閉経

執筆者:JoAnn V. Pinkerton, MD, University of Virginia Health System
レビュー/改訂 修正済み 2023年 7月
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やさしくわかる病気事典

閉経とは、月経と排卵が起きなくなり、妊よう性が永久になくなることです。

  • 閉経前後の数年間は、エストロゲン濃度が大きく変動して月経が不規則になり、ホットフラッシュ(ほてり)などの症状が起こります。

  • 女性に1年間月経がなければ閉経と診断され、通常は確認のための血液検査は必要ありません。

  • ホルモン療法やその他の薬剤による対策で、症状を和らげることができます。

  • 閉経後は骨密度が低下します。

生殖可能年齢の間は、月経は通常1カ月に1回くらいのペースで起こり、周期の中頃(前回の月経の最初の日から約2週間後)に卵巣から卵子が放出されます(排卵)。この周期が規則的であるためには、卵巣から十分なホルモン(エストロゲンプロゲステロン)が分泌される必要があります。

閉経は、加齢により卵巣からのエストロゲンプロゲステロンの分泌が停止することで起こります。閉経前の数年間は、エストロゲンプロゲステロンの分泌が減少し始め、月経と排卵の頻度が変動します。最終的には月経と排卵が永久に停止し、以降は自然な妊娠はできなくなります。少なくとも1年間月経が起こらなかった後で初めて、最後の月経であったことが確定できます。(妊娠を望まない場合は最終月経の後も1年間は避妊を行うべきです。)

閉経前と閉経後の女性の生殖器系の加齢は、以下のように段階的に説明されます。

  • 生殖期には、女性の最初の月経から閉経移行期までの期間が含まれます。

  • 閉経移行期は、最終月経に至るまでの一定の期間です。月経のパターンに変化がみられるのが特徴です。閉経移行期は4~8年間続きます。喫煙習慣のある女性や、月経が始まったときの年齢が若い女性では、より長く続きます。平均すると、白人女性よりも黒人女性の方が閉経移行期が長いことが研究によって示されています。

  • 閉経期は、閉経移行期の一部で、最終月経前の数年間と最終月経後の1年間を指します。閉経期のうち最終月経までの年数には大きなばらつきがあります。閉経期には、エストロゲンおよびプロゲステロンの量が大きく変動し、最終的には著しく低下しますが、他のホルモン(テストステロンなど)の量は様々に変動します。それらのホルモンの変動によって、多くの女性が40代に経験する更年期症状が引き起こされると考えられています。

  • 閉経後とは、最後の月経以降の期間を指します。

米国の場合、閉経年齢の平均は約51歳です。しかし、閉経年齢には正常でも45歳(40歳の場合もある)から55歳以上までの幅がみられます。以下に該当する女性では、若い年齢で閉経が始まる可能性が比較的高くなります。

  • 喫煙習慣がある

  • 高地に住んでいる

  • 栄養不良である

  • 自己免疫疾患がある

40歳未満で起きた閉経は早発閉経とみなされます。早発閉経は、早発卵巣不全または原発性卵巣機能不全とも呼ばれます。

知っていますか?

  • 閉経の症状(更年期症状)は、月経が停止する数年前から始まります。

  • 米国での閉経年齢の平均は約51歳ですが、40~55歳以上までに閉経を迎えれば正常とみなされます。

閉経の症状

閉経期の症状

閉経期にみられる症状は軽症、中等症、重症の場合もあれば、何の症状もみられない場合もあります。症状は6カ月から約10年間、ときにそれより長く続きます。

ときに、閉経によるものと思われる症状が他の医学的問題によって引き起こされたものである場合もあります。症状が現れた時期が閉経期と一致しない場合や、更年期症状に対する対策を講じても症状が改善しない場合は、ほかに考えられる原因について医療専門職に相談するべきです。

