
ミトコンドリア 細胞 細胞は生体の最小単位と考えられがちですが、1つの細胞は、さらに小さな独自の機能をもった部品がたくさん集まって構成されています。人間の細胞の大きさは様々ですが、いずれも非常に小さなものです。最も大きな細胞である受精卵でさえ、小さくて肉眼で見ることはできません。 ミトコンドリアは細胞にエネルギーを供給する微少な構造物です。ミトコンドリアには内膜と外膜があります。内膜にはひだ状に折り込まれた部分(クリステ)が数多く存在します。... さらに読む はすべての細胞の内部に存在する小さな構造物で、細胞にエネルギーを供給します。ミトコンドリアは赤血球を除くすべての細胞に存在します。細胞内の他の構造物とは異なり、ミトコンドリア内には母親からのみ受け継がれる独自の遺伝物質の一部が存在します。ミトコンドリアのその他の遺伝物質は、細胞の残りの遺伝物質とともに細胞核内にあり、小児が病気を発症するにはそれぞれの親から異常を受け継ぐ必要があります。
ミトコンドリア病では、ミトコンドリアが適切に機能しなくなり、細胞内で生成されるエネルギーが徐々に少なくなります。その結果、細胞が傷害されたり死滅したりして、体のシステムが適切に機能しなくなります。
ミトコンドリアは体内の多くの器官にエネルギーを供給しています。これらの器官の中でも、脳、神経、筋肉、網膜などは、他の器官よりも多くのエネルギーを必要とします。これらの高いエネルギーを要する器官は、ミトコンドリア病の影響を特に受けやすくなっています。どの細胞が影響を受けるかによって、以下のように様々な問題がみられます。
筋肉の緊張が極度に低下する(筋緊張低下)
眼の筋肉の筋力低下(眼筋麻痺)
ミトコンドリアが適切に機能しないと、乳酸と呼ばれる老廃物が血液中に蓄積することがあります(乳酸アシドーシスと呼ばれます)。この乳酸の蓄積は、ミトコンドリア病を他の代謝性疾患と区別するのに役立ちます。ミトコンドリア病には次に挙げるような病気が含まれます。
レーベル遺伝性視神経症(LHON)
レーベル遺伝性視神経症は、両眼の進行性の視力障害を引き起こすことがあります。患者の中には、心臓の異常または筋肉の症状(不随意な筋収縮、筋力低下、筋肉のけいれんなど)をもつ人もいます。この病気は男性に多くみられ、症状はしばしば20代または30代で始まります。
有効な治療法はありません。しかし、飲酒量の制限(アルコールがミトコンドリアに悪影響を及ぼすため)と禁煙が症状の進行を遅らせる可能性があります。
リー症候群
リー症候群の乳児には、哺乳不良、頭の動きをコントロールできない、発達の遅れといった症状がみられることがあります。嘔吐、むずかり、絶え間なく泣く、病気の際に悪化するけいれん発作といった症状がみられることもあります。この病気は、生後3カ月から2歳までに始まります。まれに、青年期や成人期に始まることもあります。病気が進行するにつれて、全身の筋力低下、筋肉の張りの低下、乳酸アシドーシスのエピソード(呼吸と腎臓の異常につながる可能性があります)などの症状が現れることがあります。
リー症候群に有効な治療法はありません。ただし、特定の種類のリー症候群を患っているごく少数の小児は、 チアミン チアミン欠乏症 チアミン欠乏症(脚気やその他の問題を引き起こす)は、発展途上国で食事が主に白米や高度に精製された炭水化物から成る人や、アルコール依存症患者に最も多くみられます。 主として白小麦粉や白砂糖、その他の高度に精製された炭水化物から成る食事は、チアミン欠乏症の原因となることがあります。 最初は疲労や易怒性などの漠然とした症状がみられますが、重度の欠乏症(脚気)では神経、筋肉、心臓、脳に影響が及ぶことがあります。... さらに読む (ビタミンB1)のサプリメントの恩恵を受けます。
ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作(MELAS)
MELASの小児には、筋力低下と筋肉痛、繰り返す頭痛、難聴、食欲不振、嘔吐、けいれん発作がみられることがあります。ほとんどの患者は、40歳以前に 脳卒中のようなエピソード 脳卒中の概要 脳卒中は、脳に向かう動脈が詰まったり破裂したりして、血流の途絶により脳組織の一部が壊死し(脳梗塞)、突然症状が現れる病気です。 脳卒中のほとんどは虚血性(通常は動脈の閉塞によるもの)ですが、出血性(動脈の破裂によるもの)もあります。 一過性脳虚血発作は虚血性脳卒中と似ていますが、虚血性脳卒中と異なり、恒久的な脳損傷が起こらず、症状は1時間... さらに読む を発症します。これらのエピソードは、多くの場合、体の片側の一時的な筋力低下、意識の変容、視覚の異常、けいれん発作、片頭痛に似た激しい頭痛をもたらします。脳卒中のようなエピソードを繰り返すと、次第に脳が損傷され、視力障害、運動障害、認知症をきたす可能性があります。MELASの症状は、ほとんどの場合、小児期後期や青年期に現れますが、どの年齢でも発生する可能性はあります。
MELASに対する特別な治療法はありませんが、症状を管理するために様々な薬剤や治療が使用されます。