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女性の性機能障害の概要

執筆者:

Rosemary Basson

, MD, University of British Columbia and Vancouver Hospital

最終査読/改訂年月 2013年 7月
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本ページのリソース

性機能障害には、性交時の痛み、腟の筋肉の痛みを伴う収縮(けいれん)、性欲や性的興奮の問題、オルガスムに伴って感じる苦痛などがあります。

  • 抑うつ、不安、その他の心理的要因、病気、薬物などが性機能障害の一因になることがあり、パートナーとの関係の問題を含めた個人的な状況も同様です。

  • 問題を把握するためには、多くはパートナーの双方に対して個別および同時に面談を行うほか、女性に痛みやオルガスムの問題がある場合は内診も必要になります。

  • 性機能障害の原因に関係なく、パートナーとは心を開いてはっきりとコミュニケーションをとるようにし、性行為に最も良い環境を作れば、しばしば問題解決に役立ちます。

  • 認知行動療法、マインドフルネス、またはこれらの組合せが精神療法と同様に役立つことがあります。

女性の約30~50%が生涯のいずれかの時点で性機能の問題を経験します。苦痛を感じるほど問題が重大である場合、性機能障害とみなされます。性機能障害とは、性的関心や性欲の欠如、性的興奮やオルガスムを得ることが難しい、性行為中の痛み、腟周囲の筋肉の不随意の収縮、望んでいない身体的な興奮が持続するなどの具体的な問題に関するもので、診断もそれに関するものとして下されます。しかし、これらの区別が常に有用とは限りません。性機能障害のある女性のほぼ全員で、こういった具体的な問題が複数みられます。例えば、性的興奮に達しにくい女性はセックスを十分楽しめませんし、オルガスムに達することが困難で、セックスを痛いとさえ感じるでしょう。こういった女性や、性行為の際に痛みを感じる女性の多くは、当然のことながらセックスに対する関心を失い望まなくなるでしょう。

正常な性機能

性機能と性的反応には、心(思考と感情)と体(神経系、循環系、内分泌系など)の両方が関わっています。性的反応には以下の要素があります。

  • 動機とは、性行為をしたい、あるいは続けたいという願望です。性行為を望む理由には、性欲を含めて、様々なものがあります。性欲は思考、言葉、視覚、嗅覚、触感により誘発されます。性行為が始まった時点から明らかに性欲がある場合もあれば、女性に興奮が起きてから性欲が生じる場合もあります。

  • 性的興奮とは、感じたり、考えたりする主観的な要素です。これには身体的な要素、すなわち性器周辺への血流の増加も関係しています。女性では、血流の増加により陰核(男性の陰茎に相当する部分)と腟壁が膨らみます(この過程を充血と呼びます)。血流の増加により腟液の分泌も増加します(潤滑剤としての役目を果たします)。血流の増加は、自覚がなく、あるいは興奮を感じていなくても起こります。

  • オルガスムは性的興奮の頂点です。オルガスムに達する直前、全身の筋肉の緊張が強くなります。オルガスムが始まると、腟周囲の筋肉が律動的に収縮します。女性は何度もオルガスムに至ることが可能です。

  • 消退とは、オルガスムに続いてみられる幸福感と全身に広がる筋肉の弛緩です。消退は典型的にはオルガスムに続いて起こります。しかし、強い興奮をもたらす性行為の後には、オルガスムなしでゆっくりと消退が起こる場合もあります。消退が起きてすぐに新たな刺激に反応できる女性もいます。

多くの人々(男性および女性)はいくつかの理由から性行為を行います。例えば、ある人に性的関心がある、身体的な快感、好意、愛、ロマンス、親密さを得たいなどの理由です。ただし女性の場合、以下のような感情的な動機の方が多くみられます。

  • 情緒的な親密さを経験し、さらに高める

  • 幸福感を増幅させる

  • 自分の魅力を確認する

  • パートナーを喜ばせたり、慰めたりする

特にパートナーとの関係が長くなってくると、性行為を始める前の時点で性欲がほとんどあるいはまったくない場合が多くなりますが、性行為を始めて性的刺激が始まると、性欲が生じてきます。また、性行為前の性欲は加齢とともに通常は低下しますが、年齢にかかわらず新しいパートナーができた場合は一時的に増大します。オルガスムの有無にかかわらず性的な満足感を得る女性もいる一方、オルガスムを伴った方がはるかに高い性的満足感を得る女性もいます。

知っていますか?

  • パートナーとの関係が長い女性では、性行為を開始するか性的刺激が始まるまでは、性欲をほとんどあるいはまったく感じません。

原因

様々な性機能障害には多くの要因が関わっています。従来、原因は身体的なものまたは心理的なものと考えられていました。しかし、このような区別は厳密には正確ではありません。心理的な要因によって、脳、神経、ホルモン、最終的には性器に身体的な変化が起きることがあります。身体的な変化が心理的な影響を及ぼし、これがさらに身体的な影響を及ぼすこともあります。なかには、女性個人よりも状況に深く関わる要因もあります。

