大腸憩室症

執筆者:Joel A. Baum, MD, Icahn School of Medicine at Mount Sinai;
Rafael Antonio Ching Companioni, MD, HCA Florida Gulf Coast Hospital
Reviewed ByMinhhuyen Nguyen, MD, Fox Chase Cancer Center, Temple University
レビュー/改訂 修正済み 2024年 7月
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大腸憩室症とは,結腸に1つまたは複数の憩室が存在する状態である。大半の憩室は無症候性であるが,炎症または出血を引き起こすものもある。診断は大腸内視鏡検査,カプセル内視鏡検査,下部消化管造影,CT,またはMRIによる。無症候性の憩室症には治療は必要ない。症状が現れた場合の治療は,臨床像に応じて異なる。

大腸憩室は,結腸の粘膜および粘膜下層が結腸の筋層を越えて突出した袋状の構造であり,腸管の全ての層を備えていないことから,偽性憩室とみなされる(憩室性疾患の定義も参照)。

憩室は大腸のどこにでも生じるが,通常はS状結腸に形成される。腹膜翻転部より下方に生じることや,直腸に及ぶことはまれである。憩室の径は様々であるが,典型的には3~10mmである。巨大憩室は極めてまれであるが,直径4cmを超える憩室と定義され,最大で25cmのものが報告されている。大腸憩室症の患者は通常,複数の憩室を有する。

憩室症は加齢に伴い頻度が高くなる(1)。

総論の参考文献

  1. 1.Tursi A, Scarpignato C, Strate LL, et al.Colonic diverticular disease [published correction appears in Nat Rev Dis Primers. 2020 Apr 29;6(1):35. doi: 10.1038/s41572-020-0176-y] [published correction appears in Nat Rev Dis Primers. 2020 Jun 17;6(1):50. doi: 10.1038/s41572-020-0192-y]. Nat Rev Dis Primers.2020;6(1):20.Published 2020 Mar 26.doi:10.1038/s41572-020-0153-5

大腸憩室症の病因

大腸憩室症の病因は複数の因子が関与するもので,完全には解明されていない。

症候性の憩室性疾患には,繊維質が少ない食事,赤身肉が多い食事,座位時間の長い生活習慣,肥満,喫煙,非ステロイド系抗炎症薬(NSAID),アスピリン,コルチコステロイド,およびオピオイドの使用など,多くの環境因子との間に相関がある可能性がある。

そのほかに考えられる危険因子として,遺伝因子や,結腸壁の構造および運動性の変化などがある。

憩室は腸管内圧の上昇が原因である可能性があり,それにより腸管筋層の最も脆弱な部分(壁内血管に隣接する領域)から粘膜が突出する。

巨大憩室の病因は不明である。ある仮説によると,狭くくびれた開口部でball-valve effectが生じ,その開口部が間欠的に閉塞することで,憩室が拡大する。非常に大きな巨大憩室は,実際には小さな憩室が穿孔して,外側の組織に包まれて周囲から隔絶され,内面の大部分が肉芽組織で覆われたものである場合が多い。

大腸憩室症の症状と徴候

約80%の憩室症患者は,無症状であるか,間欠的な便秘のみを呈する。約20%の患者では,炎症性または出血性合併症が発生することで,疼痛または出血の症状が現れる(1)。

憩室症患者では,ときに腹痛,腹部膨満,便秘,下痢,直腸からの粘液の排出など,非特異的な消化管症状がみられる。これらの症状の組合せは,ときにsymptomatic uncomplicated diverticular disease(SUDD)と呼ばれる。しかしながら,これらの症状は別の疾患(例,過敏性腸症候群)に起因するものであって,憩室の存在は原因ではなく偶然の結果であると考える専門医もいる。

憩室症の合併症

大腸憩室性疾患の合併症は,喫煙者,肥満者,HIV感染者,NSAIDの使用者,およびがん化学療法を受けている患者で頻度が高い。合併症は15~20%の患者に発生し,具体的には以下のものがある:

憩室炎は,痛みを伴う憩室の炎症である。合併症を伴わない場合と伴う場合がある。

憩室出血は憩室症患者の10~15%に生じる。

Segmental colitis associated with diverticular disease(SCAD)とは,少数の憩室症患者に発生する大腸炎の臨床像(例,血便,腹痛,下痢)を指す。憩室症との因果関係の程度は不明である。

憩室出血

憩室出血は,成人に生じる活動性の下部消化管出血の最も一般的な原因(最大50%)である。ある研究では,憩室症に起因する下部消化管出血のおよその累積発生率は,5年で2%,10年で10%であることが示された(2)。

憩室出血の病態生理は不明であるが,仮説として以下のようないくつかの機序が提唱されている:

  • 憩室内の宿便により生じた局所的な外傷による隣接する血管が侵食される

  • 憩室の増大により血管が引き伸ばされる(最終的に裂ける)

NSAIDは出血のリスクを高めると報告されている。

大半の憩室は左側結腸にみられるが,憩室出血の3分の2は右側結腸で発生する(3)。全結腸型の憩室症患者では,出血の発生率がより高い。

憩室出血は,疼痛を伴わない血便として発症する。出血する血管が細動脈であるため,失血量は通常,中等度から重度となる。鮮血または栗色の便が典型症状であるが,まれに右側の憩室出血が黒色便として現れることがある。憩室出血は通常,憩室炎を併発することなく生じる。

大半は自然に止血する。それ以外の場合は介入が必要になり,典型的には内視鏡下で処置される(American College of Gastroenterologyによる急性下部消化管出血の患者の管理に関する2023年の最新の診療ガイドラインも参照)。

憩室出血の既往がある患者では,再出血のリスクが高くなっている。憩室出血後に再出血が起こるリスクは8カ月間で47%にも上る。

症状と徴候に関する参考文献

  1. 1.Comparato G, Pilotto A, Franzè A, Franceschi M, Di Mario F.Diverticular disease in the elderly. Dig Dis.2007;25(2):151-159.doi:10.1159/000099480

  2. 2.Niikura R, Nagata N, Shimbo T, et al.Natural history of bleeding risk in colonic diverticulosis patients: A long-term colonoscopy-based cohort study.Aliment Pharmacol Ther 41(9):888–894, 2015.doi: 10.1111/apt.13148

  3. 3.Mohammed Ilyas MI, Szilagy EJ.Management of Diverticular Bleeding: Evaluation, Stabilization, Intervention, and Recurrence of Bleeding and Indications for Resection after Control of Bleeding. Clin Colon Rectal Surg.2018;31(4):243-250.doi:10.1055/s-0037-1607963

大腸憩室症の診断

  • 通常,大腸内視鏡検査またはCT

無症候性の憩室は通常,大腸内視鏡検査,カプセル内視鏡検査,下部消化管造影,CT,またはMRIの際に偶発的に発見される。

憩室症(CT)
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この骨盤CT水平断像には,憩室症の典型像(S状結腸壁の中にある暗い領域)が示されている。

LIVING ART ENTERPRISES, LLC/SCIENCE PHOTO LIBRARY

痛みを伴わない下血がみられる場合,特に高齢患者や憩室性疾患の既往がある患者では,憩室症に起因する下部消化管出血が疑われる。下部消化管出血の評価には典型的には大腸内視鏡検査が含まれ,この検査は大腸の前処置(4~6L【訳注:日本では1~2L】のポリエチレングリコール液を経口で,理想的には経鼻胃管で送達し,直腸から流出する液体に血液および便が含まれなくなるまで3~4時間かけて投与する)を迅速に行った後に施行できる。憩室出血の内視鏡所見は,活動性出血から,出血していない露出血管(nonbleeding visible vessel:NBVV),強固に付着した凝血塊,暗い色の平坦な斑点までの幅がある。憩室出血の確定診断率は25%である(1, 2)。

大腸内視鏡検査で出血源を観察できず,持続する出血のペースが十分に速い場合(>0.5~1mL/分)には,CT血管造影または核医学検査で出血源が同定されることがある。

診断に関する参考文献

  1. 1.Jensen DM. Endoscopic Diagnosis and Treatment of Colonic Diverticular Bleeding.Gastrointest Endosc Clin N Am.2024;34(2):345-361.doi:10.1016/j.giec.2023.10.002