月経不順が閉経期の最初の症状になる場合もあります。典型的には月経が頻回になった後減少しますが、どんなパターンも起こりえます。月経周期が短くなったり長くなったり、軽くなったり重くなったりします。月経が数カ月途絶え、その後また規則的になることもあります。なかには、閉経まで規則的な周期が維持される女性もいます。

75~85%の女性がホットフラッシュを経験します。ホットフラッシュは通常、月経が止まる前に始まります。平均で7年半近く続きますが、10年を超えて続くこともあります。平均すると、黒人女性では、アジア系、ヒスパニック系、白人の女性よりホットフラッシュがよくみられ、その期間も長いことが研究で示されています。通常、時間とともにホットフラッシュは軽くなり、回数も少なくなっていきます。

ホットフラッシュの原因は不明ですが、体温調節を担っている脳の部分(視床下部)で自動的な体温調節機構がリセットされることが関係している可能性があります。そのため、ごくわずかな体温の上昇でも暑く感じることがあります。ホットフラッシュはホルモンの変動に関係している可能性があります。

ホットフラッシュの際、皮膚表面に近い血管が拡張します。その結果血流が増えるため、特に頭頸部などで皮膚の赤みが増して温かくなります(紅潮)。本人は暖かい、または暑いと感じ、ひどく汗をかきます。ホットフラッシュは「flash(ぴかっと光る)」と綴られますが、顔が紅潮することから、「flush(紅くなる)」と綴られることもあります。

1回のホットフラッシュは30秒~5分程度続き、その後に悪寒を感じることもあります。寝汗は、夜間に起こるホットフラッシュの症状です。

閉経期すなわち閉経の前後には、その他の症状もみられます。この時期に起こるホルモン量の変化が、以下に寄与する可能性があります。

  • 乳房の圧痛

  • 気分のかわりやすさ

  • 月経の前後あるいは月経中に起こる片頭痛(月経時片頭痛)の悪化

抑うつ、易怒性(いらだち)、不安、神経過敏、睡眠障害(不眠など)、集中力低下、頭痛、疲労なども起こることがあります。多くの女性が閉経期にこれらの症状を経験します。これらの症状は、他の要因(加齢それ自体や疾患など)が関係している場合もありますが、閉経期にみられるホルモンの変動やエストロゲンの減少によってしばしば悪化します。

寝汗は睡眠を妨げ、疲労、易怒性(いらだち)、集中力の低下、気分の変化を助長することがあります。この例では、症状が間接的に(寝汗を介して)閉経と関連しているかもしれません。しかし更年期では、ホットフラッシュがない女性にも睡眠障害がよくみられます。中年期のストレス(青年期の子どもについての悩み、加齢への不安、高齢の親の世話、夫婦関係の変化など)も睡眠障害に寄与している可能性があります。そのため、疲労、易怒性(いらだち)、集中力の低下、気分の変化と閉経との関連は、それほど明確ではありません。

閉経後の症状

閉経期の様々な症状は不快なものですが、その多くは閉経以降には頻度も強さも低下していきます。しかし、エストロゲン濃度の低下は骨粗しょう症のリスクを高めるなど、健康によくない影響を与え続けます。このような変化は、予防策をとらないと悪化することもあります。以下のような影響が現れることがあります。

  • 生殖器:腟の粘膜が薄くなって乾燥し、弾力を失っていきます(この状態を腟萎縮といいます)。これらの変化により性交時に痛みが生じることがあります。女性生殖器の他の部分(小陰唇、陰核、子宮、卵巣など)もサイズが小さくなります。加齢とともに性欲の低下もよくみられます。大半の女性は変わらずオルガズムを得ることができますが、オルガズムに達するのに時間がかかるようになったり、オルガズムをあまり強く感じなくなったりする女性もいます。

  • 尿路:尿道の粘膜が薄くなり、尿道が短くなります。これらの変化により微生物が体内に入りやすくなるため、より頻繁に尿路感染症を起こすようになる女性もいます。尿路感染症の女性は、排尿時に灼熱感を覚えます。閉経後には、ときに急な尿意を覚えること(尿意切迫)があり、ときに切迫性尿失禁(少量または大量の尿が漏れること)につながります。尿失禁は加齢とともに多くなり、重度になります。しかし、閉経が失禁にどれくらい寄与するかはよく分かっていません。出産、肥満、ホルモン療法の影響など、他の多くの要因も失禁に関与する場合があります。

