血友病

執筆者:Michael B. Streiff, MD, Johns Hopkins University School of Medicine
Reviewed ByJerry L. Spivak, MD, MACP, Johns Hopkins University School of Medicine
レビュー/改訂 2023年 9月 | 修正済み 2023年 10月
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血友病はよくみられる遺伝性出血性疾患で,第VIII因子または第IX因子のいずれかの凝固因子の欠乏に起因する。因子の欠乏の度合いで出血の確率および重症度が決まる。通常は外傷の数時間以内に深部組織または関節内への出血が生じる。診断は,プロトロンビン時間および血小板数が正常かつ部分トロンボプラスチン時間の延長を認める患者で疑い,特異的因子の測定により確定する。治療には,急性出血が疑われる場合,確認された場合,または発生する可能性が高い場合(例,外科手術の前)の欠乏因子の補充療法がある。

凝固障害の概要も参照のこと。)

血友病患者の約80%を占める血友病A(第VIII因子欠乏症)は,血友病B(第IX因子欠乏症)と臨床症状およびスクリーニング検査の異常が同じである。いずれもX連鎖遺伝性疾患である。この2つを鑑別するには特異的因子の測定が必要である。

血友病の病因

血友病は,第VIII因子または第IX因子の遺伝子に変異,欠失,または逆位が生じたことに起因する遺伝性疾患である。これらの遺伝子はX染色体上に位置するため,血友病は,ほぼ例外なく男性に現れる。血友病をもつ男性の娘は確定保因者であるが,息子は正常である。保因者の息子が血友病になる確率は50%で,娘が保因者になる確率も50%である。

血友病AまたはBの女性保因者の一部は,侵襲的処置の施行中や出産中に症状を呈するようになる。これらの例では,正常な方の(正常な第VIIIまたは第IX因子遺伝子がある)X染色体が偏って不活化されている。このような女性の凝固因子活性は,典型的には軽症血友病の男性(第VIIIまたは第IX因子活性で5~50%)と同程度である。手術を受ける患者では,第VIIIまたは第IX因子活性が低すぎて,正常な止血が期待できないことがある。

血友病の病態生理

正常な止血(血液凝固経路の図を参照)は,第VIIIおよび第IX因子活性が50%以上である場合に起こる。重症の血友病(因子活性1%未満)でみられる遺伝子異常は,典型的には大きな欠失または逆位であるか,遺伝子発現を障害する点変異である。対照的に,軽症または中等症の血友病では,典型的には,アミノ酸変化をもたらす点変異(ミスセンス変異)がみられる。

血友病AおよびB(母親が保因者でない場合)の散発例はまれではない。ある研究では,重症血友病A患者の55%と重症血友病B患者の43%が散発例であった。軽症から中等症の血友病AおよびBでは,30%が散発例であった(1)。

血液凝固経路

1980年代初頭に治療を受けた血友病患者の大半は,汚染された血漿や第VIIIまたは第IX因子製剤(効果的なウイルス不活性化薬が開発される前)の投与を受けた結果としてHIVB型肝炎,またはC型肝炎に感染した。ときに,HIV感染に続発する免疫性血小板減少症により,出血が悪化する患者もいる。

病態生理に関する参考文献

  1. 1.Kasper CK, Lin JC.Prevalence of sporadic and familial haemophilia. Haemophilia 2007;13(1):90-92.doi:10.1111/j.1365-2516.2006.01397.x

血友病の症状と徴候

血友病患者では組織内へ出血する(例,関節出血,筋肉血腫,後腹膜出血)。外傷の程度と第VIIIまたは第IX因子活性に応じて,出血が急速に生じることもあれば,緩徐に進行することもある。出血の開始とともに疼痛が生じることが多いが,ときに出血の他の徴候が現れる前に生じることもある。慢性または再発性の関節出血では,滑膜炎および関節症に至る可能性がある。頭部のごく軽微な打撲でも,頭蓋内出血を招く恐れがある。舌根部への出血は,生命を脅かす気道圧迫を起こすことがある。

軽症の血友病(第VIIIまたは第IX因子活性が5~49%)では,外科手術または抜歯の後に過度の出血が起こる可能性がある。

中等症の血友病(第VIIIまたは第IX因子活性が1~5%)では,通常は軽微な外傷後に出血が起きる。

重症の血友病(第VIII因子または第IX因子活性が1%未満)では,生涯を通じて重度の出血を起こし,通常は出生直後から始まる(例,出生直後の頭皮血腫または包皮環状切除後の過度の出血)。

