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脱臼の概要

執筆者:

Danielle Campagne

, MD, University of California, San Francisco

最終査読/改訂年月 2017年 11月
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脱臼とは、関節を形成している骨が完全に離れた状態です。亜脱臼では、関節の骨の位置が部分的にずれます。多くの場合、脱臼した関節は医師によって元の位置へ戻される(整復される)まで脱臼したままですが、自然に元に戻ることもあります。

  • 関節に起こる損傷は、ほとんどが外傷や酷使によるものです。

  • 脱臼した部位には痛みが生じ(特にその部位を使うとき)、通常は腫れ上がります。また、あざ、ゆがみや曲がり、ずれなどがみられることがあります。

  • 骨折、血管や神経の損傷、コンパートメント症候群、感染症、長期に及ぶ関節の問題など、他のけががあったり、発生したりすることもあります。

  • 症状、けがをした状況、身体診察の結果に基づいて脱臼が診断されることもありますが、ときにはX線検査などの画像検査が必要になることもあります。

  • 治療としては、通常は手で骨を元の位置へ戻し(整復)、固定しますが、手術が必要になることもあります。

  • 脱臼の多くでは、長く続く問題が起こることはありませんが、関節を安定化している靱帯や腱が弱くなったり断裂したりすることもあります。

  • 関節を固定すると、関節が硬くなるほか、筋肉が短くなったりやせ衰えたりすることがあります。

関節は筋骨格系の一部で、筋骨格系は骨と筋肉、およびそれらをつなぐ組織(軟部組織と呼ばれる靱帯や腱などの結合組織)で構成されます。筋骨格系は人体を形作り、安定させ、動作を可能にします。

脱臼では、関節の骨が完全に離れています。亜脱臼では、骨が部分的にずれているだけで、完全には離れていません。脱臼には、以下のような他の筋骨格系組織の損傷を伴うことがあります。

脱臼、骨折、ねんざ、挫傷(筋骨格系の損傷と総称されます)は、重症度も必要な治療も多種多様です。

脱臼には、開放性脱臼(皮膚が破れている)と閉鎖性脱臼(皮膚が破れていない)があります。

脱臼の予後(経過の見通し)と治療法は、脱臼の部位と重症度に応じて大きく異なります。

原因

脱臼や筋骨格系の組織の損傷が起こる最も一般的な原因は外傷です。外傷には次のような種類があります。

  • 転倒や自動車事故など、直接的な力が加わって起こるもの

  • 日常生活で行う動作や振ったり持ち上げたりする動作によって、繰り返し摩耗や裂傷が生じて起こるもの

  • 運動選手の過剰なトレーニングなどで起こる、体の使いすぎによるもの

脱臼の重症度は、原因となった外傷の種類と加わった力の強さに左右される部分があります。

特定のスポーツ中に発生する脱臼もあります( スポーツ外傷 スポーツ外傷 さらに読む )。

症状

脱臼が起こると、骨が明らかにずれることがあります。関節がゆがんでいたり曲がっているように見えることがあります。骨が異常に突出し、周囲の皮膚が伸びて膨らむことがあります。

脱臼により、以下の症状が生じます。

  • 痛み

  • 腫れ

  • 損傷部位で通常の動作ができない

  • あざまたは変色

  • 感覚を喪失している可能性(しびれや異常な感覚)

脱臼した部位の周辺は痛み、特に、損傷部位を使ったり体重をかけたりすると強く痛みます。また、触れると圧痛を感じます。

多くの場合、損傷した部位(腕、脚、手、手足の指など)はいつも通り動かすことができません。

脱臼した関節の周囲にあざができることがあります。あざは皮膚の下で出血が起きると現れます。皮下出血のあざは、最初は黒ずんだ紫色ですが、血液の分解と再吸収が進むにつれて、何日かかけて徐々に緑色や黄色になっていきます。

損傷した部位を動かすと強く痛む場合、患者は患部を動かそうとせず、また動かすことができません。話すことができない患者(幼児や高齢者など)では、脱臼があっても、その部位を動かすことを嫌がる以外に、徴候がみられない場合もあります。

