薬物過敏症

執筆者:James Fernandez, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
Reviewed ByBrian F. Mandell, MD, PhD, Cleveland Clinic Lerner College of Medicine at Case Western Reserve University
レビュー/改訂 2024年 8月 | 修正済み 2024年 12月
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薬物過敏症は薬剤に対する免疫介在性の反応である。症状は軽度から重度まで様々で,発疹,アナフィラキシー,および血清病などがある。診断は臨床的に行う;ときに皮膚テストが有用である。治療は,薬剤の使用中止および支持療法(例,抗ヒスタミン薬による)と,ときに脱感作である。

アレルギー疾患およびアトピー性疾患の概要も参照のこと。)

薬物過敏症は,当該薬剤および薬物相互作用による問題に起因しうる毒性や有害作用とは異なる。

薬物過敏症の病態生理

タンパク質や分子量の大きいポリペプチドで構成される薬剤の一部(例,インスリン,治療用抗体)は,抗体産生を直接刺激することがある。一方で,大半の薬剤はハプテンとして作用し,血清タンパク質や膜結合型タンパク質と共有結合するが,後者には主要組織適合抗原複合体(MHC)分子に組み込まれたペプチドも含まれる。その結合によりそのタンパク質と薬物の複合体に免疫原性が付与され,抗薬物抗体の産生,薬物に対するT細胞応答,またはその両方が刺激される。さらにハプテンはMHCクラスII分子に直接結合することもあり,T細胞を直接活性化する。一部の薬剤はプロハプテンとして作用する。プロハプテンは代謝されてハプテンになる;例えば,ペニシリンそのものには抗原性がないが,その主要分解産物であるベンジルペニシリン酸は組織タンパク質と結合して,主要な抗原決定基であるベンジルペニシロイル(BPO)を形成することがある。一部の薬剤はT細胞受容体(TCR)に直接結合して刺激するが,このハプテン経路によらないTCR結合の臨床的意義が解明されつつある(1)。

最初の感作がどのように起こるのか,また免疫系が最初にどう関与するのかについては不明であるが,ある薬剤が免疫応答を一旦刺激すると,薬剤クラス内や薬剤クラス間で他の薬剤との交差反応が生じることがある。例えば,ペニシリン過敏症の患者は半合成ペニシリン(例,アモキシシリン,カルベニシリン,チカルシリン)に対して反応する可能性が極めて高い。デザインに問題があった初期の研究において,ペニシリン過敏症の漠然とした病歴を有する患者の約10%で類似のβ-ラクタム構造を有するセファロスポリン系薬剤に対する反応が認められ,この知見はこれらの薬剤クラス間の交差反応のエビデンスとして引用されている。しかしながら,より良好にデザインされた多くの研究では(2),皮膚テストでペニシリンアレルギーが検出された患者のうちセファロスポリン系薬剤に反応した割合はわずか約2%であり,構造的に無関係の抗菌薬(例,サルファ剤)にも,ほぼ同じ割合の患者が反応している。ときに,この交差反応およびその他の見かけの交差反応(例,スルホンアミド系抗菌薬と非抗菌薬の間)は,特異的な免疫交差反応というよりむしろアレルギー反応の素因に起因している。

パール&ピットフォール

  • ペニシリンアレルギーはセファロスポリン系薬剤の使用を必ずしも排除するとは限らない。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Pichler WJ, Watkins S, Yerly D.Risk Assessment in Drug Hypersensitivity: Detecting Small Molecules Which Outsmart the Immune System. Front Allergy 3:827893, 2022.doi:10.3389/falgy.2022.827893

  2. 2.Caruso C, Valluzzi RL, Colantuono S, Gaeta F, Romano A.β-Lactam Allergy and Cross-Reactivity: A Clinician's Guide to Selecting an Alternative Antibiotic. J Asthma Allergy 14:31-46, 2021.doi:10.2147/JAA.S242061

薬物過敏症の症状と徴候

薬剤アレルギーの症状と徴候は患者毎および薬剤毎に異なり,単一の薬剤が異なる患者で異なる反応を引き起こすことがある。最も重篤なものはアナフィラキシー(I型過敏反応)である;発疹(例,麻疹様発疹),蕁麻疹,および発熱がよくみられる。定型的薬物反応(ある患者が同じ薬剤に曝露するたびに同じ部位に再発する反応)はまれである。

いくつかの独特な臨床症候群では,他の型の過敏反応が関与する場合がある:

