多くの小児および青年は、他者との身体的なけんかをときに起こしますが、ほとんどの小児および青年は暴力的な行動を続けたり、暴力的な犯罪に関与したりすることはありません。しかしながら、思春期前に暴力的となった小児は、犯罪を起こすリスクが増大している可能性があります。
暴力行動の原因が遺伝的欠陥や染色体異常にあることを示す証拠はほとんどありません。暴力行動に関して判明している危険因子には以下のものがあります。
小児に対して行われた激しい体罰(殴るまたは打つなど)
小児の養育者によるアルコール乱用または薬物乱用
不良グループへの参加
発達の問題
貧困
銃器の入手
銃器の入手、メディア(SNSやニュースプラットフォームなど)を介した暴力への接触、 小児虐待 小児に対するネグレクトと虐待の概要 小児に対するネグレクトとは、小児の成長に欠かせないものを与えないことです。小児虐待とは、小児に危害を加えることです。 小児に対するネグレクトや虐待のリスクを上昇させる要因として、貧困、薬物やアルコールの乱用、精神障害、片親による育児などがあります。 ネグレクトや虐待の被害を受けた小児は、疲れていたり、空腹であったり、不潔であったり、身体的... さらに読む や ドメスティックバイオレンス ドメスティックバイオレンス ドメスティックバイオレンスは、同居者間の身体的、性的虐待、または心理的虐待です。これには親密なパートナーによる暴力が含まれますが、これは現在または以前のセックスパートナーや配偶者による身体的、性的虐待、または心理的虐待を指します。 通常、被害者は女性ですが、男性であることもあります。... さらに読む にさらされることと、暴力との間には何らかの関連性があるようです。
暴力的なコンピュータゲームは、暴力に対する小児の感覚を麻痺させることがあります。これらのゲームなどのせいで小児が実際に暴力的になると専門家は考えていませんが、このようなゲームにさらされることで小児は暴力が生活の一部であることに慣れてしまいます。
(小児における行動面の問題の概要 小児における行動面の問題の概要 小児は成長するに従って、様々な能力を身につけます。排尿や排便をコントロールする能力などは、主に小児の神経と脳の成熟度によって決まります。また、家や学校で適切な行動をとる能力などは、小児の身体的および知的(認知的)な発達、健康、気性、そして親や教師、養育者との関係などから生じる複雑な相互作用によって決まります(... さらに読む と 青年期における行動面の問題 青年期における行動面の問題 青年期は自立心が発達する時期です。典型的には、青年は規則に疑問をもち、挑み、ときに規則を破ることで自立心を発揮します。親や医師は、これがときおり生じる単なる判断の誤りなのか、専門家の介入を要する問題行動のパターンなのかを見極めなくてはなりません。規則違反の程度と頻度が参考になります。例えば、習慣的な飲酒や、けんか、無断欠席、窃盗を頻繁に行う場合は、同じ行為を1回行った場合よりはるかに問題です。そのほかに注意すべき徴候として、成績低下や家... さらに読む も参照のこと。)
不良グループへの参加
不良グループ 暴力と不良グループへの加入 青年期は自立心が発達する時期です。典型的には、青年は規則に疑問をもち、挑み、ときに規則を破ることで自立心を発揮します。親や医師は、これがときおり生じる単なる判断の誤りなのか、専門家の介入を要する問題行動のパターンなのかを見極めなくてはなりません。規則違反の程度と頻度が参考になります。例えば、習慣的な飲酒や、けんか、無断欠席、窃盗を頻繁に行う場合は、同じ行為を1回行った場合よりはるかに問題です。そのほかに注意すべき徴候として、成績低下や家... さらに読む への参加は、暴力行動と関連付けられており、しばしば銃器が絡んでいます。メンバーは一般的には13~24歳です。通常、それぞれの不良グループには名前がつけられており、特有の服装や独自のジェスチャー、刺青、落書きなど、グループ固有のマークを採用しています。不良グループの中には加入を認める前に、手当たり次第、暴力行動を行わせるところもあります。青年による不良グループがらみの暴力行動が増加している原因の1つには、薬物、特にメタンフェタミンやヘロインなどの薬物の流通と使用に不良グループがからんでいることも挙げられます。
いじめ
いじめ いじめ いじめとは若年者の暴力の形態の1つで、相手を威圧したり侮辱しようとして、言葉による攻撃や、感情的、身体的、精神的な攻撃を繰り返し行うことです。 ( 小児に影響を与える社会的問題の概要および 小児と青年における暴力も参照のこと。) いじめは、就学前から成人期まで、年齢を問わず起こる可能性があります。米国疾病予防管理センターが2013年に実施した調査では、中学生の33%と高校生の20%が学校の敷地内でいじめにあったあると回答し、高校生の15... さらに読む は、力の弱い小児に対し、心理的または身体的なダメージを意図的に与えることです。小児の最大3分の1が、いじめる側、いじめられる側、またはその両方としていじめに関与している可能性があります。
いじめには以下のようないくつかの形態があります。
繰り返すからかい
脅迫または威嚇
いやがらせ
暴行
ネットいじめ(Eメール、テキスト、SNS、その他のデジタルコミュニケーションツールを用いて、脅かしたり、中傷を広めたりする)
被害者は、いじめを受けていることを恥ずかしく思う、言っても何も変わらないと感じている、仕返しをされることをおそれているなどの理由から、いじめについて誰にも言わないことがよくあります。いじめを受けている小児が限界点に達して暴力で反撃することがあり、場合によっては危険な結果や破滅的な結末を招くこともあります。
いじめている側と被害者のどちらにも、好ましくない結果を迎えるリスクがあります。被害者は、身体的なけが、低い自尊心、不安、抑うつ、不登校などのリスクがあります。いじめの被害者の多くは、自分自身がいじめる側に回ることがあります。いじめをする小児は、その後の人生で刑務所に入る可能性が高くなります。いじめをする小児は、就学の継続や就労の可能性が低く、また大人になってから安定した人間関係を維持できない可能性が高くなります。
予防
暴力の予防は小児期早期に開始する必要があります。予防策には以下のものがあります。
幼児のしつけに暴力を使わない
武器の入手、メディアやコンピュータゲームを通じた暴力への接触を制限する
安全な学校環境を作り、維持する
被害者が問題を親および学校当局に報告することを奨励する
年長児や青年に、危険性の高い状況(武器を所持している人や、アルコールや薬物を使用している人のいる場所や状況など)の避け方、また緊迫した状況の対処法や打開する方法を教える