抗真菌薬

執筆者:Paschalis Vergidis, MD, MSc, Mayo Clinic College of Medicine & Science
Reviewed ByChristina A. Muzny, MD, MSPH, Division of Infectious Diseases, University of Alabama at Birmingham
レビュー/改訂 修正済み 2023年 9月
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全身性の抗真菌薬としては以下のものがある(の表も参照):

  • アムホテリシンB(およびその脂質製剤)

  • 様々なアゾール系薬剤(フルコナゾール,イサブコナゾニウム[イサブコナゾール(isavuconazole)とも呼ばれる],イトラコナゾール,ポサコナゾール,およびボリコナゾール)

  • キャンディン系薬剤(アニデュラファンギン(anidulafungin),カスポファンギン,およびミカファンギン)

  • フルシトシン

アムホテリシンBは,効果的であるが比較的毒性の強い薬剤であり,長らく侵襲性真菌症と重篤な真菌症に対する抗真菌療法の中心となってきた。しかしながら,現在では,強力で毒性の低い新規のトリアゾール系およびキャンディン系薬剤が多くの侵襲性真菌感染症の第1選択薬として推奨されることが多くなっている。これらの薬剤により,抗真菌療法のあり方は大きく変貌しており,ときに慢性真菌症に対して経口治療が可能な場合すらある。

真菌感染症の概要も参照のこと。)

表&コラム
表&コラム
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アムホテリシンB

アムホテリシンBは,侵襲性真菌症や重篤な真菌症に対する抗真菌療法の中心を占めていたが,現在では他の抗真菌薬(例,フルコナゾール,ボリコナゾール,ポサコナゾール,キャンディン系薬剤)がこれらの状況に対する第1選択薬となっている。アムホテリシンBは髄液への移行が良好ではないが,それでもクリプトコッカス髄膜炎などの特定の真菌症には効果的である。

製剤

アムホテリシンBには2つの製剤がある:

  • デオキシコール酸製剤(標準)

  • 脂質製剤

標準製剤であるアムホテリシンBデオキシコール酸製剤は,塩類によって沈殿する可能性があるため,必ず5%ブドウ糖液(D/W)に希釈して投与しなければならない。通常は2~3時間かけて投与するが,一部の患者では20~60分間での急速静注も可能である。ただし,これより急速にしても通常は利点がない。

投与中および投与後数時間には,多くの患者に悪寒,発熱,悪心,嘔吐,食欲不振,頭痛のほか,ときに低血圧もみられる。アムホテリシンBは,末梢静脈から投与すると化学性の血栓性静脈炎を引き起こす可能性があり,中心静脈カテーテルからの投与が望ましい場合がある。アセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬の前投薬がしばしば行われるが,それらの薬剤が無効の場合は,ときにヒドロコルチゾン25~50mgまたはジフェンヒドラミン25mgを輸液に追加するか,別に急速静注する。ヒドロコルチゾンは,多くの場合,長期投与中に漸減させて中止可能である。重度の悪寒・振戦は,ペチジン50~75mgの静注により軽減または予防できる。

いくつかの脂質基剤は,アムホテリシンBの毒性(特に腎毒性および輸注関連症状)を軽減する。2つの製剤が使用可能である:

  • アムホテリシンB脂質複合体

  • リポソーム化アムホテリシンB

輸注関連症状と腎毒性が少ないことから,従来のアムホテリシンBよりも脂質製剤の方が望ましい。

有害作用

アムホテリシンBの主な有害作用は以下のものである:

  • 腎毒性(最も頻度が高い)

  • 低カリウム血症

  • 低マグネシウム血症

  • 骨髄抑制

腎障害は,アムホテリシンBによる治療の主要な毒性リスクである。治療前および治療中は血清クレアチニン値と血中尿素窒素(BUN)を定期的にモニタリングすべきであり,臨床的に適応があれば,最初の2~3週間は週数回,その後は月1~4回の頻度で行う。

