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マルファン症候群

執筆者:

Frank Pessler

, MD, PhD, Hannover, Germany

最終査読/改訂年月 2018年 2月
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遺伝性結合組織疾患の概要も参照のこと。)

マルファン症候群は、眼、骨、心臓、血管、肺、中枢神経系などに異常が生じるまれな遺伝性結合組織疾患です。

  • この症候群は、フィブリリンというタンパクをコードしている遺伝子の突然変異によって発生します。

  • 典型的な症状は、軽い場合から重い場合までありますが、腕や指が長いこと、関節が柔軟であること、心臓や肺の障害などがあります。

  • 診断は症状と家族歴に基づいて下されます。

  • この症候群のほとんどの患者が70代まで生存します。

  • マルファン症候群に対する根治的な治療法はなく、異常な結合組織を正常に戻す方法もありません。

マルファン症候群は、フィブリリンというタンパクをコードしている遺伝子の突然変異によって発生します。フィブリリンは、結合組織の強さを維持する役割を果たしています。フィブリリンの遺伝子に変異があると、線維組織やその他の結合組織(頑丈で、その多くは線維性であり、互いに結合して体の構造を支えるとともに、弾力性をもたらしている組織)の一部が変化し、最終的に組織が弱くなります。このように組織が弱くなる現象は、骨や関節のほか、心臓、血管、眼、肺、中枢神経系(脳と脊髄)といった体内の構造にも生じます。弱くなった組織は、伸びたり変形したりし、裂けることさえあります。例えば、大動脈(体の主要な動脈)が弱くなって、膨らんだり、裂けたりすることがあります。心臓の弁組織が弱いため、弁に漏れが生じることがあります。組織をつなぐ結合組織が弱くなったり、破れたりして、つながっていた組織が分離してしまうこともあります。例えば、眼の水晶体と網膜が正常な結合状態から分離することがあります。

症状

マルファン症候群の症状は、軽い場合から重い場合まであります。マルファン症候群の患者のほとんどが、症状にまったく気づきません。成人期まで症状が現れない患者もいます。

筋肉や骨格の問題

マルファン症候群の患者は、年齢や家系から想定されるよりも身長が高くなります。腕を左右に伸ばしたときの指先から指先までの長さが身長より長くなります。指は細長くなります。多くの場合、胸骨が変形して、外側に突出したり、内側にへこんだりします。関節が過度に柔軟になることもあります。扁平足、膝が後ろ向きに曲がる膝関節の変形、脊椎の異常な弯曲を伴う猫背(脊椎後側弯症)がよくみられ、ヘルニアも多くみられます。通常、患者には皮下脂肪がほとんどありません。口腔の天井にあたる口蓋が高いことがよくあります。

心臓の異常

心臓や肺に発生する合併症が最も危険です。大動脈の壁の結合組織が弱くなることがあります。大動脈壁が弱くなると、血管の壁の内層の間に血液が漏れ出して裂けたり(大動脈解離)、破裂の危険がある膨らみ(動脈瘤)ができたりします。このような異常が10歳未満の小児に起こることがあります。

女性患者が妊娠すると、大動脈解離のリスクが高まります。このリスクを最小限に抑えるために、帝王切開が勧められることがよくあります。

大動脈が次第に広がって(拡張して)いくと、心臓と大動脈の間の大動脈弁が漏れるようになることがあります(大動脈弁逆流症)。大動脈拡張は、小児患者の50%、成人患者の60~80%に起こります。左心房と左心室の間にある僧帽弁が漏れる(僧帽弁逆流)場合や、左心房側に僧帽弁が突出する(僧帽弁逸脱)場合もあります。

これらの心臓弁の異常により、心臓が血液を押し出す力が弱まる可能性があります。心臓弁に異常があると、重篤な感染症(感染性心内膜炎)が起こるおそれもあります。

肺に起こる問題

肺に空気で満たされた袋(嚢胞)ができることがあります。 この嚢胞が破裂して、肺の周囲の空間に空気が入る場合があります(気胸)。このような異常は、痛みや息切れを引き起こします。

眼の障害

片眼または両眼の水晶体がずれることがあります(水晶体偏位)。患者には強い近視がみられます。 眼球の後部にある光を感じる領域(網膜)が、眼の他の部分から分離することもあります(網膜剥離を参照)。水晶体偏位や網膜剥離により、恒久的な視力障害が起こることもあります。

脊髄の病気

脊髄を包む袋状の膜が広がることがあります(硬膜拡張といいます)。硬膜拡張はよくみられ、脊椎下部で最も頻繁に起こります。硬膜拡張によって、頭痛、腰痛、便失禁や尿失禁などの他の神経学的異常が起こることがあります。

診断

  • 医師による評価

  • 遺伝子検査

  • 心エコー検査

  • MRI(磁気共鳴画像)検査

  • X線検査

  • 眼の検査

医師がマルファン症候群ではないかと疑うのは、異常に背が高くて細い人にこの症候群に特徴的な症状が1つでもみられた場合や、この症候群が家族の中(父親、母親や兄弟姉妹などの第1度近親者)に認められた場合です。さらに、心臓、眼、骨など特定の器官系にどの程度異常がみられるかについて定められている、具体的な基準に基づいて診断を下します。

マルファン症候群の診断に役立てるため、遺伝子検査(通常は血液サンプルを採取して行われる)を行うことがあります。

医師は重篤な症状を引き起こすおそれのある合併症がないか、モニタリングを行います。毎年、心臓、骨、眼の検査を受け、悪化しているかどうかを確認する必要があります。年1回の評価には通常、心臓と大動脈の心エコー検査、手、脊椎、骨盤、胸部、足、頭蓋骨のX線検査、および眼の診察が含まれます。心臓や脳に障害がないか調べるために、MRI検査を行うこともあります。症状が現れたときには、必ず心エコー検査と目の診察も行います。

予後(経過の見通し)

数年前までは、マルファン症候群の患者のほとんどが40代までに死亡していました。今日では、マルファン症候群の患者の余命は、患者でない人とほぼ同じです。このように余命が伸びてきた理由は、大動脈の解離や破裂の予防によるものと考えられます。

治療

  • ベータ遮断薬

  • ときに手術による大動脈や弁の修復

  • ときに、脊椎の異常な弯曲に対する装具、手術による修復

マルファン症候群に対する根治的な治療法はなく、異常な結合組織を正常に戻す方法もありません。

マルファン症候群の治療の目的は、危険な合併症が発生する前に、それを予防したり、異常を修復したりすることです。ベータ遮断薬(アテノロールやプロプラノロールなど)を投与して、血液が大動脈を緩やかに流れるようにします。しかし、大動脈が拡張している場合や動脈瘤ができている場合は、手術で患部を修復したり、他のものと交換したりすることがあります。重度の弁逆流も手術で修復します。妊娠中の女性患者は大動脈の合併症のリスクが特に高いため、妊娠する前に大動脈の修復について話し合う必要があります。

水晶体偏位や網膜剥離は、一般に手術で修復することが可能です。

脊椎の異常な弯曲(脊柱側弯症)の治療には装具をできるだけ長く使用します。しかし、弯曲を治すのに手術が必要な小児もいます。

患者は遺伝カウンセリングを受けるべきです。患者と家族は米国マルファン財団(National Marfan Foundation)からさらに情報を得ることができます。

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