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妊娠中の医療

執筆者:

Haywood L. Brown

, MD, Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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子どもをもつことを考えているカップルは、妊娠前に医師や医療従事者に相談して、妊娠が望ましいかについて話し合うことができていれば理想的です。通常、妊娠は非常に安全なものです。しかし、妊娠中に重症化する病気もあります。また、遺伝性疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いカップルもいます。

カップルが妊娠を考え始めたら、女性は葉酸が含まれた総合ビタミン剤の1日1回の摂取を始めるべきです。妊娠可能年齢の女性に推奨される最低量は400マイクログラムですが、一部の専門家は、600~800マイクログラムというそれよりやや多い量を推奨しています。総合ビタミン剤などの市販の製品には多くの場合、これらの用量が含まれています。葉酸は、胎児に脊髄や脳の先天異常(神経管閉鎖不全)が生じるリスクを抑えます。神経管閉鎖不全の胎児を妊娠したことがある場合は、次の妊娠を考え始めたらすぐに、通常の推奨量よりかなり高用量(4000マイクログラム)の葉酸の摂取を始めるようにします。1,000マイクログラム以上の用量は処方せんがないと入手できません。

知っていますか?

  • 妊娠を考えている女性は、妊娠するまで待たずに葉酸が含まれた総合ビタミン剤(一部の先天異常の予防に役立つ)の摂取を始めるべきです。

カップルが妊娠を試みたいと決断した場合は医師に相談して、できるだけ健康的な妊娠経過を送ることができるようにします。こうした機会に、女性の健康や発育する胎児の健康を損なうおそれのある要因について医師に聞いておくべきです。

妊娠に際して避けるべき要因や状況としては以下のものがあります。

  • 喫煙や飲酒

  • 副流煙にさらされる状態(胎児に害を与える可能性がある)

  • 室内のみで飼育されていて他の猫と接触のない場合を除いて、猫用トイレもしくは猫の便に接触すること(こうした接触から、原虫の感染が胎児の脳に損傷を及ぼしかねないトキソプラズマ症に感染することがある)

  • 風疹やその他の感染症(先天異常の原因になる可能性がある)にかかっている人との接触

  • 水痘帯状疱疹(たいじょうほうしん)にかかっている人との接触(妊婦が水痘にかかったことがある場合や水痘の免疫があることが検査で分かっている場合を除く)

水痘や帯状疱疹はヘルペスウイルスから生じます。分娩時にヘルペスウイルスが胎児に感染して、胎児が重い病気にかかることがあります。また、ヘルペスウイルスから母体に肺炎が生じることがあり、ときに重症化することがあります。

これらの要因を妊娠前に把握し対処しておくと、妊娠中に問題が生じるリスクを抑えるのに役立ちます( ハイリスク妊娠の危険因子)。食生活や社会生活、情緒な問題、医学的な問題で不安がある場合も医師に相談します。

妊娠前に医師や医療従事者などの診察を受けて、風疹ワクチンなどの必要な予防接種を受けておくこともできます。まだ葉酸を摂取していない場合には、1日当たりの推奨量(RDA)、または神経管閉鎖不全の胎児を妊娠したことがある場合には高用量の葉酸が含まれた妊婦用の総合ビタミン剤を、医師に処方してもらうことができます。必要であれば、遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを知るために、女性とパートナーは遺伝子スクリーニングを受けることができます。

初回の健診

妊娠が確認されたら、できれば妊娠6~8週に身体診察を受けるべきです。このときに妊娠期間と出産予定日ができる限り正確に割り出されます。

医師は、女性が現在かかっている病気とかかったことのある病気、使用している薬剤、および過去の妊娠の詳細(糖尿病、流産、先天異常などの問題を含む)について質問します。

妊娠して初めての身体診察は、かなり詳しく行われます。具体的には以下のものがあります。

  • 体重、身長、血圧を測定します。

  • 足首にむくみがないか調べます。

  • 内診:内診では子宮の大きさと位置を調べます。

  • 血液検査:採血して検査を行います。血液検査では血算や、感染症(梅毒、肝炎、ヒト免疫不全ウイルス[HIV])の有無、風疹と水痘に対する免疫の有無などを調べます。血液型の検査ではRh血液型(プラスかマイナス)も調べます。

  • 尿検査:尿を採取して培養検査を行います。

  • 子宮頸部細胞診(パパニコロウ検査)など:子宮頸部から組織サンプルを採取して子宮頸がんがないか確認します。

  • 性感染症検査:子宮頸部細胞診の直後に子宮頸部からサンプルをもう1回採取して、淋菌感染症やクラミジア感染症などの性感染症の有無を調べる検査を行います。

その他の検査は妊婦の状態に応じて行います。一部の女性(甲状腺の病気、糖尿病、不妊症、流産の既往がある女性など)では、甲状腺ホルモンが測定される場合があります。

妊婦の血液型がRhマイナスであれば、Rh因子に対する抗体の有無を調べます( Rh式血液型不適合)。このような妊婦では、妊婦のRhマイナスの血液がRhプラスの血液と接触すると、免疫系がRh因子に対する抗体を産生します(過去のRhプラスの胎児の妊娠時など)。この抗体(Rh抗体)がRhプラスの胎児の血球を破壊する可能性があり、胎児に重大な問題を引き起こします(死亡することさえあります)。妊婦の血液中の抗体が早期に検出されれば、胎児を守る処置を取ることができます。血液型がRh0マイナスのすべての女性には、妊娠28週にRh0(D)免疫グロブリンを筋肉内注射により投与します。また、妊婦の血液と胎児の血液が接触した可能性がある場合(例えば性器出血、羊水穿刺、分娩の後など)には必ず注射を行います。Rh0(D)免疫グロブリンは、胎児の血球が破壊されるリスクを低下させます。

知っていますか?