アムホテリシンBは,腎排泄がほとんどなく,腎不全が悪化しても蓄積が起きないことから,腎毒性を示す抗菌薬の中では独特である。それでも,血清クレアチニン値が上昇して2.0~2.5mg/dL(177~221μmol/L)を超えるか,BUNが50mg/dL(18mmol/L)を超える場合は,減量するか,代わりに脂質製剤を使用すべきである。急性腎毒性は,アムホテリシンB投与前の積極的な生理食塩水の輸液による水分補給で軽減することが可能であり,アムホテリシンBの投与前には,少なくとも1Lの生理食塩水を投与すべきである。

アムホテリシンBによって誘発された軽度から中等度の腎機能障害は,通常は治療終了後に徐々に解消される。永続的な障害は主として長期の治療後に発生し,合計投与量が4gを超えると,約75%の患者に持続性の腎機能不全が発生する。

アムホテリシンBは,エリスロポエチンに対する反応を鈍化させて,貧血を引き起こすこともある。肝毒性または他の有害作用はまれである。

アゾール系抗真菌薬

アゾール系薬剤は,真菌細胞膜の重要な構成要素であるエルゴステロールの合成を阻害する。慢性真菌症の治療として経口投与が可能である。このクラスで最初の経口薬となったケトコナゾールは,フルコナゾールやイトラコナゾール,ボリコナゾール,ポサコナゾール,イサブコナゾニウムなど,より効果的で毒性の低いトリアゾール系薬剤に取って代わられている。

いずれのアゾール系薬剤でも薬物相互作用が生じる可能性があるが,フルコナゾールはその可能性が低い。以下で言及する薬物相互作用は完全な一覧ではなく,アゾール系抗真菌薬を使用する臨床医は,事前に薬物相互作用に関する参考情報を参照すべきである(Antifungal Drug Interactions Databaseも参照)。

パール&ピットフォール

  • アゾール系抗真菌薬では薬物相互作用がよくみられるため,処方する前に全ての併用薬を確認しておく必要がある。

フルコナゾール

この水溶性の薬剤は,経口投与後にほぼ完全に吸収される。フルコナゾールは,ほとんど無変化で尿中に排出され,半減期が24時間を超えるため,1日1回投与が可能である。髄液への移行が良好で(血清中濃度の70%以上),特にクリプトコッカス髄膜炎およびコクシジオイデス髄膜炎の治療に有用である。好中球減少のない患者のカンジダ血症の治療に対する第1選択薬でもある。

フルコナゾールの用量には200~400mg,経口,1日1回から,Candida glabrataによる感染症およびコクシジオイデス髄膜炎に対する800mg,1日1回までの幅がある。1日用量1000mg以上でも投与されており,その際の毒性は許容可能である。ただし,Pichia kudriavzeviiCandida krusei)はそもそもフルコナゾールに耐性である。

フルコナゾールで最も多くみられる有害作用は,消化管の不快感と発疹である。重度の毒性はまれであるが,これまでに肝壊死,スティーブンス-ジョンソン症候群,アナフィラキシー,脱毛のほか,妊娠第1トリメスターに長期使用した患者で胎児の先天性形成異常が発生している。

フルコナゾールでは,薬物相互作用の頻度が他のアゾール系薬剤よりも低い。しかしながら,フルコナゾールはときに,カルシウム拮抗薬,シクロスポリン,リファブチン,フェニトイン,タクロリムス,およびワルファリン型の経口抗凝固薬の血清中濃度を上昇させる。リファンピシンは,フルコナゾールの血中濃度を低下させる可能性がある。

イトラコナゾール

イトラコナゾールは,リンパ皮膚型スポロトリクム症,ならびに軽症または中等症のヒストプラズマ症ブラストミセス症,およびパラコクシジオイデス症の標準治療薬である。また,慢性肺アスペルギルス症,コクシジオイデス症,および特定の病型の黒色分芽菌症にも効果的である。髄液への移行は良好ではないが,イトラコナゾールは特定の真菌性髄膜炎の治療に使用できる(ただし,第1選択薬ではない)。イトラコナゾールは脂溶性およびタンパク質結合性が高いため,血中濃度が低くなる傾向があるが,組織中濃度は一般的に高い。尿中および髄液中の薬物濃度は無視できるほど低い。イトラコナゾールの使用は,ボリコナゾールおよびポサコナゾールの使用増加に伴い,減少してきている。