合併症

脱臼は、他の問題(合併症)を伴っていたり引き起こしたりすることがあります。ただし、重篤な合併症はまれにしか発生しません。皮膚が破れていたり血管や神経が損傷していたりすると、重篤な合併症のリスクが高くなります。脱臼は、すばやく元の位置に修復された場合を除き、骨折よりも血管と神経の損傷が起きやすいけがです。

一部の合併症(血管や神経の損傷、感染症など)は、損傷後、最初の数時間から数日の間に発生します。ほかには、時間が経過するにつれて発生する合併症(関節や治癒の問題など)もあります。

骨折

脱臼の原因となったけがにより、さらに骨折も起きていることがあります。まれに、損傷を受けた筋肉が骨折のためにひどく腫れ上がり、損傷を受けた腕や脚への血流が低下したり遮断されたりすることがあります。血流が戻らなければ、その腕や脚がやがて冷たく感じるようになって青色になり、組織が損傷を受けたり壊死したりします。この病気はコンパートメント症候群 コンパートメント症候群 コンパートメント症候群は、特定の筋肉周囲の空間で圧力が高まった状態のことです。損傷を受けた筋肉がひどく腫れ上がり、血液の供給が遮断されたときに発生します。 けがをした腕や脚の痛みが増し、通常予想されるよりもひどくなるほか、症候群の悪化に伴ってその腕や脚にしびれ、腫れ、蒼白などがみられ、触ると冷たく感じることがあります。... さらに読む と呼ばれています。

血管の損傷

股関節や膝の脱臼は、脚への血流を妨げます。それにより、脚の組織に十分な血液が送られず(虚血)、組織が壊死することがあります。脱臼した股関節 股関節の脱臼 股関節の脱臼は、太ももの骨(大腿骨)の球状の頭部が寛骨(骨盤の骨)の丸いくぼみから外れることで起こります。 股関節の脱臼は通常、曲げた膝に大きな力が加わり、大腿骨の頭部が後方に押されたとき(例えば、自動車事故の際に膝がダッシュボードにぶつかった場合)に起こります。 股関節脱臼の患者は、しばしば他のけがも負っています。... さらに読む には壊死が起こりやすく、すぐに整復を行わなければ特にその傾向が強まります。股関節が脱臼すると、太ももの骨の上端(股関節の一部で大腿骨頭と呼ばれる)に血液を供給する血管が引き伸ばされます。その結果、太ももの骨のこの部分に十分な血液が供給されません。膝が脱臼すると、膝から下に十分な血液が供給されなくなることがあります。血液の供給不足によって大量の組織が壊死すると、脚を切断する必要性が出てきます。肘にある種の損傷を受けたときにも、前腕への血流が妨げられ、同様の問題が生じることがあります。血液の供給が阻害されても、損傷後の数時間は症状が現れないケースもあります。

出血

重度の脱臼や外傷による脱臼によって、その周囲の組織が損傷を受け内出血が生じることがあります。脱臼した骨が皮膚を破り、外出血を引き起こすこともあります。

神経の損傷

関節の脱臼に伴って、神経が伸ばされたり、打撲を受けたり、押しつぶされたりすることがあります。直接的な打撃によって、神経が打撲したり押しつぶされたりします。打撲よりも、押しつぶされた方が重い損傷につながります。通常、こうした損傷は自然に治癒しますが、回復に要する期間は、損傷の重症度に応じて数週間から数カ月、または数年と様々です。