  • 血清病

  • 薬剤性免疫性溶血性貧血

  • DRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)症候群

  • 肺への影響

  • 腎臓への影響

  • その他の自己免疫現象

血清病は,典型的には曝露してから7~10日後に発生し,発熱,関節痛,および発疹を引き起こす。機序は薬物-抗体複合体および補体の活性化によるIII型過敏反応である。一部の患者には,明らかな関節炎,浮腫,または消化管症状がみられる。症状は自然治癒性で,1~2週間続く。β-ラクタム系およびスルホンアミド系抗菌薬,デキストラン鉄,ならびにカルバマゼピンが関与することが最も多い。

薬剤性免疫性溶血性貧血は,抗体-薬物-赤血球間で相互作用が起こるか(例,セファロスポリン系,セフォテタン),あるいは薬剤(例,フルダラビン,メチルドパ)の作用により赤血球膜が自己抗体産生を誘導するように変化することで発生する。このような反応はII型過敏反応である。

DRESS(drug reaction with eosinophilia and systemic symptoms)症候群は,薬剤性過敏症症候群(DHS)とも呼ばれ,薬物治療を開始してから最長12週間後までに惹起され,用量の増量後にも発生することがあるIV型過敏反応である。薬剤による治療の中止後も数週間にわたり持続または再発する可能性がある。患者には突出した好酸球増多症がみられ,肝炎,発疹,顔面腫脹,全身性浮腫,およびリンパ節腫脹を発症することが多い。カルバマゼピン,フェニトイン,アロプリノール,およびラモトリギンが高頻度で関与している。

肺への影響も一部の薬剤で生じることがある(例,ブレオマイシン,アミオダロン,ニトロフラントイン,アムホテリシンB,スルホンアミド系,サラゾスルファピリジン)。それらの薬剤は呼吸器症状(I型過敏症でみられる呼気性喘鳴とは明確に異なる),肺機能の低下,その他の肺の変化を引き起こすことがある(薬剤性肺障害と呼ばれ,間質性肺疾患が最も一般的である)。これらの反応は主にIII型およびIV型過敏反応と考えられている。

最も多いアレルギー性の腎臓への影響尿細管間質性腎炎であり,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)(COX-2阻害薬を含む),メチシリン,抗微生物薬,およびシメチジンが関与していることが多い。I型,III型,およびIV型過敏反応が関与する場合がある。

その他の自己免疫現象が起こりうる。ヒドララジン,プロピルチオウラシル,およびプロカインアミドは,III型過敏反応である全身性エリテマトーデス(SLE)様症候群を引き起こすことがある。この症候群は,軽度(関節痛,発熱,および発疹を伴う)のこともあれば,かなり重度(漿膜炎,高熱,および倦怠感を伴う)のこともあるが,腎臓および中枢神経系は侵されない傾向がある。抗核抗体検査は陽性となる。ペニシラミンは,SLEを始めとする自己免疫疾患(例,II型過敏反応である重症筋無力症)を引き起こすことがある。抗甲状腺薬,抗結核薬,特定の抗菌薬,アロプリノール,ヒドララジン,アトルバスタチンなど一部の薬剤は,核周囲型抗好中球細胞質抗体(p-ANCA)関連血管炎を引き起こすことがある。p-ANCAはミエロペルオキシダーゼ(MPO)に対する自己抗体であり,II型過敏反応を引き起こす。免疫チェックポイント阻害薬は,一般的に用いられるがん免疫療法のクラスであり,免疫関連の有害作用を来す可能性がある。これらの作用は非特異的な免疫活性化に起因し,ほぼ全ての器官系に影響を及ぼす可能性があるが,皮膚,肝臓,消化管,心臓,および内分泌系に影響を及ぼすことが多い。

薬物過敏症の診断

  • 患者からの薬剤使用後の反応の報告

  • 皮膚テスト

  • ときに薬剤誘発試験

  • ときに直接および間接抗グロブリン試験

薬物過敏症を薬剤の毒性および有害作用や薬物相互作用に起因する症状と鑑別するのに,以下の情報が役立つ可能性がある:

  • 発症時期

  • 薬剤の既知の作用

  • 薬剤の試験的反復投与の結果

例えば,用量関連性のある反応は,薬剤の毒性であって,薬物過敏症ではないことが多い。

薬剤の投与後,数分から数時間で反応が起こる場合は,薬物過敏症が示唆される。しかしながら,多くの患者が報告する過去の反応は性質がはっきりしない。そのような場合,同等な代用薬(例,ペニシリンが梅毒治療に必要な場合)がなければ,検査を考慮すべきである。

