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自閉スペクトラム症

執筆者:

Stephen Brian Sulkes

, MD, Golisano Children’s Hospital at Strong, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2018年 8月
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概要
本ページのリソース

自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害とも呼ばれます)は、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気です。

  • 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手です。

  • 自閉スペクトラム症の患者は、行動、関心や動作のパターンが限定的で、多くの場合、決まった行為に従って毎日を過ごします。

  • 診断は、観察結果と親や養育者からの報告に基づいて下されます。

  • 体系だった行動療法を行えば、極めて良好な効果が得られる患者がほとんどです。

自閉スペクトラム症は、一定の幅(スペクトラム)をもった疾患群と考えられていて、その病像は種類や重症度の点で非常に多彩です。かつて自閉スペクトラム症は、古典的自閉症、アスペルガー症候群、レット症候群、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害に細分類されていました。しかし、現在この分類は使用されず、すべて自閉スペクトラム症とみなされています(別の遺伝性の病気であるレット症候群 レット症候群 レット症候群は、生後6カ月間正常な発達がみられた後、発達に異常がみられるまれな神経発達障害で、ほぼ女児だけにみられます。 症状としては、正常な発達が最初にみられた後、言語と社会的な技能が低下します。 診断は、医師が小児の早期の発育と発達を観察した結果と、遺伝子検査の結果に基づいて下されます。 治療では、症状の管理と教育的支援を中心とした集学的アプローチを行います。 レット症候群は、ほぼ女児のみに発生する、まれな遺伝性の神経発達障害です。... さらに読む を除く)。自閉スペクトラム症は知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準以下であり、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む と異なりますが、自閉スペクトラム症患者の多くに知的障害が伴っています。分類システムでは、幅広いスペクトラム内で、特定の個人に異なる特徴が強く出たり弱く出たりすることが強調されています。

医師と養育者が自閉スペクトラム症の症状について詳しく知るようになり、自閉スペクトラム症と特定される推定人数は増え続けています。

自閉スペクトラム症の症状が2歳までに現れることもありますが、軽症の場合には学齢期まで分からないことがあります。最近の統計によると、自閉スペクトラム症は約68人に1人の割合で起き、女児よりも男児で4倍多くみられます。

