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骨折の概要

執筆者:

Danielle Campagne

, MD, University of San Francisco - Fresno

最終査読/改訂年月 2017年 12月
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骨折は、骨がひび割れたり折れたりすることです。ほとんどの骨折の原因は、骨に力がかかることです。

  • 通常、骨折はけがや酷使によって発生します。

  • 損傷した部位には痛みが生じ(特にその部位を使うとき)、通常は腫れ上がります。また、あざ、ゆがみや曲がり、ずれなどがみられることがあります。

  • 血管や神経などの損傷や、コンパートメント症候群、感染症、長期に及ぶ関節の問題など、他のけががあったり、発生したりすることもあります。

  • 症状、けがをした状況、身体診察の結果に基づいて骨折が診断されることもありますが、通常はX線検査が必要です。

  • ほとんどの骨折は、問題をあまり残さずによく回復しますが、治癒にかかる期間は患者の年齢やけがの種類と重症度、他の障害など多くの要因によって異なります。

  • 骨折の種類と重症度に応じて各種の治療が行われ、具体的には、鎮痛薬の投与や、PRICE(保護、安静、氷冷、圧迫、挙上)、折れた骨の破片を正常な位置に戻す手技(整復)、損傷部の固定(ギプスや副子による)などがあり、ときに手術が行われます。

骨は筋骨格系の一部で、筋骨格系には筋肉とそれらをつなぐ組織(軟部組織と呼ばれる靱帯や腱などの結合組織)も含まれています。これらの構造は人体を形作り、安定させ、動作を可能にします。

筋骨格系の組織は、骨折に加えて以下のような損傷を受けます。

  • 関節部の骨は互いに完全に離れたり(脱臼)、部分的に位置がずれたり(亜脱臼)することがあります。

  • 靱帯(骨と骨をつなぐ組織)が断裂することがあります(ねんざ)。

  • 筋肉が断裂することがあります(挫傷)。

  • 腱(筋肉と骨をつなぐ組織)が損傷することがあります(断裂)。

ねんざ、挫傷、腱の断裂は、軟部組織の損傷と呼ばれます。

骨折(およびその他の筋骨格系の損傷)は、重症度も必要な治療も多種多様です。例えば、足の骨の見逃しやすい小さなひび割れから、骨盤骨折のように生命を脅かす重大な骨折まで様々です。

また、折れた骨が皮膚を突き破っている場合(開放骨折)とそうでない場合(閉鎖骨折)とがあります。

骨が折れている、または骨にひびが入っている場合は、皮膚、神経、血管、筋肉、臓器など、他の組織も重篤な損傷を受けている可能性があります。こうした損傷があると、骨折の治療が困難になり、一時的または永続的な問題が生じることもあります。

ほとんどの場合は腕や脚が骨折しますが、骨折は体のあらゆる部位の骨で起こることがあり、例として以下の部位が挙げられます。

原因

骨折の最も一般的な原因は外傷です。外傷には次のような種類があります。

  • 転倒や自動車事故など、直接的な力が加わって起こるもの

  • 長距離ランナーや重い荷物を背負って行進する兵士など、中程度の力が繰り返し加わって起こるもの(こうした骨折は疲労骨折と呼ばれます)

骨折の重症度は加わった力の強さに左右される部分があります。例えば、平地で転倒しても通常は軽い骨折程度で済みますが、高い建物から転落すれば、重度の骨折が複数生じるでしょう。

特定のスポーツ中に発生する骨折もあります( スポーツ外傷)。

一部の病気によって骨が弱くなることがあります。具体的には以下のものがあります。

  • 特定の感染症

  • 骨腫瘍(がんの場合もそうでない場合もある)、体の他の部位から骨に広がった(転移した)がんを含む

そのような病気の患者は骨折しやすく、わずかな力がかかっただけで、骨が折れることがあります。このような骨折を病的骨折といいます。

症状

骨折で最も明らかな症状は、次のものです。

  • 痛み

損傷した部位は痛み、その部位を使ったり体重をかけたりすると、特に強く痛みます。骨折部位の周辺を押すと痛みます。ほかにも次のような症状があります。

  • 腫れ

  • 患部の外観にゆがみ、曲がり、位置のずれがある

  • あざまたは変色

  • 損傷部位で通常の動作ができない

  • 感覚を喪失している可能性(しびれや異常な感覚)

骨折は一般的に腫れを引き起こしますが、腫れが生じるまでに何時間もかかることがあり、一部の種類の骨折では非常にわずかな腫れしかみられません。

患部周辺の筋肉が折れた骨の位置を保持する過程で、筋肉のけいれんが起き、痛みが増すことがあります。

皮膚の下で出血が起きると、あざが現れます。折れた骨や周囲の組織の血管から出血しています。皮下出血のあざは最初は黒ずんだ紫色ですが、血液の分解と再吸収が進むにつれて、徐々に緑色や黄色になっていきます。血液は骨折部位からかなり遠くまで広がることがあり、あざが広範囲に及んだり、けがの患部から離れた位置に生じたりする場合もあります。血液が再吸収されるまでには数週間かかります。血液によって、周囲の組織に一時的な痛みやこわばりが起こることがあります。例えば、肩の骨折では、ときに腕全体にあざが生じ、肘や手首にも痛みが生じます。

骨折そのものだけでなく、痛みによって、患者が骨折した部位を正常に動かせなくなることがよくあります。

損傷した部位を動かすと強く痛む場合、患者は患部を動かそうとせず、また動かすことができません。話すことができない患者(幼児や高齢者など)では、骨折していても、その部位を動かすことを嫌がる以外に、徴候がみられない場合もあります。しかし骨折していても、患者が患部を動かしている場合もあります。それゆえ、患部を動かすことができれば骨折していない、とは言い切れません。

合併症

骨折は、他の問題(合併症)を伴っていたり引き起こしたりすることがあります。ただし、重篤な合併症はまれにしか発生しません。皮膚が破れていたり血管や神経が損傷していたりすると、重篤な合併症のリスクが高くなります。

