妊娠中に手術を要するような病気にかかることがあります。大手術で特に腹部の手術の場合、 切迫早産 切迫早産 妊娠37週以前に起こる陣痛は切迫早産とみなされます。 早産児として生まれた新生児には、深刻な健康上の問題が生じる可能性があります。 切迫早産の診断は通常明らかです。 安静にしたり、ときには薬剤を用いて、分娩を遅らせます。 抗菌薬やコルチコステロイドも必要な場合があります。 さらに読む のリスクが上昇するほか、 流産 流産 流産とは、妊娠20週までに人為的でない原因によって胎児が失われることです。 胎児側の問題(遺伝性疾患や先天異常など)によっても母体側の問題(生殖器の構造的異常、感染症、コカインの使用、飲酒、喫煙、けがなど)によっても流産が起こりますが、多くの場合、原因は不明です。 出血や筋けいれんが起こることがありますが、特に妊娠して週数が経過している場合にはよく起こります。 医師は子宮頸部を診察し、通常は超音波検査も行います。... さらに読む (特に妊娠早期の)の原因になることがあります。このため、通常、開腹手術は可能であれば延期します。しかし開腹手術が必要な場合には直ちに実施すべきで、たいていの場合は手術を行っても安全です。
虫垂炎
妊娠中に 虫垂炎 虫垂炎 虫垂炎とは、虫垂に感染と炎症が起きた状態です。 しばしば虫垂の内部に閉塞が生じることで虫垂が炎症を起こし、感染症が生じます。 腹痛、吐き気、発熱がよくみられます。 試験開腹、またはCT検査や超音波検査などの画像検査が行われます。 治療では、虫垂の切除手術と感染症治療のための抗菌薬の投与が行われます。 さらに読む になった場合は、虫垂が破裂すると致死的になることがあるため、手術で早急に虫垂を取り除きます(虫垂切除術)。虫垂切除術が胎児に害を及ぼしたり流産を引き起こしたりする可能性は低いです。しかし、妊娠中は虫垂炎が起きているのに気づくのが困難になります。虫垂炎による締めつけるような痛みは、妊娠中によくみられる子宮収縮に伴う痛みと似ています。妊娠の経過とともに虫垂が上に押されるため、虫垂炎による痛みの部位が通常と異なることがあります。
妊婦で虫垂炎を示唆する症状がみられた場合は、主治医に報告するべきです。こういった症状には、6時間を超えて続く腹痛(特に吐き気や嘔吐を伴う場合)などがあります。
胆嚢疾患
胆嚢 胆嚢と胆管の病気の概要 胆汁は、緑がかった黄色の粘り気のある液体で、肝臓で作られます。胆汁はコレステロール、脂肪、脂溶性ビタミンを腸から吸収しやすい形に変えることで、消化を補助します。また、特定の老廃物(主にビリルビンと過剰なコレステロール)や薬の副産物を体外に排出する働きもあります。 胆道は複数の細い管で構成され、胆汁はそれらの管を通って肝臓から胆嚢へ、さらに... さらに読む が炎症を起こした場合(通常は胆石が胆嚢をふさいだために起こる)、痛みの治療のために鎮痛薬を投与し、静脈に挿入したカテーテルから輸液します。炎症が治まるまで、食事は許可されません。
感染症が生じれば、抗菌薬を投与します。病状が改善しない場合、手術を行います。
卵巣嚢胞
良性の(がんではない) 卵巣嚢胞 良性の卵巣病変 増殖する良性の(がんではない)卵巣病変には、嚢胞(主に機能性嚢胞)と腫瘍があります。 ほとんどの嚢胞と腫瘍には症状がみられませんが、骨盤部に痛みや重感が生じることもあります。 医師による内診で腫瘤が発見されることがあり、超音波検査によって診断が確定されます。 嚢胞は自然に消失する場合もあります。 嚢胞や腫瘍は、腹部を小さく1カ所または複数カ所切開するか、大きく1カ所切開して切除し、ときには嚢胞や腫瘍ができた側の卵巣も切除する必要がありま... さらに読む は妊娠の早期で一般的にみられます。
妊娠中に卵巣嚢胞がなくならない場合、通常、手術は妊娠14週目以降まで待ちます。卵巣嚢胞は妊娠を維持するホルモンを分泌している場合があり、治療しなくても消失することがしばしばあるからです。
ただし卵巣嚢胞または別の腫瘤が大きくなったり、圧痛がひどかったり、(超音波検査で)一定の特徴が認められたりした場合は、14週前でも手術しなければならないことがあります。こうした腫瘤はがんであることもあります。
腸閉塞
妊娠中の 腸閉塞 腸閉塞 腸閉塞とは、腸管内で食べもの、水分、消化分泌液、ガスの通過が完全に止められているか、深刻な通過障害が起きている状態のことです。 成人で最も一般的な原因は、以前に受けた腹部の手術による瘢痕(はんこん)組織、ヘルニア、腫瘍です。 痛み、腹部膨満、食欲不振がよくみられます。 診断は、身体診察とX線検査の結果に基づいて下されます。 閉塞を取り除くための手術がしばしば必要になります。 さらに読む は非常に重篤な状態になる可能性があります。腸閉塞がもとで腸管の壊疽や腹膜炎(腹腔の内側を覆う膜の炎症)が生じると、流産を起こしたり母体の生命が危険にさらされることがあります。
妊婦に腸閉塞の症状がある場合、特にこれまでに腹部手術や腹腔内感症染の既往がある場合には、通常は速やかに試験開腹が行われます。腸閉塞の症状には、けいれん性の腹痛、食欲不振、腹部膨満、嘔吐、重度の便秘または重度の下痢などがあり、ときに発熱もみられます。