ラミン心筋症は,拡張型心筋症,様々な不整脈,および伝導障害を引き起こし,突然死のリスクを高める遺伝性疾患である。診断は心電図検査,心臓画像検査,遺伝子検査などによる。治療は通常,植込み型除細動器(ICD),抗不整脈薬,および心不全に対する標準治療である。
ラミンAとラミンCは,細胞核内にあり,その構造を支えるフィラメントタンパク質であり,LMNA遺伝子によってコードされている。この遺伝子の変異は,ラミノパチーと呼ばれる一群の疾患を引き起こす。多くのラミノパチーは,重度の通常は拡張型の心筋症を引き起こし,これは急速な進行,心房性頻拍性不整脈,房室ブロック,心室性頻拍性不整脈,および突然死を特徴とする。ラミン心筋症は遺伝性拡張型心筋症の約5~10%を占める(1)。
大半のラミン心筋症は浸透度の高い常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であるため,患者の家族も罹患している場合が多い。
一部のLMNA変異には,特定の筋ジストロフィー(例,エメリー-ドレイフス型筋ジストロフィー),末梢神経障害,早期老化,代謝異常(例,インスリン抵抗性,高トリグリセリド血症,リポジストロフィー)など,他疾患との関連も認められる。
総論の参考文献
1.Rosario KF, Karra R, Amos K, et al: LMNA Cardiomyopathy: Important Considerations for the Heart Failure Clinician. J Card Fail 29(12):1657–1666, 2023.doi:10.1016/j.cardfail.2023.08.016
ラミン心筋症の症状と徴候
初発症候は通常,心ブロックおよび/または不整脈の症状(動悸,失神,心停止など)である。
発症年齢は典型的には40歳未満である。心不全の症候(例,労作時呼吸困難,疲労感,末梢浮腫)が現れるのは典型的には後になってからであるが,その時期は様々である。
骨格筋症状も多くの患者にみられ(例,筋力低下),それらの症状が心臓症状に先行することもある。
ラミン心筋症の診断
心電図検査
心臓画像検査(例,心エコー検査,心臓MRI)
遺伝子検査
第1度近親者のスクリーニング
動悸または失神がみられるか,原因不明の心停止からの蘇生経験がある若年患者では本症が疑われ,特に若年発症の刺激伝導系疾患,上室性または心室性不整脈,骨格筋の筋力低下,末梢神経障害や,不整脈または心不全の家族歴がみられる場合,強く疑われる。
心電図検査,携帯型心電図モニタリング,および心臓の画像検査(典型的には心エコー検査および/または心臓MRI)を行うべきである。
伝導障害,頻拍性不整脈,または心筋症が検出された場合は,遺伝子検査を行う。遺伝子検査の検出率は,特発性拡張型心筋症患者の一般集団では5~10%であるが,房室伝導障害に加えて心筋症の家族歴のある患者では約3分の1に上昇する(1)。
上述のように,患者の第1度近親者は有意な疾患リスクを有する。そのため,臨床的評価(不整脈,筋力低下,および/または心不全を示唆する症状を検出する),心電図検査,携帯型心電図モニタリング,および心エコー検査をまず行い,その後はこれらを1~3年毎に行うべきである。発端者で変異が同定されている場合は遺伝子検査を行う。その変異をもたない家系員には継続的な検査は不要である。
診断に関する参考文献
1.van Tintelen JP, Hofstra RM, Katerberg H, et al: High yield of LMNA mutations in patients with dilated cardiomyopathy and/or conduction disease referred to cardiogenetics outpatient clinics. Am Heart J 154(6):1130–1139, 2007.doi:10.1016/j.ahj.2007.07.038
ラミン心筋症の治療
過度の身体活動を控える
通常は植込み型除細動器(ICD)
ときに抗不整脈薬による治療
必要に応じて心不全の治療(移植を含む)
治療は突然死の予防および症候性の心室性頻拍性不整脈の予防に重点を置く。
スポーツは心筋症の進行を早め,生命を脅かす不整脈を助長する可能性があるため,患者はこのような活動を避けるべきである。
生命を脅かす不整脈の初回発症の5年リスクには約4~50%と幅があり,患者毎のリスクは性別,非ミスセンスLMNA変異,房室ブロック(第1度か第2度以上か),非持続性心室頻拍の有無,および左室駆出率に依存する。生命を脅かす不整脈を発症したことがない患者を対象とするオンラインのリスク計算ツールが利用可能である(1)。
ラミン心筋症の患者は,突然死のリスクが高いため,拡張型心筋症の他の患者よりも疾患経過の早期にICDを植え込むのが典型的である(の表を参照)。ICD使用の確立された適応として,以下のものがある(2)
拡張型心筋症かつ左室駆出率35%未満
持続性心室頻拍または心室細動
蘇生された心停止の既往
以下に該当するラミン心筋症患者にもICDの植込みが有用となる可能性がある(クラスIIaの推奨)(2):
原因不明の失神
独立した恒久型ペースメーカーの適応
突然死のその他の危険因子が2つ以上(左室駆出率35~44%,男性,非持続性心室頻拍)
β遮断薬は大半の患者で使用すべきであるが,房室ブロックの可能性を増大させる可能性がある。
III群抗不整脈薬,特にソタロールまたはアミオダロンによる薬物療法は,症候性の心室性頻拍性不整脈を減少させる可能性があるが,ICDの代用にはならない。しかしながら,β遮断薬による十分な治療にもかかわらず,頻回の適切なICD放電がみられる患者では,これらの薬剤が有益となる可能性がある。
必要に応じて,拡張型心筋症の標準治療が用いられる。
治療に関する参考文献
1.Wahbi K, Ben Yaou R, Gandjbakhch E, et al: Development and Validation of a New Risk Prediction Score for Life-Threatening Ventricular Tachyarrhythmias in Laminopathies. Circulation 140(4):293–302, 2019.doi:10.1161/CIRCULATIONAHA.118.039410
2.Towbin, JA, McKenna WJ, Abrams DJ, et al: 2019 HRS expert consensus statement on evaluation, risk stratification, and management of arrhythmogenic cardiomyopathy.Heart Rhythm 16:e301–e372, 2019.doi: 10.1016/j.hrthm.2019.05.007
要点
ラミン心筋症は,頻拍性不整脈,心ブロック,および心不全を引き起こす遺伝性疾患である。
一部の変異は骨格筋にも影響を及ぼす。
診断は臨床所見,心電図所見,画像検査,および遺伝子検査に基づく。
第1度近親者には有意な疾患リスクがあり,スクリーニングが必要である。
治療には通常,植込み型除細動器およびβ遮断薬を必要とする。