一部の合併症(血管や神経の損傷、コンパートメント症候群、脂肪塞栓症、感染症)は、損傷後、最初の数時間から数日の間に発生します。ほかには、時間が経過するにつれて発生する合併症(関節や治癒の問題など)もあります。

血管の損傷

多くの骨折では、患部周辺に目立った出血があります。まれに、体内の出血(内出血)や傷口からの出血(外出血)が大量に発生し、生命を脅かすほどに血圧を低下させることがあります(ショック)。例えば、太ももの骨(大腿骨)や骨盤の骨折により重度の内出血が生じたときに、ショックが起こります。血栓の形成を予防する薬(抗凝固薬)を服用している人は、比較的軽い外傷でも大量に出血することがあります。

股関節や膝の脱臼は、脚への血流を妨げます。それにより、脚の組織に十分な血液が送られず(虚血)、組織が壊死することがあります。ある程度以上の組織が壊死すると、脚を切断する必要性が出てきます。肘や上腕の骨折によって、前腕への血流が妨げられ、同様の問題が生じることもあります。血液の供給が阻害されても、損傷後の数時間は症状が現れないケースもあります。

神経の損傷

骨折に伴って、神経が伸ばされたり、打撲を受けたり、押しつぶされたりすることがあります。直接的な打撃によって、神経が打撲したり押しつぶされたりします。通常、こうした損傷は自然に治癒しますが、回復に要する期間は、損傷の重症度に応じて数週間から数カ月、または数年と様々です。神経の損傷は、完全には治癒しないこともあります。

まれに、鋭い骨片などによって神経が断裂することがあります。皮膚が破れている場合、神経の断裂が多くみられます。断裂した神経は自然に治らないため、手術で修復する必要があるでしょう。

肺塞栓症

肺塞栓症は、股関節や骨盤の重篤な骨折で起こる致死的な合併症のうち、最も一般的なものです。静脈にできた血栓が血管から剥がれて肺へと移動し、そこで動脈に詰まると、肺塞栓症が起こります。その結果、肺の組織が壊死して、体に十分な酸素が行き渡らなくなることがあります。

股関節骨折は、次の理由で肺塞栓症のリスクを大幅に高めます。

  • 損傷が脚に起きていて、肺塞栓症の原因となる血栓のほとんどは脚で形成される。

  • 数時間または数日にわたって動けなくなる(ベッドで安静にする)ため、血流が遅くなり、血栓ができる機会が増える。

  • 骨折部周辺の腫れによっても、静脈の血流が遅くなる。

股関節骨折後に死亡する人の約3分の1は、肺塞栓症が原因です。脚の膝より下の部分の骨折では肺塞栓症ははるかに少なくなり、腕の骨折では非常にまれにしか起こりません。

脂肪塞栓症

脂肪塞栓症はまれな病気です。この病気は、長管骨(大腿骨など)が骨折して骨の内部(骨髄)から脂肪が放出されたときに生じます。この脂肪が静脈を通って肺に入り、血管を詰まらせて、重度の頭部損傷を引き起こすことがあります。その結果、体に十分酸素が行き渡らなくなり、息切れや胸痛が起こります。患者の呼吸は浅く速くなり、皮膚に斑点ができたり皮膚の色が青くなったりすることがあります。

コンパートメント症候群

まれにコンパートメント症候群が発生します。例えば、腕や脚を骨折した後に、負傷した筋肉が大きく腫れ上がり、この症候群が起きることがあります。筋肉が腫れ、付近の血管が圧迫されると、損傷した腕や脚への血流が妨げられます。その結果、組織に損傷や壊死が生じ、場合によってはその腕や脚を切断する必要が生じます。すぐに治療しなければ、死に至ることがあります。コンパートメント症候群は、特定の脚の膝より下の部分の骨折、特定の腕の骨折リスフラン骨折(足の骨折の一種)を負った人で発生する可能性が高まります。

感染症

骨折したときに皮膚が破れると、傷口が感染することがあり、感染が骨に広がる場合があります(骨髄炎)。この感染を治癒させるのは、非常に困難です。

関節の問題

骨折が関節に及ぶと、通常は関節部の骨の末端(関節面)にある軟骨が損傷します。正常なときには、この滑らかで強い保護組織のおかげで、関節をスムーズに動かすことができます。 関節軟骨が損傷を受けると瘢痕(はんこん)ができることが多く、それにより変形性関節症が生じて、関節が硬くなり可動域が狭まる場合があります。膝、肘、肩の関節は特に損傷後に硬くなる可能性が高く、とりわけ高齢者で硬くなりがちです。

関節が硬くなるのを予防し、できるだけ正常な動きを維持するには、通常は理学療法が必要です。損傷した軟骨の修復には、しばしば手術が必要です。そうした手術の後は、軟骨に瘢痕(はんこん)ができにくく、できたとしても、軽いものになる傾向があります。

骨折によって関節が不安定になり、けがを繰り返したり変形性関節症が生じたりするリスクが高まることがあります。適切な治療(ギプスや副子を使うことが多い)を行うことが、永続的な問題の予防に役立ちます。

腕や脚の左右差

小児では、脚の成長板が骨折すると、その脚が正常に成長せずもう一方の脚より短くなることがあります。軟骨でできている成長板には小児の骨を伸ばす働きがあり、この働きが止まると、身長もそれ以上伸びません。成長板を含まない骨折の場合は、骨折した部位からの成長が促進されることがあります。成長が促進されると、骨折した脚が成長しすぎてもう一方の脚より長くなることがあります。

成人では、太ももの骨を修復する手術によって片方の脚が他方より長くなることがあります。

治癒の問題

骨折の治りが通常のように進まないことがあります。その場合、折れた骨は次のような経過をたどります。

  • 元通りに再生しない(癒合不全)

  • 再生が非常に遅い(癒合遅延)

  • 正しくない位置に再生される(変形癒合)

