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ダウン症候群(21トリソミー)

執筆者:

Nina N. Powell-Hamilton

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2018年 11月
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概要
本ページのリソース

ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。

染色体 染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む 染色体 は、細胞の中にあってDNA DNA 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む DNA や多くの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体 遺伝子と染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む 遺伝子と染色体 )。遺伝子には、体がどのように機能するかを定めた詳細な指示が記録されています。

ある染色体が1本余分に存在し、合計で3本になった状態をトリソミーといいます( 染色体異常症と遺伝子疾患の概要 染色体異常症と遺伝子疾患の概要 染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。 人間の正常な細胞は、精子と卵子を除いて、いずれも23対、計46本の染色体をもっています。... さらに読む )。新生児で最もよくみられるトリソミーは、21トリソミー(ヒトで最も小さい染色体である21番染色体が3本ある状態)です。胚の段階では、あらゆる染色体でトリソミーが起きる可能性がありますが、トリソミーが起きる染色体が大きいものであるほど、最終的に流産 流産 流産とは、妊娠20週までに人為的でない原因によって胎児が失われることです。 胎児側の問題(遺伝性疾患や先天異常など)によっても母体側の問題(生殖器の構造的異常、染色体異常、感染症、コカインの使用、飲酒、喫煙、けがなど)によっても流産が起こりますが、多くの場合、原因は不明です。 出血や筋けいれんが起こることがありますが、特に妊娠して週数が経過している場合にはよく起こります。 医師は子宮頸部を診察し、通常は超音波検査も行います。... さらに読む 死産 死産 死産とは妊娠20週以降に胎児が死亡することです。 胎盤が子宮から剥がれるのが早すぎた結果として起こる死産が最も一般的です(常位胎盤早期剥離)。ときに、死産の原因が明らかでないこともあります。 母体に以下のような状態があると、胎児が死亡する可能性があります。 コントロール不良の糖尿病 妊娠高血圧腎症(妊娠中に発症する高血圧の一種) さらに読む になる可能性が高くなります。ダウン症候群の症例の約95%は21トリソミーが原因です。そのため、ダウン症候群の人のほとんどは47本の染色体をもっています。ダウン症候群の人の残り5%は、46本の染色体をもっていますが、21番染色体の余分にある部分が他の染色体と結合する異常(転座といいます)のため、異常ではあるものの過剰ではない染色体が形成されています。

余分な染色体が父親から受け継がれることはまれで、1組のカップルに余分な染色体をもつ子どもができるリスクは、母親の年齢とともに徐々に高くなっていきます。しかし、比較的低い年齢での出産が大半を占めているため、ダウン症候群の乳児のうち35歳以上の女性が出産した乳児の割合は20%ほどしかありません。ダウン症候群の女性が妊娠する子どもは、50%の確率でダウン症候群となります。しかし、この症候群をもつ胎児の多くは自然流産になります。ダウン症候群の男性は、モザイク型のダウン症候群である場合を除き、生殖能力がありません。モザイク型のダウン症候群の人は、2種類の細胞を併せもっています。具体的には、通常通り46本の染色体をもつ細胞と、47本の染色体をもつ細胞が混在しています。染色体の数が47本の細胞には、余分な21番染色体が1本含まれています。

ダウン症候群の合併症

ダウン症候群では、体の多くの部分が影響を受けます。必ずしもすべての合併症が起きるわけではありません。

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症状

ダウン症候群では、一般的に身体と精神の発達が遅れます。

身体的な発達

ダウン症候群の乳児は、おとなしく受動的な傾向があり、めったに泣きません。多くの乳児に心臓と消化器の先天異常がみられ、筋肉の緊張が若干低下しています。ダウン症候群の小児は頭が小さく、顔は広く扁平で、つり上がった眼と低い鼻をもつ傾向があります。しかし、出生時には正常に見え、幼児期に特徴的な顔つきになる場合もあります。舌が大きいこともあります。舌が大きいことに加えて、顔の筋肉の緊張が低いため、しばしば口を開いたままになります。首の後ろの皮膚が余っていることもあります。耳が小さくて丸く、頭部の低い位置に付いています。

手は一般的に短く幅広で、手のひらを横切る1本のしわがみられます。指は短く、第5指の関節は3つではなく2つしかないことが多く、内側に曲がっています。足趾の第1趾と第2趾の間が広くなっています(サンダルギャップ)。ダウン症候群の小児はしばしば低身長で、肥満になるリスクが高いです。