自閉スペクトラム症の具体的な原因は十分に解明されていませんが、多くの場合、遺伝的な要因が関係しています。自閉スペクトラム症の子どもが1人いる親の場合、もう1人自閉スペクトラム症の子どもをもつリスクは50~100倍高くなります。脆弱X症候群 脆弱X症候群 脆弱X症候群は、X染色体の異常の1つで、知的障害と行動面の問題が現れます。 染色体は、細胞の中にあってDNAや多くの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。遺伝子には、体がどのように機能するかを定めた詳細な指示が記録されています。... さらに読む 結節性硬化症複合体 結節性硬化症複合体 結節性硬化症複合体は遺伝性の病気で、脳内の異常な増殖や皮膚病変がみられるほか、ときに心臓、腎臓、肺などの重要臓器に腫瘍が生じることがあります。 小児の場合は、皮膚の異常な腫瘤、けいれん発作、発達の遅れ、学習障害、行動上の問題などがみられるほか、知的障害や自閉症がみられることもあります。 通常、余命に影響はありません。 この病気は一生続き、新しい症状が現れることもあるため、生涯モニタリングを受け続けなければなりません。... さらに読む 結節性硬化症複合体 ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は、余分な21番染色体によって引き起こされる染色体異常症の一種で、知的障害と様々な身体的異常がみられます。 ダウン症候群は、21番染色体が余分に複製されることで発生します。 ダウン症候群の小児では、発育の遅れ、精神発達の遅れ、特異的な頭部と顔貌、しばしば低身長がみられます。 出生前の段階では、ダウン症候群は超音波検査や母親の血液検査の結果から疑われ、絨毛採取や羊水穿刺という検査で確定されます。... さらに読む ダウン症候群(21トリソミー) などのいくつかの遺伝的異常が自閉スペクトラム症と関連しています。 出生前の風疹 風疹 風疹は感染力の強いウイルス感染症で、関節痛や発疹などの軽い症状が出ます。 風疹の原因はウイルスです。妊娠中の母親が風疹に感染すると新生児に重い先天異常が起きます。 典型的な症状としては、リンパ節の腫れ、口蓋(こうがい)に出るバラ色の斑点、特徴的な発疹などがあります。 診断は症状に基づいて下されます。 定期予防接種で予防できます。 さらに読む 風疹 サイトメガロウイルス サイトメガロウイルス(CMV) あらゆる年齢の人がかかる可能性のある感染症のなかには、胎児や新生児に発生すると特に問題になるものがあります。(ジカウイルス感染症も参照のこと。) カンジダ症は酵母または真菌の一種であるカンジダ菌 Candidaによる感染です。 カンジダ Candidaという真菌による感染症は、分娩中または出生後に発生する可能性があります。 カンジダ Candida菌が原因で口の中に白い点や斑点ができます(鵞口瘡[がこうそう])。鵞口瘡はときに痛みを引き... さらに読む サイトメガロウイルス(CMV) などのウイルス感染も、関与している可能性があります。しかし、自閉スペクトラム症が、子育ての失敗、小児期の恵まれない環境、予防接種によって起こるわけでないことははっきりしています(MMRワクチンと自閉症 MMRワクチンと自閉症に関する懸念 米国ではワクチンの安全性を確保するための強固な制度が整備されているにもかかわらず、一部に依然として小児ワクチンや予防接種スケジュールの安全性について懸念を抱いている親がいます。そうした懸念から、子どもに推奨ワクチンの一部またはすべてを受けさせない親もいます。ワクチンで予防可能な病気は、ワクチンの接種を親が拒否した子どもには、接種を受けた小児と比べてはるかに高い頻度でみられます。具体的には、ワクチンの接種を受けていない小児は以下の病気にか... さらに読む も参照)。

知っていますか?

  • 自閉スペクトラム症は、予防接種では起こりません。

自閉スペクトラム症の徴候

自閉スペクトラム症の徴候がすべて現れていなくとも、診断は可能ですが、以下のAとBの両方で困難があることが必要です。非常に様々な程度の徴候がみられますが、小児の機能が障害されている必要があります。

A.社会的コミュニケーションと対人関係を築くのが困難:

  • 他者と関わるのが苦手で、考えや感情の共有が困難

  • 言葉によらないコミュニケーション(例、アイコンタクトをとる、身振りや顔の表情を理解しまたそれらを用いる)が困難

  • 対人関係を発展させる、維持する、理解するのが困難

B.行動、興味、活動の対象が限られていて、特定のパターンを繰り返す:

  • 反復動作や復唱

  • 頑固にいつもの習慣を守り、変更に抵抗する

  • 興味の範囲が非常に狭く、それだけに集中する

  • 味覚、嗅覚、触覚などの身体感覚が非常に鋭い、または鈍い

症状

自閉スペクトラム症の小児では、次の領域の症状が現れます。

  • 社会的コミュニケーションと対人関係

  • 行動、興味、活動

自閉スペクトラム症の症状には軽度から重度まで幅がありますが、ほとんどの自閉スペクトラム症の患者は、上記の2つの領域である程度の支援が必要です。自閉スペクトラム症の患者は、学校や社会で自主的に行動する能力に大きな個人差があり、支援する必要性も大幅に異なります。さらに、自閉スペクトラム症の小児の約20~40%では、特に知能指数(IQ)が50未満の小児の場合、青年期に至る前にけいれん発作 けいれん性疾患 けいれん性疾患では、脳の電気的活動に周期的な異常が生じることで、一時的に脳の機能障害が引き起こされます。 多くの人では、けいれん発作が始まる直前に感覚の異常がみられます。 コントロールできないふるえや意識消失が起こる場合もありますが、多くの場合は、単に動きが止まったり、何が起こっているか分からなくなったりするだけにとどまります。... さらに読む が起こります。診断時の小児の約25%に発達の退行がみられますが、これが最初の徴候である場合があります。