血友病の診断

  • 血小板数,プロトロンビン時間(PT),部分トロンボプラスチン時間(PTT),第VIII因子,および第IX因子の測定

  • ときにフォン・ヴィレブランド因子の活性,抗原,およびマルチマー構成

再発性の出血症状,原因不明の関節出血,またはPTT延長が認められる患者では血友病を疑う。血友病が疑われる場合は,PTT,PT,血小板数,第VIII因子および第IX因子を測定する。血友病ではPTTが延長するが,PTおよび血小板数は正常である。

第VIIIおよび第IX因子測定により,血友病の型および重症度が決定される。第VIII因子活性はフォン・ヴィレブランド病でも低下することがあるため,新たに血友病Aと診断された患者,特に家系内に男女両方の発症者がみられる軽症患者では,フォン・ヴィレブランド因子(VWF)活性,VWF抗原,およびVWFマルチマー構成を測定する。女性が血友病Aの真の保因者か否かは,ときに第VIII因子活性の測定で判断できることがある。同様に,第IX因子活性の測定によって,しばしば血友病Bの保因者を同定することができる。確定診断には遺伝子検査が必要である。

第VIII因子または第IX因子遺伝子を構成するDNAのPCR解析は,専門の検査機関で施行可能で,血友病AまたはB保因者か否かの診断,および血友病AまたはBの出生前診断(第12週の絨毛採取または第16週の羊水穿刺による)に使用されることがある。これらの手技では,0.5~1%の流産のリスクがある。母体血中のセルフリー胎児DNAの研究により,これが血友病の非侵襲的なスクリーニング法として有望であることが示されている。

第VIII因子または第IX因子補充療法を繰り返した後には,重症の血友病A患者の約30%(1)および血友病B患者の約3%(2)に第VIII因子または第IX因子の同種抗体(アロ抗体)が発現し,第VIII因子または第IX因子をさらに輸注しても凝固活性が阻害される。そのため,同種抗体の有無を調べるスクリーニング検査(例,患者血漿を同量の正常血漿と混合した直後にPTTの短縮の度合いを測定し,続いて1時間のインキュベーション後に再測定する)を実施すべきである(特に補充療法を必要とする待機手術の前)。同種抗体が存在する場合は,患者血漿の段階希釈により第VIII因子または第IX因子阻害の程度を測ることで同種抗体の力価が測定できる。

パール&ピットフォール

  • 第VIII因子活性はフォン・ヴィレブランド病でも低下する場合があるため,新たに血友病Aと診断された患者では,フォン・ヴィレブランド因子(VWF)の活性,抗原,およびマルチマー構成を測定すること。

診断に関する参考文献

  1. 1.Iorio A, Fischer K, Makris M.Large scale studies assessing anti-factor VIII antibody development in previously untreated haemophilia A: what has been learned, what to believe and how to learn more. Br J Haematol 2017;178(1):20-31.doi:10.1111/bjh.14610

  2. 2.Puetz J, Soucie JM, Kempton CL, Monahan PE; Hemophilia Treatment Center Network (HTCN) Investigators.Prevalent inhibitors in haemophilia B subjects enrolled in the Universal Data Collection database. Haemophilia 2014;20(1):25-31.doi:10.1111/hae.12229

血友病の治療

  • 欠乏因子の補充

  • ときに抗線溶薬

症状により出血が示唆される場合は,たとえ診断検査が完了していなくとも,直ちに治療を開始すべきである。例えば,頭蓋内出血を示すと考えられる頭痛に対する治療は,CT完了前に開始すべきである。

欠乏因子の補充が主たる治療である。

血友病Aでは,第VIII因子活性のトラフ値(すなわち,次の投与直前に測定した第VIII因子活性)を以下の水準まで上昇させるべきである:

  • 抜歯後の出血予防または初期の関節出血の停止には50%

  • 関節または筋肉内の重度の出血では50~80%

  • 大手術の前または頭蓋内や心腔内など生命を脅かす部位に出血が認められる場合は100%

その後は当初算出した投与量で8~12時間毎に輸注を繰り返し,大手術後または生命を脅かす出血後の7~14日間にわたりトラフ値を50~80%に保つべきである。脳神経外科手術または心臓手術の施行後には,術後最初の3日間にわたって因子活性のトラフ値を100%に維持すべきである。術後4~7日目はトラフ値80~100%を目標とし,術後8~14日目は50~80%を目標とする。頭蓋内出血の後では,最初の7日間にわたりトラフ値を100%に維持すべきである。その後の目標値は,8~14日目で80~100%,15~21日目で50~80%とすべきである。頭蓋内出血後には,生涯にわたる凝固因子製剤の予防的投与が推奨される。第VIII因子を1単位/kg投与する毎に,第VIII因子活性が約2%ずつ上昇する。したがって,活性値を0%から50%に上昇させるためには約25単位/kgが必要である。