ダウン症候群の小児の約半数では、出生時から心臓の異常 心臓の異常の概要 120人に1人は心臓に異常をもって生まれます。重症の場合もありますが、多くはそうではありません。心臓の異常には心臓壁、弁、心臓に出入りする血管の異常形成などがあります。 哺乳不良、呼吸困難、青みがかった皮膚、正常に発育しない、あるいは正常に運動できない、速い心拍、失神のほか、乳児が成長するに従って運動中の胸痛といった症状がみられます。... さらに読む がみられます。約5%の小児では消化管の問題がみられます。ヒルシュスプルング病 ヒルシュスプルング病 ヒルシュスプルング病では、腸管のリズミカルな収縮をコントロールする神経ネットワークが大腸の一部分で失われています。その結果、腸閉塞の症状が起こります。 この異常は大腸に起こり、腸管が正常に収縮しません。 典型的な症状としては、新生児では胎便の排泄が遅い、乳児では嘔吐、食べるのを嫌がる、腹部の膨隆などがあります。 直腸生検と直腸内圧の測定に基づいて診断します。 食べものが正常に腸管を通過するための手術を行います。 さらに読む セリアック病 セリアック病 セリアック病は、小麦や大麦、ライ麦に含まれるタンパク質のグルテンに対する遺伝性の不耐症であり、小腸の粘膜に特徴的な変化を起こし、吸収不良が生じます。 タンパク質のグルテンの摂取後に、腸の粘膜に炎症が生じます。 症状としては、成人では下痢、低栄養、体重減少などがあります。 小児でみられる症状としては、腹部膨満、非常に強い悪臭がする大量の便、成長不良などがあります。 診断は、典型的な症状と小腸の粘膜から採取した組織サンプルの検査結果に基づい... さらに読む セリアック病 も、この症候群の小児で通常より多くみられます。難聴がみられることもあり、耳の感染症を繰り返す傾向があります。また、視覚障害を起こす傾向もあり、白内障がみられることもあります。首の関節が不安定になっていることもあり、それにより脊髄が圧迫される結果、歩き方と腕や手の使い方に変化が生じたり、排便や排尿の機能障害、筋力の低下などが起きたりします。ダウン症候群の人の多くが甲状腺疾患(甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの分泌が不十分になる病気で、身体の重要な機能が働く速度が低下します。 顔の表情が乏しく、声がかすれ、話し方はゆっくりになり、まぶたは垂れて、眼と顔が腫れます。 通常は1回の血液検査で診断が確定されます。 甲状腺機能低下症の人は、生涯にわたって甲状腺ホルモンの投与を受ける必要があります。 (甲状腺の概要も参照のこと。) さらに読む 甲状腺機能低下症 など)と糖尿病を発症します。ダウン症候群の人では、感染症と白血病の発生リスクが高くなっています。

精神的な発達

ダウン症候群の小児の知能指数(IQ)には幅がありますが、正常な小児のIQが平均100であるのに比べ、ダウン症候群の小児の平均値はおよそ50です。ダウン症候群の小児では、しばしば運動面や言語面に発達の遅れがみられますが、その程度は様々です。小児期には、注意欠如・多動症 注意欠如・多動症(ADHD) 注意欠如・多動症(注意欠陥/多動性障害とも呼ばれます)(ADHD)は、注意力が乏しいか注意の持続時間が短い状態、年齢不相応の過剰な活動性や衝動性のため機能や発達が妨げられている状態、あるいはこれら両方に該当する状態です。 ADHDは脳の病気で、生まれたときからみられる場合もあれば、出生直後に発症する場合もあります。 主に注意を持続したり、集中したり、課題をやり遂げたりすることが困難な場合もあれば、過剰に活動的で衝動的な場合もあり、その両... さらに読む (注意欠陥/多動性障害とも呼ばれます)を思わせる行動がしばしばみられます。ダウン症候群の小児は自閉的行動のリスクが高く、特に知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準以下であり、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む が重い小児ほど可能性が高くなります。成人( うつ病 うつ病 うつ病とは、日常生活に支障をきたすほどの強い悲しみを感じているか、活動に対する興味や喜びが低下している状態です。喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。 遺伝、薬の副作用、つらい出来事、ホルモンなど体内の物質の量の変化、その他の要因がうつ病の一因になる可能性があります。 うつ病になると、悲しみに沈み、動作が緩慢になり、以前は楽しんでい... さらに読む )と小児( 小児と青年におけるうつ病および気分調節症 小児と青年におけるうつ病および気分調節症 うつ病では、悲しみ(あるいは小児と青年ではいらだち)の感情や、活動への興味の喪失などがみられます。うつ病では、これらの症状が2週間以上続き、日常生活に支障をきたすようになるか、かなりの苦痛が生じます。 喪失体験などの悲しい出来事の直後に生じることがありますが、悲しみの程度がその出来事とは不釣り合いに強く、妥当と考えられる期間より長く持続します。気分調節症では、いらだちが続き、制御できない行動が頻繁にみられます。... さらに読む )の両方で、うつ病のリスクが高いです。早期に教育やその他の面で介入を行うことで、ダウン症候群の幼児の能力を高めることができます。