こうした問題は、次の状況で起こりやすくなります。

  • 折れた骨同士が隣接しておらず、動かないように固定(通常はギプスか、ときに副子で行う)されていない。

  • 血液供給が妨げられている。

糖尿病末梢血管疾患などの病気や、コルチコステロイドなどの薬によって、治癒が遅れたり妨げられたりすることがあります。

骨の治癒過程

皮膚、筋肉、内臓などの大半の組織は、激しい損傷を受けると、損傷した組織に代えて瘢痕(はんこん)組織を作り、欠損部を修復します。瘢痕組織の多くは、正常な組織と見た目が違ったり、その部分の機能に影響を及ぼしたりします。一方、骨の治癒過程では、実際の骨組織が作られます。

折れた骨が自己修復すると、最終的に骨折部位と他の部分の見分けがつかなくなることも多々あります。粉砕骨折でさえ、適切に治療すれば、多くの場合、正常に骨を修復し機能を回復することができます。

骨折の治癒過程では、炎症期、修復期、リモデリング期の3段階が重なりあって進行します。

炎症期:治癒は骨折のすぐ後に始まります。免疫系の細胞が患部に移動し、傷ついた血管から漏れた血液や、損傷した組織、骨片を除去します。

免疫細胞が他の免疫細胞を集める物質を放出し、患部への血流を増加させて、損傷部により多くの体液が流入するようにします。その結果、骨折の周辺部が炎症を起こして赤く腫れ、押すと痛みます。

炎症は骨折後2~3日でピークを迎えますが、治まるまでには数週間かかります。骨折した直後の痛みの大半は、炎症によるものです。

この段階と修復期では、骨折した部位を動かないように固定(例えばギプスや副子などで)しなければならないことがよくあります。

修復期:骨折から数日のうちに始まり、数週間から数カ月間続きます。骨折を修復するために、新しい骨(仮骨)が作られます。外仮骨と呼ばれるこの新しい骨は、最初はカルシウム(骨の密度を高めて骨を強くするミネラル)を一切含んでいません。新しい骨は軟らかく弾力があります。それゆえ損傷を受けやすく、治癒途中の骨が本来の位置からずれてしまう(転位する)こともあります。さらに、仮骨はX線検査で確認できません。

リモデリング期:リモデリングでは、骨の分解と再構築が行われ、骨が以前の状態へと回復します。この過程には何カ月もかかります。仮骨にカルシウムが沈着して硬さと強さが増し、X線検査で確認しやすくなり、骨の正常な形状と構造が回復していきます。

この段階では、徐々に患部を正常に動かせるようになります。徐々に通常の活動を再開し、損傷した部位にかかる負荷や体重を増やしていく必要があります。

骨壊死

骨への血流が阻害されると、骨の一部が壊死して、骨壊死につながることがあります。特定の損傷(手首の舟状骨骨折や折れた骨の位置がずれた股関節骨折など)では、骨壊死が起きやすくなります。

診断

  • 医師による評価

  • X線検査による骨折の特定

  • ときにMRIまたはCT検査

骨折したかもしれないと思った場合は、救急外来を受診してください。手足の指の損傷などは例外です。

次のいずれかに当てはまる場合も、救急車などを利用して救急外来を受診する必要があります。

  • 問題が明らかに重篤である(自動車事故による負傷や、患部を使うことができない場合)。

  • 複数のけががある。

  • 合併症の症状がみられる。例えば、患部の感覚が失われている、患部を正常に動かすことができない、皮膚が冷たく感じたり色が青くなっていたりする、患部に力が入らないなど。

  • 患部に体重をかけることができない。

  • 負傷した関節が不安定なように感じる。

深刻な事故で損傷を負った場合は、医師は最優先で次の対応をとります。

  • 開いた傷口、神経の損傷、多量の失血、血流障害、コンパートメント症候群など、重度の損傷や合併症がないか確認する。

例えば、医師は以下のことを行います。

  • 血圧の測定:多量の血を失った人は血圧が低下します。

  • 脈拍および皮膚の色と温度の確認:脈拍がなかったり弱かったりし、皮膚が青白く冷たければ、血流が阻害されていることが疑われます。これらの症状は、動脈が損傷しているか、コンパートメント症候群が起こっていることを意味することがあります。

  • 皮膚の感覚が正常かどうかの確認:患者にピリピリ、チクチクする、しびれるといった異常な感覚がないか尋ねます。異常な感覚がある場合は、神経の損傷が疑われます。

これらの損傷や合併症があれば、必要に応じて治療し、さらに評価を行います。

損傷の説明

医師は、患者(または目撃者)に何が起こったのか説明を求めます。しかし、当人がけがをしたときのことを思い出せない場合や、正確に説明できない場合は少なくありません。損傷の発生状況が分かれば、医師が損傷の種類を判定する際の手がかりになります。例えば、当人がパチンまたはポンッなどという音がしたと報告した場合は、骨折か靱帯や腱の損傷が起きている可能性があります。医師は、損傷時に関節に力が加わった向きについても質問します。この情報は、どの骨や構造に損傷があるかを判定するために役立ちます。

医師はさらに、いつ痛み始めたかと、痛みの強さについても尋ねます。

  • 負傷した直後から痛みがある場合は、骨折か重度のねんざが起きている可能性があります。

  • 数時間から数日経った後に痛みが始まった場合は、たいてい軽度の損傷です。

  • 損傷の程度から想定される以上に痛みが強い場合や、負傷後の数時間にどんどん痛みが増してきた場合は、コンパートメント症候群が発生しているか、血流が妨げられているかもしれません。

身体診察

身体診察では、以下の点を調べます(優先度の高い順)。

  • 患部付近の血管に対する損傷の確認(例、脈拍や皮膚の温度と色などの確認)

  • 患部付近の神経に対する損傷の確認(例、感覚の検査)

  • 患部の診察と動きの評価

  • 患部の上方と下方に位置する関節の診察

医師はそっと患部に触れ、骨の位置が正しいどうか、圧痛があるかどうかを確認します。腫れやあざの有無も調べます。けがから数時間以内に腫れが生じなければ、骨折の可能性は低くなります。

さらに、けがをした部位を使うことができるか、体重をかけたり動かしたりすることができるかどうかを質問します。

医師は、関節をゆっくり動かし安定性を検査しますが、骨折の疑いがある場合は、最初にX線検査を行い、関節を動かしても安全かどうかを確認します。また、損傷した部位を動かしたときに、ギシギシまたはコリコリなどという音(捻髪音)がするかどうかを調べます。そのような音があれば、骨折が疑われます。

