妊娠可能年齢の女性における異常子宮出血とは、月経周期の正常なパターンに従わない子宮からの出血のことです。すなわち、正常な月経と比べて、頻繁または不規則に起こる場合、長く続く場合、または出血量が多い場合です。
最もよくみられる種類の異常出血は、排卵(卵子の放出)を妨げる問題の結果として起こります。
異常子宮出血を診断するために、医師は出血のパターン(月経歴)について問診をするとともに、内診、およびときに超音波検査、血液検査、子宮内膜の生検などほかの検査を行います。
子宮の内側の組織(子宮内膜)を採取する生検をする場合もあります。
治療法は原因に応じて異なり、具体的にはホルモン剤やその他の薬剤(混合型経口避妊薬など)、子宮鏡検査、子宮内容除去術などがあります。
生検で異常な細胞が見つかった場合は、高用量のプロゲスチンを投与するか、場合によっては子宮を切除します。
(性器出血も参照のこと。)
異常子宮出血は妊娠可能年齢の女性によくみられる問題の1つです。生殖可能年齢の最初と終盤(青年期の女子や45歳以上の女性)にみられることが多いです。
妊娠可能年齢の女性では、異常出血(不正出血)の最も一般的な原因は排卵障害です。すなわち、排卵(卵巣から卵子が放出されること)が起こらなかったり、規則的でなくなったりします。そのため妊娠は起こりにくくなります。しかしときには卵巣から卵子が放出されている可能性もあるため、このような女性が妊娠を望まない場合、避妊すべきです。多くの場合、卵巣の機能不全の原因は不明です。
一般的に、正常であれば排卵後に受精が起こらなければ体内のエストロゲン濃度は低下しますが、濃度が低下せずに高い状態が持続する結果、異常子宮出血が起こります。エストロゲンの濃度が高いと、適切なプロゲステロン濃度とのバランスが取れなくなります。この種類の異常出血がみられる女性では、排卵が起こらず、正常なら月経時に剥がれ落ちて体外に排出される子宮内膜が厚くなり続けることがあります。この異常な肥厚を子宮内膜増殖症といいます。定期的に、厚くなった内膜は不完全かつ不規則に剥がれて出血を起こします。出血は不規則で長く続き、ときに大量になり、何日も続くことがあります。この種類の異常子宮出血は無排卵性子宮出血と呼ばれます。
一方、排卵はあるものの、プロゲステロンの分泌が通常より長く続くこともあります。その結果、厚くなった子宮内膜が不規則に剥がれ落ちます。この種類の異常子宮出血のパターンは排卵障害と呼ばれます(排卵がない、または排卵が毎月起こらない)。肥満の女性では、エストロゲンの血中濃度が高い場合に、この種の出血が起こることがあります。その結果、月経のない期間と出血が長引く期間が交互に続きます。
内膜が異常に厚くなって不規則に剥がれ落ちるというサイクルが続くと、前がん状態の細胞が発生する可能性があり、若い女性においてさえも子宮内膜がんのリスクが上昇します。
異常子宮出血は、閉経期(最終月経の前の数年間と最終月経の後の1年間のこと)の初期の徴候であることがしばしばあります。
異常子宮出血の原因
異常出血の原因は、構造上の異常によるもの(構造的な原因)と、別の問題によるもの(非構造的な原因)に分類されます。
構造的な原因としては以下のものがあります。
非構造的な原因としては以下のものがあります。
排卵障害
避妊法や特定の薬剤の使用
排卵障害による異常子宮出血(AUB-O)は、非構造的な異常出血の最も一般的な原因で、全体で見ても最も一般的な原因です。排卵障害の原因としては以下のものがあります。
早発閉経(原発性卵巣機能不全)
極度の身体的または精神的ストレス
栄養不良
ときには原因が分からない場合もあります。
異常子宮出血の症状
異常子宮出血がみられる女性の出血は、以下の点で典型的な月経と異なる場合があります。
