静脈栄養

(静脈栄養法)

完全なレビュー: 2024年 9月 執筆者:Kris M. Mogensen, MS, RD-AP, Department of Nutrition, Brigham and Women's Hospital | Malcolm K. Robinson, MD, Harvard Medical School | 査読者Glenn D. Braunstein, MD, Cedars-Sinai Medical Center
最終更新日: 2024年 10月
v8590518_ja
プロフェッショナル版を見る

静脈栄養(静脈栄養法)は、栄養必要量を満たすだけの十分な食物を消化管から吸収できない人に栄養を届ける方法です。栄養剤は静脈から投与され、血流に入り、体内で吸収されます。

消化管が機能していない、または消化管に食物が入っていない状態を保つ必要がある場合は、静脈栄養が必要です。例えば、以下のような人で必要になることがあります。

消化管が機能しているにもかかわらず栄養補給が必要な場合は、通常は経腸栄養(経管栄養)を行います。

経管栄養と比べると、経静脈栄養には以下の短所があります。

  • より多くの合併症を引き起こす。

  • 消化管の構造と機能も温存されない。

  • 費用が高い。

静脈栄養は、自宅でも病院でも行うことがあります。

静脈栄養の処置

静脈栄養法では、中心静脈カテーテルと呼ばれるチューブを通して特殊な栄養剤が投与されます。カテーテルは、鎖骨の下にある鎖骨下静脈などの太い静脈に挿入します。

カテーテルを留置するには、針を皮膚から静脈に刺した後、針を介してガイドワイヤーを通します。針を取り除き、ガイドワイヤーの上にカテーテルを通して、ガイドワイヤーを取り除きます。カテーテルの留置をガイドするために超音波を発する小さな装置が用いられることがあり、留置が正しく行われたことを確認するために、留置後にX線撮影が行われることがあります。カテーテルは、鎖骨の下の鎖骨下静脈に留置されることがよくあります。入院期間中にだけ使用される場合は、カテーテルが首の静脈に挿入されることがあります。カテーテルが留置されると、栄養剤が血流に直接届きます。血流では、栄養素が体内に吸収されます。

中心静脈カテーテルを長期間入れたままにしておく必要があるため、感染症のリスクがあります。そのリスクを減らすために、医療従事者はカテーテルの挿入と保持の際には厳密に菌が入らない手法で行います。例えば、以下のことを行います。

  • カテーテルの挿入前に、挿入する部分の皮膚を洗浄する

  • カテーテルと栄養剤の袋をつなぐチューブとインラインフィルターを毎日交換する

  • カテーテルを固定している包帯を1日おきに交換する

カテーテルを静脈栄養のみに使用する(例えば、静脈への薬剤注入には使用しない)ことも、感染リスクの低減に役立ちます。

静脈栄養(静脈栄養法)

静脈栄養法では、中心静脈カテーテルと呼ばれるチューブを通して特殊な栄養剤が投与されます。カテーテルは、鎖骨の下にある鎖骨下静脈などの太い静脈に挿入します。

Credit: DNA Illustrations/SCIENCE PHOTO LIBRARY

経静脈栄養のモニタリング

可能であれば、集学的な栄養チーム(医師や栄養士、薬剤師、看護師を含む)により患者の経過をモニタリングするべきです。体重、血液中の血球の数(血算)、電解質とその他のミネラルの濃度、血糖値(ブドウ糖)、尿素(正常であれば腎臓で除去される老廃物)の濃度を定期的に測定します。タンパク質の濃度や肝機能を評価するための血液検査(肝臓の検査)も行われ、また患者が摂取した水分の量と排泄された尿の量を記録します。BMI(ボディマスインデックス)の計算や身体組成の分析を含む、完全な栄養状態の評価を必要に応じて行います。重症の人ではより頻繁に評価が必要になることがありますが、状態が安定しており、在宅で静脈栄養法を受けている人では、評価の必要頻度はより少なくなります。

静脈栄養法を自宅で投与する場合、患者とその介護者には、カテーテルとその周囲の皮膚をケアして洗浄する方法、栄養剤を投与したり、栄養剤が入った注射バッグを取り扱ったりする方法、感染症の症状などの合併症に気付く方法について指導します。問題がないか確認するために看護師が定期的に訪問します。

経静脈栄養用の栄養剤

可能であれば、経静脈栄養用の栄養剤は個人のニーズに合わせて調整します。例えば、栄養チームのメンバーは、患者の健康状態と臨床検査結果に基づいて、水分、タンパク質脂肪電解質(ナトリウムやカリウムなど)、ビタミンミネラル必須アミノ酸(タンパク質の成分)、および必須脂肪酸(脂肪の成分)の濃度を調整することができます。医療施設が個人のニーズに合わせて栄養剤をカスタマイズできない場合は、ほとんどの人のニーズを満たす標準化された栄養剤を提供します。

