嚢胞性腎疾患には，先天性のものと後天性のものがある。先天性のものは，常染色体顕性（優性）または常染色体潜性遺伝（劣性遺伝）疾患として遺伝する場合と，他の原因（例，散発性の遺伝子変異，染色体異常，催奇形因子）を有する場合がある。形成異常症候群（嚢胞性腎疾患の分類の表を参照）の部分症として生じる場合もある。
嚢胞性腎疾患の分類
疾患 | 臨床的特徴 |
|---|---|
常染色体顕性（優性） | |
側腹部痛および腹痛 多発性の両側性嚢胞を伴う腎腫大 腎以外の嚢胞（肝臓，膵臓，腸管） 脳動脈瘤 成人期のESKD | |
鰓耳腎症候群（BOR症候群またはMelnick-Fraser症候群） | 鰓瘻および嚢胞 耳前瘻孔または副耳 難聴 |
家族性腎過誤腫 | 原発性副甲状腺機能亢進症 下顎の骨形成性線維腫 |
腎臓の大きさは小～正常 多飲および多尿 タンパク尿はなし～軽度 無菌の尿沈渣 早期には重度の高血圧はなし 夜間頻尿または小児では遺尿症 成人期のESKD 大半の亜型で痛風 | |
脳，腎臓，および皮膚の良性腫瘍 腎臓の血管筋脂肪腫 | |
網膜，脳，脊髄，および副腎における血管芽腫の増殖 | |
常染色体潜性（劣性） | |
アルストレーム（Alström）症候群 | |
常染色体潜性（劣性）多発性嚢胞腎 | 多発性の両側性嚢胞を伴う腎腫大 小児期のESKD |
バルデー-ビードル症候群 | 知的障害 網膜症 肥満 多指症 |
エリス-ファンクレフェルト（Ellis-van Creveld）症候群 | 四肢短縮型低身長症 しばしば心臓の異常 |
アイブマーク（Ivemark）症候群 | 脾臓無形成 チアノーゼ性心疾患 腸回転異常症 |
ジェンヌ（Jeune）症候群（窒息性胸郭異形成症） | 胸部，上肢，および下肢が侵される低身長症 |
ジュベール（Joubert）症候群 | 知的障害 筋緊張低下 不規則呼吸 眼球運動異常 |
メッケル-グルーバー（Meckel-Gruber）症候群 | 後頭部脳瘤 多指症 頭蓋顔面異形成 |
腎臓の大きさは小～正常 多飲および多尿 良性の尿沈渣所見を伴う軽度のタンパク尿 小児期にESKDに至る場合もある | |
ツェルベーガー（Zellweger）症候群（脳肝腎症候群） | 脳および肝臓の異常 発達遅滞 鉄および銅の血清中濃度上昇 筋緊張低下 |
その他の先天性* | |
尿細管以外から発生する嚢胞（糸球体，被膜下，および腎盂腎杯嚢胞を含む） | 様々な臨床的特徴 |
形成異常症候群 | 様々な臨床的特徴 |
尿細管拡張および集合管の嚢胞 尿細管性アシドーシス1型および腎結石と関連 ESKDには進行しない | |
多嚢胞性異形成腎 | 嚢胞および結合組織で構成される片側性の腎臓形ではない腫瘤であり，典型的には機能的腎組織を欠く |
口腔顔面指症候群（X連鎖性，常染色体顕性［優性］，または常染色体潜性［劣性］を含む複数の遺伝パターンに従う可能性がある） | 口唇，舌，および歯槽堤の部分裂 鼻軟骨の低形成 腎臓の小嚢胞 |
尿路の構造的閉塞または後腎の形成異常に関連 異形成の程度は両腎間で非対称 | |
著明な発達遅滞 頭部，顔面，手，および足の形成異常 | |
後天性 | |
多発性嚢胞 長期の透析と関連（通常は10年以上経過後） 腎細胞癌のリスクが高い | |
腫瘍に関連した嚢胞 | 例えば，腎細胞癌または腎芽腫 |
孤立性単純性嚢胞 | 加齢と関連 |
*散発性の遺伝子変異，染色体異常，催奇形因子，不明な機序などにより引き起こされる。 | |
ESKD = 末期腎不全。 | |