さらに医師は、損傷した関節の上または下に位置する関節を調べ、靱帯、腱、筋肉の損傷の有無を確認します。

痛みや筋肉のけいれんのために診察ができない場合は、鎮痛薬や筋弛緩薬を経口または注射で投与したり、患部に局所麻酔薬を注射したりすることがあります。あるいは、けいれんが止まるまで患部を固定することもあり、通常は数日間固定した後に診察を行います。

検査

骨折を診断するために、以下の画像検査が行われます。

  • X線検査

  • MRI(磁気共鳴画像)検査

  • CT(コンピュータ断層撮影)検査

X線検査は骨折の診断で最も重要な検査であり、通常は最初に行われる唯一の検査です。

しかし、X線検査は常に必要とは限らず、損傷のある部位や医師の見立てによっては行われないこともあります。例えば、骨折の有無にかかわらず、同様の治療が施される部位(親指以外の足の指など)が損傷している場合は、たいていX線検査の必要はありません。

骨の断片がどのように存在しているのかを見るために、X線検査は通常、少なくとも2つの角度から行われます。こうした通常のX線検査では、折れた骨片が本来の位置から動いていない(つまり、複数の骨片に分かれていない)小さな骨折を確認できない場合があります。このような骨折を不顕性(潜在)骨折といいます。そのため、さらに別の複数の角度からX線検査を行うことがあります。X線検査が数日から数週間延期されることもあります。これは、不顕性骨折(例えば肋骨骨折疲労骨折手首の舟状骨骨折など)が、治癒が始まりカルシウムが新しい骨に沈着した後でないと、X線検査で写らないことがあるためです。

X線検査で骨折がみられなくても医師が骨折を疑い続ける場合は、副子をあてて数日後に再度診察を行うことがあります。煩わしい症状が続く場合、X線検査を再度行うことがあります。骨折は、しばらく治癒が進んでからX線検査を行うと見やすくなることがあります( 骨の治癒過程)。

X線検査で外観が異常な骨(一部が異常に薄く見える骨など)に骨折がみられる場合は、おそらく骨を弱くする病気(骨粗しょう症など)が原因で生じた骨折です。

次の場合には、CTまたはMRI検査が行われます。

  • 診察の結果、骨折が強く疑われるものの、X線検査では何も確認できなかった場合。

  • 最適な治療法を決定するために、専門医がより詳細な骨折の画像を必要としている場合。

通常のX線検査より詳しく骨折について調べるために、CT検査やMRI検査を行うこともあります。CT検査では、骨折した関節表面や、損傷のない骨で覆われている骨折部位を詳しく確認できます。CT検査や、特にMRI検査では、X線検査では通常確認できない軟部組織を撮影できます。MRI検査は骨周囲の組織も描出するため、付近の腱、靱帯、軟骨、筋肉の損傷を見つけるために役立ちます。がんによって生じた変化も写し出されます。MRI検査は、骨内部の損傷(腫れや内出血)を描出するため、X線画像には表示されない小さな骨折でも検出できます。

関連する損傷を確認するために他の検査を実施することもあります。

  • 損傷を受けた血管がないか調べる血管造影検査(動脈に造影剤を注射した後に行われるX線検査またはCT検査)

  • 損傷した神経がないか調べる神経伝導検査

骨折の種類

医師は、画像検査を利用して、骨折の種類を特定し、正確に把握することができます。

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骨折に関する医学用語の説明

種類

説明

屈曲骨折

折れた骨片同士が一直線に並んでいない骨折。骨片同士の間に角度がついています。

剥離骨折

骨本体から骨片が引き剥がされている骨折。転倒などで外部から強い力がかかると、靱帯に引っ張られて骨片が剥がれることがあります。また、若年の運動選手などでは、骨に付着した筋肉が強く収縮したときに、腱に引っ張られて骨片が剥がれることがあります。

剥離骨折は通常、手、足、足首、膝、肩に起こります。

閉鎖骨折

骨折部位を覆う皮膚が破れていない骨折。

粉砕骨折

折れた骨が3つ以上の骨片に分かれている骨折。多数の非常に小さい骨片に割れることもよくあります。

こうした骨折は、多くの場合、自動車事故などで大きな力が加わって発生します。骨粗しょう症で骨がもろくなっている患者にみられることもあります。

骨自体がつぶれている骨折。

こうした骨折は高齢者でよく起こります(特に骨粗しょう症の患者)。背骨(椎骨)でよく起こります(脊椎圧迫骨折)。

転位骨折

折れた骨の一部や破片が分離して正しい位置にない骨折。

若木骨折

骨に部分的な亀裂が入ったり曲がったりしているが、完全に折れてはいない骨折。

若木骨折は小児にのみ発生します。

軟骨でできた成長板で起こる骨折。成長板には小児の骨を伸ばす働きがあり、この働きが止まると、身長もそれ以上伸びません。成長が終わったら、成長板は骨に置き換わります。成長板が骨折すると、骨の成長が止まったりねじれて成長したりすることがあります。

成長板骨折は、小児と青年にのみ発生します。

嵌入(かんにゅう)骨折

一方の骨片の端が他方の端に入り込んでいる骨折。その結果、骨が短くなったように見えます。

関節(関節内)骨折

関節を形成する骨の端部(関節面)の軟骨に及んでいる骨折。正常時には、この軟骨は、関節で骨がこすれ合うときに起こる摩擦を軽減しています。この軟骨が骨折すると、その関節を動かせなくなり、さらに変形性関節症が発生しやすくなります。

転位のない骨折

折れた骨片が正しい位置にあり(ずれがなく)、骨片の間にすき間ができていない状態。

斜骨折

骨の長い中間部(骨幹)を斜めにまっすぐ横切る骨折。

不顕性骨折

X線検査ではあまり、または一切写らない小さな骨折。CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査などの画像検査で確認できることがあります。

