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妊娠中の医療

執筆者:

Haywood L. Brown

, MD, Duke University Medical Center

最終査読/改訂年月 2016年 11月
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子どもをもつことを考えているカップルは、妊娠前に医師や医療従事者に相談して、妊娠が望ましいかについて話し合うことができていれば理想的です。通常、妊娠は非常に安全なものです。しかし、妊娠中に重症化する病気もあります。また、遺伝性疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いカップルもいます。

カップルが妊娠を考え始めたら、女性は葉酸 葉酸 葉酸はビタミンB群の1つです。ビタミンB12とともに、葉酸は正常な赤血球の形成と細胞の遺伝物質であるDNA(デオキシリボ核酸)の合成に必要不可欠な物質です。葉酸は胎児の神経系の正常な発達にも必要です。 生の緑色の葉野菜、アスパラガス、ブロッコリー、果物(特にかんきつ類)、レバーなどの内臓肉、乾燥酵母、栄養強化したパンやパスタおよびシリアルなどには、葉酸が豊富に含まれています。長時間の加熱調理によって、食品中の葉酸の50~95%が破壊され... さらに読む が含まれた総合ビタミン剤の1日1回の摂取を始めるべきです。妊娠可能年齢の女性に推奨される最低量は400マイクログラムですが、一部の専門家は、600~800マイクログラムというそれよりやや多い量を推奨しています。総合ビタミン剤などの市販の製品には多くの場合、これらの用量が含まれています。葉酸は、胎児に脊髄や脳の先天異常(神経管閉鎖不全)が生じるリスクを抑えます。神経管閉鎖不全の胎児を妊娠したことがある場合は、次の妊娠を考え始めたらすぐに、通常の推奨量よりかなり高用量(4000マイクログラム)の葉酸の摂取を始めるようにします。1,000マイクログラム以上の用量は処方せんがないと入手できません。

知っていますか?

  • 妊娠を考えている女性は、妊娠するまで待たずに葉酸が含まれた総合ビタミン剤(一部の先天異常の予防に役立つ)の摂取を始めるべきです。

カップルが妊娠を試みたいと決断した場合は医師に相談して、できるだけ健康的な妊娠経過を送ることができるようにします。こうした機会に、女性の健康や発育する胎児の健康を損なうおそれのある要因について医師に聞いておくべきです。

妊娠に際して避けるべき要因や状況としては以下のものがあります。

水痘や帯状疱疹はヘルペスウイルスから生じます。分娩時にヘルペスウイルスが胎児に感染して、胎児が重い病気にかかることがあります。また、ヘルペスウイルスから母体に肺炎が生じることがあり、ときに重症化することがあります。

これらの要因を妊娠前に把握し対処しておくと、妊娠中に問題が生じるリスクを抑えるのに役立ちます( ハイリスク妊娠の危険因子 ハイリスク妊娠の危険因子 危険因子には妊娠前から存在するものがあり、そのような危険因子には以下のものがあります。 女性の特定の身体的特徴および社会的特徴 過去の妊娠時の問題 妊娠前から存在する特定の病気 胎児に害のある物質への曝露 さらに読む ハイリスク妊娠の危険因子 )。食生活や社会生活、情緒な問題、医学的な問題で不安がある場合も医師に相談します。

妊娠前に医師や医療従事者などの診察を受けて、風疹ワクチン 麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン 麻疹・ムンプス・風疹(MMR)混合ワクチンは、この3種の重篤なウイルス感染症を予防するためのワクチンです。このワクチンには、麻疹(はしか)、ムンプス(流行性耳下腺炎、おたふくかぜ)、風疹の生きたウイルスが弱毒化されて含まれています。これらのいずれかの病気に対する予防が必要な人は、他の2つに対する予防も必要になることから、この混合ワクチンが使用されています。これらのワクチンを個別に接種することはできません。... さらに読む などの必要な予防接種を受けておくこともできます。まだ葉酸を摂取していない場合には、1日当たりの推奨量(RDA)、または神経管閉鎖不全の胎児を妊娠したことがある場合には高用量の葉酸が含まれた妊婦用の総合ビタミン剤を、医師に処方してもらうことができます。必要であれば、遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを知るために、女性とパートナーは遺伝子スクリーニング 遺伝子スクリーニング スクリーニングではカップルの家族歴を評価し、必要に応じて血液や組織のサンプルを分析します。 遺伝子スクリーニングは、遺伝性の遺伝子疾患をもつ子どもが生まれるリスクが高いかどうかを判断するために行う検査です。すべてのカップルが遺伝子スクリーニングを受けることができますが、特に推奨されるのは以下の場合です。 パートナーの一方または両方に遺伝子異常があることが分かっている。 家系内に遺伝子異常を有する人がいる。... さらに読む を受けることができます。

