グラム陰性菌であるカンピロバクター属(Campylobacter)の細菌のいくつかの種(最も多いのはカンピロバクター・ジェジュニ[Campylobacter jejuni])は、消化管に感染し、下痢を引き起こすことがよくあります。
汚染された食品や飲料を摂取したり、感染した人や動物と接触したりすることにより感染が起こります。
感染すると、下痢、腹痛、発熱が起こります。
便のサンプルを検査して細菌を特定し、診断を確定します。
失われた水分を補給すれば十分な場合もありますが、重症の場合は抗菌薬の使用も必要になります。
(細菌の概要も参照のこと。)
カンピロバクター属(Campylobacter)の細菌は、一般的に家畜(牛、羊、豚、家禽)の消化管に存在しており、これらの動物の糞尿によって泉や河川の水が汚染されます。肉類(主に鶏肉)と加熱殺菌されていない牛乳も汚染されている場合があります。以下のような感染経路があります。
汚染された水(生水)、無殺菌の生の牛乳、加熱調理が不十分な肉類(通常は鶏肉)、または汚染された肉類を使用した台所で調理された食品を摂取した場合
汚染された食品や水と接触した場合(例えば、汚染された食品を扱うとき)
感染者との(便で汚染された食品や性的接触を介した)接触があった場合
感染した動物(子犬など)との接触があった場合
カンピロバクター属(Campylobacter)の細菌(通常はカンピロバクター・ジェジュニ [Campylobacter jejuni])は結腸の炎症(結腸炎)を引き起こし、その結果として発熱や下痢がみられます。これらの細菌は、米国内における感染性の下痢の原因であり、また食品や飲料水が汚染された国への渡航者に発生する感染性の下痢の一般的な原因となっています。
なかでもカンピロバクター・ジェジュニ(Campylobacter jejuni)は、健康な人や病気の人にかかわらず感染し、すべての年齢層で下痢を引き起こします。特に1~5歳の小児で最も多く発生すると考えられます。
カンピロバクター感染症の症状
カンピロバクター感染症の症状は、接触した2~5日後に始まり、約1週間続きます。カンピロバクター属の細菌による結腸炎の症状には、下痢、腹痛、けいれんがあり、重症化する場合があります。下痢は水様性であったり出血を伴ったりする場合があり、吐き気、嘔吐、頭痛、筋肉痛、38~40℃の発熱も起こることがあります。
合併症
カンピロバクター感染症の合併症には以下のものがあります。
菌血症(血流感染症)
一部の大腸炎患者では、一時的に菌血症が起こります。この感染症の初期にはまったく症状や合併症がみられません。しかし、少数の人、通常はHIV/AIDS、糖尿病、がんなどの免疫機能を低下させる病気がある人では、血流に感染が繰り返し起こるか、または持続します。この感染症は、長期間続く発熱または繰り返す発熱を引き起こします。
血流によって感染が他の臓器に広がり、以下のような別の症状がみられる場合もあります。
カンピロバクター属(Campylobacter)の細菌による結腸炎を起こした場合、約1000人に1人の割合でギラン・バレー症候群が発症します。これは、体が感染症と闘うために作る抗体が、神経をも攻撃してしまうことがあるために起こります。ギラン・バレー症候群は筋力低下と麻痺を引き起こします。ほとんどの場合は回復しますが、筋力が大きく低下します。呼吸困難となり、人工呼吸器の使用が必要となる場合があります。筋力低下は完全に元に戻るとは限りません。ギラン・バレー症候群を発症した人の約20~50%は、過去にカンピロバクター(Campylobacter)感染症にかかったことがあります。
下痢が治まってから数日から数週間後に、反応性関節炎が発症することがあります。通常この病気では、膝や他の関節に炎症や痛みが生じます。
眼の炎症(ぶどう膜炎)や尿道の炎症(排尿時に痛みが生じる)が起こることもあります。
カンピロバクター感染症の診断
便のサンプルの培養検査またはPCR検査
ときに、血液サンプルの培養検査
医師は便のサンプルを採取して、細菌を増殖させる(培養する)ために検査室に送ります。しかし、常に便の検査が行われるわけではありません。便の培養は完了までに数日間かかるうえ、医師は通常、下痢を引き起こした細菌の種類を知らなくても有効な治療を行うことができるためです。しかし、血性下痢や重篤であるように見える場合は、通常は便の検査を行います。細菌をより迅速に検出できるように、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法と呼ばれる便中の細菌の遺伝物質を特定する検査を用いることがあります。PCR法では、細菌のDNAの量を増やし、検出しやすくします。他の検査では、便中の細菌(抗原)を迅速に特定できることがあります。
細菌が特定された場合は、どの抗菌薬が有効かを確認するための検査(感受性試験)を実施します。
血流や臓器への感染が疑われる場合は、血液サンプルを採取して培養検査を行います。
カンピロバクター感染症の治療
特別な治療法は通常なし
ときにアジスロマイシンなどの抗菌薬
多くの場合では、特に治療をしなくても1週間程度で状態が改善します。
患者によっては、静脈を介して、または経口での水分補給が必要です。
高熱、血性または重度の下痢、または症状の悪化がみられる人や、免疫機能が低下している人は、アジスロマイシンを3日間内服する必要があります。シプロフロキサシンは代替の抗菌薬ですが、この抗菌薬に対する耐性をもつ細菌が増加しているため、必要な場合にのみ使用します。
血流やその他の臓器に感染した場合は、イミペネムやゲンタマイシンなどの抗菌薬を2~4週間投与する必要があります。最初に使用した抗菌薬は、感受性試験の結果に基づいて調整されることがあります。
さらなる情報
以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。
Centers for Disease Control and Prevention (CDC): カンピロバクター:集団発生や抗菌薬耐性を含めたカンピロバクター(Campylobacter)に関する情報を提供している