400mg/日までの用量で最もよくみられるイトラコナゾール有害作用は消化管障害であるが,少数の男性患者で勃起障害が報告されており,より高用量では低カリウム血症,高血圧,および末梢浮腫を引き起こすことがある。ほかに報告されている有害作用として,アレルギー性発疹,肝炎,および幻覚がある。米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から心不全に関する枠囲み警告(boxed warning)が出されている。

薬物と食物の相互作用が有意な影響をもたらす可能性がある。カプセル剤を使用する場合,酸性飲料(例,コーラ,酸性フルーツジュース)や食物(特に高脂肪食)は消化管からのイトラコナゾール吸収を向上させる。一方,胃液の酸性度を低下させる処方薬やOTC医薬品とともにイトラコナゾールを服用した場合には,吸収が低下する可能性がある。

リファンピシン,リファブチン,ジダノシン,フェニトイン,カルバマゼピンなど,いくつかの薬剤は血清イトラコナゾール濃度を低下させる可能性がある。

イトラコナゾールはまた,他の薬剤の代謝分解を阻害することで,その血中濃度を上昇させ,重篤な結果をもたらす可能性がある。イトラコナゾールをシサプリド(米国では使用不可)または特定の抗ヒスタミン薬(例,テルフェナジン,アステミゾール,おそらくはロラタジン)と併用すると,死に至ることもある重篤な不整脈が生じる可能性がある。横紋筋融解は,イトラコナゾール誘発性のシクロスポリン,またはスタチン系薬剤の血中濃度上昇に関連している。イトラコナゾールは特定の薬剤(例,タクロリムス,ワルファリン,ジゴキシン)の血清中濃度を上昇させる可能性があり,それらの薬剤をイトラコナゾールと併用する場合には治療薬物モニタリングが推奨される。

イトラコナゾールの新規製剤(SUBA-イトラコナゾール,SUper BioAvailableから命名)は,胃の酸性環境を必要とすることなく,高い生物学的利用能を示すように改良されている。SUBA-イトラコナゾールは食後に服用され,ヒストプラズマ症,ブラストミセス症,およびアスペルギルス症の治療に使用できる。他の剤形のイトラコナゾールとは用量・用法が異なる。

ボリコナゾール

この広域スペクトラムのトリアゾール系薬剤は,錠剤および静注製剤として使用可能である。免疫能正常および易感染性患者におけるAspergillus属真菌による感染(アスペルギルス症)に対する第1選択薬とされている。ボリコナゾールは,Scedosporium apiospermumおよびFusarium属真菌による感染の治療にも使用できる。さらに,通常は第1選択薬とはならないものの,この薬剤はカンジダ食道炎と侵襲性カンジダ症にも効果的であり,Candida属真菌に対してフルコナゾールよりも広い抗菌スペクトルを有している。

モニタリングが必要な有害作用として,肝毒性,視覚障害(高頻度),幻覚,皮膚反応(例,光線過敏症)などがある。ボリコナゾールはQT間隔の延長を引き起こす可能性がある。

薬物相互作用は多数あり,特に臓器移植後に使用される免疫抑制薬に注意が必要である。

ポサコナゾール

トリアゾール系薬剤であるポサコナゾールは,経口懸濁液,錠剤,および静注製剤として使用可能である。経口生物学的利用能の改善により,腸溶錠が望ましい剤形となっている。この薬剤は酵母様真菌および糸状菌に対して高い活性を示し,黒色(dark-walled)真菌(例,Cladophialophora属)による感染など,様々な日和見糸状菌感染の治療に効果的である。ムコール症を引き起こす多くの菌種に効果的である。ポサコナゾールは,造血器腫瘍で好中球減少のある患者と骨髄移植を受けた患者に対して抗真菌薬による予防として使用されることもある。