まれに、神経が断裂することがあります。断裂した神経は自然に治らないため、手術で修復する必要があるでしょう。

神経の損傷は、完全には治癒しないこともあります。

感染症

関節の問題

脱臼により、関節部の骨の末端(関節面)にある軟骨が損傷することがあります。正常なときには、この滑らかで強い保護組織のおかげで、関節をスムーズに動かすことができます。 関節軟骨が損傷を受けると瘢痕(はんこん)ができることが多く、それにより変形性関節症 変形性関節症 変形性関節症は軟骨と周囲の組織の損傷を伴う慢性疾患で、痛み、関節のこわばり、機能障害を特徴とします。 関節の軟骨と周囲の組織の損傷による関節炎は、加齢に伴い、非常によくみられるようになります。 痛みや腫れ、骨の過剰な増殖がよくみられ、起床時や動かずにいた後に生じて30分以内に治まるこわばり(特に関節を動かしていると治まりやすい)も一般的で... さらに読む 変形性関節症 が生じて、関節が硬くなり可動域が狭まる場合があります。膝、肘、肩の関節は脱臼後に硬くなる可能性が特に高く、とりわけ高齢者で硬くなりがちです。さらに、脱臼の原因となったけがによって、靱帯や腱といった関節を安定させている組織が弱くなったり断裂したりすることがあります。

関節が硬くなるのを予防し、できるだけ正常な動きを維持するには、通常は理学療法が必要です。損傷した軟骨の修復には、しばしば手術が必要です。そうした手術の後は、軟骨に瘢痕(はんこん)ができにくく、できたとしても、軽いものになる傾向があります。断裂した靱帯や腱を修復するために、手術が必要になることがあります。

診断

  • 医師による評価

  • X線検査による骨折の特定

  • ときにMRIまたはCT検査

急に脱臼が起きた場合は、病院の救急外来を受診するか、主治医に電話するか、問題(痛みや腫れなどの症状)が自然に治まるか和らぐまで様子を見るかを決定しなければなりません。

次のいずれかに当てはまる場合は、救急車などを利用して救急外来を受診する必要があります。

  • 問題が明らかに重篤である(自動車事故による負傷や、患部を使うことができない場合)。

  • 重度の脱臼か軟部組織に別の重度の損傷が疑われる。

  • 骨折が疑われる(例外として、手足の指のけが)。

  • 複数のけががある。

  • 合併症の症状がみられる。例えば、患部の感覚が失われている、患部を正常に動かすことができない、皮膚が冷たく感じたり色が青くなっていたりする、患部に力が入らないなど。

  • 患部に体重をかけたり患部を使用することができない。

  • 負傷した関節が不安定なように感じる。

次の場合には医師に電話してください。

  • 損傷によって痛みや腫れが生じているが、その部位に骨折や重度の損傷があるようには思えない。

上記のいずれにも該当せず、損傷が軽いと思われる場合は、かかりつけ医に電話するか、問題が自然に治まるかどうか様子を見てもかまいません。

深刻な事故で損傷を負った場合は、医師は最優先で次の対応をとります。

損傷の説明

医師は、患者(または目撃者)に何が起こったのか説明を求めます。しかし、当人がけがをしたときのことを思い出せない場合や、正確に説明できない場合は少なくありません。損傷の発生状況が分かれば、医師が損傷の種類を判定する際の手がかりになります。医師は、損傷時に関節に力が加わった向きについても質問します。

医師はさらに、いつ痛み始めたかについても尋ねます。負傷した直後から痛みがある場合は、脱臼、骨折、または重度のねんざが起きている可能性があります。数時間から数日経った後に痛みが始まった場合は、たいてい軽度の損傷です。損傷の程度から想定される以上に痛みが強い場合や、負傷後の数時間にどんどん痛みが増してきた場合は、コンパートメント症候群が発生しているか、血流が妨げられているかもしれません。

身体診察

身体診察では、以下の点を調べます(優先度の高い順)。

  • 患部付近の血管に対する損傷の確認

  • 患部付近の神経に対する損傷の確認

  • 患部の診察と動きの評価

  • 患部の上方と下方に位置する関節の診察

血管の損傷と血流障害の徴候がないか確認するために、医師は脈拍および皮膚の色と温度を調べます。血流が阻害されている場合(コンパートメント症候群などで起こります)、脈拍が最終的に消えるか弱くなり、皮膚が青白く冷たくなります。多量の血が失われた人では低下する血圧を測定します。

神経の損傷がないか確認するために、患者が正常に筋肉を動かせるかどうかを検査します。患者が患部の筋肉を動かせなければ、その筋肉を制御する神経(運動神経)が損傷している可能性があります。医師は皮膚の感覚が正常かどうかも評価し、患者にピリピリ、チクチクする、しびれるといった異常な感覚がないか尋ねます。感覚が異常だったり弱まったりしている場合、皮膚の感覚を司る神経(感覚神経)が損傷している可能性があります。

