ポリオ

(急性灰白髄炎、小児麻痺)

執筆者:Kevin Messacar, MD, PhD, University of Colorado Department of Pediatrics, Section of Infectious Diseases
Reviewed ByBrenda L. Tesini, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry
レビュー/改訂 2024年 9月 | 修正済み 2025年 4月
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やさしくわかる病気事典

ポリオとは、非常に感染性が強く、死に至ることのあるエンテロウイルス感染症で、神経を侵して永久的な筋力低下や麻痺などの症状が生じます。

  • ポリオはウイルスが原因で生じる病気で、通常は汚染された食べものや水を飲食したり、汚染されたものを触った後にその手で口に触れたりすることで感染します。

  • 多くの人は感染しても症状がなく、症状が出てもほとんどは軽症です。

  • 症状としては、発熱、頭痛、項部硬直や背中の硬直、深部の筋肉痛などがあり、ときに筋力低下と麻痺がみられます。

  • 症状と便の培養検査の結果に基づいて、診断が下されます。

  • ポリオを根治できる治療法はありません。

  • 完全に回復する場合と、永久的な筋力低下が残る場合があります。

  • ワクチンの定期予防接種で感染を予防できます。

ポリオはエンテロウイルスの一種であるポリオウイルスが原因で発生し、感染者の便で汚染された食べものや水を飲み込んだり、汚染されたものに触れた後、その手で口に触れたりすることで感染します。ときに感染者の唾液や、感染者がくしゃみやせきをしたときに飛び散った飛沫を介して、ポリオウイルスに感染することもあります。また、空気中を漂う飛沫を吸い込んだり、感染者の唾液や飛沫で汚染されたものに触れたりしても感染します。

ポリオは通常、まず腸に感染します。その後、筋肉を制御する脳や脊髄へと広がります。

20世紀初めにはポリオは米国全土や他の地域で広く発生していましたが、今日では予防接種の普及により、ポリオの流行はほぼみられなくなっています。米国で野生型(動物由来)のポリオウイルス感染症が最後に発生したのは1979年のことです。その後、西半球では1994年にポリオが消え去ったことが確認されましたが、世界では今もなおポリオ根絶プログラムが進められているものの、パキスタンとアフガニスタンでは現在も野生型のポリオウイルス感染症が発生しており、マラウィとモザンビークでは2023年に最後の報告がありました。

野生型ポリオウイルスに加えて、極めてまれに(約240万回の接種につき1例)、経口ワクチンに含まれる生きたポリオウイルスが変異を起こすことがあります。変異したワクチンウイルスは、ワクチンを接種した人からワクチンを接種していない人へと変異を続けながら広がり、いずれはポリオを発症させる可能性があります。一部の国では、ほぼすべてのポリオ症例が変異したワクチンウイルスを原因とするものであったことから、それらの国の大半(米国を含む)がこの経口ポリオワクチンの使用を中止しました。しかし、一部の国では、より多くの人にワクチンを接種するのに役立つことから、現在も経口ポリオワクチンが使用されています。そのため、経口で接種する生ワクチンが使用されていて、かつ予防接種を受けていない人が多くいる(そのためウイルスが広がりやすい)国でも、ポリオの症例が発生しています。ごく最近、ワクチンが原因で発生したポリオウイルス感染症がコンゴ民主共和国とアフリカの他の地域で報告されました。予防接種が広く普及すれば、両方のタイプのポリオの流行を阻止することができます。また、特定の国を訪れる旅行者には、十分な予防接種を受けたことを証明する書類の提出が求められることがあります。

米国では、2022年7月のニューヨーク州で、ワクチン未接種でありながら、ワクチン由来のポリオ感染例が1例特定されています。この症例以降は特定されていませんが、下水サーベイランス(下水中の病原菌の調査)により、同州のいくつかの郡のサンプル中にウイルスが検出されており、地域内伝播が示唆されています(ニューヨーク州保険局:下水サーベイランス[New York State Department of Health: Wastewater Surveillance]も参照)。

免疫がなければ、どの年齢でもポリオにかかるおそれがあります。かつてポリオの流行は主に小児と青年に発生していましたが、これは多くの成人はすでにポリオウイルスに接触し、免疫ができていたためです。

ポリオの症状

ポリオに感染しても、たいていは何の症状もみられません。何らかの症状が現れるのは、感染者のおよそ25~30%だけです。

症状がみられるポリオウイルス感染症は以下のように分類されます。

  • 軽度の感染症(軽症)

  • 麻痺を伴わないポリオウイルス無菌性髄膜炎(重症)

  • 麻痺型ポリオ(重症)

軽症型ポリオウイルス感染症

この最も一般的な軽症型のポリオでは、ほとんどの場合、発熱、軽い頭痛、のどの痛み、嘔吐、全身のだるさ(けん怠感)などのインフルエンザに似た症状がみられます。症状が始まるのはウイルスにさらされてから3~5日後です。

麻痺を伴わないポリオウイルス無菌性髄膜炎

この病型のポリオ患者では、インフルエンザに似た不全型ポリオの症状が現れてから数日後に、頸部や背部の硬直と頭痛(無菌性髄膜炎)が起きるのが一般的です。その症状は2~10日間続きます。麻痺はみられません。

麻痺型ポリオ

ポリオウイルス感染症患者の1%未満がこの重症型のポリオを発症します。この病型の患者では、無菌性髄膜炎に加えて、麻痺もみられます。

通常は感染の7~21日後に、発熱、重度の頭痛、項部硬直、背中の硬直、深部の筋肉痛などの症状が現れます。皮膚の一部にピンや針で突かれたときのような、おかしな感覚が現れたり、痛みに対して異常に過敏になったりします。