  • 皮膚:エストロゲンの減少と加齢そのものが原因となり、皮膚を強くするタンパク質であるコラーゲンや、皮膚に弾力を与えるタンパク質であるエラスチンの量も減少します。このため皮膚が薄くなって乾燥し、弾力を失い、傷つきやすくなります。

  • 骨:エストロゲンの減少はしばしば骨密度の低下につながり、ときに骨粗しょう症になることがあります。これは、エストロゲンに骨量を維持する働きがあるからです。骨の密度が低下して弱くなると、骨折を起こしやすくなります。閉経後の最初の5年間には、骨密度が急速に低下します。その後は男性に起こるのとほぼ同じ速度(年に約1~3%)で減少していきます。

  • コレステロール値:女性の閉経後、低比重リポタンパク質(LDLまたは悪玉)コレステロールの血中濃度が上昇します。高比重リポタンパク質(HDLまたは善玉)コレステロールの血中濃度は閉経前とほぼ同じにとどまります。閉経後の女性に動脈硬化が多く、そのため冠動脈疾患が多いのも、このようなLDLの上昇が一因ではないかといわれています。しかし、このような変化が加齢によって起こるのか、あるいは閉経後のエストロゲン濃度の低下によって起こるのかは不明です。閉経まではエストロゲンの濃度が高く、冠動脈疾患から保護されていると考えられています。

閉経後の一部の女性は口腔灼熱症候群を発症します。

閉経関連泌尿生殖器症候群(genitourinary syndrome of menopause)は、閉経によって引き起こされる腟や尿路の症状をより正確に指し示す比較的新しい用語です。これらの症状には、腟の乾燥、性交時の痛み、尿意切迫感、尿路感染症などがあります。

知っていますか?

  • 閉経関連泌尿生殖器症候群とは、腟、外陰部、尿路に影響を及ぼす複数の更年期症状(腟の乾燥、性交時の痛み、尿意切迫、尿路感染症など)を表す比較的新しい用語です。

閉経の診断

  • 最近の月経周期

  • まれに、ホルモンを測定する血液検査

大半の女性では、月経が丸1年間みられなかった時点で閉経と診断することができます。このため、臨床検査は通常必要になりません。

閉経の時期は年齢に基づいて以下のように説明されます。

  • 早発閉経:39歳以下

  • 早期閉経:40~45歳

  • 閉経(通常の年齢範囲):46歳以上

45歳未満で閉経がみられた場合や、月経周期が明確でない場合(例えば、月経が数カ月みられなかった後に出血が起こる)は、月経周期を乱している病気がないか調べるための検査を行うことがあります。閉経を確認するのに血液検査が必要な場合は、卵巣を刺激してエストロゲンおよびプロゲステロンを分泌させるホルモンである卵胞刺激ホルモン(FSH)の血中濃度を測定します。

医師はときに、腟に典型的な変化がないか確認して閉経の診断の裏付けとするために内診を行ったり、不快な症状(腟の乾燥、性交時の痛みなど)がある場合に評価の一環として内診を行ったりすることもあります。

