる。カンジダ血症は心内膜炎や髄膜炎など他の侵襲性カンジダ症に併発することがあり,皮膚,皮下組織,骨,関節,肝臓,脾臓,腎臓,眼,その他の組織の局所病変に伴って発生することもある。一般的に心内膜炎には,違法静注薬物の使用,弁置換術,または静脈カテーテル留置による血管内外傷が関連している。
播種性カンジダ症のいずれの病型も,重篤かつ進行性で致死性の可能性があると考えるべきである。
侵襲性カンジダ症の症状と徴候
食道カンジダ症は嚥下困難として生じる場合が最も多い。
カンジダ血症は,通常発熱を引き起こすが,症状は非特異的である。一部の患者は,細菌性敗血症に類似する症候群を発症して,ショックや乏尿,急性腎障害,播種性血管内凝固症候群など,劇症の経過をたどる。
カンジダ性眼内炎は,最初は無症候性で進行する白い網膜病変として始まり,硝子体を不透明化して場合によっては不可逆性瘢痕化および失明を引き起こす。好中球減少のある患者では,ときに網膜出血がみられるが,実際の眼の感染はまれである。
丘疹結節状の皮膚病変も発生することがあり,特に好中球減少のある患者で多く,その場合は他臓器への広範な血行性播種が起きていることを意味する。その他の局所または侵襲性感染症の症状は,侵された臓器に依存する。
侵襲性カンジダ症の診断
病理組織学的検査および真菌培養
血液培養
血清(1,3)β-D-グルカン
T2Candidaパネル
Candida属真菌は共生菌であるため,喀痰,口腔,腟,尿,便または皮膚由来の培養は必ずしも侵襲性,進行性感染を意味しない。特徴的な臨床病変も認められるはずであり,病理組織学的な組織侵襲の所見(例,組織検体中の酵母様真菌,仮性菌糸,または菌糸)を立証して他の病因を除外しなければならない。血液,髄液,心膜,心膜液,生検組織など,本来は無菌の部位から採取された検体での培養陽性は,全身療法の必要性を示す確定的な証拠となる。
標準的な検査技術では,C. aurisがC. haemulonii,C. famata,C. sake,その他の菌種と誤診されることが多い。MALDI-TOF質量分析法は,菌種の正確な同定という点でより信頼性が高い。現在では核酸検査も利用可能である。
血清(1,3)β-D-グルカンは侵襲性カンジダ症の患者でしばしば陽性となり,逆に陰性であれば,全身性感染の可能性が低いことを示す。
T2Candidaパネルは,全血検体から5種のCandida属真菌(C. albicans,C. tropicalis,C. parapsilosis,P. kudriavzevii,およびN. glabrata)を3~5時間で直接検出する磁気共鳴アッセイである。感度が非常に高く,陰性適中率が極めて良好である(1)。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析法やPCR検査など,その他の分子生物学的診断検査も利用できる。
カンジダ血症患者に対して眼内炎を調べるために眼科診察が推奨される。眼底検査が全例に必要か,眼症状がある患者のみでよいかについては,専門家の意見は一致していない。
診断に関する参考文献
1.Zervou FN, Zacharioudakis IM, Kurpewski J, Mylonakis E: T2 magnetic resonance for fungal diagnosis.Methods Mol Biol 1508:305–319, 2017.doi: 10.1007/978-1-4939-6515-1_18
侵襲性カンジダ症の治療
重症例および重篤例とN. glabrata,C. auris,またはP. kudriavzeviiの感染が疑われる患者にはキャンディン系薬剤
患者が臨床的に安定している場合,C. albicansやC. parapsilosisの感染が疑われる場合,または抗真菌薬感受性が判明した場合,フルコナゾール
あるいはボリコナゾールまたはアムホテリシンB
(抗真菌薬も参照のこと。)
カンジダ血症および侵襲性カンジダ症に対しては,キャンディン系薬剤による初期治療と状況に応じたフルコナゾールまたは他のアゾール系薬剤へのステップダウンが推奨される。
侵襲性カンジダ症
侵襲性カンジダ症患者において,易発症性の状態(例,好中球減少,免疫抑制,広域抗菌薬の使用,高カロリー療法,留置ラインの存在)は,可能な限り改善または管理を行うべきである。
好中球減少のない患者では,静脈カテーテルを抜去すべきである。
キャンディン系薬剤の適応がある場合(中等症または重症[多くは好中球減少のある患者]であるか,N. glabrata,C. auris,またはP. kudriavzeviiの感染が疑われる場合),以下の薬剤のうちの1つを使用する:
カスポファンギン
ミカファンギン
アニデュラファンギン(anidulafungin)
患者が臨床的に安定している場合,C. albicansまたはC. parapsilosisが疑われる場合,または抗真菌薬感受性が判明した場合は,フルコナゾールが適応となる。
他の抗真菌薬では患者が耐えられない,利用できない,または耐性がある場合には,アムホテリシンB脂質製剤の投与が可能である(1)。
カンジダ血症の治療は,血液培養の陰性化から14日間継続する。
食道カンジダ症
食道カンジダ症は,以下のいずれかで治療できる:
フルコナゾール
イトラコナゾール
これらの薬剤が無効であるか感染症が重症である場合は,以下のいずれかを使用することができる:
ボリコナゾール
ポサコナゾール
イサブコナゾニウム
キャンディン系薬剤
食道カンジダ症の治療は14~21日間継続する。
治療に関する参考文献
1.Pappas PG, Kauffman CA, Andes DR, et al: Clinical practice guideline for the management of candidiasis: 2016 update by the Infectious Diseases Society of America.Clin Infect Dis 62(4):e1–e50, 2016.doi: 10.1093/cid/civ933
要点
他の真菌感染症と異なり,侵襲性カンジダ症は,通常内因性菌により生じる。
侵襲性感染症は,典型的には易感染状態の患者か入院患者で発生し,特に手術を受けたり,広域抗菌薬を投与されたりしている場合である。
侵襲性感染を疾患を起こしていない定着と鑑別するには,本来無菌の部位から採取された検体(例,血液,髄液,組織生検検体)で培養陽性を確認することが必要であるが,侵襲性カンジダ症の患者では血清(1,3)β-D-グルカンがしばしば陽性となる。
Candida属真菌による血流感染症の診断には,全血を用いるT2Candidaパネルが利用できる。
重症例および重篤例とN. glabrata,C. auris,またはP. kudriavzevii(C. krusei)の感染が疑われる患者には,キャンディン系薬剤を使用する。
患者が臨床的に安定している場合,C. albicansやC. parapsilosisの感染が疑われる場合,または抗真菌薬感受性が判明した場合には,フルコナゾールを使用する。
より詳細な情報
有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Infection Prevention and Control for Candida auris
Infectious Diseases Society of America: Clinical Practice Guideline for the Management of Candidiasis: 2016 Update