社会的コミュニケーションと対人関係

多くの場合、自閉スペクトラム症の乳児は、典型的な抱かれ方や視線の合わせ方をしません。親と離れると動揺する自閉スペクトラム症の乳児もいますが、自閉スペクトラム症でない小児のように安心や安全を求めて親を頼ることをしないことがあります。多くの場合、年長児は1人で遊ぶ方が好きで、誰か(特に家族以外の人)と親密な関係を築くことはありません。他の小児と交流する際、コミュニケーションをとるために視線を合わせたり顔に表情を浮かべたりしないことがあります。また、他者の気分や表情を読みとることが苦手です。いつどのように会話に加わればよいのか分からず、その場にふさわしくない言葉や人を傷つける言葉に気づきにくいことがあります。このような要因のため、自閉スペクトラム症の患者は、奇妙で風変わりな人とみなされ、社会的に孤立します。

言語

最も重症の小児は話せるようになりません。話せるようになる場合でも、話し出すのは普通の小児よりずっと遅く、変わった言葉の使い方をすることがあります。多くの場合、自分に話しかけられた言葉をそのまま繰り返したり(反響言語)、自発的な言葉の代わりに記憶している原稿にあるような表現を使ったり、代名詞を入れ替えて使ったりします。特に、自分のこと指して「わたし」「ぼく」ではなく「あなた」「きみ」を使うことがよくあります。会話が双方向的ではないことがあり、会話があるとしても、考えや感情を共有するのではなく、一方的に表現したり要求したりするために会話を用いる傾向があります。また、自閉スペクトラム症の人は、会話するときの声の抑揚や高さが独特なものになりがちです。

行動、興味、活動

自閉スペクトラム症の人は、たいていの場合、新しい食べものやおもちゃ、部屋の模様替え、衣服などの変化を非常に嫌います。また、特定の対象(生き物以外)に異常な執着を示すことがあります。繰り返して物事を行うことがよくあります。より年少の小児や重症の小児は、体を揺らす、手をたたく、ものを回転させるなどの特定の行動を繰り返す傾向があります。なかには、頭を何かにぶつける、自分をかむなどという行動を繰り返す結果、けがをする小児もいます。比較的軽症の患者は、同じビデオを何回も見たり、毎回の食事に同じものを食べることにこだわったりします。自閉スペクトラム症の人は、非常に特殊な、しばしば異常な興味を示すことがあります。例えば、掃除機に夢中になったりします。

自閉スペクトラム症の人は、感覚が鋭すぎたり鈍すぎたりすることがよくあります。ある種の臭い、味、手触りをとても嫌がったり、人々が苦痛に感じる痛み、熱さ、冷たさに異常な反応を示すことがあります。ある音を無視したり、ある音には極めて大きな苦痛を感じたりします。

知能

自閉スペクトラム症の人の多くには、ある程度の知的障害 知的能力障害 知的能力障害(一般に知的障害とも呼ばれます)とは、出生時や乳児期の初期から知能の働きが明らかに標準以下であり、正常な日常生活動作を行う能力が限られている状態です。 知的能力障害は、遺伝的な場合もあれば、脳の発達に影響を与える病気の結果として起こる場合もあります。 知的能力障害がある小児のほとんどでは、就学前まで目立った症状が現れません。 診断は正式な検査の結果に基づいて下されます。... さらに読む がみられます(知能指数[IQ]が70未満)。作業能力にばらつきがあります。たいていの場合、運動能力や空間認知の検査結果は、言語能力の検査結果よりも優れています。自閉スペクトラム症の人の中には、複雑な暗算をこなす能力や卓越した音楽の才能など、その人だけにしかない断片的な特殊能力がみられる小児もいます。残念ながら、このような人は多くの場合、その才能を生産的な形や社会的な相互関係の中で活かすことができません。