出血の回数が多い(間隔が24日より短い)
持続する日数にはばらつきがある
8日間以上続く
出血量が多い(出血が90ミリリットルを超える)
月経と月経の間に起こる(月経間期出血)
症状は出血の原因によって異なります。月経周期が規則的な状態で異常な出血が起こる場合もあれば、出血が予想外の時期に起こる場合もあります。乳房の圧痛、筋けいれん、腹部膨満などの月経に関連する症状がみられる女性もいますが、多くの女性では症状がみられません。
出血が持続すると、鉄欠乏症や場合によっては貧血を起こすことがあります。
不妊症になるかどうかは、出血の原因によります。
異常子宮出血の診断
出血パターンの説明(現在の出血と月経周期の問題が始まる前)
妊娠検査
血算
ホルモンの測定
骨盤画像検査、通常は骨盤内超音波検査
ときに子宮内膜生検や子宮鏡検査などの侵襲的検査
出血が不規則であるか、または出血量が多い場合には、異常子宮出血が疑われます。
出血が異常であることを確認するために、医師はまず、出血のパターン(月経歴)について問診をします。
原因を特定するために、他の症状や考えられる原因(薬剤の使用、その他の病気、子宮筋腫、妊娠中の合併症の有無など)について問診をします。
身体診察も行います。
可能性のある異常子宮出血の原因について調べるための検査
医師は妊娠検査を行いますが、これは青年期の女子や閉経を迎えようとしている女性も例外ではありません。
問診と身体診察の結果から考えられる性器出血の原因について調べるために、その他の検査を行うこともあります。例えば、失血量を推定して貧血(鉄欠乏性貧血を含みます)の有無を調べるため、通常は血算を行います。また、血液が凝固する速さを測定する血液検査を行うこともあります(血液凝固障害がないか調べるために)。
典型的に、血液検査でホルモン濃度を測定します(多嚢胞性卵巣症候群、甲状腺の病気、下垂体の病気、性器出血の一般的な原因であるその他の病気を確認するため)。測定するホルモンには、エストロゲンやプロゲステロン(月経周期のコントロールを助ける)、甲状腺ホルモン、プロラクチンなどの女性ホルモンがあります。
しばらく受けていない女性には、子宮頸部細胞診やヒトパピローマウイルス(HPV)検査など、子宮頸がんのスクリーニング検査を行うことがあります。
医師は画像検査や侵襲的検査を行うこともあります。例えば、血液検査や子宮頸部細胞診の結果が異常であったり、出血の原因を特定できなかったりした場合には、生検を行うことがあります。
画像検査と侵襲的検査
子宮内超音波検査(下腹部を通すハンドヘルド機器と、通常次に腟から挿入して生殖器の内臓[子宮頸部、子宮、管、卵巣]を見るための小さなハンドヘルド機器を使用して行う)は通常、子宮内の増殖を調べ、子宮内膜(子宮内膜)が厚くなっているかどうかを調べるために行われます。子宮内膜の肥厚は、ポリープ、筋腫、ホルモンの変化などの、がんではない良性疾患から生じている可能性があります。(異常子宮出血の原因となるホルモンの変化によりこのような子宮内膜の肥厚が生じると、前がん状態の細胞が発生し、子宮内膜がんのリスクが上昇する可能性があります。)
女性が以下のいずれかに当てはまる場合、経腟超音波検査が行われます(異常子宮出血のある女性のほとんどが該当します)。
年齢にかかわらず、肥満、糖尿病、高血圧、多嚢胞性卵巣症候群、過剰な体毛(男性型多毛症)などの子宮内膜がんの危険因子がある
45歳以上の女性で、閉経していない
閉経後の女性
ホルモンによる治療を行っても出血が続く
内診の際に十分に診察できない骨盤内臓器または生殖器がある
身体診察の結果に基づき卵巣や子宮の異常が示唆される