初回の健診

妊娠が確認されたら、できれば妊娠6~8週に身体診察を受けるべきです。このときに妊娠期間と出産予定日ができる限り正確に割り出されます。

医師は、女性が現在かかっている病気とかかったことのある病気、使用している薬剤、および過去の妊娠の詳細(糖尿病、流産、先天異常などの問題を含む)について質問します。

妊娠して初めての身体診察は、かなり詳しく行われます。具体的には以下のものがあります。

  • 体重、身長、血圧を測定します。

  • 足首にむくみがないか調べます。

  • 内診:内診では子宮の大きさと位置を調べます。

  • 血液検査:採血して検査を行います。血液検査では血算や、感染症(梅毒、肝炎、ヒト免疫不全ウイルス[HIV])の有無、風疹と水痘に対する免疫の有無などを調べます。血液型の検査ではRh血液型(プラスかマイナス)も調べます。

  • 尿検査:尿を採取して培養検査を行います。

  • 子宮頸部細胞診(パパニコロウ検査)など:子宮頸部から組織サンプルを採取して子宮頸がんがないか確認します。

  • 性感染症検査:子宮頸部細胞診の直後に子宮頸部からサンプルをもう1回採取して、淋菌感染症やクラミジア感染症などの性感染症の有無を調べる検査を行います。

その他の検査は妊婦の状態に応じて行います。一部の女性(甲状腺の病気、糖尿病、不妊症、流産の既往がある女性など)では、甲状腺ホルモンが測定される場合があります。

妊婦の血液型がRhマイナスであれば、Rh因子に対する抗体の有無を調べます( Rh式血液型不適合 Rh式血液型不適合 Rh式血液型不適合は、母体がRhマイナスで胎児がRhプラスの場合に起こります。 Rh式血液型不適合により胎児の赤血球が破壊されうるため、重症の貧血が起こることがあります。 胎児が貧血を起こしていないかどうかを調べるため、定期的に検査を行います。 貧血が疑われる場合には胎児に輸血が行われます。 胎児に問題が起こらないよう、妊娠28週頃、大量出血が生じた後、分娩後、および特定の処置を行った後に、血液型がRhマイナスの妊婦にRh抗体を注射しま... さらに読む )。このような妊婦では、妊婦のRhマイナスの血液がRhプラスの血液と接触すると、免疫系がRh因子に対する抗体を産生します(過去のRhプラスの胎児の妊娠時など)。この抗体(Rh抗体)がRhプラスの胎児の血球を破壊する可能性があり、胎児に重大な問題を引き起こします(死亡することさえあります)。妊婦の血液中の抗体が早期に検出されれば、胎児を守る処置を取ることができます。血液型がRh0マイナスのすべての女性には、妊娠28週にRh0(D)免疫グロブリンを筋肉内注射により投与します。また、妊婦の血液と胎児の血液が接触した可能性がある場合(例えば性器出血、羊水穿刺、分娩の後など)には必ず注射を行います。Rh0(D)免疫グロブリンは、胎児の血球が破壊されるリスクを低下させます。

知っていますか?

