胃石は,部分的に消化された物質や未消化の物質が緊密に凝集したもので,胃で最も多くみられる。胃石はあらゆる年齢層でできる可能性があり,行動症,胃内容排出の異常,または消化管解剖の異常がある患者でしばしば形成される。多くの胃石は無症状であるが,症状を引き起こす場合もある。化学的に溶解できるものもあれば,内視鏡的摘出術を要するものや,外科手術を要するものもある。
(消化管異物の概要も参照のこと。)
胃石は組成に応じて分類される:
植物胃石(最も一般的)は果物や野菜の繊維,皮,種子などの消化吸収されない物質から形成される。
毛髪胃石は毛髪で構成される。
薬物胃石は,摂取された薬剤(特にスクラルファートと水酸化アルミニウムゲルが一般的)の結石である。
柿胃石は植物胃石の一種で,柿の過剰摂取に起因して生じ,柿の生産地で多くみられる。
乳胃石(lactobezoar)は乳タンパク質で構成される。
その他の胃石は,ティッシュペーパーや発泡スチロール製品など,様々な物質から形成される。
胃石の病因
胃石の症状と徴候
胃石の診断
内視鏡検査
胃石は,非特異的な上部消化管症状を評価するためによく行われる画像検査(例,X線,超音波,CT)で,腫瘤病変として検出される。その所見が腫瘍と誤認されることがある。
通常は診断確定のために上部消化管内視鏡検査が行われる。内視鏡検査では,胃石は見誤りようのない不整な表面をもち,色は黄緑から灰黒色まで多様である。内視鏡下生検で毛髪または植物性物質が認められれば診断を下せる。
胃石の治療
化学的溶解
内視鏡的摘出術
ときに外科手術
選択肢を比較したランダム化比較試験が実施されていないため,至適な治療については議論がある。ときに併用療法が必要になる。
症状が軽い患者には,コーラやセルラーゼなどを用いた化学的溶解が可能である(1)。セルラーゼは,3~5gを水300~500mLに溶解して2~5日間かけて投与する。胃の運動を促進する補助として,メトクロプラミド10mgの経口投与がしばしば行われる。パパインを用いる酵素内服療法は,もはや推奨されない。
溶解に失敗した胃石がある場合,大きな胃石により中等度から重度の症状が起きている場合,あるいは両方に該当する場合は,内視鏡的摘出術の適応となる。最初の診断を内視鏡検査で下した場合は,その時点で摘出を試みることができる。鉗子,ワイヤースネア,ジェットスプレー,アルゴンプラズマ凝固術,場合によってはレーザー(2)を用いた破砕術で胃石を粉砕することができ,それにより通過または摘出が可能になる。
手術は,化学的溶解と内視鏡処置のどちらも行えないか,両方が不成功に終わった症例,合併症がある患者,または腸石がある患者にのみ行う。
柿には胃内で重合するシブオールというタンニンが含まれるため,柿胃石は通常固く治療が困難である。これらは化学的溶解にあまり反応せず,通常は内視鏡的摘出術か外科的摘出を必要とする。
治療に関する参考文献
1.Iwamuro M, Okada H, Matsueda K, et al: Review of the diagnosis and management of gastrointestinal bezoars. World J Gastrointest Endosc 7(4):336–345, 2015.doi: 10.4253/wjge.v7.i4.336
2.Mao Y, Qiu H, Liu Q, et al: Endoscopic lithotripsy for gastric bezoars by Nd:YAG laser-ignited mini-explosive technique.Lasers Med Sci 29:1237–1240, 2014.doi: 10.1007/s10103-013-1512-1