閉経の治療

  • 認知行動療法

  • 臨床催眠法

  • 非ホルモン薬

  • ホルモン療法

閉経期に何が起こるか理解しておくと、症状への対処に役立ちます。医師や閉経を経験した女性と話をすることが役に立つこともあります。

閉経の治療では、ホットフラッシュ、睡眠の問題、気分変化、腟の乾燥などの症状を軽減することに焦点が置かれます。

ホルモン療法以外の効果的な対策には、以下のものがあります。

  • ホットフラッシュの軽減を目的として、資格をもつ医療専門職による催眠療法

  • 認知行動療法

認知行動療法には、閉経移行期や閉経期に利用できるように改変されたものがあります。女性がホットフラッシュや寝汗に対処するのに役立つ可能性があります。

そのような方法で効果がみられない場合は、ホルモン療法(エストロゲン、プロゲストーゲン、またはその併用など)が助けになることがあります。プロゲストーゲンは、プロゲステロン(女性ホルモン)のうち、人工的に合成されたものと自然由来のもの両方を指します。別の用語であるプロゲスチンは、人工的に合成されたもののみを指します。またホルモン製剤でない薬剤(非ホルモン薬)として、2種類の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬とセロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)や、ニューロキニン受容体拮抗薬と呼ばれる新しい薬剤、過活動膀胱の治療薬であるオキシブチニン、抗てんかん薬であるガバペンチンなど、症状を軽減する薬剤もあります。

閉経後女性が以下の基準を満たす場合は、更年期症状の治療に加えて、骨粗しょう症のスクリーニングも受けるべきです。

  • 骨折のリスクが高い(例えば、骨粗しょう症の家族歴がある女性)

  • 摂食症の既往、BMI(ボディマスインデックス)の低値、コルチコステロイドの慢性使用、胃バイパス術クローン病吸収不良症候群、脆弱性骨折の既往、またはその他の危険因子がある

  • 65歳以上

一般的な対策

一部の女性では、冷却(例えば、扇風機の使用、薄着)、誘因(アルコール、香辛料の効いた食品など)の回避、食習慣の変更といった一般的な対策が役に立つことがあります。マインドフルネス、運動、またはヨガは、睡眠や全身的な健康感に役立つ可能性があります。しかし、これらの一般的な対策については、いずれも研究結果が一貫しておらず、効果が証明されていないため、閉経の専門家の多くはこれらを推奨していません。

睡眠障害の対処には、就寝前および寝汗で目が覚めたときに、心を落ち着けるための決まった行動をとるようにします。適切な睡眠習慣を身につけることや、運動することも睡眠の改善に役立ちます。

膀胱のコントロールケーゲル体操で改善することがあります。ケーゲル体操では、尿を途中で止めるときのように骨盤部の筋肉を引き締めます。骨盤部の筋肉のコントロールの習得に役立てるため、バイオフィードバック法の利用について指導されることもあります。バイオフィードバック法は、無意識に進行する体内の生物学的プロセスを意識下に置くことを試みる方法です。測定機器を用いて対象のプロセスに関する情報を収集して、それを本人が意識できる形で提示します。そのほかに役立つ可能性のある対策には以下のものがあります。

  • 特定の時間の水分摂取を制限する(例えば、就寝前の3~4時間や外出前は摂取を控える)。

  • 膀胱を刺激する食品(カフェイン含有飲料、香辛料の効いた食品や塩辛い食品など)の摂取を控える

腟の乾燥が不快であったり、性交時の痛みの原因になっていたりする場合は、市販されている腟用の潤滑剤が役立つ場合があります。一部の女性には、腟の保湿剤を毎日または週に数回の頻度で塗布するのが助けになります。性的に活動的であり続けることや、自慰を行うことが、腟や周囲の組織の血流を刺激して組織の柔軟性を保つのに役立ちます。

非ホルモン薬

閉経に伴う症状を軽減するのに役立つ薬剤がいくつかあります。

米国食品医薬品局(FDA)は、ホットフラッシュの治療薬として、パロキセチン(抗うつ薬)とフェゾリネタント(fezolinetant)(ニューロキニン受容体拮抗薬)の2つを承認しています。その他の抗うつ薬(デスベンラファキシン、フルオキセチン、セルトラリン、ベンラファキシンなど)や過活動膀胱の治療に使用される薬剤(オキシブチニン)は、ホットフラッシュの軽減にいくらか効果があります。抗うつ薬は、抑うつ、不安、易怒性(いらだち)にも効果があります。てんかんや慢性の痛みの治療に使用されるガバペンチンも助けになることがあります。しかし、これら薬剤のどれよりもホルモン療法の方が効果的です。