数日または数週間後、骨の治癒に伴って形成される新しい骨に変化が生じます。この後に不顕性骨折がX線検査で確認できるようになることがあります。

一部の疲労骨折は不顕性です。

開放骨折

折れた骨を覆う皮膚と組織が裂けている骨折。折れた骨が皮膚を突き破って外に出ている場合があります。汚れ、破片、細菌により傷口が容易に汚染され、折れた骨に感染が生じることがあります。

骨粗しょう症性骨折

骨粗しょう症(骨密度が徐々に低下する病気)のために、骨がもろくなり骨折しやすくなって生じる骨折。

骨粗しょう症性骨折(脆弱性骨折とも)は高齢者にみられ、股関節、手首、脊椎、肩、骨盤でよく起こります。

病的骨折

骨粗しょう症、特定の骨感染症、骨腫瘍(がんが他の部位から骨へ転移したものを含む)など、骨を弱くする病気によって引き起こされる骨折。

分節骨折

2カ所で骨の分離が起きている骨折。分節骨折は粉砕骨折の一種です。

らせん(捻転)骨折

骨がねじれて分離した骨折。その結果、骨の端部が鋭くとがったり、ギザギザになったり、傾斜したりすることがあります。

重い物を持った状態での歩行やランニングといった活動により、骨に繰り返し負荷がかかることで起こる骨折。疲労骨折では、多くの場合、骨に小さいひびが入っています(毛髪様骨折とも呼ばれます)。

疲労骨折の多くは、脚の膝より下の部分や足など、体重がかかる骨で起こります。

隆起骨折

骨が折れるというよりは、隆起する骨折。

この骨折は通常、小児にのみ発生します。小児の骨は成人より弾力があるため、折れずに曲がることがあります。

横骨折

まっすぐ横に折れている骨折。

骨折の主な種類

骨折の主な種類

治療

  • 重篤な合併症の治療

  • 痛みの緩和

  • 保護、安静、氷冷、圧迫、挙上

  • 本来の位置から外れた部分の整復

  • 固定(通常は副子またはギプスを使用)

  • ときに手術

重篤な骨折や関連する重篤な損傷があれば、速やかに治療を行います。例えば、ショックコンパートメント症候群は直ちに治療します。すぐに治療しなければ、損傷が悪化し、痛みが強くなったり機能障害が起こったりする可能性が高くなります。こうした損傷は重篤な病態を引き起こし、死につながることもあります。

骨折など、重度の損傷を負ったと思ったときは、救急外来を受診してください。歩けない場合や複数の損傷を受けている場合は、救急車を呼んでください。救急隊が到着するまでには、以下の処置を行うべきです。

  • 負傷した腕や脚が動かないようにし(固定)、身近なものを利用した応急の副子、つり包帯、枕などで支えます。

  • 腫れを防ぐために、患部の腕または足を心臓より上に、なるべく高く上げておきます。

  • 氷冷を行い(タオルや布で氷を包む)、痛みと腫れを抑えます。

小児の治療

小児は骨が成人より小さく、軟らかく、もろく、成長中であるため、小児の骨折は多くの場合、成人とは異なる方法で治療します。小児の骨折は、成人に比べてはるかに治りが早く、より元に近い状態まで回復します。たいていの小児の骨折は、数年後にX線検査で確認すると、見た目がほとんど正常です。

小児に対しては、医師が次の理由から、手術よりギプスを用いた治療を選ぶ場合がよくあります。

  • 小児の場合、ギプスを装着しても成人ほど患部がこわばらない。

  • 小児はギプスの使用後に、その部位を正常に動かせる可能性が高い。

  • 関節付近の手術は、小児の成長に関わる骨の一部(成長板)に損傷を与えることがある。

重篤な損傷の治療

救急外来では、医師が即座の治療を必要とする損傷の有無を確認します。

皮膚が破れている場合は、通常は局所麻酔で患部を麻痺させてから、傷を洗浄し、滅菌されたドレッシング材で覆います。さらに、患者に破傷風予防のためのワクチンを接種し、感染症予防に抗菌薬を投与します。

損傷部への血流を途絶えさせないために、動脈が細くて血流に影響を及ぼさない場合を除いて、損傷した動脈を手術で修復します。

切断された神経も手術で修復しますが、この手術は必要に応じて、負傷の数日後に延期することがあります。神経の打撲や損傷は、自然に治癒することがあります。

痛みの緩和

可能な限り速やかに痛みを治療し、通常、鎮痛薬のオピオイドやアセトアミノフェンを使用します。アスピリンや他の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は、アセトアミノフェンよりも効果が優れているわけではなく、場合によっては出血を悪化させることがあるため、通常は推奨されません。

患部の神経に麻酔薬を注射することがあります。この処置(神経ブロック)によって、神経が痛みの信号を脳に送るのを防ぎます。

PRICE

PRICEは以下の組合せのことを指します。

  • 保護(Protection)

  • 安静(Rest)

  • 氷冷(Ice)

  • 圧迫(Compression)

  • 挙上(Elevation)

骨折に軟部組織の損傷が伴っている場合、PRICEが有益な場合があります。PRICEは損傷した筋肉や靱帯、腱の治療に用いられます。

保護はもとの損傷をより悪化させるさらなる損傷の予防に役立ちます。具体的には、患部の使用を制限する、患部に体重をかけることを避ける、松葉杖を使う、副子やギプスを装着するなどが行われます。

安静はそれ以上の損傷を防ぎ、治癒を早めるために役立ちます。

氷冷圧迫は、腫れと痛みを最小限に抑えます。氷はビニール袋に入れるかタオルや布に包み、1回15~20分にわたって患部にあてます。最初の24~48時間はできるだけ頻繁に冷やします。損傷に対する圧迫は通常、弾性包帯で行います。

損傷のある腕または脚を挙上(上げておくこと)すると、損傷部から体液が排出され、腫れの軽減につながります。最初の2日間、患部のある腕や脚を心臓より高く上げておきます。

48時間が過ぎたら、定期的に1回15~20分、患部を温めるようにします(温熱パッドを使用するなど)。温めることで痛みが和らぐ場合があります。しかし、温熱や氷冷を行うことが最適かどうかは明らかになっておらず、最適な方法が人によって異なる可能性もあります。