医師はそっと患部に触れ、骨の位置がずれているかどうか、圧痛があるかどうかを確認します。腫れやあざの有無も調べます。さらに、けがをした部位を使うことができるか、体重をかけたり動かしたりすることができるかどうかを質問します。

医師は、関節をゆっくり動かし安定性を検査しますが、骨折か脱臼の可能性がある場合は、最初にX線検査を行い、関節を動かしても安全かどうかを確認します。また、損傷した部位を動かしたときに、ギシギシまたはコリコリなどという音(捻髪音)がするかどうかを調べます。そのような音があれば、骨折が疑われます。けがをした関節を動かしてみることは、医師が損傷の重症度を判定するために役立ちます。

さらに医師は、損傷した関節の上または下に位置する関節を調べます。

負荷試験を行って損傷した関節の安定性を評価することがあります。しかし、骨折か脱臼の疑いがある場合は、それらの損傷の有無を調べるX線検査を行うまで負荷試験は延期します。関節に負荷をかけるために、医師は関節を正常な可動域とは通常垂直になる方向にそっと動かします。関節の感覚が非常に不安定な場合、脱臼(または重度の靱帯の損傷)が疑われます。

痛みや筋肉のけいれんのために診察ができない場合は、鎮痛薬や筋弛緩薬を経口または注射で投与したり、患部に局所麻酔薬を注射したりすることがあります。

検査

脱臼などの筋骨格系の損傷を診断するために、以下の画像検査が行われます。

  • X線検査

  • MRI(磁気共鳴画像)検査

  • CT(コンピュータ断層撮影)検査

X線検査は脱臼のほか骨折の診断に有用です。X線検査では骨(と損傷した関節周囲の体液)しか撮影されないため、靱帯や腱、筋肉の損傷を特定する場合には役立ちません。

骨の位置がどうなっているかを見るために、X線検査は通常、少なくとも2つの角度から行われます。

CT検査MRI検査は、脱臼を伴うことがある微細な骨折の有無を調べるために行われることがあります。

脱臼から生じることがある他の損傷の有無を調べるため、ほかにも以下のような検査が行われる場合もあります。

治療

  • 重篤な合併症があればその治療

  • 痛みの緩和

  • 保護、安静、氷冷、圧迫、挙上(PRICE)

  • 本来の位置から外れた部分の整復

  • 固定(通常は副子またはギプスを使用)

  • ときに手術

脱臼の重篤な合併症は、すぐに治療する必要があります。治療せずにいると、合併症が悪化し、痛みが強くなったり機能障害が起こったりする可能性が高くなります。また、コンパートメント症候群などの一部の合併症には緊急の治療が必要です。治療をしなければ、こうした合併症は重篤な病態を引き起こし、死につながることもあります。

骨折など、重度の損傷を負ったと思ったときは、救急外来を受診してください。歩けない場合や複数の損傷を受けている場合は、救急車を呼んでください。救急隊が到着するまでには、以下の処置を行うべきです。

  • 負傷した腕や脚が動かないようにし(固定)、身近なものを利用した応急の副子、つり包帯、枕などで支えます。

  • 腫れを防ぐために、患部の腕または足を心臓より上に、なるべく高く上げておきます。

  • 氷冷を行い(タオルや布で氷を包む)、痛みと腫れを抑えます。

重篤な損傷の治療

救急外来では、医師が即座の治療を必要とする損傷の有無を確認します。

切断された神経も手術で修復しますが、この手術は必要に応じて、負傷の数日後に延期することがあります。神経の打撲や損傷は、自然に治癒することがあります。

ほとんどの中等度と重度の脱臼、特に非常に不安定なものは、すぐに副子で固定します。この処置は、痛みの緩和と、不安定な脱臼によるそれ以上の軟部組織の損傷を予防するのに役立ちます。