不眠を軽減するために、ときに睡眠補助薬が勧められます。

ハーブサプリメントまたは栄養補助食品

ホットフラッシュ、易怒性(いらだち)、および気分変化を軽減する目的でハーブサプリメントや栄養補助食品を摂取する女性もいて、具体的には大豆製品、大豆代謝物のエクオール、ブラックコホシュを始めとする薬用ハーブ(ドンクアイ[当帰]、イブニングプリムローズ[月見草]、薬用ニンジン[高麗ニンジン]など)、カンナビノイドなどがあります。しかし、これらの一般的な対策については、いずれも研究結果が一貫しておらず、効果が証明されていないため、閉経の専門家の多くはこれらを推奨していませんまた、このような薬は処方薬のような規制の対象になっていないため、安全性、有効性、および成分について正確かつ完全な情報を報告することを求めた規則もありません(サプリメントの概要の安全性と有効性を参照)。

有害になりうる栄養補助食品もあります(例えばカヴァ)。さらに、一部のサプリメントは、ほかの薬剤と相互作用を起こしたり、特定の病気を悪化させたりする可能性もあります。

標準的なホルモン療法に対する懸念から、ヤムイモや大豆などの植物に由来するホルモンの使用に関心が集まっています。それらのホルモンは体内で作られるホルモンと分子構造がほぼ同じで、バイオアイデンティカルホルモンと呼ばれています。標準的なホルモン療法で使用されるホルモンの多くは、いわゆる植物由来のバイオアイデンティカルホルモンです。標準的なホルモン療法で使用されるホルモン製剤は、試験を実施した上で承認されたもので、その使用は綿密にモニタリングされていることから、閉経の専門家は、それらのホルモン製剤を使用することを推奨しています。

ときに、薬剤師が医療専門職の処方せんに従って、個々の患者に合わせたホルモン製剤を調合することもあります。これはバイオアイデンティカルホルモンと呼ばれています。その製造には十分な規制が設けられていません。そのため、用量、組合せ、剤形が異なる製剤が多く存在し、それぞれの製品で純度や力価にばらつきがあります。バイオアイデンティカルホルモンは、しばしば標準的なホルモン療法の代替品として市販され、ときに標準的なホルモン療法より優れた安全な治療法であると主張されていることもあります。しかし、調合された製品の方が安全で、効果が高いという科学的根拠はなく、標準的なホルモン療法と同程度の効果があるかどうかすら分かっていません。ときに、バイオアイデンティカルホルモン製品は標準的なホルモンと同じリスクをもつという説明を受けていない女性もいます。

このような製品を用いたホルモン療法を使用しようと考えている人は、まず医師と話し合うことが勧められます。

閉経に対するホルモン療法

ホルモン療法を行えば、ホットフラッシュや寝汗、腟の乾燥など、中等度から重度の更年期症状を軽減することができ、一部の女性では骨粗しょう症を予防または治療できます。しかし、ホルモン療法は特定の重篤な病気の発生リスクを高める可能性があります。

閉経に対するホルモン療法は、症状を軽減することによって多くの女性の生活の質を改善します。しかし、更年期症状がみられない場合は、ホルモン療法によって全体的な生活の質が改善するわけではないため、推奨されません。ホルモン療法を行うべきかどうかは、個々の状態に応じて、患者と医師双方の判断で決定する必要があります。薬剤の使用を開始する前に、ホルモン療法のリスクと便益について主治医に尋ねるべきです。

多くの女性ではリスクの方が潜在的な便益を上回るため、ホルモン療法は推奨されません。しかし、医学的状態や危険因子によっては、潜在的な便益の方がリスクを上回る女性もいます。

不快な更年期症状がある健康な女性で、60歳未満であるか、過去10年以内に閉経と診断されていた場合には、ホルモン療法の潜在的な便益が潜在的な有害性を上回る可能性が最も高くなります。