栄養チームは、臨床検査結果に加えて、年齢や身体疾患などの他の特性を用いて、ニーズに最も適した栄養剤を判断します。

  • 心不全または腎不全の患者:水分の少ない栄養剤

  • 糖尿病患者:炭水化物によって供給されるカロリーを減らすために、油分の割合が高い栄養剤

  • 新生児に対して:糖の少ない栄養剤

  • 肥満患者:ときにカロリーの少ない栄養剤

静脈栄養の合併症

静脈栄養によって、中心静脈カテーテルまたは栄養剤に関連した問題や、その他の問題が生じることがあります。一部の問題は発生する理由が分かっていません。

カテーテルの挿入中の損傷が生じることがあります。例えば、血管、神経、肺が傷つくことがあります。

感染症は、カテーテルの挿入のためなどに必要な皮膚の切開を行うと発生する可能性が高まり、カテーテルを長期間留置する場合に特に高まります。(正常な場合は、感染症を引き起こす微生物が体の中に入るのを皮膚が防ぎます。) 感染が血液に広がることがあり、血流への感染は敗血症という深刻な病態につながるおそれがあります。菌が入らない手法を用いれば、感染の予防に役立ちます。

血栓がときにカテーテルが入っている静脈で形成されることがあります。

栄養バランスの崩れと栄養欠乏が、静脈栄養の期間中に起こることがあります。血糖値が高すぎる(高血糖)か低すぎる(低血糖)ことが、比較的よくあります。まれに特定のビタミンやミネラルの欠乏症が起こることがあります。こうした問題を特定するために、医師は血糖値やミネラル(電解質)の濃度を測定する血液検査を行います。また必要に応じて栄養剤を調節し、定期的に血糖値と電解質の濃度を再測定します。

水分の投与量が多すぎる(体液量過剰)か少なすぎることがあります。水分が多すぎると(水分過剰)、肺に体液がたまることがあり、呼吸困難が起きることがあります。水分が少なすぎると脱水が起きます。そのため医師は、患者の体重と排泄される尿の量を定期的にモニタリングします。尿素を測定する血液検査が、脱水の特定に役立ちます。濃度が異常に高いことで、脱水が示唆されることがあります。水分のバランスが崩れるリスクを減らすために、医師や、医師と協力する栄養の専門家が、栄養補給を開始する前に必要な水分量を計算し、必要に応じて量を調整します。

ときに脂肪(脂質)を含む栄養剤による問題が起こります。そのような問題としては、呼吸困難、アレルギー反応、吐き気、頭痛、背部痛、発汗、めまいなどがあります。血液中の脂肪(脂質)の濃度が一時的に上昇することがあり、特に腎不全肝不全の患者でよくみられます。後に、肝臓や脾臓が腫大することがあり、患者に出血やあざが起こりやすくなったり、感染症をより頻繁に発症したりする傾向がみられることがあります。呼吸窮迫症候群またはその他の肺の病気のある早産児では、これらの問題のリスクが特に高まります。これらの問題を予防したり最小限に抑えたりするために、医師が一時的または永続的に栄養剤を遅らせたり中止したりすることがあります。

肝臓の異常はあらゆる年齢の人で発生しますが、乳児、特に早産児(肝臓が未熟)で最もよくみられます。医師は肝酵素の濃度を測定する血液検査を行い、それにより肝臓がどの程度機能しているかを評価します。魚油を含む栄養剤を使用すると治ることがあります。肝臓が腫大して痛みを感じる場合は、カロリーの量を減らします。乳児に肝臓の異常が発生した場合、血液にアンモニアが蓄積することがあります。アンモニアが蓄積した場合、反応の鈍化、けいれん発作、筋肉のひきつりなどの症状がみられます。乳児の患者にアミノ酸(アルギニン)のサプリメントを投与することで、この問題を解消することができます。

骨密度の低下が、静脈栄養が3カ月以上続いている場合にみられることがあります。骨粗しょう症または骨軟化症(ビタミンDの欠乏が原因)が結果として生じることがあります。これらの病気が進行すると、関節、脚、背中に強い痛みが生じることがあります。

胆嚢の問題が、胆嚢の活動が低下している場合に発生することがあり、静脈栄養の期間中に生じることがあります。正常な場合は処理されて胆嚢を通過する物質(コレステロールなど)が蓄積することがあり、胆石または胆泥が形成されることがあります。胆石は胆管に詰まることがあり、炎症(胆嚢炎)を起こすことがあります。栄養剤に含まれる脂肪の量を増やし、1日のうち数時間は糖を投与しないことで、胆嚢の収縮を刺激することができ、それにより蓄積した物質の移動が促されます。口から食べたり、鼻口から、または鼻に挿入したチューブから食物を投与することも役立つことがあります。胆嚢の働きを刺激するために、メトロニダゾール、ウルソデオキシコール酸、フェノバルビタール、コレシストキニンなどの薬が用いられることがあります。

quizzes_lightbulb_red
医学知識をチェックTake a Quiz!
ANDROID iOS
ANDROID iOS
ANDROID iOS