ポサコナゾール有害作用としては,他のトリアゾール系薬剤と同様に,QT延長や肝炎などがある。

薬物相互作用は,リファブチン,リファンピシン,スタチン系薬剤,様々な免疫抑制薬など,多くの薬剤で発生する可能性がある。

イサブコナゾニウム

イサブコナゾニウムは,アスペルギルス症およびムコール症の治療に用いられる広域スペクトルのトリアゾール系薬剤である。静注製剤および経口カプセルとして使用可能である。薬物濃度のモニタリングは不要である。

イサブコナゾニウム有害作用としては消化管障害や肝炎などがあり,QT間隔が短縮することもある。

多数の薬剤と薬物相互作用を起こす。

オテセコナゾール(oteseconazole)

オテセコナゾール(oteseconazole)は,アゾール系の新しい経口抗真菌薬であり,再発性の外陰腟カンジダ症の治療に用いられる。

オテセコナゾール(oteseconazole)有害作用としては,頭痛や悪心などがある。

ロスバスタチンと薬物相互作用を起こす。

キャンディン系薬剤

キャンディン系薬剤は,グルカン合成を阻害する水溶性リポペプチドである。静注製剤としてのみ使用可能である。抗真菌薬において,キャンディン系薬剤の作用は真菌細胞壁を標的とする点で独特であり,他の抗真菌薬との交差耐性がなく,また標的が真菌であって哺乳類細胞ではないことから,魅力的な薬剤である。尿中または髄液中の薬物濃度は有意ではない。

米国で使用可能なキャンディン系薬剤は,アニデュラファンギン(anidulafungin),カスポファンギン,ミカファンギン,およびレザファンギン(rezafungin)である。1つの薬剤が他の薬剤より優れるというエビデンスはほとんどないが,アニデュラファンギン(anidulafungin)は他の薬剤よりも薬物相互作用が少ないとされる。

重度の肝不全がある患者では,カスポファンギンは用量を調節する必要がある。

アニデュラファンギン(anidulafungin)は肝臓で代謝されないが,緩やかに自然に分解されて排泄される。アニデュラファンギン(anidulafungin)については,肝不全に対する用量調節は不要である。

これらの薬剤は,臨床的に最も重要な真菌であるCandida属に対して強力な殺菌作用を示す(侵襲性カンジダ症の治療を参照)が,Aspergillus属には静菌的に作用すると考えられている。

キャンディン系薬剤の有害作用としては肝炎や発疹などがある。

フルシトシン

フルシトシンは,水溶性の核酸アナログであり,経口投与後は良好に吸収される。既存または新興の耐性菌の頻度が高いことから,フルシトシンは,ほぼ必ず他の抗真菌薬(通常はアムホテリシンB)との併用で使用される。フルシトシンアムホテリシンBの併用は,主としてクリプトコッカス症の治療に用いられるが,播種性カンジダ症(心内膜炎を含む)でも一部の症例で有用となる。フルシトシンとアゾール系抗真菌薬との併用は,クリプトコッカス髄膜炎とその他いくつかの真菌症の治療で有益となる場合がある。

フルシトシンの主な有害作用は,骨髄抑制(血小板減少および白血球減少),肝毒性,および腸炎であり,骨髄抑制の重症度は血清中濃度に比例する。

フルシトシンは主に腎排泄されるため,アムホテリシンBとの併用中に腎毒性が生じると,血中濃度が上昇する(特にアムホテリシンBを0.4mg/kg/日を超える用量で使用している場合)。血清フルシトシン濃度をモニタリングして,40~90μg/mLで維持できるように用量を調整すべきである。 血算および腎,肝機能検査を,週2回で実施するべきである。血中濃度を測定できない場合,治療を25mg/kg,1日4回投与で開始し,腎機能が低下したら減量する。

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