皮膚テスト

I型(IgE介在性)過敏性の検査は,β-ラクタム系抗菌薬,ヒト以外(異種)の血清,ならびに一部のワクチンおよびポリペプチドホルモンに対する反応を特定するのに役立つ。しかしながら,典型的には,ペニシリンアレルギーを訴える患者で皮膚テストが陽性反応となるのは少数のみである(1)。さらに,大半の薬剤(セファロスポリン系を含む)において,皮膚テストは信頼性が低く,IgE介在性反応しか検出できないため,麻疹様発疹,溶血性貧血,および腎炎の発生は予測できない。

ペニシリン皮膚テストは,即時型過敏反応の既往がある患者にペニシリンを投与しなければならない場合に行うことができる。BPO-ポリリジン結合物およびベンジルペニシリンは,ヒスタミンおよび生理食塩水を対照として使用される。プリックテストを最初に行う。患者に重度のアナフィラキシー反応の既往がある場合,初回のテストで試薬を100倍に希釈すべきである。プリックテストが陰性であれば,続いて皮内テストを行う。皮膚テストが陽性の場合,ペニシリンは薬剤脱感作プロトコルの一環としてのみ投与すべきである。テストが陰性であれば,重篤な反応が起こる可能性は非常に低いが,発生しないわけではない。したがって,IgE介在性アレルギーの可能性を完全に排除するために,陰性の皮膚テスト結果の後にアモキシシリンの経口負荷試験がしばしば行われる。

異種血清による皮膚テストでは,アトピー性でもなく,異種(例,ウマ)血清を以前投与されたこともない患者の場合,まず1:10希釈液でプリックテストを行うべきである;このテストで陰性であれば,1:1000希釈液0.02mLを皮内注射する。感受性のある患者では,直径0.5cmを超える膨疹が15分以内に出現する。最初に,以前に血清投与を受けた可能性がある(反応の有無は問わない)全ての患者に対して,またアレルギーの既往が疑われる患者に対して,1:1000希釈液を用いてプリックテストを行うべきである;結果が陰性であれば,1:100希釈液を用い,結果が再び陰性であれば,上述のように1:10希釈液を用いる。結果が陰性であれば,アナフィラキシーの可能性が除外されるが,その後の血清病の発生は予測できない。

その他の検査

薬剤誘発試験では,過敏反応の原因として疑われる薬剤を漸増しながら投与して,反応を誘発する。この試験は,管理された状況で行うのであれば,通常は安全かつ効果的である。

薬物過敏症は特定のヒト白血球抗原(HLA)クラスIハプロタイプと関連しているため,特定民族出身の患者を対象とした遺伝子型解析で,過敏反応のリスクがより高い患者を特定できる(2)。

表&コラム
表&コラム

血液学的薬物反応の検査として,直接および間接抗グロブリン試験がある。その他の特異的な薬物過敏症に関する検査(例,アレルゲン特異的血清IgE検査,ヒスタミン放出,好塩基球または肥満細胞の脱顆粒,リンパ球幼若化)は信頼性が低いか,実験段階にある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Providencia R, Aali G, Zhu F, et al.Penicillin Allergy Testing and Delabeling for Patients Who Are Prescribed Penicillin: A Systematic Review for a World Health Organization Guideline. Clin Rev Allergy Immunol 66(2):223-240, 2024.doi:10.1007/s12016-024-08988-2

  2. 2.Deshpande P, Hertzman RJ, Palubinsky AM, et al.Immunopharmacogenomics: Mechanisms of HLA-Associated Drug Reactions. Clin Pharmacol Ther 110(3):607-615, 2021.doi:10.1002/cpt.2343

薬物過敏症の治療

  • 薬剤の使用中止

  • 支持療法(例,抗ヒスタミン薬,コルチコステロイド,アドレナリン)

  • ときに脱感作

薬剤アレルギーの治療は被疑薬の使用を中止することであり,大半の症候はその薬剤を中止してから数日以内に消失する。

急性反応に対する対症療法および支持療法として,以下を行う:

薬剤熱,そう痒のない発疹,または器官系の軽度の反応などの症状には,薬剤中止以外の治療は必要ない(具体的な臨床反応の治療については,本マニュアルの別の箇所を参照)。