通常、女性が以下に該当する場合には、ホルモン療法の開始は推奨されません。

  • 60歳以上である。

  • 閉経と診断されてから10~20年以上経過している。

このような女性では、冠動脈疾患脳卒中脚の血栓肺の血栓、および認知症のリスクがより高くなっています。

ホルモン療法を用いる場合、症状をコントロールできる最低の量で、最短の期間だけホルモン剤が処方されます。

ホルモン療法には以下が含まれることがあります。

  • エストロゲン

  • プロゲストーゲン(プロゲステロン、酢酸メドロキシプロゲステロンなど)

  • その両方

プロゲストーゲンは、体内で作られる女性ホルモンであるプロゲステロンに似ています。

ホットフラッシュ、気分変化、睡眠の異常などの全身的な更年期症状がある女性には、全身的な治療として通常量のエストロゲンおよびプロゲストーゲンが投与されます。症状が腟または尿路にしか及んでいない場合は、通常はその部分の症状のみに対する治療として腟剤が投与されます。

大半の女性には、エストロゲンとプロゲストーゲンの両方が投与されます(併用ホルモン療法)。エストロゲン単独の投与は、子宮摘出術(子宮を切除する手術)を受けた女性のみが対象になりますが、これはプロゲストーゲンを併用せずにエストロゲンを投与すると、子宮内膜がんのリスクが高くなるためです。プロゲストーゲンはこのがんの予防に役立ちます。例外として、非常に低用量のエストロゲン腟内投与療法(閉経関連泌尿生殖器症候群に対して使用します)があり、これはプロゲストーゲンを併用する必要がありません。子宮がある女性に対する別の選択肢として、結合型エストロゲンとバゼドキシフェンの配合剤があります。

骨量減少または骨折のリスクがある女性では、以下の場合にホルモン療法が推奨されることがあります。

  • 60歳未満である。

  • 閉経と診断されてからの経過期間が10年未満である。

  • 骨量減少および骨折を予防するための他の薬剤(ビスホスホネート系薬剤など)が使用できない。

こういった女性では、ホルモン療法により骨量減少および骨折のリスクが抑えられます。

エストロゲンの単独療法とプロゲストーゲンとの併用療法:潜在的な便益とリスク

エストロゲンは、次のような数種類の症状の軽減に役立ちます。

  • ホットフラッシュ:エストロゲンはホットフラッシュに最も効果的な治療法です。

  • 腟組織の乾燥と萎縮:エストロゲンは腟の乾燥を予防または治療することができ、性交時に痛みを感じる女性にも非常に役立つことがあります。問題がこれらの組織の乾燥と萎縮だけである女性には、医師は腟に挿入するタイプのエストロゲンを勧めることがあります。具体的には、低用量のエストロゲン錠剤、低用量のエストロゲンリング、低用量のエストロゲンクリーム、DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)坐薬などがあります。低用量のエストロゲンを使用する場合、子宮がある女性でもプロゲストーゲンを併用する必要がありません。高用量のエストロゲンの場合には、子宮のある女性ではプロゲストーゲンを併用する必要があります。

  • 頻繁な尿路感染症または尿意切迫感:腟に挿入するタイプのエストロゲン(クリーム、錠剤、またはリング)がこれらの症状の解消に役立ちます。

  • 骨粗しょう症エストロゲンには、プロゲストーゲン併用の有無にかかわらず、骨粗しょう症を予防したり、進行を遅らせたりする効果があります。ただし、骨粗しょう症の予防だけを目的にホルモン療法を行うことは通常、推奨されません。骨粗しょう症の予防としては、大半の女性がビスホスホネート系薬剤またはその他の薬剤を使用することができます(ただし、これらの薬剤には独自のリスクがあります)。ビスホスホネート系薬剤は、骨を再形成する際に体が分解する骨の量を減らすことによって骨量を増加させます。常に骨を分解、再形成し続けることで、体は骨にかかる負担の変化に対応しています。加齢に伴い、再形成されるよりも分解される骨の方が多くなっていきます。