痛みの緩和

PRICE

PRICEとは、保護(protection)、安静(rest)、氷冷(ice)、圧迫(compression)、挙上(elevation)の頭文字をとった治療法です。

保護は、元の損傷をより悪化させるけがの予防に役立ちます。一般的には、副子などの装具をつけます。

安静はそれ以上の損傷を防ぎ、治癒を早めるために役立ちます。患者は活動を控えて、患部に体重をかけず、損傷部を使用しないように過ごす必要があります。例えば、松葉杖を使用する、接触を伴うスポーツに参加しない、などが必要になるかもしれません。

氷冷圧迫は、腫れと痛みを最小限に抑えます。氷はビニール袋に入れるかタオルや布に包み、1回15~20分にわたって患部にあてます。最初の24~48時間はできるだけ頻繁に冷やします。損傷に対する圧迫は通常、弾性包帯で行います。

損傷のある腕または脚を挙上(上げておくこと)すると、損傷部から体液が排出され、腫れの軽減につながります。最初の2日間、患部のある腕や脚を心臓より高く上げておきます。

48時間が過ぎたら、定期的に1回15~20分、患部を温めるようにします(温熱パッドを使用するなど)。温めることで痛みが和らぐ場合があります。しかし、温熱や氷冷を行うことが最適かどうかは明らかになっておらず、最適な方法が人によって異なる可能性もあります。

整復

脱臼を正常な位置に戻します(整復または復元)。

整復は通常、手術ではなく、施術者が患者の脚や腕を引っ張ったり回したりして行います(非観血的整復)。整復が終わったら、通常はX線検査を行い、患部が正常な位置に戻っているかどうかを確かめます。

  • 小さな脱臼(手足の指など)の非観血的整復:リドカインなどの局所麻酔薬を患部の近くに注射するだけで、十分な場合があります。

  • 大きな脱臼(腕、肩、脚の膝より下の部分)の非観血的整復:静脈から鎮静薬や鎮痛薬を投与します。鎮静薬は眠気を催しますが、意識を失うことはありません。患者に局所麻酔薬を注射することもあります。例えば、肩の脱臼の患者では、肩関節にリドカインを注射することがあります。

  • 観血的整復:患者に注射またはフェイスマスクを介して全身麻酔薬を投与し、意識を失わせます。この処置は手術室で行われます。

固定

骨が正しい位置に戻ったら、損傷部を動かさないように固定する必要があります。

脱臼の非観血的整復を行った後は、通常はギプス、副子、つり包帯を使用します。関節を正常な位置に戻した後、脱臼した関節につり包帯や副子をつけるだけでよい場合もあります。

固定を行うと、周辺の組織に対するさらなる損傷が防がれ、痛みを軽減し治癒を助けます。固定はほとんどの中等度または重度の脱臼に有用です。損傷の両側に位置する関節が固定されます。

固定が長期に及ぶと(例えば、若い成人では数週間以上)、関節が硬くなり、こわばりが永続化することがあるほか、筋肉が短くなったり(拘縮の原因)、縮んだり(萎縮)することもあります。また、血栓が発生することもあります。こうした問題が急速に発生し、拘縮が永続化することがあります(通常は高齢者でみられる)。そのため、医師はできるだけ早くその部分を動かすよう高齢者に勧めます。

ギプスは、通常、数週間にわたって固定しなければならない損傷に対して使用します。

ギプスで固定するときは、医師が患部を布で巻き、次に軟らかい綿素材のパッドをあてて、皮膚を圧迫や摩擦から保護します。この上に、石膏を付着させた綿包帯やグラスファイバーテープを濡らして巻き、このような包帯やテープは乾くと硬くなります。石膏は、ぴったりと形に沿い、体との摩擦が生じる可能性は高くありません。グラスファイバー製のギプスは、より強く軽量で長持ちします。患部の腫れは1週間程度で引きます。その後、患部にぴったりと合うよう、石膏のギプスをグラスファイバーのギプスに交換することがあります。

