妊娠中の 高血圧 高血圧 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む は以下のいずれかに分類されます。
慢性高血圧:妊娠前から血圧が高かった場合です。
妊娠高血圧:妊娠20週以降に初めて血圧が高くなった場合です(通常37週以降)。このタイプの高血圧は一般的に、分娩後6週間以内に解消します。
妊娠高血圧腎症 妊娠高血圧腎症および子癇 妊娠高血圧腎症は、妊娠20週以降に新たに発症する高血圧または既存の高血圧の悪化で、過剰な尿タンパク質を伴うものです。子癇(しかん)は妊娠高血圧腎症の女性に起こるけいれん発作で、ほかに原因がないものをいいます。 妊娠高血圧腎症によって胎盤剥離や早産が起こりやすくなり、出生直後の新生児に問題が生じるリスクが高まります。 妊婦の手、手指、首、足がむくむことがあり、重度の妊娠高血圧腎症を治療しないと、けいれん発作(子癇)や臓器損傷が起こることが... さらに読む は妊娠中に発症する高血圧の一種で、タンパク尿を伴います。妊娠高血圧腎症は、他の高血圧とは異なる診断および治療を行います。
慢性高血圧の場合、妊娠中に深刻な問題が起こる可能性が高くなります。ただし以下のような問題は、慢性高血圧、妊娠高血圧のいずれがある場合でも起こる可能性が高くなります。
妊娠高血圧腎症や子癇(重症の妊娠高血圧腎症によるけいれん発作)
高血圧の悪化
HELLP症候群は、溶血(Hemolysis:赤血球が壊れること)、肝酵素の濃度の上昇(Elevated levels of Liver enzymes:肝傷害を意味します)、血小板数の減少(Low Platelet count)で構成される病態で、血小板が減少することで血液が固まりにくくなり、分娩中や分娩後に出血が起こるリスクが高まります。
高血圧がみられる場合は、妊娠期間を通じて、血圧が良好にコントロールされているか、腎機能が正常であるか、胎児の発育が正常であるかを注意深くモニタリングします。ただし、胎盤の早期剥離は予防や予測ができません。多くの場合、死産や重度の高血圧の合併症(脳卒中など)を防ぐために出産時期を早めなければなりません。
診断
定期的な血圧の測定
妊婦健診の際に決まって血圧を測定します。
通常、妊娠中の女性に重度の高血圧が初めて起きた場合には、医師は高血圧の他の可能性を否定するために検査を行います。
治療
軽度から中等度の高血圧の場合は、活動量を減らし、必要に応じて降圧薬
重度の高血圧では、降圧薬
一部の降圧薬を避ける
高血圧の状態と腎臓が良好に機能しているかどうかにより、薬剤を使用する場合もしない場合もあります。慢性高血圧と妊娠高血圧における治療薬の使用および選択は同様です。ただし、妊娠高血圧は多くの場合、妊娠後半に発生するため、薬剤による治療を必要としない場合もあります。
軽度から中等度の高血圧(140/90~159/109mmHg)の場合、治療は様々な要因により異なってきます。血圧を下げるのに役立つ可能性があるため、身体活動を抑えるよう医師から勧められることがあります。活動を抑えることで血圧が下がらない場合には、多くの専門家が降圧薬による治療を推奨しています。こういった薬剤の便益がリスクを上回るかどうかは、明らかではありません。ただし、腎臓が正常に機能していなければ、薬剤が必要です。高血圧が適切にコントロールされていないと、腎障害がさらに悪化する可能性があります。
重度の高血圧(160/110mmHg以上)の場合は、降圧薬による治療が推奨されます(表「 降圧薬 降圧薬 」を参照)。治療を行うと、高血圧による脳卒中や 高血圧が原因で起こるその他の合併症 高血圧の合併症 高血圧とは、動脈内の圧力が恒常的に高くなっている状態のことです。 高血圧の原因は不明のことも多いですが、腎臓の基礎疾患や内分泌疾患によって起こる場合もあります。 肥満、体を動かさない生活習慣、ストレス、喫煙、過度の飲酒、食事での過剰な塩分摂取などはすべて、遺伝的に高血圧になりやすい人の高血圧の発症に何らかの形で関与しています。... さらに読む のリスクが低下します。
重度の高血圧(180/110mmHg以上)では、母体や胎児に合併症が起きるリスクが高いため、直ちに妊婦の評価を行います。リスクにもかかわらず女性が妊娠の継続を希望する場合、しばしば数種類の降圧薬が必要です。出産が近づいてくると入院になる場合もあります。状態が悪化した場合、医師は妊娠の継続を断念するよう勧めることがあります。
患者は自宅で血圧を測る方法の指導を受けます。腎機能と肝機能が良好であるかどうかを調べる検査を定期的に行い、胎児が順調に発育しているかを調べるために超音波検査を行います。
妊婦に中等度から重度の高血圧がみられる場合は、一般的に37~39週で分娩を行います。胎児の成長が遅い、胎児に問題がある、母体に重症の妊娠高血圧腎症がある場合などにはさらに早期に分娩を行います。
降圧薬
メチルドパ
ベータ遮断薬(最も使用されるのはラベタロール)
カルシウム拮抗薬(ニフェジピンなど)
ただしアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬は妊娠中、特に第2トリメスター【訳注:日本でいう妊娠中期にほぼ相当】以降は使用を中止します。これらの薬剤は胎児の尿路に先天異常を引き起こす可能性があり、このため、新生児が出生直後に死亡することがあります。
アンジオテンシンII受容体拮抗薬は、腎臓、肺、骨格の問題および胎児死亡のリスクを上昇させるため、使用を中止します。
アルドステロン拮抗薬(スピロノラクトンやエプレレノン)も、男子胎児に女性的特徴が発達するおそれがあるため使用を中止します。
サイアザイド系利尿薬は、胎児においてカリウム濃度の低下が起こる可能性があるため、通常中止します。ただし他の薬剤で効果がみられない場合や、耐えがたい副作用が起きた場合は、慢性高血圧の妊婦にサイアザイド系利尿薬(ヒドロクロロチアジドなど)が投与されることがあります。