梅毒は細菌によって引き起こされます。
妊娠中に重篤な合併症が発生することがあります。
新生児は無症状のこともあれば、重篤な症状と合併症を呈することもあります。
診断は一般に新生児と母親の血液検査に基づいて下されます。
この感染症の治療にはペニシリンが使用されます。
(新生児の感染症の概要 新生児の感染症の概要 感染症はどの年齢の人にも発生しますが、新生児、特に 早産児は免疫系が未発達で感染症にかかりやすいため、特に大きな懸念事項となります。特定の防御 抗体が胎盤(胎児に栄養を供給する器官)を介して母親から胎児に移行するとはいえ、胎児の血液中の抗体のレベルは感染症を阻止できるほど高くないためです。... さらに読む と成人の 梅毒 梅毒 梅毒は、梅毒トレポネーマ Treponema pallidumという細菌によって引き起こされる性感染症です。 梅毒の症状は、見かけ上は健康な時期をはさんで、3段階で生じます。 まず患部に痛みのない潰瘍が現れ、第2期では、発疹、発熱、疲労感、頭痛、食欲減退がみられます。 治療しないでいると、第3期には、大動脈、脳、脊髄、その他の臓器が侵されることがあります。 医師は通常、患者に梅毒があることを確認するために2種類の血液検査を... さらに読む も参照のこと。)
梅毒は性的接触を介して広がります。しかし、妊婦が感染している場合、梅毒の原因となる細菌が胎盤(胎児に栄養を供給する器官)を通過すると、出生前の胎児も感染することがあります。新生児が梅毒にかかった状態で生まれた場合、この感染症は先天梅毒と呼ばれます。
症状
死産 死産 死産とは妊娠20週以降に胎児が死亡することです。 妊娠合併症は、妊娠中だけに発生する問題です。母体に影響を及ぼすもの、胎児に影響を及ぼすもの、または母子ともに影響を及ぼすものがあり、妊娠中の様々な時期に発生する可能性があります。しかし、ほとんどの妊娠合併症は効果的に治療できます。死産は次回以降の妊娠における胎児の死亡リスクを上昇させます。 妊娠後半または満期近くに胎児が死亡し、何週間も子宮内にとどまっていると、重度の出血を引き起こす凝固... さらに読む 、 早産 早産児 早産児とは、在胎37週未満で生まれた新生児です。生まれた時期により、早産児の臓器は発達が不十分であるため、子宮外で機能する準備がまだできていないことがあります。 早産の既往、多胎妊娠、妊娠中の栄養不良、出生前ケアの遅れ、感染症、生殖補助医療(体外受精など)、および高血圧などがある場合に、早産児を出産するリスクが高くなります。 多くの臓器の発達が不十分であるため、早産児では呼吸したり哺乳したりすることが難しく、脳内出血、感染症や他の異常が... さらに読む 、または新生児死亡が起こることがあります。
新生児には梅毒の症状がないこともあり、場合によって生涯問題が現れないこともあります。症状のある新生児の場合、先天梅毒の症状は早期または晩期に分類されます。
早期先天梅毒は、生後3カ月以内に現れるものをいいます。大きい水疱や平らな赤銅色の発疹が手のひらと足の裏に現れます。鼻や口の周りとおむつを当てる場所に盛り上がったこぶができます。新生児が十分に発育しないこともあります。 口の周りがひび割れ、粘液、膿や血液が鼻から流れてくることもあります。 たいていの場合、リンパ節、肝臓、脾臓が腫大します。まれに眼や脳の炎症、けいれん発作、髄膜炎、知的障害が起こります。生後8カ月以内に、骨や軟骨、特に長管骨と肋骨の炎症により、乳児は動きが制限され、骨の発達がうまくいかなくなることがあります。
晩期先天梅毒は生後2年より後に現れるものをいいます。鼻や口に潰瘍ができ、骨の成長が異常になることがあります。眼の異常は、失明や角膜(虹彩と瞳孔の前にある透明な層)の瘢痕(はんこん)をもたらすことがあります。歯や顔の骨の発達にも異常がみられます。難聴はどの年齢でも起こる可能性があります。
診断
早期先天梅毒:皮膚、胎盤、臍帯に由来する物質の検査、母親と新生児の血液検査、場合によって腰椎穿刺、その他の血液検査、骨のX線検査
晩期先天梅毒:母子の血液検査
早期先天梅毒
早期先天梅毒は通常、すべての妊婦に対して妊娠初期に行われ、多くの場合第3トリメスター(訳注:日本の妊娠後期にほぼ相当)と分娩時にも再度行われる血液検査に基づいて診断が下されます。妊婦が梅毒にかかっている場合、医師はその胎児も梅毒にかかっていると考えます。感染した女性から生まれた新生児に梅毒があるかどうかを判断するために、医師は徹底的な身体診察を行い、潰瘍や発疹がないかを調べます。潰瘍または発疹があれば、医師はそこからサンプルを採取し、顕微鏡で観察して細菌の有無を調べます。また、胎盤、臍帯、新生児の血液を検査し、梅毒の有無を確認します。
梅毒の症状があるか、血液検査で陽性であった乳幼児には、感染が脳に及んでいるどうかを確認するために、 腰椎穿刺 腰椎穿刺 病歴聴取と 神経学的診察によって推定された診断を確定するために、検査が必要になることがあります。 脳波検査は、脳の電気的な活動を波形として計測して、紙に印刷したりコンピュータに記録したりする検査法で、痛みを伴わずに容易に行えます。脳波検査は以下の特定に役立つ可能性があります。 けいれん性疾患 睡眠障害 一部の代謝性疾患や脳の構造的異常 さらに読む を行う必要もあります。医師はまた、骨のX線検査を行って先天梅毒の特徴である骨の変化がないかを調べます。
晩期先天梅毒
医師は、身体診察と母子の血液検査の結果に基づいて、晩期先天梅毒を疑います。
医師は小児を診察し、感染に起因する特定の問題がないか調べます。そういった問題には、眼の炎症、歯の変形、難聴などがあります。これらの特定の問題がみられる小児では、晩期先天梅毒の診断が確定します。
予防
すべての妊婦は、第1トリメスター(訳注:日本の妊娠初期にほぼ相当)に梅毒の検査を受け、必要に応じて再検査を受ける必要があります。妊娠中のペニシリンによる治療により、99%の症例で、母子両方が治癒します。しかし、母親の治療が出産の4週間前までに行われなければ、胎児の感染は根絶できない場合があります。
治療
ペニシリン
すべての梅毒の患者は、ペニシリンという抗菌薬で治療されます。梅毒に感染している女性は、妊娠中に薬剤を筋肉内または(まれに)静脈内に注射する処置を受けます。感染している新生児、乳児、小児も、静脈内または筋肉内に薬剤の投与を受けます。
眼の炎症にはコルチコステロイドとアトロピンの点眼薬が処方されることがあります。難聴の小児には、ペニシリンとコルチコステロイドの内服が有益な可能性があります。