整復

しばしば、骨折した骨を正常な位置に戻さなければならない場合があります(整復または復元)。例えば、以下のケースでは通常、整復が必要です。

  • 折れた骨片が離れた位置にある。

  • 折れた骨片が本来の位置からずれている。

小児に起こった一部の骨折は、位置を調整する必要がありません。骨が成長中で、自然に正しい位置に戻るためです。

可能であれば、骨や骨片を手で元の位置へ戻すことにより、手術を行わずに整復を行います(非観血的整復)。整復が終わったら、通常はX線検査を行い、折れた骨が正常な位置に戻っているかどうかを確かめます。

損傷によっては、手術で位置を戻す必要があります(観血的整復)。

整復はたいてい痛みを伴うため、整復の前に患者に鎮痛薬や鎮静薬を投与するか、麻酔を施す、またはその両方を行います。使用する薬は、以下のように、損傷の重症度や整復の種類に応じて異なります。

  • 軽度の骨折(手足の指など)の非観血的整復:リドカインなどの局所麻酔薬を患部の近くに注射するだけで、十分な場合があります。

  • 大きな骨折(腕、肩、脚の膝より下の部分)の非観血的整復:静脈から鎮静薬や鎮痛薬を投与します。鎮静薬は眠気を催しますが、意識を失うことはありません。患者に局所麻酔薬を注射することもあります。例えば、肩の脱臼の患者では、肩関節にリドカインを注射することがあります。

  • 観血的整復:患者に注射またはフェイスマスクを介して全身麻酔薬を投与し、意識を失わせます。この処置は通常は手術室で行われます。

固定

骨が正しい位置に戻ったら、損傷部を動かさないように固定する必要があります。

骨折の非観血的整復を行った後は、通常はギプス、副子、つり包帯を使用します。

骨折の観血的整復では、多くの場合、ピン(釘)、スクリュー(ねじ)、ロッド(棒)、プレートなどの金属器具を使用します。この方法は、観血的整復内固定術(ORIF)といいます。

固定を行うと、周辺の組織に対するさらなる損傷が防がれ、痛みを軽減し治癒を助けます。腕や脚の骨折では、固定により、脂肪塞栓症を予防できる場合があります。固定はほとんどの中等度または重度の骨折に有用です。骨折部の両側に位置する関節が固定されます。

固定が長期に及ぶと(例えば、若い成人では数週間以上)、関節が硬くなり、こわばりが永続化することがあるほか、筋肉が短くなったり(拘縮の原因)、縮んだり(萎縮)することもあります。また、血栓が発生することもあります。こうした問題が急速に発生し、拘縮が永続化することがあります(通常は高齢者でみられる)。そのため、医師は骨折が治り次第すぐに、その部分を動かすよう高齢者に勧めます。さらに医師は、長期間動かさずにいる必要がある治療(床上安静やギプスの装着など)よりも、高齢者ができるだけ早く歩行を再開できる治療を選択する傾向があります(手術による股関節骨折の修復など)。

理学療法士は、患者が患部の固定中に筋力、可動域、機能を可能な限り維持するためにできることについて、助言を行うことができます。固定が終わった後、理学療法士は患部の筋力強化と安定化のために行う運動を補助することができます。そうした運動は、将来のけがや障害の予防に役立ちます。

固定が必要かどうかと、どの治療法を選択するかは、骨折の種類によって異なります。

骨折の大半は、治るまで、ギプス、副子、つり包帯で固定します。固定しなければ、骨折した端が動きやすくなり、治癒が遅れ、骨が元の状態に戻らないことがあります。折れた骨片同士が離れたり位置がずれたりしている場合は、通常は固定する前に正しい位置に戻す(整復する)必要があります。

ギプスは、通常、数週間にわたって固定しなければならない損傷に対して使用します。

ギプスで固定するときは、医師が患部を布で巻き、次に軟らかい綿素材のパッドをあてて、皮膚を圧迫や摩擦から保護します。この上に、石膏を付着させた綿包帯やグラスファイバーテープを濡らして巻き、このような包帯やテープは乾くと硬くなります。石膏はよく固まり、皮膚との間でこすれにくいため、骨片同士が分離している骨折の固定によく用いられます。グラスファイバー製のギプスは、より強く軽量で長持ちします。患部の腫れは1週間程度で引きます。その後、患部にぴったりと合うよう、石膏のギプスをグラスファイバーのギプスに交換することがあります。

ギプスを装着した患者は、その取り扱いについての特別な指示を受けます。ギプスを正しく取り扱わないと、問題が起こることがあります。例えば、ギプスを濡らし、その下の保護パッドまで湿らせてしまうと、完全に乾かないことがあります。その結果、皮膚がふやけて破れ、潰瘍ができることがあります。また、石膏ギプスは濡れると崩壊することがあり、そうなると患部の保護や固定ができなくなります。

ほかにも、ギプスをなるべく心臓と同じ高さかそれより高く上げておくようにとの指示があります(特に最初の24~48時間に重要)。加えて、定期的に手の指を曲げ伸ばししたり、足の指を動かしたりする必要があります。これらの対策は、患部の腕や脚から血液を流し出す効果があり、腫れの予防につながります。

ギプスによって持続したり悪化したりする痛みが生じた場合や、きつすぎると感じる場合、新しくしびれや筋力低下が生じた場合は、すぐに医師に連絡するか救急外来を受診する必要があります。これらの症状は、床ずれ(褥瘡[じょくそう])コンパートメント症候群によって発生することがあります。その場合、病院でギプスを交換してもらうことが必要かもしれません。

知っていますか?