  • 妊娠中は、タバコ、受動喫煙、薬剤の服用、飲酒を控え、ネコのトイレと便、水痘や帯状疱疹にかかっている可能性のある人との接触を避けます。

  • インフルエンザの流行期には、すべての妊婦がインフルエンザワクチンの接種を受けるべきです。

アフリカ系の女性の場合、以前に調べたことがなければ、鎌状赤血球形質を有しているかどうか、もしくは鎌状赤血球症がないかどうかを調べる検査を行います。結核について調べる皮膚テスト(ツベルクリン検査)はすべての女性が受けておくとよいでしょう。

フォローアップ健診

初回の健診の後は、以下のように診察を受けます。

  • 妊娠28週までは4週間毎

  • 36週までは2週間毎

  • その後は出産まで毎週

通常、毎回体重と血圧を記録し、子宮の大きさを測定して、胎児が順調に成長しているか確認します。妊婦の足首にむくみがないかを調べます。

胎児の心拍も確認します。心拍は手持ち式のドプラ超音波装置で通常は妊娠10~11週に確認できます。心拍が確認されれば、その後の健診毎に、心拍が正常であるかチェックします。

健診では毎回、尿検査で糖を調べます。尿中に糖が多く出ると糖尿病が疑われます。尿中に糖が認められた場合はできるだけ早く血液検査を行って、糖尿病がないかどうか調べます。尿中に糖が認められなくても、妊娠中に発生するタイプの糖尿病(妊娠糖尿病)について通常すべての妊婦を検査します。この血液検査は24~28週に行われます。女性が一定量のブドウ糖を含む液体を飲んで1時間後に血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を測定します(ブドウ糖負荷試験)。妊娠糖尿病の危険因子がある場合は、この検査をもっと早い時期に行います(できれば妊娠12週前)。妊娠糖尿病の危険因子には以下のものがあります。

  • 重度の過体重(約110キログラム以上)

  • 過去の妊娠時の妊娠糖尿病または巨大児(4500g以上)

  • 過去の妊娠時の原因不明の流産

  • 第1度近親者(母親や姉妹)の糖尿病

  • 長期間にわたって尿中に糖が出たことがある

  • インスリン抵抗性の多嚢胞性卵巣症候群にかかっている

リスクがある女性の初回の検査結果が正常の場合には、妊娠24~28週に再検査します。

健診では毎回尿検査を行って、タンパク尿が認められるかどうかも調べます。タンパク尿は妊娠高血圧腎症(妊娠中に生じる高血圧の一種)を示唆することがあります。

遺伝性疾患をもつ胎児を妊娠するリスクが高い場合には、出生前診断を行うことができます。

超音波検査

超音波検査は最も安全な画像検査であり、ほとんどの医師は、胎児の正常な成長を確認し、出産予定日が正しいことを裏付けるために、妊娠中に少なくとも1回は行うべきであると考えています。超音波検査は通常、妊娠16~20週の間に行われます。

超音波検査では、超音波を発生させる装置(プローブ)を妊婦の腹部にあてます。音波は画像に変換されてモニター画面に映し出されます。とりわけ妊娠の初期では、腟内にプローブを入れて超音波検査を行うことがあります。超音波検査では高画質の画像が得られ、実際に胎児が動いている様子をみることもできます。医師は超音波検査によって多くの有用な情報が得られ、これを見て妊婦も安心できます。

超音波検査は以下のためにも利用できます。

  • 胎児の心臓の拍動の様子をとらえ、胎児の生存を確認する(早ければ妊娠5週から)

  • 胎児の性別を判別する(早ければ妊娠14週から)

  • 多胎妊娠であるかどうかを確認する

  • 胎盤の位置の異常(前置胎盤)や胎児の向きの異常がないかを確認する

  • 妊娠時期を判断して妊娠が正常に経過しているかを確認する

  • 先天異常を発見する(場合による)

  • 胎児の首の後ろ付近の液体がたまった部分(項部透明帯[NT]と呼ばれる)を測定することにより、ダウン症候群(およびその他いくつかの疾患)の徴候がないか調べる

  • 出生前診断などの処置を行う際、器具を目的の位置に誘導する

出産を控えた時期には、胎児を包む羊水で満たされた卵膜が早く破れてしまう前期破水の確認にも、超音波検査を用いることがあります。超音波検査では帝王切開が必要かどうかを医師が判断するための情報も得られます。

その他の画像検査

妊娠中は通常、X線検査が行われることはありませんが、必要が生じた場合は安全に行うことができます。X線検査が必要になった場合は、妊婦の下腹部に鉛の入った遮へい板を付けて子宮を覆い、胎児を放射線から守ります。

予防接種

インフルエンザの流行期には、すべての妊婦が予防接種を受けることを専門家は勧めています。

必要な場合、妊婦はB型肝炎ワクチンの接種を受けることができます。

専門家は、女性がワクチンを完全に受けている場合でも、ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン(Tdap)の追加接種を妊娠20週以降(可能であれば27~36週)または分娩後に受けることを推奨しています。

妊娠中は、麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチンおよび水痘ワクチンの接種を受けるべきではありません。

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