骨盤内超音波検査では、子宮内膜の肥厚、子宮内膜ポリープ、筋腫、その他の子宮腫瘤、腺筋症(子宮壁への子宮内膜組織の増殖)、卵巣または卵管の異常などの構造的異常を検出できます。以下のいずれかまたは両方の検査を行うことがあります。
ソノヒステログラフィー(子宮内に生理食塩水を注入してから行う超音波検査)
子宮鏡検査(腟から観察用の管状の機器を挿入して子宮を観察する)
女性が以下のいずれかに当てはまる場合、通常、子宮内膜生検も行い、前がん病変およびがんの有無を調べます。
45歳以上の女性で、閉経していない
年齢が45歳未満で、子宮内膜がんの危険因子が複数ある
治療を受けても、出血が持続したり再発したりする
子宮がんの危険因子を有するまたは骨盤内超音波検査で異常(子宮内膜の肥厚)のある閉経後女性
骨盤超音波検査で結論が出ない
異常子宮出血の治療
出血をコントロールする薬剤
ときに子宮内膜増殖症に対するプロゲスチン療法
出血が続く場合は、出血をコントロールするための処置
持続性出血(患者の好みや他の治療選択肢による)または子宮内膜増殖症(子宮内膜が肥厚しているが、細胞は正常)またはがんに対する子宮摘出術(子宮の摘出)
鉄欠乏性貧血がみられる場合は、鉄剤
異常子宮出血の治療は以下の要因によって異なります。
患者の年齢
出血量の多さ
子宮内膜の肥厚の有無
妊娠の希望の有無
治療は出血のコントロールに焦点を置き、必要に応じて子宮内膜がんの予防を行います。
薬物治療
出血は薬剤でコントロールできますが、使用する薬剤はホルモン剤であることも、そうでないこともあります。
ホルモン剤以外の薬剤がしばしば最初に使用されます(特に妊娠を望む女性や、ホルモン療法の副作用を避けたい女性、規則的に重い出血がある女性の場合)。具体的には以下の薬剤があります。
非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)
トラネキサム酸
妊娠を望まない女性や閉経が近づいているか閉経したばかりの女性(この期間は閉経期と呼ばれます)では、しばしばホルモン療法(経口避妊薬など)が最初に試されます。
子宮内膜が厚くなっていても細胞が正常である場合(子宮内膜増殖症)、出血のコントロールにホルモンを使うことがあります。
エストロゲンとプロゲスチンを含有する経口避妊薬(混合型経口避妊薬)がしばしば使用されます。経口避妊薬により、出血のコントロールに加えて、出血に伴うことのある筋けいれんを軽減できます。子宮内膜がん(および卵巣がん)のリスクも低くなります。出血は通常は12~24時間以内に止まります。ときに出血のコントロールのために高用量が必要になります。出血が止まった後、出血の再発を予防するために、少なくとも3カ月間にわたって低用量の経口避妊薬が処方されることがあります。
混合型経口避妊薬に入っているものを含めエストロゲンを服用すべきではない女性もいます。具体的には以下のような女性です。
心臓もしくは血管の病気の重要な危険因子または血栓の既往がある女性
過去1カ月以内に出産した女性
以下の場合には、プロゲスチンまたはプロゲステロン(体内で作られるホルモンに似ている)を単独で投与することがあります。
女性がエストロゲンを服用すべきではない(すなわち、エストロゲンの禁忌がある)。
エストロゲンによる治療に効果がないか、耐えられない。
女性がエストロゲンの服用を望まない。
プロゲスチンとプロゲステロンは月に21日間、経口投与します。これらのホルモンのこの投与方法は、妊娠を予防しません。そのため、女性が妊娠を希望していない場合は、子宮内避妊器具(IUD)やメドロキシプロゲステロンの数カ月毎の注射など、別の避妊法を用いる必要があります。