  • ギプスによって持続したり悪化したりする痛みが生じた場合や、きつすぎると感じる場合、新しくしびれや筋力低下が生じた場合は、すぐに医師に連絡するか救急外来を受診する必要があります。

ギプスの取扱い

  • 入浴時はビニール袋でギプスを包み、口の部分を輪ゴムかテープできっちり留めて密封するか、ギプス用の防水カバーで覆います。そうしたカバーは市販されていて、使いやすく信頼性の高い器具です。ギプスが濡れると、ギプスの内側のパッドが湿ります。ドライヤーである程度は乾かすことができます。十分に乾かなければ、ギプス内で皮膚が損傷しないように、新しいギプスに取り換える必要があります。

  • ギプス内には決して、(かゆいところをかくなどの目的で)異物を入れてはいけません。

  • ギプス周囲の皮膚の状態を毎日チェックし、赤くなったりヒリヒリしたりする場合は医師に報告してください。

  • ギプスの縁を毎日チェックし、粗くなっているようであれば、粘着テープ、ティッシュ、布などの軟らかい素材を詰めて、その縁で皮膚を傷つけないように保護します。

  • 就寝時には、ギプスの縁が皮膚を圧迫したり皮膚に食いこんだりしないように、小さな枕やクッションなどを使って適切な位置に保ちます。

  • 医師の指示に従い、定期的にギプスを高い位置に上げて腫れを防ぎます。

  • ギプスの装着後、痛みが長く続く場合や、強く締めつけられる感じがある場合は、すぐに医師に相談します。これらの症状が床ずれや腫れによって生じた場合は、直ちにギプスを外さなければならないことがあります。

  • ギプスから臭いがするときや、発熱が生じたときは、医師に連絡してください。感染症の疑いがあります。

  • ギプスの装着後、痛みが強くなった場合や、新たにしびれや脱力が発生した場合は、医師に連絡してください。コンパートメント症候群の疑いがあります。

副子(スプリント)は一部の骨折を固定するために使用する固定具で、特に数日以内の固定に用いられます。副子をあてた状態で氷冷を行うことが可能です。

副子は、石膏、グラスファイバー、またはアルミでできた細長い板で、弾性包帯やテープで固定して使用します。この器具は腕や脚の周囲を覆い尽くさないため、患部が腫れた場合に膨らむ余地があります。そのため、副子を使用してもコンパートメント症候群の発生リスクは高まりません。いずれギプスを装着する損傷でも、最初に大体の腫れが引くまで副子で固定することがあります。

手の指の骨折には、内側に発泡素材を付けたアルミニウムの副子がよく使われます。

つり包帯は、肩や肘の骨折を支え快適にするために使われます。腕の重さで下向きに引っ張られることで、骨折した肩の骨の位置が整えられます。つり包帯は完全な固定が好ましくない場合に役立ちます。例えば、肩を完全に固定すると、場合によっては数日以内に、肩関節の周りの組織が硬くなり、肩を動かせなくなることがあります(凍結肩)。つり包帯は肩と肘の動きを制限しますが、手は動かすことができます。

固定帯は1枚の布または帯で、腕が外側に動かないよう、つり包帯と一緒に使用されます(特に夜間)。固定帯は患部を覆い、背中にも回して巻きます。

骨折した人には、ときに床上安静が必要になりますが(脊椎や骨盤に特定の骨折が起きた場合など)、床上安静を続けると血栓などの問題が生じることや( 床上安静による問題)、全身の健康状態の低下(デコンディショニング)が起こることもあります。したがって、床上安静は一般的には推奨されていません。

関節固定に用いられる一般的な技術

関節固定に用いられる一般的な技術

手術

骨折では、以下のような場合に、手術による整復と修復が必要です。

  • 開放骨折:皮膚が破れているため、細菌や異物が体内に入る可能性があります。医師が骨折した部位の周辺を入念に洗浄し、異物が残らないようにすべて除去します。こうすることで、感染症のリスクを低下させます。

  • 非観血的整復で元に戻せない転位骨折:骨片がずれていたり腱が挟まっていたりすると、体の外から折れた骨の位置を戻す処置(非観血的整復)ができない場合があります。また、非観血的整復で骨折した骨の位置を整えることができても、付着している筋肉に骨が引っ張られると、正しい位置にとどまりません。

  • 関節面の骨折:この骨折は関節内に及んでいて、関節を形成する骨端部の軟骨が骨折しています。後で関節炎が発生しないように、医師は骨折した軟骨をほぼ完璧に元の位置に戻す必要があります。手術で整復を行うと、より精密に復元することができます。

  • がんによってもろくなった骨の病的骨折:がんによりもろくなった骨が折れると、通常は治癒しません。折れた骨の位置がずれないよう、手術で予防する必要があります。さらに、手術で関節を安定させると、痛みが和らぎ、早く関節を動かすことができるようになります。

  • 手術が必要とされる骨折:特定の骨折(股関節や太ももの骨折など)は、手術で修復すると、治りが早く良好な結果をもたらすことが分かっています。

  • 手術しないと長期間の固定や床上安静が必要な骨折:手術によって、患者がベッドで安静にしなければならない期間が短縮します。例えば、股関節を骨折した患者は、手術後すぐに、しばしば手術した翌日にでも、ベッドから起き上がったり歩行を開始したりすることができます(歩行器の補助つき)。

  • 複雑骨折:動脈の損傷や神経の切断など、骨折に伴って起きた損傷を手術で修復することが必要な場合があります。

観血的整復内固定術(ORIF)では、骨の元の形状と配置を復元します。外科医はX線検査の画像を見て、骨の位置を整復する方法を確認します。骨折部位を切開した後、特殊な器具で骨片の位置を調整します。さらに金属製のワイヤー、ピン(釘)、スクリュー(ねじ)、ロッド(棒)、プレートなどを使い、骨片を適切な位置にしっかりと固定します。例えば、金属プレートは必要に応じて形状を整え、骨の外側にスクリューで固定します。ロッドは骨の一端から骨の内腔(骨髄)に挿入して使用します。こうした金属器具はステンレス鋼、高強度合金、チタンなどでできています。この15~20年以内に作られた器具は、MRI検査で使用される強力な磁石の影響を受けません。また、ほとんどの器具は空港のセキュリティ装置に引っかかりません。こうした器具は、体内にずっと留置しておくものもあれば、骨折が治った後に取り出されるものもあります。

人工関節置換術(関節形成術)は、通常、股関節を構成する太ももの骨(大腿骨)の上端部、または肩関節の一部である上腕骨の、損傷が大きい骨折に対して行います。

骨移植では、体の他の部位(骨盤など)から骨片を採取して使用します。折れた骨片同士の間隔が非常に大きい場合、直ちにこの処置が行われることがあります。治癒が遅れたり(癒合遅延)滞ったり(癒合不全)している場合に、後から行われることもあります。

