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マルファン症候群

執筆者:

Frank Pessler

, MD, PhD, Helmholtz Centre for Infection Research

医学的にレビューされた 2020年 10月
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やさしくわかる病気事典
本ページのリソース

マルファン症候群は、眼、骨、心臓、血管、肺、中枢神経系などに異常が生じるまれな遺伝性結合組織疾患です。

  • この症候群は、フィブリリンというタンパク質をコードしている遺伝子の突然変異によって発生します。

  • 典型的な症状は、軽い場合から重い場合までありますが、腕や指が長いこと、関節が柔軟であること、心臓や肺の障害などがあります。

  • 診断は症状と家族歴に基づいて下されます。

  • この症候群のほとんどの患者が70代まで生存します。

  • マルファン症候群に対する根治的な治療法はなく、異常な結合組織を正常に戻す方法もありません。

マルファン症候群は、フィブリリンというタンパク質をコードしている遺伝子の突然変異によって発生します。フィブリリンには、結合組織の強度を保つ働きがあります(結合組織とは、その多くが線維性で、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしている、頑丈な組織のことです)。フィブリリンの遺伝子に変異があると、線維組織やその他の結合組織(その多くが線維性で、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしている、頑丈な組織)の一部が変化し、最終的に組織が弱くなります。このように組織が弱くなる現象は、骨や関節のほか、心臓、血管、眼、肺、中枢神経系(脳と脊髄)といった体内の構造にも生じます。弱くなった組織は、伸びたり変形したりし、裂けることさえあります。例えば、大動脈(体の主要な動脈)が弱くなって、膨らんだり、裂けたりすることがあります。心臓の弁組織が弱いため、弁に漏れが生じることがあります。組織をつなぐ結合組織が弱くなったり、破れたりして、つながっていた組織が分離してしまうこともあります。例えば、眼の水晶体と網膜が正常な結合状態から分離することがあります。

症状

マルファン症候群の症状は、軽い場合から重い場合まであります。マルファン症候群の患者のほとんどが、症状にまったく気づきません。成人期まで症状が現れない患者もいます。

筋肉や骨格の問題

マルファン症候群の患者は、年齢や家系から想定されるよりも身長が高くなります。腕を左右に伸ばしたときの指先から指先までの長さが身長より長くなります。指は細長くなります。多くの場合、胸骨が変形して、外側に突出したり、内側にへこんだりします。関節が過度に柔軟になることもあります。 扁平足 扁平足 内反足(内反尖足)は、足と足首の形や位置がねじれる先天異常です。 一般的な内反足は足の後ろ側と足首が下方へ内向きになり、足の前側が内側にねじれます。ときおり、子宮内で不自然な位置に足が押さえつけられていたために異常にみえているだけの場合もあります(胎位性内反足)。それに対し真の内反足は、足に構造的な異常があるもので、真の奇形です。真の内反足では、脚や足の骨あるいはふくらはぎの筋肉がしばしば未発達です。... さらに読む 扁平足 、膝が後ろ向きに曲がる膝関節の変形、脊椎の異常な弯曲を伴う猫背(脊椎後側弯症 ショイエルマン病 脊柱後弯症とは、脊椎が異常に曲がって猫背を引き起こしている状態です。 ( 小児における骨の病気の概要も参照のこと。) 背中の上部は、正常な場合は前方にいくらか弯曲しています。一部の小児では弯曲の程度が大きい場合があります。過度の弯曲は、以下の場合があります。 柔軟である 固定している(構造上) さらに読む )がよくみられ、ヘルニアも多くみられます。通常、患者には皮下脂肪がほとんどありません。口腔の天井にあたる口蓋が高いことがよくあります。

心臓の異常

心臓や肺に発生する合併症が最も危険です。大動脈の壁の結合組織が弱くなることがあります。大動脈壁が弱くなると、血管の壁の内層の間に血液が漏れ出して裂けたり(大動脈解離 大動脈解離 大動脈解離は、しばしば死に至る病気で、大動脈の壁の内層(内膜)が破れて、壁の中間層から剥がれる病態です。 ほとんどの大動脈解離は、高血圧によって動脈の壁が劣化することが原因で発生します。 一般的には、耐えがたい激痛が突然胸部に起こりますが、背中の肩甲骨の間に痛みが生じることもあります。 診断を確定するには、通常はX線検査またはCT検査を行います。 通常は血圧を下げる薬を投与するとともに、外科手術を行って裂けた部分を修復するか、ステントグ... さらに読む )、破裂の危険がある膨らみ(動脈瘤 大動脈瘤と大動脈解離の概要 大動脈は、直径が約2.5センチメートルある体内で最も太い動脈で、左心室から送られてきた酸素を多く含む血液を、肺を除く全身の組織へと送り出しています(肺への血液は右心室から送り出されます)。心臓から出た大動脈からは、すぐに腕と頭へ向かう動脈が枝分かれします。その後、大動脈は弧を描いて下に向かい、左心室の高さから腰の骨(骨盤)の最上部の高さま... さらに読む )ができたりします。このような異常が10歳未満の小児に起こることがあります。

