季節性感情障害に気づいて治療をするためのヒント
コラム23年3月22日 William Coryell, MD, University of Iowa Carver College of Medicine

冬に少し気分が落ち込むのは、めずらしいことではありません。日照時間が短くなり、気温が下がることに加えて、休日が少なくなる傾向にあります。しかし一部の人にとっては、季節的な変化がより深刻な精神衛生上の問題を引き起こすため、それを無視したり軽く片付けたりしてはいけません。

季節性感情障害(SAD)は、悲しみと季節的パターンで現れる症状を大きな特徴とする抑うつ障害です。この病気は1000万人もの米国人に影響を及ぼしていますが、多くの人は自分がこの病気に苦しんでいることに気づいていないようです。

他の抑うつ障害と同様に、病気を特定して、必要な治療と支援を患者が受けられるようにすることが極めて重要です。ここでは、SADについて知っておくべきことと、1年を通して精神的な健康状態を改善するために取ることのできる対策をいくつか紹介します。

SADは概日リズムの乱れによって引き起こされます

SADには、概日リズムと睡眠・覚醒のタイミングなどの外部刺激とのミスマッチが関係しています。人の体内では、1日を通して、体内時計のサイクルに従ってホルモンが分泌されています。冬に日照時間が短くなると、体内でのセロトニンとメラトニンの分泌に影響を受けることで、睡眠や気分にも影響が及ぶ可能性があります。

SADは1年のどの時期にも人々に影響を及ぼす可能性があります

大半の人は晩秋から冬にかけて、日照時間が短くなる時期に、季節性感情障害を発症します。しかし、1年を通して夏やその他の時期にも定期的に気分の落ち込みを経験する人もいます。多くの場合、SADの症状は時期によって異なります。冬にみられるSADの症状は、炭水化物を渇望する食欲亢進、睡眠時間やベッドで過ごす時間の増加など、従来のうつ病とは異なる傾向があります。同時に、脱力感や普段の活動への興味の喪失など、従来のうつ病に近い症状もみられることがあります。

SADのリスクが高い人もいます

SADが発生する可能性を高める要因がいくつかあります。SADはこの病気の家族歴がある人でより多くみられ、双極性障害の人でもリスクが高くなります。20代と30代の人に最も多くみられます。さらに、北半球の高緯度地域に住んでいる人は比較的この病気になりやすく、これはおそらく日照時間が短いためと考えられます。

SADは「ホリデーブルー」とは異なります

一部の人は休日に気分の落ち込みの悪化を経験し、休日が終わった直後に最悪の状態に陥ることがよくあります。これは「ホリデーブルー」として知られており、ほとんどの場合、つらい反省や孤独のほか、ストレスや不安を引き起こす可能性のある休日中の極端な感情や要求によってもたらされます。ホリデーブルーは、発生時期と原因の両方の点でSADとは異なります。

SADには光が効果的な治療になります

多くの人にとって、SADに対する最善の治療法は光療法です。精神科医はSADの人に対して、ライトボックスという照明機器の30~60センチメートル前に1日30分間、座って過ごすことを勧められます。これは一般的には、朝の起床直後に行うのが最も効果的ですが、個人差もあります。幸いなことに、光療法は開始後1週間で症状を改善できます。さらに、この種の光療法は、他の種類のうつ病に対する治療にも効果的であることが示されています。SADに対するその他の治療法としては、抗うつ薬や認知行動療法などがあります。

SADの症状を無視してはいけません

他の種類の精神障害と同様に、SADに対する治療の必要性は、その人の生活にどれだけ影響を及ぼしているかで決まります。1年を通した気分の変化に気づくことと、日常生活に影響が出ている場合や自殺を考えることがある場合には医師や精神科医に相談することが重要です。

自分(または知人)が自殺について考えたり話したりしている場合は、自殺防止のための組織に助けを求めましょう。自殺の危機にある人や精神的苦痛を経験している人への精神的な支援が多くの場所で提供されています。訓練を受けた精神医療の専門職なら以下のことができます。

  • 危機をもたらした問題について前向きな解決策を提示する
  • 心配して助けたいと思っている家族や友人がいることを思い出させる
  • 直接かつ緊急の支援を手配する

 

SADの詳細については、うつ病に関するMSDマニュアルのページを参照してください。