リハビリテーションと予後(経過の見通し)

ほとんどの損傷は問題なく治癒します。しかしながら、適切な診断と治療にもかかわらず治癒しない場合もあります。

骨折が治癒する期間は、以下の要因によって、数週間から数カ月と様々です。

  • 骨折の種類

  • 骨折の場所

  • 患者の年齢

  • 治癒を遅らせる可能性がある病気の有無

例えば、小児は成人よりはるかに早く治癒し、特定の病気を患っている人は治りが遅くなります(糖尿病や末梢血管疾患のような血液循環の問題を引き起こす病気など)。

骨折が治り、患部だった部位にしっかり体重をかけることができるようになった後でも、患者は活動中に不快感を覚えることがあります。例えば、手首の骨折から2カ月ほど経過すれば、患部はもう使用できるまでに回復しているはずです。しかし、骨はまだ再形成(リモデリング)の途中です。そのため、最大1年間は強く握ると手首に痛みを感じることもあります。患者によっては、寒くなると損傷を負った部位が痛み、こわばる場合もあります。

固定していると、その部位を使わないため、関節は硬くなり、筋肉は衰えて細くなります。腕や脚をギプスで固定した場合は、患部の関節は週を追う毎に硬くなり、やがてその腕や脚の曲げ伸ばしが完全にはできなくなります。高齢者の場合は特に、そうした問題が急速に現れ、永続化してしまいます。例えば、数週間ずっと脚に長いギプス(太ももの上の方からつま先まで)をしたままでいると、普通は筋肉がかなりやせ落ちて、ギプスと太ももの間に手を入れられるすき間ができます。ギプスを取り外す頃には、その部分の筋肉が非常に衰え、明らかに細くなっています。

こわばりを予防するか、または最小限に抑え、筋力を維持するために、医師は手術(ORIF)を勧めることがあります。これは、手術を受ければ、その後比較的速やかに患部を動かせるようになるためです。また、関節可動域訓練筋力強化運動などの運動を日常的に行うことも推奨されます。骨折が治るまでの間に、体の他の部位を動かす運動を行ってもかまいません。

骨折が無事に治ったら、ギプスを取り外し、その腕や脚の運動を開始することができます。運動時には、腕や脚の感覚に注意を払い、負荷が強すぎる運動は避けるようにします。筋力が低下しすぎて運動できない場合や、癒合した骨が運動により分離して骨折が再発するおそれがある場合は、療法士が患者の腕や脚を動かします(他動運動— 肩の可動域の拡大)。しかし結局のところ、損傷した腕や脚の筋力を完全に取り戻すには、自分で筋肉を動かさなければなりません(能動運動)。

加齢に関連する注意点:筋肉、骨、その他の組織の損傷

65歳以上の人は、以下のような理由で骨折しやすくなります。

  • 骨粗しょう症を患い、骨折しやすくなる。

  • バランス、視力、感覚(主に足)、筋力、血圧調節に加齢に伴う正常な変化が生じ、高齢者が自ら転倒しやすくなる 。高齢者では、座ったり立ったりしたときに急な血圧低下が生じてめまいや立ちくらみが起こりやすくなる。

  • 転倒時に受け身がとれなくなる。

  • 薬の副作用(眠気、平衡感覚を失う、めまい)が出やすくなり、そのせいで転倒することがある。

高齢者では、骨折は前腕、上腕、太もも、脚の膝より下の部分といった長管骨の端部によく起こります。骨盤、脊椎(椎骨)、手首の骨折も、高齢者に多い骨折です。

高齢者では、次の理由により、若い人のようにすぐには治らず、回復が遅いことが少なくありません。

  • 高齢者は、より若い成人に比べて治癒が遅いのが通常です。

  • 一般的な高齢者は、若い人に比べると体力全般が衰えていて、柔軟性や平衡感覚にも欠けています。そのため、骨折によって生じる制約を補うことが難しく、日常生活に戻るのもひときわ大変です。

  • 高齢者は活動を行わなかったり、ギプス、副子、床上安静で動けなかったりすると、若い成人よりも急速に筋肉組織が失われます。そのため、動かさないようにすると筋力低下に至ることがあります。ときに、筋肉が永久的に短くなり、関節周辺の靱帯や腱などの組織に瘢痕(はんこん)組織ができることがあります。こうした状態(関節拘縮)になると、関節の動きが制限されます。

  • 高齢者は他の病態(関節炎や血行不良など)を抱えていることが多く、それが回復を妨げたり治癒を遅らせたりすることがあります。

軽度の骨折であっても、食事や着衣、入浴、さらには歩行に至るまで、日々の正常な活動を行うための能力が大きく損なわれ、特にけがをする前に歩行器を使っていた高齢者は大きな影響を受けます。

固定:固定は、特に高齢者で問題になります。

高齢者の固定は、次のような問題を起こしがちです。

床ずれは、ある部位への血流が途絶えたか、大きく減少したときに発生します。高齢者では、すでに腕や脚への血流量が少なくなっていることがあります。けがをした腕や脚の重みがギプスにかかると、血流がさらに少なくなり、床ずれが発生することがあります。床上安静が必要な場合は、ときに寝床に接している皮膚の領域に床ずれができます。こうした領域は、皮膚が破れる徴候がないか、他の人がこまめにチェックする必要があります。

高齢者に固定を行うと問題が起こりやすいため、高齢者の骨折の治療では、骨折を完全に復元することよりも、なるべく早期に日常生活に戻れるよう支援することを優先します。

固定を受ける期間を短縮し、日常生活への早急な復帰を支援するために、最近では股関節の骨折に対し、手術で修復や人工関節への置換を行うことが増えています。患者は多くの場合、手術の翌日といった早い時期から(通常は歩行器で支えながら)脚を動かして歩くよう促されます。理学療法(例えば、股関節骨折の後)も開始します。股関節の骨折を手術で治療しなければ、患者は体重を支えられる程度に回復するまで、何カ月もベッドで安静にする必要があります。

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