ギプスを装着した患者は、その取り扱いについての特別な指示を受けます。ギプスを正しく取り扱わないと、問題が起こることがあります。例えば、ギプスを濡らし、その下の保護パッドまで湿らせてしまうと、完全に乾かないことがあります。その結果、皮膚がふやけて破れ、潰瘍ができることがあります。また、石膏ギプスは濡れると崩壊することがあり、そうなると患部の保護や固定ができなくなります。

ほかにも、ギプスをなるべく心臓と同じ高さかそれより高く上げておくようにとの指示があります(特に最初の24~48時間に重要)。加えて、定期的に手の指を曲げ伸ばししたり、足の指を動かしたりする必要があります。これらの対策は、患部の腕や脚から血液を流し出す効果があり、腫れの予防につながります。

ギプスの取扱い

  • 入浴時はビニール袋でギプスを包み、口の部分を輪ゴムかテープできっちり留めて密封するか、ギプス用の防水カバーで覆います。そうしたカバーは市販されていて、使いやすく信頼性の高い器具です。ギプスが濡れると、ギプスの内側のパッドが湿ります。ドライヤーである程度は乾かすことができます。十分に乾かなければ、ギプス内で皮膚が損傷しないように、新しいギプスに取り換える必要があります。

  • ギプス内には決して、(かゆいところをかくなどの目的で)異物を入れてはいけません。

  • ギプス周囲の皮膚の状態を毎日チェックし、赤くなったりヒリヒリしたりする場合は医師に報告してください。

  • ギプスの縁を毎日チェックし、粗くなっているようであれば、粘着テープ、ティッシュ、布などの軟らかい素材を詰めて、その縁で皮膚を傷つけないように保護します。

  • 就寝時には、ギプスの縁が皮膚を圧迫したり皮膚に食いこんだりしないように、小さな枕やクッションなどを使って適切な位置に保ちます。

  • 医師の指示に従い、定期的にギプスを高い位置に上げて腫れを防ぎます。

  • ギプスの装着後、痛みが長く続く場合や、強く締めつけられる感じがある場合は、すぐに医師に相談します。これらの症状が床ずれや腫れによって生じた場合は、直ちにギプスを外さなければならないことがあります。

  • ギプスから臭いがするときや、発熱が生じたときは、医師に連絡してください。感染症の疑いがあります。

  • ギプスの装着後、痛みが強くなった場合や、新たにしびれや脱力が発生した場合は、医師に連絡してください。コンパートメント症候群の疑いがあります。

副子は一部の安定している脱臼を固定するために使用する固定具で、特に数日以内の固定に用いられます。最初の治療時に副子を使用して、中等度と重度の脱臼、特に不安定な脱臼を、患者を完全に評価できるようになるまで固定することもあります。副子をあてた状態で氷冷を行うことが可能で、ギプスを使用した場合よりも患部を動かすことができます。

副子は、石膏、グラスファイバー、またはアルミでできた細長い板で、弾性包帯やテープで固定して使用します。この器具は腕や脚の周囲を覆い尽くさないため、腫れが生じても膨らむ余地があります。そのため、副子を使用してもコンパートメント症候群の発生リスクは高まりません。いずれギプスを装着する損傷でも、最初に大体の腫れが引くまで副子で固定することがあります。

つり包帯は、それ自体がある程度のサポートになります。つり包帯は完全な固定が好ましくない場合に役立ちます。例えば、肩を完全に固定すると、場合によっては数日以内に、肩関節の周りの組織が硬くなり、肩を動かせなくなることがあります(凍結肩)。つり包帯は肩と肘の動きを制限しますが、手は動かすことができます。

固定帯は1枚の布または帯で、腕が外側に動かないよう、つり包帯と一緒に使用されます(特に夜間)。固定帯は患部を覆い、背中にも回して巻きます。

関節固定に用いられる一般的な技術

関節固定に用いられる一般的な技術

手術

ときに、脱臼が非観血的整復では整復できず、手術で関節を正常な位置に戻さなければならないことがあります。関節の位置が元に戻れば、多くの場合は追加の手術は不要です。

脱臼を伴う骨折の治療、関節の安定化、壊死した組織片の関節からの除去のために、手術が必要になることもあります。

リハビリテーションと予後(経過の見通し)