エストロゲンは通常、プロゲストーゲンと併用されます。プロゲストーゲンと併用せずにエストロゲンを使用すると、子宮がある(子宮摘出術を受けたことがない)女性では子宮内膜がんのリスクが高まります。発がんのリスクはエストロゲンの用量が高いほど、また使用期間が長くなるほど高くなります。プロゲストーゲンとエストロゲンを併用すると、子宮内膜がんの発生リスクへの影響はほとんど消失し、ホルモン療法を受けていない女性よりもむしろリスクが低くなります。それでも医師は、どの種類のホルモン療法を受けている女性でも、性器出血がみられた場合には、子宮内膜がんの可能性を否定するための評価を行います。

エストロゲンは以下のリスクを高めます。

  • 乳がん:エストロゲンをプロゲストーゲンと併用し始めて3~5年後に乳がんのリスクがごくわずかに上昇し始めます。ただし、閉経期が始まった時点でエストロゲンを単独で使用し始めると、リスクは10年後まで、あるいは15年後でさえ上昇し始めない可能性があります。

  • 脳卒中

  • 脚の血栓(深部静脈血栓症)または肺の血栓(肺塞栓症

  • 胆嚢疾患(胆石など)

  • 尿失禁:通常量のエストロゲンは尿失禁のリスクを高め、すでに失禁がある場合は悪化させます。しかし、尿失禁は低用量のエストロゲン腟内投与療法で改善します。

ホルモン療法を受けることで上記の病気のリスクは高まりますが、閉経期または閉経期直後に短期間ホルモン療法を受けた健康な女性であれば、それでもリスクの水準は低いです。これらの病気の大半は、加齢とともにリスクが上昇していき、特に閉経から10年以上が経過すると、ホルモン療法を受けているかどうかにかかわらずリスクが上昇します。65歳以上でホルモン療法を開始した女性では、エストロゲンとプロゲストーゲンの使用によって冠動脈疾患のリスクも高まります。

低用量のエストロゲンの使用では、ホルモン療法のリスクは低いと考えられています。腟に挿入するタイプのエストロゲンエストロゲンクリーム、エストロゲンを含有する腟錠やリングなど)は、その大半が錠剤や皮膚パッチ剤での全身投与と比べてはるかに用量が少ないです。1つの例外として、全身投与式の腟リングがあり、それらは全身的な更年期症状の治療に使用されます。

皮膚パッチ剤(経皮製剤)または腟リングで投与されたエストロゲンは、経口薬の場合よりも血栓、脳卒中、および胆嚢疾患(胆石など)の発生リスクが低いとみられています。

一般に、乳がん、冠動脈疾患、または脚の血栓症のある女性、脳卒中の既往のある女性、またはこれらの病気の危険因子のある女性は、エストロゲン療法を受けるべきではありません。

併用ホルモン療法は、以下のリスクを低下させます。

  • 骨粗しょう症

  • 大腸がん

プロゲストーゲン:便益とリスク

プロゲストーゲンにはいくつかの便益があります。

  • 子宮内膜がん:プロゲストーゲンは、子宮がありエストロゲンを服用している女性において子宮内膜がんを予防します。

  • ホットフラッシュ:高用量のプロゲストーゲンはホットフラッシュを軽減します。しかし、これらの薬剤はエストロゲンほど効果的ではありません。

  • エストロゲンよりも血栓のリスクが低い:プロゲストーゲンは、血栓形成のリスクが高く、エストロゲン療法を受けられない一部の女性に対する選択肢の1つです。

プロゲストーゲンによって以下のリスクが高くなります。

  • LDL(悪玉)コレステロールの血中濃度の上昇:プロゲストーゲンにはこの作用がある場合があります。ただし、微粒子化プロゲステロン(合成ではない天然プロゲステロン)では、合成プロゲスチンと比べてLDLの血中濃度に対する負の影響が少ないようです。