脳と脊髄の侵された部分によっては、それ以上進行しないこともありますが、一部の筋肉に筋力低下や麻痺が現れることもあります。一般に麻痺は腕や脚の筋肉に影響を及ぼし、これにより腕や脚がだらりとして力が入らなくなります(弛緩性麻痺)。

このような患者は、ものを飲み込みにくくなったり、唾液、食べもの、液体がのどに詰まったりするおそれがあります。液体が鼻に上がって、鼻にかかった声になる場合もあります。また、脳の呼吸を調節する部分が侵されて胸の筋肉の筋力低下や麻痺が起きることにより、まったく呼吸ができなくなることもあります。

ポリオの診断

  • 便やのどの分泌物のサンプルを用いた検査

  • 血液検査

  • 腰椎穿刺

軽症のポリオウイルス感染症の場合、他のウイルス感染症と似ているため、基本的にポリオの流行時でない限り診断されることはありません。

インフルエンザ様症状のほかに項部や背部の硬直がみられる患者では、麻痺を伴わないポリオウイルスによる無菌性髄膜炎が疑われます。

麻痺型ポリオは、筋肉や四肢(腕や脚)に麻痺や筋力低下がみられる場合に疑われます。

非麻痺型ポリオまたは麻痺型ポリオの診断は、便のサンプルやのどの粘膜から綿棒でぬぐった粘液からポリオウイルスが検出された場合、もしくは血液中でポリオウイルスに対する抗体が大量に確認された場合に確定します。

通常は、さらに腰椎穿刺を行い、脳や脊髄に影響を及ぼす別の病気がないかを確認し、髄液のサンプルを用いてポリオウイルスの検査を行います。

ポリオの治療

  • 安静

  • 痛みや発熱を和らげる薬

ポリオを根治できる治療法はありません(ただし、完全に回復する場合もあります)。使用できる抗ウイルス薬が病気の経過に影響を与えることはありません。

治療としては、安静にすること、鎮痛薬と解熱薬の投与が行われます。

呼吸に使用する筋肉に筋力低下が起きている場合は人工呼吸器(肺に出入りする空気の流れを補助する機械)が必要になりますが、多くの場合、人工呼吸器の使用は一時的なものです。

ポリオの予後(経過の見通し)

軽度のポリオウイルス感染症や麻痺を伴わないポリオウイルスによる無菌性髄膜炎の患者は、完全に回復します。

麻痺型ポリオの人の約3分の2では永久的な筋力低下がいくらか残り、死亡率は小児患者では2~5%、青年と成人患者では最大15~30%と報告されており、なかでも、血圧と呼吸をコントロールしている神経がポリオに侵された人では、25~75%とより高くなります。

また完全に回復したようにみえても、発病から何年あるいは何十年も経過してから筋力低下が再発したり、悪化したりする場合もあります(ポリオ後症候群を参照)。

ポリオの予防

ポリオワクチンは小児期の定期予防接種に組み込まれています(米国疾病予防管理センター:ポリオワクチンの定期予防接種(Centers for Disease Control and Prevention: Routine Polio Vaccinationを参照)。このワクチンは95%以上の小児に効果を示します。予防接種を受けていない成人や、過去に受けた予防接種の投与が不完全なままの成人も予防接種を受けるべきです。

世界中で次の2種類のワクチンが利用できます。

  • 注射で接種する不活化ポリオウイルスワクチン(ソークワクチン)

  • 経口で接種する生ポリオウイルスワクチン(セービンワクチン)

経口の生ワクチンは、疾患を引き起こさない弱毒化された菌株のポリオウイルスです。経口ワクチンでは、ワクチンウイルスがしばらくの間、便中に排泄されるため、地域の他の人もワクチンにさらされる可能性があり、集団レベルでより強い免疫が得られます。しかし、ワクチンウイルスは人から人へと感染するため、ごくまれに病気を引き起こすウイルスに変異することがあり、240万回の接種につき1例の頻度でポリオが発生します。米国ではポリオが根絶されていることから、米国の小児には不活化ポリオウイルスワクチンの注射のみが推奨されています。経口のワクチンは米国では現在利用できませんが、世界の他の地域では現在も使用されています。

米国では、人から人への感染を示すワクチン由来のポリオウイルス2型が検出されたことから、予防接種の実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices [ACIP] )は2023年に成人ポリオウイルス予防接種に関する勧告を更新しました。予防接種を受けたことがない成人または推奨用量のワクチンのすべてを受けていない成人は、3回連続で接種するワクチンを完了するべきです。理想的には、4~8週間の間隔を空けて2回接種し、さらに6~12カ月後に3回目の接種を行います。

流行が常態化した地域や流行が広がりをみせる地域に旅行する人など、ポリオウイルスにさらされるリスクの高い成人は、予防接種を受けている場合でも、生涯に1回のポリオワクチンの追加接種を受けることができます。米国疾病予防管理センターはもとより、地域やその国の保健局では、ポリオの感染地域に関する情報を入手することができます。

予防接種が広く普及すれば、両方のタイプのポリオの流行を阻止することができます。また、特定の国を訪れる旅行者には、十分な予防接種を受けたことを証明する書類の提出が求められることがあります。

さらなる情報

  1. 以下の英語の資料が役に立つかもしれません。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いかねることをご了承ください。

  2. 米国疾病予防管理センター:ポリオワクチンの接種:ポリオに関する基本情報および改定予防接種情報

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