脱感作

IgE介在性の過敏症が確定していて,治療が不可欠で,ほかに選択肢がない場合は,急速脱感作が必要になることがある。急速脱感作により,一時的な(すなわち患者が抗原[薬剤]に曝露している間の)寛容がもたらされる。曝露のない状態で24~48時間が経過すると,感作が生じ,また曝露すると再び反応が起きやすくなる。可能なら,脱感作はアレルギー専門医と連携して行うべきである。この処置は,スティーブンス-ジョンソン症候群,血清病,DRESS症候群,またはその他の重度の遅延型過敏反応もしくは皮膚過敏反応の患者では試みるべきではない。脱感作はT細胞介在性の反応には通常無効であり,そのような症例では行うべきではない。脱感作を行う場合は必ず,アナフィラキシーに対する迅速な治療のために,酸素,アドレナリン,および蘇生器具を使用できる状態にしておかなければならない。

脱感作は,治療量での投与に先立って,まず無症候性のアナフィラキシーを誘導するごく少量から始めて,15~20分毎に抗原の用量を増やしていくことで行う。この手順は,その薬物が血清中に持続して存在することに依存するため,中断してはならず,脱感作の直後に最大の治療量を投与する。過敏症は典型的には治療を中断してから24~48時間で再び発生する。脱感作中には軽度の反応(例,そう痒,発疹)がよくみられる。

脱感作プロトコルは,IgE介在性の薬物反応を対象にデザインすることができ,この種の反応の原因になると考えられる薬剤に対して効果的である(1, 2)。典型的なプロトコルは経口または静脈内投与であり,典型的には8~16段階のプロトコルで,目標用量に達するまで各段階で増量する。目標用量は標準的な期間継続する;薬剤の投与を休止することで,感作が戻る可能性がある。静注を用いる場合は,複数の高濃度の溶液を調製し,段階毎に注入速度を調節して用量を増量する。

多くの抗菌薬,生物学的製剤,糖尿病治療薬,アスピリン,その他の薬剤について,急速な脱感作が成功を収めている。

異種血清に対する皮膚テストが陽性であれば,アナフィラキシーのリスクが高い。血清療法が必須であれば,事前に脱感作を行わなければならない。

治療に関する参考文献

  1. 1.Castells M: Desensitization for drug allergy.Curr Opin Allergy Clin Immunol 6 (6):476–481, 2006.

  2. 2.Chastain DB, Hutzley VJ, Parekh J, et al: Antimicrobial desensitization: A review of published protocols.Pharmacy (Basel) 7 (3):112, 2019.doi: 10.3390/pharmacy7030112

薬物過敏症の予後

過敏症は時間とともに減弱する。1型アレルギー反応の1年後には患者の90%にIgE抗体がみられるが,10年後では患者の約20~30%に過ぎない(1)。アナフィラキシー反応を呈する患者は,原因薬剤に対する抗体をより長く保持している可能性が高い。

薬剤アレルギーのある人には,その薬剤の回避について指導すべきであり,個人医療情報カードやアラートブレスレットを携行させるべきである。カルテには常に該当する印をつけておくべきである。

予後に関する参考文献

  1. 1.Shenoy ES, Macy E, Rowe T, Blumenthal KG.Evaluation and Management of Penicillin Allergy: A Review. JAMA 321(2):188-199, 2019.doi:10.1001/jama.2018.19283

要点

  • 薬剤に対する過敏反応の多くはI型(即時型,IgE介在性)であるが,II型,III型,IV型の場合もある。

  • 薬物過敏症は病歴(主に薬剤使用開始後に発生した反応の患者報告)に基づいて診断できる場合が多いが,その薬剤による既知の有害および毒性作用と薬物間相互作用を除外しなければならない。

  • 診断がはっきりしない場合,通常は皮膚テストであるが,ときに薬物誘発試験やその他の特異的検査によって,一部のを原因として同定できることがある(特にI型過敏反応が最も強く関係している場合)。

  • 皮膚テストの結果が陰性であれば,アナフィラキシーの可能性は除外されるが,その後の血清病またはその他の非IgE介在性反応の発生は予測できない。

  • そう痒に対しては抗ヒスタミン薬,関節痛に対してはNSAID,重度の反応(例,剥脱性皮膚炎,気管支攣縮)に対してはコルチコステロイド,およびアナフィラキシーに対してはアドレナリンなど,急性のI型過敏反応を支持療法で治療する。

  • 原因薬剤を使用しなければならない場合は,その薬剤に対するI型過敏反応のリスクを一時的に低下させるため,可能ならアレルギー専門医の協力の下で急速脱感作を試みる。

  • 過敏症は徐々に減弱する傾向がある。

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