診断

  • 医師による評価

自閉スペクトラム症の診断は、遊び部屋の状況の中で小児を注意深く観察するとともに、親と教師から詳しく話を聴くことによって下されます。社会的コミュニケーション質問表(Social Communication Questionnaire)や幼児向け自閉スペクトラム症の修正チェックリスト(Modified Checklist for Autism in Toddlers[M-CHAT-R])などの標準化されたスクリーニング検査は、より精密な検査が必要な小児を特定する助けになります。心理士や他の専門医は、より詳細な「自閉症診断観察法(Autism Diagnostic Observation Schedule)」や他のツールを用いることがあります。標準化された検査に加えて、遺伝性代謝疾患 遺伝性代謝疾患の概要 遺伝性代謝疾患とは、代謝の問題を引き起こす遺伝性の病気です。 遺伝とは、ある世代から次の世代へ遺伝子が受け継がれることを意味します。子どもは親の遺伝子を受け継ぎます。子どもが、代謝制御に関わる欠陥のある遺伝子を受け継ぐと、遺伝性代謝疾患を発症します。 代謝疾患には数百種類のものがあり、そのほとんどは非常にまれなものです。... さらに読む 脆弱X症候群 脆弱X症候群 脆弱X症候群は、X染色体の異常の1つで、知的障害と行動面の問題が現れます。 染色体は、細胞の中にあってDNAや多くの遺伝子が格納されている構造体です。遺伝子とは、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域で、物質としてはDNA(デオキシリボ核酸)で構成されています(遺伝学についての考察は 遺伝子と染色体)。遺伝子には、体がどのように機能するかを定めた詳細な指示が記録されています。... さらに読む などの治療可能な病気や遺伝性の病気がないかを調べる血液検査や遺伝子検査も行うとよいでしょう。

治療

  • 行動療法

  • 言語療法

  • ときに薬物療法

自閉スペクトラム症の症状は一般に生涯続きます。小学校に入る年齢までに小児がどれだけコミュニケーション可能な言語能力を獲得できるかによって、予後は大きく異なります。例えば、標準的な知能指数(IQ)検査の結果が50未満の場合など、知能検査の数値が低い自閉スペクトラム症の小児は、成人になっても緊密な支援が必要になる可能性が高くなります。

行動変容療法は、しばしば自閉スペクトラム症の小児に有益となります。知能指数が比較的高い小児の場合、社会的技能を伸ばすことを目的とした療法が有効です。各小児に合わせた特別な教育を行うことが極めて重要です。多くの場合、自閉スペクトラム症の小児のために用意されたプログラムの中に、言語療法、作業療法、理学療法、行動療法などが組み込まれています。

薬物療法では自閉スペクトラム症そのものを治すことはできません。しかし、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、自閉スペクトラム症の患者の儀式的行動を軽減するのにしばしば効果的です。自傷行為を減らすために抗精神病薬のリスペリドンが使用される場合がありますが、副作用(体重増加や運動障害など)のリスクを考慮しなくてはなりません。不注意、衝動性、多動のある患者には、気分安定薬や精神刺激薬が役立つことがあります。

米国個別障害者教育法(Individuals with Disabilities Education Act:IDEA)は、公立学校に対して、自閉スペクトラム症の小児と青年に適切な教育を無償で提供することを義務づけています。教育は極力制限がなく、可能な限り包括的な環境で行わなくてはなりません。つまり、障害のある小児が障害のない小児と交流する機会や、その地域にある施設などの資源を同等に使う機会を、あらゆる場面で与えられる教育環境です。

食事療法、胃腸療法、免疫療法などを試みる親もいますが、これまでのところ、このような治療法が自閉スペクトラム症の小児に役立つことを示す優れた科学的根拠はありません。コミュニケーションの促進、キレート療法、聴覚統合訓練、高気圧酸素療法などの代替療法は、効果的であると証明されてはいません。そのような治療法を考慮する場合、家族は便益とリスクについて小児のかかりつけ医と相談すべきです。

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