第VIII因子は,複数の供血者に由来する血漿由来第VIII因子製剤として投与することができる。濃縮後にウイルス不活化工程を経ているが,パルボウイルスとA型肝炎ウイルスは不活化工程で排除されない可能性がある。遺伝子組換え第VIII因子製剤はウイルスが含まれておらず,通常はこちらが望ましい。

血友病Bでは,精製または遺伝子組換えウイルス不活化製剤として第IX因子を12~24時間毎に投与することができる。因子活性改善の目標値は血友病Aの場合と同じである。ただし,第IX因子は分子サイズが第VIII因子より小さく,第VIII因子と比較して血管外分布が大きいため,目標値を達成するには投与量を血友病Aより多くしなければならない。第IX因子を1単位/kg投与する毎に,第IX因子活性が1%ずつ上昇する。第IX因子は血管外に分布するため,一般に初回用量は2回目以降より25%増量する。

新鮮凍結血漿には第VIII因子および第IX因子が含まれている。ただし,重症の血友病患者では通常,血漿交換を行わない限り,血漿の投与によって第VIII因子または第IX因子の血中量を出血の予防ないしコントロールが可能になる水準まで増加させることは量的に不可能である。したがって,新鮮凍結血漿は濃縮因子製剤が入手できない場合に限定して使用すべきである。

クリオプレシピテートは第VIII因子を含んでおり,第VIII因子濃縮製剤が入手できない場合に補充製品として使用することができる。クリオプレシピテートは1単位当たり第VIII因子80単位を含有する。血漿およびクリオプレシピテートは,一般にウイルス不活化工程を経ないため,凝固因子濃縮製剤が入手できない緊急時に限定して使用すべきである。

遺伝子組換え第VIII因子Fc領域融合タンパク質(1),遺伝子組換え第IX因子Fc領域融合タンパク質(2),ポリエチレングリコール(PEG)結合遺伝子組換え第VIII因子製剤(3),およびペグ化第IX因子(4)は,いずれもin vivoの半減期が長く,血友病AおよびB患者の出血をコントロールすることが報告されていいる。

血友病Aに対しては,遺伝子組換えヒト化二重特異性モノクローナル抗体であるエミシズマブがあり,これは第IX因子第X因子の両方に結合し,それらをXase様の活性型複合体に連結することで第VIII因子を不必要にする効果があり,効果的な治療法となっている(5)。エミシズマブは1週毎,2週毎,または4週毎に皮下注射で投与する。半減期は28日である。

血友病AまたはBの両方に対する臨床試験段階の新規治療薬として,フィツシランとコンシズマブ(6, 7)がある。フィツシランは,内因性の抗凝固タンパク質であるアンチトロンビンの産生をノックダウンする低分子干渉RNAである。コンシズマブは,別の内因性抗凝固タンパク質である組織因子経路インヒビター(TFPI)を阻害し,血友病AおよびBにおけるトロンビン産生を増加させるヒト化モノクローナル抗体である。

アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを用いる遺伝子治療では,第VIII因子および第IX因子の持続的な発現が複数の臨床試験で示されている(8, 9)。血友病Bを対象とするAAVベクター遺伝子治療製品が最近入手可能になった。血友病Aに対するAAVベクターによる遺伝子治療は現在,評価段階にある(10)。

VWFと第VIII因子はどちらも内皮細胞のWeibel-Palade小体の中に貯蔵されており,内皮細胞の刺激に反応して分泌される(11)。したがって,軽症の血友病Aに対しては,バソプレシン合成アナログのDDAVP(デアミノ-D-アルギニンバソプレシン,別名デスモプレシン)による患者内皮細胞のin vivo刺激が補助的な治療法となりうる。フォン・ヴィレブランド病の項に記載しているように,デスモプレシンは第VIII因子活性を一時的に上昇させる可能性がある。デスモプレシンを治療に使用する際は,事前に患者の反応を検査しておくべきである。軽微な外傷後または待機的な歯科手術の前に使用することで,補充療法が不要になることもある。デスモプレシンは,軽症の血友病A(第VIII因子活性の基底値が5%以上)でデスモプレシンに対する反応性が認められる患者にのみ使用すべきである。