大動脈が次第に広がって(拡張して)いくと、心臓と大動脈の間の大動脈弁が漏れるようになることがあります(大動脈弁逆流症 大動脈弁逆流症 大動脈弁逆流症(大動脈弁閉鎖不全症とも呼ばれます)は、左心室が弛緩するたびに大動脈弁で血液の逆流が生じる病気です。 大動脈弁逆流症は、大動脈弁および周囲の大動脈基部(心臓から身体の他の部分に血液を送り出す血管である大動脈の基部)の変性によって発生します。 変性は、ときに 大動脈弁二尖弁という異常がみられる人で起こりますが、弁の細菌感染や リウマチ熱によって生じる場合もあります。... さらに読む )。大動脈拡張は、小児患者の50%、成人患者の60~80%に起こります。左心房と左心室の間にある僧帽弁が漏れる(僧帽弁逆流 僧帽弁逆流症 僧帽弁逆流症(僧帽弁閉鎖不全症とも呼ばれます)は、左心室が収縮するたびに僧帽弁で血液が逆向きに流れる(逆流)する病気です。 僧帽弁逆流症の最も一般的な原因は、僧帽弁組織の遺伝的な脆弱化(粘液腫様変性)および心臓発作です(ただし、レンサ球菌感染の治療およびリウマチ熱の予防のための抗菌薬の入手が困難な地域は除く)。 逆流が重度の場合、息切れを起こすこともあります。 軽度の逆流は治療の必要はありませんが、より重度の逆流の場合、損傷した心臓弁の... さらに読む 僧帽弁逆流症 )場合や、左心房側に僧帽弁が突出する(僧帽弁逸脱 僧帽弁逸脱症(MVP) 僧帽弁逸脱症とは、左心室が収縮するときに僧帽弁の弁尖が左心房内に突き出る病気で、心房内への血液の逆流が起きることもあります。 僧帽弁逸脱症は、ときに弁組織が弱くなることで起こります。 ほとんどの場合に症状はありませんが、胸痛、速い脈拍、動悸、片頭痛、疲労、めまいなどがみられることもあります。 診断は心臓から特徴的なクリック音が聴診器で聞こえる場合に下され、心エコー検査で診断が確定されます。... さらに読む 僧帽弁逸脱症(MVP) )場合もあります。

肺に起こる問題

眼の障害

脊髄の病気

脊髄を包む袋状の膜が広がることがあります(硬膜拡張といいます)。硬膜拡張はよくみられ、脊椎下部で最も頻繁に起こります。硬膜拡張によって、頭痛、腰痛、便失禁や尿失禁などの他の神経学的異常が起こることがあります。

診断

  • 医師による評価

  • 遺伝子検査

  • 心エコー検査

  • MRI(磁気共鳴画像)検査

  • X線検査

  • 眼の検査

医師がマルファン症候群ではないかと疑うのは、異常に背が高くて細い人にこの症候群に特徴的な症状が1つでもみられた場合や、この症候群が家族の中(父親、母親や兄弟姉妹などの第1度近親者)に認められた場合です。さらに、心臓、眼、骨など特定の器官系にどの程度異常がみられるかについて定められている、具体的な基準に基づいて診断を下します。

マルファン症候群の診断に役立てるため、遺伝子検査(通常は血液サンプルを採取して行われる)を行うことがあります。

医師は重篤な症状を引き起こすおそれのある合併症がないか、モニタリングを行います。毎年、心臓、骨、眼の検査を受け、悪化しているかどうかを確認する必要があります。年1回の評価には通常、心臓と大動脈の 心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。 非侵襲的である 害がない 比較的安価である 広く利用できる さらに読む 心エコー検査とその他の超音波検査 、手、脊椎、骨盤、胸部、足、頭蓋骨のX線検査、および眼の診察が含まれます。心臓や脳に障害がないか調べるために、 MRI検査 MRI(磁気共鳴画像)検査 MRI(磁気共鳴画像)検査は、強力な磁場と非常に周波数の高い電磁波を用いて極めて詳細な画像を描き出す検査です。X線を使用しないため、通常はとても安全です。( 画像検査の概要も参照のこと。) 患者が横になった可動式の台が装置の中を移動し、筒状の撮影装置の中に収まります。装置の内部は狭くなっていて、強力な磁場が発生します。通常、体内の組織に含まれる陽子(原子の一部で正の電荷をもちます)は特定の配列をとっていませんが、MRI装置内で生じるよう... さらに読む MRI(磁気共鳴画像)検査 を行うこともあります。症状が現れたときには、必ず心エコー検査と目の診察も行います。

予後(経過の見通し)

数年前までは、マルファン症候群の患者のほとんどが40代までに死亡していました。今日では、マルファン症候群の患者の余命は、患者でない人とほぼ同じです。このように余命が伸びてきた理由は、大動脈の解離や破裂の予防によるものと考えられます。

治療

  • ベータ遮断薬

  • ときに手術による大動脈や弁の修復

  • ときに、脊椎の異常な弯曲に対する装具、手術による修復

マルファン症候群に対する根治的な治療法はなく、異常な結合組織を正常に戻す方法もありません。

マルファン症候群の治療の目的は、危険な合併症が発生する前に、それを予防したり、異常を修復したりすることです。ベータ遮断薬(アテノロールやプロプラノロールなど)は、心拍を遅くし、心臓の収縮力を低下させる薬です。この薬剤を投与して、血液が大動脈を緩やかに流れるようにします。しかし、大動脈が拡張している場合や動脈瘤ができている場合は、手術で患部を修復したり、他のものと交換したりすることがあります。重度の弁逆流も手術で修復します。妊娠中の女性患者は大動脈の合併症のリスクが特に高いため、妊娠する前に大動脈の修復について話し合う必要があります。アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ロサルタンやカンデサルタンなど)を投与して血圧を下げることもあります。

水晶体偏位や網膜剥離は、一般に手術で修復することが可能です。

患者は遺伝カウンセリングを受けるべきです。患者と家族は米国マルファン財団(National Marfan Foundation)からさらに情報を得ることができます。

さらなる情報

役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。

  • 米国マルファン財団(National Marfan Foundation):マルファン症候群に関する支援、教育、地域情報を掲載

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