  • 妊娠中は、タバコ、受動喫煙、薬剤の服用、飲酒を控え、ネコのトイレと便、水痘や帯状疱疹にかかっている可能性のある人との接触を避けます。

  • インフルエンザの流行期には、すべての妊婦がインフルエンザワクチンの接種を受けるべきです。

アフリカ系の女性の場合、以前に調べたことがなければ、鎌状赤血球形質を有しているかどうか、もしくは鎌状赤血球症がないかどうかを調べる検査を行います。結核について調べる皮膚テスト(ツベルクリン検査)はすべての女性が受けておくとよいでしょう。

フォローアップ健診

初回の健診の後は、以下のように診察を受けます。

  • 妊娠28週までは4週間毎

  • 36週までは2週間毎

  • その後は出産まで毎週

通常、毎回体重と血圧を記録し、子宮の大きさを測定して、胎児が順調に成長しているか確認します。妊婦の足首にむくみがないかを調べます。

胎児の心拍も確認します。心拍は手持ち式のドプラ超音波装置で通常は妊娠10~11週に確認できます。心拍が確認されれば、その後の健診毎に、心拍が正常であるかチェックします。

健診では毎回、尿検査で糖を調べます。尿中に糖が多く出ると糖尿病が疑われます。尿中に糖が認められた場合はできるだけ早く血液検査を行って、糖尿病がないかどうか調べます。尿中に糖が認められなくても、妊娠中に発生するタイプの糖尿病(妊娠糖尿病 妊娠糖尿病 妊娠前から糖尿病にかかっている女性の場合、糖尿病にかかっている期間や、高血圧や腎障害などの糖尿病の合併症がみられるかどうかによって、妊娠中に合併症を起こすリスクは異なります。妊娠は糖尿病(1型および2型)を悪化させる傾向がありますが、糖尿病の合併症(眼、腎臓、神経の障害)を誘発したり悪化させたりすることはありません。 (糖尿病も参照のこと。) 妊婦の少なくとも5%が妊娠中に糖尿病を発症します。これを妊娠糖尿病といいます。妊娠糖尿病は以下... さらに読む )について通常すべての妊婦を検査します。この血液検査は24~28週に行われます。女性が一定量のブドウ糖を含む液体を飲んで1時間後に血糖値(血液中のブドウ糖濃度)を測定します(ブドウ糖負荷試験)。妊娠糖尿病の危険因子がある場合は、この検査をもっと早い時期に行います(できれば妊娠12週前)。妊娠糖尿病の危険因子には以下のものがあります。

リスクがある女性の初回の検査結果が正常の場合には、妊娠24~28週に再検査します。

超音波検査

超音波検査では、超音波を発生させる装置(プローブ)を妊婦の腹部にあてます。音波は画像に変換されてモニター画面に映し出されます。とりわけ妊娠の初期では、腟内にプローブを入れて超音波検査を行うことがあります。超音波検査では高画質の画像が得られ、実際に胎児が動いている様子をみることもできます。医師は超音波検査によって多くの有用な情報が得られ、これを見て妊婦も安心できます。

超音波検査は以下のためにも利用できます。

  • 胎児の心臓の拍動の様子をとらえ、胎児の生存を確認する(早ければ妊娠5週から)

  • 胎児の性別を判別する(早ければ妊娠14週から)

  • 多胎妊娠であるかどうかを確認する

  • 胎盤の位置の異常(前置胎盤)や胎児の向きの異常がないかを確認する

  • 妊娠時期を判断して妊娠が正常に経過しているかを確認する

  • 先天異常を発見する(場合による)

  • 胎児の首の後ろ付近の液体がたまった部分(項部透明帯[NT]と呼ばれる)を測定することにより、ダウン症候群(およびその他いくつかの疾患)の徴候がないか調べる

  • 出生前診断などの処置を行う際、器具を目的の位置に誘導する

出産を控えた時期には、胎児を包む羊水で満たされた卵膜が早く破れてしまう前期破水の確認にも、超音波検査を用いることがあります。超音波検査では帝王切開が必要かどうかを医師が判断するための情報も得られます。

その他の画像検査

妊娠中は通常、X線検査が行われることはありませんが、必要が生じた場合は安全に行うことができます。X線検査が必要になった場合は、妊婦の下腹部に鉛の入った遮へい板を付けて子宮を覆い、胎児を放射線から守ります。

予防接種

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