  2. 2.Sengupta N, Feuerstein JD, Jairath V, et al.Management of Patients With Acute Lower Gastrointestinal Bleeding: An Updated ACG Guideline. Am J Gastroenterol.2023;118(2):208-231.doi:10.14309/ajg.0000000000002130

大腸憩室症の治療

  • 無症候性の憩室症は無治療で経過観察

  • 特異的な症状の管理

  • 憩室出血は下部消化管出血と同様に治療する

無症候性の憩室症には治療や食習慣の変更は必要ない。ナッツ,種子類,トウモロコシ,またはポップコーンの摂取と憩室炎,憩室出血,単純性の憩室症との間に関連はなく,これらの食品の摂取を避けることはもはや推奨されていない。NSAIDおよびオピオイド鎮痛薬は憩室穿孔および出血のリスクを増大させる可能性があるため,これらの薬剤は,適切な注意を払い,必ずリスクについて患者とよく話し合った上で使用すべきである。

非特異的な消化管症状を伴う憩室症に対する治療は,結腸局所の痙攣を軽減することを目標とする。高繊維食がしばしば推奨され,十分な水分とともにオオバコ種子の製剤または小麦のぬかを摂取することで補ってもよい。しかし,憩室症の治療における繊維の役割は限られている。総じて,繊維の有益な効果を確認するにはデータが不十分である。便秘がみられる患者には膨張性下剤を考慮すべきである(National Institute for Health and Care Excellenceの憩室性疾患の診断および管理に関する2019年版ガイドラインも参照)。鎮痙薬(例,ベラドンナ)は有益でなく,有害作用を引き起こすことがある。低繊維食は役に立たない。巨大憩室の場合を除き,合併症がなければ手術は不要である。

パール&ピットフォール

  • ナッツ,種子類,トウモロコシ,またはポップコーンの摂取と憩室炎,憩室出血,単純性の憩室症との間に関連はなく,これらの食品の摂取を避けることはもはや推奨されていない。

憩室出血の治療

憩室出血は75%の患者で自然に止血する。初期管理は下部消化管出血の場合と同様である。憩室出血の治療は,しばしば診断検査と同時に行われる。

軽微な下部消化管出血がみられる患者と臨床的に止血が得られている患者では,まず十分な大腸前処置後に大腸内視鏡検査を施行すべきである。そのような患者で下部消化管出血が治まり,その1年以内に入念に準備された大腸内視鏡検査を行って憩室症が認められたが大腸癌など消化管出血の病因となりるうもの(例,angioectasia,ポリープ切除後の出血)が認められない場合には,大腸内視鏡検査を行わず経過観察を考慮すべきである。

大腸内視鏡検査で発生後間もない出血の痕跡(活動性出血,凝血塊の付着,暗い色の斑点,および露出血管)を同定することで,出血をコントロールするための内視鏡処置が可能になり,具体的な処置としてはアドレナリン注射,クリッピングまたはフィブリン接着剤,ヒートプローブ法またはバイポーラ凝固法,バンド結紮術などがある。確定診断された大腸憩室出血を内視鏡的に治療された患者では,保存的に治療された推定の大腸憩室出血の患者と比べて,早期および長期の再出血率が低い(1)。

血行動態的に有意な下部消化管出血が持続している患者では,最初にCT血管造影を施行すべきであるが,この検査は,出血が少量であるか持続する出血の臨床所見がない患者では診断率が低い。血管造影時には,出血のコントロールのためにいくつかの手法を用いることができ,特に塞栓術が重要である。塞栓術の成功率は約80%である。血管造影の合併症としての腸管虚血または腸梗塞の発生頻度は,現在の超選択的カテーテル挿入法では低くなっている(5%未満)(2)。

手術が必要になることはまれであるが,治療に反応しない複数回または持続性の憩室出血の既往がある患者や,積極的な輸液にもかかわらず血行動態が安定しない患者には手術が推奨される。