血友病AまたはBに対する補助的治療としては,線溶を抑制して抜歯後やその他の中咽頭粘膜外傷(例,舌裂傷)後の遅延性出血を予防する目的で,抗線溶薬(アミノカプロン酸またはトラネキサム酸)も使用されることがある。

治療に関する参考文献

  1. 1.Mahlangu J, Powell JS, Ragni MV, et al: Phase 3 study of recombinant factor VIII Fc fusion protein in severe hemophilia A.Blood 123:317–325, 2014.

  2. 2.Powell JS, Pasi KJ, Ragni MV, et al: Phase 3 study of recombinant factor IX Fc fusion protein in hemophilia B.N Engl J Med 369:2313–2323, 2013.

  3. 3.Konkle BA, Stasyshyn O, Chowdary P, et al: Pegylated, full-length, recombinant factor VIII for prophylactic and on-demand treatment of severe hemophilia A.Blood 126:1078–1085, 2015.

  4. 4.Collins PW, Young G, Knobe K, et al.Recombinant long-acting glycoPEGylated factor IX in hemophilia B: A multinational randomized phase 3 trial.Blood 124:3880–3886, 2014.

  5. 5.Nuto A, Yoshihashi K, Takeda M, et al: Anti-factor IXa/X bispecific antibody (ACE910): Hemostatic potency against ongoing bleeds in a hemophilia A model and the possibility of routine supplementation.J Thromb Haemost 12:206–213, 2014.

  6. 6.Young G, Srivastava A, Kavakli K, et al.Efficacy and safety of fitusiran prophylaxis in people with haemophilia A or haemophilia B with inhibitors (ATLAS-INH): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial. Lancet 2023;401(10386):1427-1437.doi:10.1016/S0140-6736(23)00284-2

  7. 7.Shapiro AD, Angchaisuksiri P, Astermark J, et al.Subcutaneous concizumab prophylaxis in hemophilia A and hemophilia A/B with inhibitors: phase 2 trial results. Blood 2019;134(22):1973-1982.doi:10.1182/blood.2019001542

  8. 8.Perrin GQ, Herzog RW, Markusic DM.Update on clinical gene therapy for hemophilia. Blood 2019;133(5):407-414.doi:10.1182/blood-2018-07-820720

  9. 9.Samelson-Jones BJ, George LA.Adeno-Associated Virus Gene Therapy for Hemophilia. Annu Rev Med 2023;74:231-247.doi:10.1146/annurev-med-043021-033013

  10. 10.George LA: Hemophilia gene therapy comes of age.Blood Adv 1:2591–2599, 2017.

  11. 11.Turner NA and Moake JL: Factor VIII is synthesized in human endothelial cells, packaged in Weibel-Palade bodies and secreted bound to ULVWF strings.PLoS ONE 10(10): e0140740, 2015.

血友病の予防

家系内の保因者を特定して,遺伝カウンセリングを受けられるようにすべきである。

出血を予防するために,アスピリンおよび非ステロイド系抗炎症薬を避けるべきである(ともに血小板機能を阻害する)。抜歯およびその他の歯科手術が回避できるように,定期的な口腔ケアが欠かせない。薬剤は経口または静注で投与すべきであり,筋注では血腫を引き起こす可能性がある。

血友病患者にはA型肝炎およびB型肝炎に対するワクチンを接種すべきである。

要点

  • 血友病は,X連鎖潜性(劣性)の凝固障害である。

  • 血友病A(患者の約80%)は第VIII因子欠乏を伴い,血友病Bは第IX因子欠乏を伴う。

  • ごくわずかな外傷でも組織内へ出血する(例,関節出血,筋肉血腫,後腹膜出血);致死的な頭蓋内出血が生じることがある。

  • 部分トロンボプラスチン時間が延長するが,プロトロンビン時間および血小板数は正常であり,第VIII因子および第IX因子の測定で血友病の病型および重症度を判別できる。

  • 出血している患者または出血が予測される患者(例,手術前または抜歯前)には補充因子を投与し,その際は組換え製剤の使用が望ましい;用量は状況による。

  • 第VIII因子の点滴を繰り返し必要とする重症の血友病A患者の約30%では,第VIII因子に対する抗体が発現する。

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