異常子宮出血の治療に使用されることがあるその他の薬剤には、ダナゾール(合成男性ホルモン、あるいはアンドロゲン)やゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト(本来体内で作られるホルモンを人工的に合成したもの、ときに筋腫による出血の治療に使用される)などがあります。しかし、これらの薬剤には重大な副作用があるため、使用期間が数カ月までに制限されます。ダナゾールは多くの副作用があるため、あまり使用されません。
重度の月経出血が筋腫によるものと考えられる場合は、他の経口薬(ホルモンを含有するものもあります)を使用することがあります(筋腫の治療も参照)。
妊娠を考えている女性で出血量がそれほど多くない場合には、ホルモン剤の代わりにクロミフェン(排卵誘発薬)を内服することもあります。クロミフェンには排卵を促す作用があります。
鉄欠乏性貧血がみられるか、貧血を伴わない鉄欠乏症の症状がみられる場合は、鉄剤が通常は経口で使用されますが、ときに静脈内投与が必要になることもあります。慢性出血により鉄が不足している場合、食事による通常の鉄分摂取だけで補うことは困難で、体内には極めて少量の鉄しか貯蔵されません。そのため、鉄剤を服用して失った鉄を補給する必要があります。
手術
ホルモン剤による治療を行っても子宮内膜が厚いままであるか出血が続いている場合は通常、手術室で子宮鏡検査を行って子宮内部を調べます。続いて子宮内容除去術を行い、子宮鏡検査でみられる腫瘤を取り除きます。子宮内容除去術では、子宮内膜の組織を掻き取って除去します。この処置により出血量が軽減します。しかし、一部の女性では子宮内膜の瘢痕化(アッシャーマン症候群)が生じ、瘢痕化によって月経が止まったり(無月経)、子宮内膜の生検が困難になったりすることがあります。
子宮内容除去術の後も出血が続く場合には、子宮内膜を破壊または除去する処置(子宮内膜アブレーション)を行うと、多くの場合、出血のコントロールに役立ちます。この処置には焼灼、凍結、またはその他の方法を用います。大半の女性で助けになります。子宮内膜アブレーションは子宮内膜の瘢痕化および出血の減少を引き起こしますが、妊娠の妨げにはなりません。
子宮筋腫が原因の場合は、カテーテル(細くて柔軟なチューブ)を通して子宮筋腫に向かう動脈の中に微細な合成粒子を注入して、子宮筋腫への血流を遮断することがあります(動脈塞栓術または子宮筋腫塞栓術と呼ばれます)。あるいは、へそのすぐ下の小さく切開したところに挿入したカテーテルを通して(腹腔鏡検査)、腟に挿入したカテーテルを通して(子宮鏡検査)、または腹部のより大きく切開したところを通して、子宮筋腫を除去することもあります。子宮鏡検査や腹腔鏡検査の際に、高周波子宮筋腫アブレーションを用いて、子宮筋腫を除去するのではなく破壊することができます。また、磁気共鳴ガイド下集束超音波手術は、音波を使用して子宮筋腫を破壊します。
他の治療法を試した後も出血が続き、量が多い場合、医師は子宮摘出術を勧める可能性があります。
急性子宮出血の管理
まれに、非常に重い出血に緊急の処置が必要になります。具体的には静脈からの水分補給(輸液)や輸血などを行います。
ときに、先端にしぼんだ風船(バルーン)が付いたカテーテルを腟から子宮内に挿入し、バルーンを膨らませて出血している血管を圧迫することで、出血を止めることもあります。
非常にまれですが、エストロゲンを静脈から投与します。この治療法は血栓の発生リスクを高めるため、投与回数が4回までに制限されています。その直後から数カ月にわたり、出血がコントロールされるまで、混合型経口避妊薬を服用します。
保存的処置で出血をコントロールできない場合は、子宮摘出術が選択肢の1つとなりますが、特に将来妊娠を希望する女性では、これを避けるようあらゆる努力が払われます。