多くの脱臼とそれに関連する損傷は問題なく治癒します。しかしながら、適切な診断と治療にもかかわらず治癒しない場合もあります。

損傷が治癒する期間は、以下の要因によって、数週間から数カ月と様々です。

  • 損傷の種類

  • 損傷の場所

  • 患者の年齢

  • 他の病気の有無

例えば、小児は成人よりはるかに早く治癒し、特定の病気を患っている人は治りが遅くなります(糖尿病や末梢血管疾患のような血液循環の問題を引き起こす病気など)。

損傷が治り、患部だった部位にしっかり体重をかけることができるようになった後でも、患者は活動中に不快感を覚えることがあります。患者によっては、寒くなると損傷を負った部位が痛み、こわばる場合もあります。

固定していると、その部位を使わないため、関節は硬くなり、筋肉は衰えて細くなります。腕や脚をギプスで固定した場合は、患部の関節は週を追う毎に硬くなり、やがてその腕や脚の曲げ伸ばしが完全にはできなくなります。高齢者の場合は特に、そうした問題が急速に現れ、永続化してしまいます。

損傷が十分に治り関節の固定を解いたら、その腕や脚の運動を開始することができます。運動時には、腕や脚の感覚に注意を払い、負荷が強すぎる運動は避けるようにします。筋力が低下しすぎて動かせない場合は、療法士が患者の腕や脚を動かします(他動運動 肩の可動域の拡大 理学療法は、リハビリテーションの中心となるもので、運動療法と整体を行います。関節や筋肉の機能を改善し、患者がより容易に立ち、バランスをとり、歩き、階段を昇れるようにします。理学療法では以下のような訓練が行われます。 関節可動域訓練 筋肉強化運動 協調・バランス運動訓練 歩行訓練 さらに読む )。しかし結局のところ、損傷した腕や脚の筋力を完全に取り戻すには、自分で筋肉を動かさなければなりません(能動運動)。

可動域や筋力を改善する運動と、損傷した関節を強化し安定化する運動が、脱臼の再発と長期にわたる問題の予防に役立ちます。

加齢に関連する注意点:脱臼

高齢者では、次の理由により、若い人のようにすぐには治らず、回復が遅いことが少なくありません。

  • 一般的な高齢者は、若い人に比べると体力全般が衰えていて、柔軟性や平衡感覚にも欠けています。そのため、脱臼によって生じる制約を補うことが難しく、日常生活に戻るのもひときわ大変です。

  • 高齢者は活動を行わなかったり、ギプスや副子で動けなかったりすると、若い成人よりも急速に筋肉組織が失われます。そのため、動かさないようにすると筋力低下に至ることがあります。ときに、筋肉が永久的に短くなり、関節周辺の靱帯や腱などの組織に瘢痕(はんこん)組織ができることがあります。こうした状態(関節拘縮)になると、関節の動きが制限されます。

  • 高齢者は他の病態(関節炎や血行不良など)を抱えていることが多く、それが回復を妨げたり治癒を遅らせたりすることがあります。

軽いけがであっても、食事や着衣、入浴、さらには歩行に至るまで、日々の正常な活動を行うための能力が大きく損なわれ、特にけがをする前に歩行器を使っていた高齢者は大きな影響を受けます。

固定:固定(例えば、床上安静が必要な場合)は、特に高齢者で問題になります。

高齢者の固定は、次のような問題を起こしがちです。

床ずれは、ある部位への血流が途絶えたか、大きく減少したときに発生します。高齢者では、すでに腕や脚への血流量が少なくなっていることがあります。けがをした腕や脚の重みがギプスにかかると、血流がさらに少なくなり、床ずれが発生することがあります。床上安静が必要な場合は、ときに寝床に接している皮膚の領域に床ずれができます。こうした領域は、皮膚が破れる徴候がないか、他の人がこまめにチェックする必要があります。

高齢者に固定を行うと問題が起こりやすいため、高齢者の脱臼や筋骨格系に生じた損傷の治療では、なるべく早期に日常生活に戻れるよう支援することを優先します。

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