診断

  • 出生前:胎児の超音波検査または母親の血液検査

  • 絨毛採取、羊水穿刺、またはその両方

  • 出生後:乳児の外見と乳児の血液検査

出生前の段階では、胎児の超音波検査 超音波検査 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。 こうした遺伝子検査は侵襲的で、胎児への一定のリスクを伴います。 (遺伝性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む で認められた異常や、妊娠15~16週目の母親の血液検査で認められた特定のタンパクやホルモンの異常値から、ダウン症候群が疑われることがあります。ときには母親の血液中に含まれる胎児のDNAを検出して、そのDNAを分析してダウン症候群のリスクが高いかどうかを判断することができます。これらの検査の結果からダウン症候群が疑われたら、多くの場合、絨毛採取 絨毛採取 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。 こうした遺伝子検査は侵襲的で、胎児への一定のリスクを伴います。 (遺伝性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む 羊水穿刺 羊水穿刺 妊婦の血液に含まれる特定の物質の測定に加え、超音波検査を行うことで、胎児の遺伝子異常のリスクを推定できます。 こうした検査は、妊娠中の定期健診の一環として行われることがあります。 検査の結果、リスクが高いことが示唆された場合は、胎児の遺伝物質を分析するために羊水穿刺や絨毛採取などの検査を行うことがあります。 こうした遺伝子検査は侵襲的で、胎児への一定のリスクを伴います。 (遺伝性疾患の概要も参照のこと。) さらに読む 、またはその両方( 染色体異常と遺伝子異常の検査 染色体異常と遺伝子異常の検査 染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。 人間の正常な細胞は、精子と卵子を除いて、いずれも23対、計46本の染色体をもっています。... さらに読む )を行って診断を確定します。妊娠20週より前にダウン症候群のスクリーニングを受けることが、年齢にかかわらず、すべての女性に推奨されています。

出生後になると、ダウン症候群の乳児には、この症候群を示唆する特徴的な外見が認められます。診断を確定するため、乳児の血液で検査を行います。

診断が確定したら、専門医による診察のほか、心臓の超音波検査(心エコー検査)や血液検査などを行ってダウン症候群に合併する異常がないか調べます。発見された異常を治療することで、それによる健康障害を予防できる場合も多くあります。そのため、この症候群の小児には甲状腺の病気、視覚障害、聴覚の異常について定期的にスクリーニングを行うべきです。

ダウン症候群の小児用に特別に考案された成長曲線を用い、小児健診のたびに身長、体重、頭囲を記録します。閉塞性睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群 睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に長い呼吸停止が繰り返し起こって眠りが妨げられる重篤な病気で、しばしば一時的に血液中の酸素レベルが低下して二酸化炭素濃度が上昇することもあります。 睡眠時無呼吸症候群の患者は、日中でも強い眠気を催し、睡眠中には大きないびきをかいて、あえぎや息詰まり、呼吸停止などを起こし、荒い鼻息とともに突然目を覚ますことがよく... さらに読む 睡眠時無呼吸症候群 についても評価を行います。首の痛みや神経痛、筋力低下、その他の神経症状がみられる場合は、頸椎のX線検査を行って、頸椎が不安定になっていないか確認します。スペシャルオリンピックスなどのスポーツ行事への参加を希望するダウン症候群の小児と成人も、頸椎のX線検査を受ける必要があります。

予後(経過の見通し)

老化が普通より早く進むと考えられていますが、ダウン症候群の小児の大半が成人になります。平均寿命は55歳ですが、最近では70代、80代まで生きている人もいます。アルツハイマー病に似た記憶障害、さらなる知能低下、人格の変化といった認知症の症状が、比較的低い年齢で現れることがあります。心臓の異常はしばしば薬剤や手術で治療できます。ダウン症候群の小児において死因の大半を占めているのは、心臓病と白血病です。

最近の研究結果から、ダウン症候群の黒人は白人と比べて寿命がかなり短いことが示されています。この知見は、医療、教育、その他の支援サービスを十分に受けられていないことの結果である可能性があります。

治療

  • 具体的な症状や異常に対する治療

  • 遺伝カウンセリング

ダウン症候群に対する根治的な治療法はありません。しかし、この症候群によって生じる具体的な症状や異常の一部は、治療することができます。心臓と消化器の異常には、手術で修復できるものがあります。甲状腺機能低下症がみられる人には甲状腺ホルモン補充療法を行います。

さらなる情報

  • 全米ダウン症候群会議(National Down Syndrome Congress:NDSC

  • 全米ダウン症候群協会(National Down Syndrome Society:NDSS

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