血管造影または手術を考慮している場合は,活動性出血の発生中に内視鏡または核医学検査で出血している憩室を同定することにより,IVR専門医に指針を提供できるほか,外科的切除の対象範囲を限定できる場合がある。出血源が判明したら,半結腸切除術または大腸部分切除術を施行できる可能性があるため,結腸亜全摘術の必要性(ならびにそれと関連する合併症および死亡)が著しく低減する。しかし,生命を脅かす出血が持続し,同定できる出血中の憩室がない患者には,結腸亜全摘術が必要になる可能性がある。出血部位の局在が明確にならない憩室出血の患者では大腸手術後の死亡率が43%であるのに対し,出血部位の局在が明確な患者での術後死亡率は7%である(3)。

治療に関する参考文献

  1. 1.Gobinet-Suguro M, Nagata N, Kobayashi K, et al.Treatment strategies for reducing early and late recurrence of colonic diverticular bleeding based on stigmata of recent hemorrhage: A large multicenter study.Gastrointest Endosc.2022;95(6):1210–1222.e12.doi:10.1016/j.gie.2021.12.023 

  2. 2.Sengupta N, Feuerstein JD, Jairath V, et al.Management of Patients With Acute Lower Gastrointestinal Bleeding: An Updated ACG Guideline. Am J Gastroenterol.2023;118(2):208-231.doi:10.14309/ajg.0000000000002130

  3. 3.Schultz JK, Azhar N, Binda GA, et al.European Society of Coloproctology: Guidelines for the management of diverticular disease of the colon.Colorectal Dis.2020;22(supplement 2):S5–S28.doi:10.1111/codi.15140

要点

  • 大腸憩室とは,結腸から突出した袋状の粘膜構造である。

  • 憩室症は加齢に伴い頻度が高くなり,70歳以上の人では60%以上にみられる。

  • 大半の憩室症は無症候性であるが,約20%の患者では症状や炎症(憩室炎)や下部消化管出血などの合併症がみられる。

  • 無症候性の憩室症には治療は必要ない。

  • 憩室出血は大半の患者で自然に止血するが,自然止血しない場合は大腸内視鏡検査または血管造影での処置や,まれに手術によってコントロールする。

より詳細な情報

有用となりうる英語の資料を以下に示す。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

  1. American College of Gastroenterology (ACG): Management of Patients With Acute Lower Gastrointestinal Bleeding: An Updated ACG Guideline (2023)

  2. National Institute for Health and Care Excellence (NICE): Diverticular disease: Diagnosis and management (2019)

Symptomatic uncomplicated diverticular disease(SUDD)

Symptomatic uncomplicated diverticular disease(SUDD)とは,明確な大腸炎や憩室炎を認めない憩室症患者にみられる持続性および反復性の非特異的な腹部症状を指す。

SUDDは憩室症患者に偶然発生した過敏性腸症候群の一種と考える著名な専門家もいる。

SUDD患者には,左下腹部痛に加えて,腹部膨満,便秘,下痢,または肛門からの粘液の排出がみられる。一般に,合併症の発生率は非常に低い。

過敏性腸症候群とSUDDの差が十分に定義されていないため,SUDDの診断は困難である。

SUDD患者の治療に関して,エビデンスに基づく強固なデータはない(1, 2)。症状をコントロールする方法として,プロバイオティクス,高繊維食,腸内細菌に直接作用する抗菌薬,およびメサラジンの使用などが提唱されている(3)。

参考文献

  1. 1.Elisei W, Tursi A.Recent advances in the treatment of colonic diverticular disease and prevention of acute diverticulitis.Ann Gastroenterol.2016;29(1):24–32.PMID: 26752946

  2. 2.Boynton W, Floch M.New strategies for the management of diverticular disease: Insights for the clinician.Therap Adv Gastroenterol.2013;6(3):205–213.doi:10.1177/1756283X13478679

  3. 3.Calini G, Abd El Aziz MA, Paolini L, et al.Symptomatic Uncomplicated Diverticular Disease (SUDD): Practical Guidance and Challenges for Clinical Management. Clin Exp Gastroenterol.2023;16:29-43.Published 2023 Mar 28.doi:10.2147/CEG.S340929

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