  • 脚および肺の血栓

プロゲストーゲン単独療法が他の病気のリスクに及ぼす影響は不明です。

副作用

エストロゲンおよびプロゲストーゲンを特に高用量で服用すると、吐き気、乳房の圧痛、頭痛、体液貯留、気分の変動といった副作用が起こることがあります。

ホルモン療法の形態

エストロゲンおよび/またはプロゲストーゲンの投与には、いくつかの方法があります。

  • エストロゲン、プロゲストーゲン、またはそれらの配合剤を内服(経口薬)

  • エストロゲンローション、スプレー、ジェルなど、皮膚に外用するもの(外用剤)

  • エストロゲンまたはエストロゲン‐プロゲストーゲン混合の皮膚パッチ(経皮製剤)

  • プロゲストーゲン放出子宮内避妊器具

  • エストロゲンのクリーム、腟に挿入する錠剤、リング、腟に挿入する坐薬(経腟剤)

経口錠の場合、エストロゲンおよびプロゲストーゲンをそれぞれ1つずつの錠剤または1錠の配合錠として服用します。一般的にはエストロゲンとプロゲストーゲンを毎日服用します。この用法では、治療開始から1年間またはそれ以上の期間にわたって不定期に性器出血が起こります。(ただし、出血が始まったり持続したりする場合は、主治医に連絡してさらに評価が必要かどうか確認すべきです。)あるいは、エストロゲンを毎日服用しながら、プロゲストーゲンを毎月12~14日間だけ併用します。この用法では多くの女性に、毎月プロゲストーゲンを服用した期間の後に性器出血が起こります。

エストロゲン経腟剤は腟に挿入して使用します。このタイプには以下のものがあります。

  • プラスチック製のアプリケーターを使用して挿入するクリーム

  • プラスチック製のアプリケーターを使用して、または使用せずに挿入する腟錠

  • エストロゲンを含有するリング

多くの製品があり、用量や含まれるエストロゲンの種類も様々です。クリームやリングは、含まれるエストロゲンが低用量である場合も高用量である場合もあります。経腟剤に高用量のエストロゲンが使用されている場合は、子宮内膜がんのリスクを抑えるために、プロゲストーゲンも投与します。通常、腟の症状には低用量のもので十分です。

腟の乾燥や萎縮などの症状には、エストロゲンの経腟剤が経口エストロゲンよりも効果的な場合があります。このような治療は、性交時の痛みの予防、尿意切迫の緩和、および膀胱の感染リスク低減に役立ちます。

エストロゲンローション、スプレー、ゲルは、皮膚につけて使用します。

エストロゲンまたはエストロゲンとプロゲストーゲン混合のパッチ剤も、皮膚に貼って使用します。

選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)

SERMは、ある面ではエストロゲンと同じ作用を示す一方、別の面ではエストロゲンと逆の作用を示します。ラロキシフェンは骨粗しょう症の治療や乳がんの予防に使用される薬剤です。オスペミフェン(ospemifene)は、腟の乾燥を軽減するために使用されます。

SERMを使用する女性では、ホットフラッシュが一時的に悪化することがあります。

バゼドキシフェンはエストロゲンとの配合錠として投与されるSERMで、このエストロゲンとバゼドキシフェンの配合錠はプロゲストーゲンと併用する必要がありません。バゼドキシフェンは、ホットフラッシュや腟萎縮の症状を軽減し、乳房の圧痛を和らげ、睡眠を改善し、骨量の減少を予防することができます。エストロゲンと同様に、この薬剤は脚や肺に血栓ができるリスクを高めますが、子宮内膜がんのリスクを抑えるとともに、乳房への影響はエストロゲンより少ない可能性があります。

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)

デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、副腎から分泌されるステロイドホルモンで、性ホルモン(エストロゲンとアンドロゲン)に変換されます。腟に挿入する坐薬として使用できます。DHEAは腟の乾燥などの腟萎縮の症状を和らげるようです。腟萎縮による性交時の痛みを軽減するためにも使用されます。

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