心理的な要因

抑うつや不安が影響を及ぼすことがよくあります。

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何が女性の性機能に影響するか

種類

要因

心理的な要因

小児期または青年期の情緒的、身体的、または性的虐待

不安

抑うつ

親密になることに対する恐れ

自制心を失うことに対する恐れ

パートナーを失うことに対する恐れ

低い自尊心

オルガスムを得られないことへの心配やパートナーの性的能力に関する心配

性行為によって望まない結果となること(望まない妊娠や性感染症)への心配

状況的な要因

性的表現や性行為を制限する文化的背景

注意をそらすもの

パートナーとの関係の問題

性行為を行うのにふさわしくない環境

身体的な要因

性器の異常(手術や放射線療法後の瘢痕組織)

萎縮性腟炎(腟組織が薄くなる)

腟の開口部周辺の皮膚の変化(硬化性苔癬など)

性器周辺または腟の感染症(性器ヘルペスなど)

疲労

高プロラクチン血症(下垂体から分泌されるホルモンの1つであるプロラクチンの血中濃度が高くなった状態)

健康状態が悪い

閉経前の女性における両側卵巣の外科的切除

甲状腺の病気

多発性硬化症など神経系の病気の一部

アルコール

抗てんかん薬

ベータ遮断薬(高血圧や心疾患の治療に使用)

特定の抗うつ薬、特に選択的セロトニン再取り込み阻害薬

オピオイド

過去の経験が女性の心理的発達と性的発達に影響し、以下のような問題が起こります。

  • 過酷な性的経験または他の経験により、自尊心が低下したり、羞恥心や罪悪感が生まれます。

  • 小児期や青年期の情緒的虐待、身体的虐待、または性的虐待により、子どもは感情をコントロールし、隠すことを覚えます。これは有用な防御機構であるためです。しかし、感情をコントロールし、隠す女性は、性的感情を表現することが苦手です。

  • 小児期に親や愛する人を失った女性は、同じような喪失を恐れるために、ときに気づかないうちにセックスパートナーと仲を深めることが難しくなります。

性に関する様々な心配事により、性機能が妨げられます。例えば、セックスが望まない結果を生むことや、自分またはパートナーの性的能力について心配することがあります。

状況的な要因

状況に関係する要因としては以下のものがあります。

  • 女性自身の状況:例えば、妊よう性に問題がある女性や、乳房や子宮など性に関連する部位を手術で切除した女性では、性的な自己像(セルフイメージ)が悪化していることがあります。

  • パートナーとの関係:セックスパートナーに対し信頼をもっていないことや、否定的な感情をもっている場合があります。関係をもった最初の頃と比べて、パートナーに魅力を感じなくなる場合があります。

  • 環境:環境のムード、プライバシー、安全性などが不十分であるために、思いのままに性的表現ができないことがあります。

  • 文化:女性が性的表現や性行為を制限する文化的背景をもっていることがあります。文化によっては、セクシュアリティについて羞恥心や罪悪感を女性が抱いていることがあります。女性およびそのパートナーが、文化の違いから、ある性行為に対して異なる考え方をもつ場合があります。

  • 注意をそらすもの:家族、仕事、家計や他の事で頭が一杯で性的興奮が妨げられることがあります。

身体的な要因

様々な身体的状態や薬剤が性機能障害の原因になります。加齢または病気によってホルモンに変化が起こり、性機能を妨げます。例えば、閉経後には エストロゲンが減少するため、腟の組織は薄くなって乾燥し弾力性が低下します。この状態を萎縮性腟炎と呼び、性交時に痛みが生じることがあります。両側の卵巣を摘出によってもこの影響が生じます。

抗うつ薬の一種である選択的セロトニン再取り込み阻害薬により性機能の問題がよく起こります。

経口 エストロゲン療法は閉経に関連する症状のコントロールのために用いられることがあり、閉経後の女性において萎縮性腟炎の緩和を助けることにより、性機能を高める可能性があります。( 閉経 : 治療)。ただし、腟に挿入する エストロゲン製剤( エストロゲンの腟内投与)でも、萎縮性腟炎の治療にほぼ同じ効果が得られる可能性があります。 エストロゲンの腟内投与では、クリーム剤(プラスチック製のアプリケーターを使用します)、錠剤、またはリング(ペッサリーに類似)を腟に挿入します。

知っていますか?

  • うつ病は性機能を妨げますが、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(抗うつ薬の一種)の服用によっても、性機能が損なわれることがあります。

診断

しばしば、各パートナーに対して個別に、および同時に、詳細な問診を実施して診断を行います。医師は症状、ほかに罹患している病気、使用している薬剤、パートナー同士の関係、気分、自尊心、小児期の人間関係、過去の性的経験、パーソナリティ特性について尋ねます。

女性が性行為の際に痛みを経験している場合、内診を行います。内診はできるだけ丁寧に行われます。ゆっくりと診察し、診察方法を詳しく説明します。女性が希望する場合は、鏡で自分の性器をみられるようにし、女性が落ち着けるようにします。女性が何かが腟内に挿入されることを怖がる場合は、医師の手に自分の手を添えて内診をコントロールできるようにします。通常、性的な問題を診断するのに、腟鏡などの器具を内診に使用する必要はありません。

ただし、医師が性感染症を疑う場合は、腟壁を広げるために腟鏡を腟に挿入し(子宮頸部細胞診の場合と同じ)、腟から体液のサンプルを採取します。サンプルを検査して性感染症の原因になる微生物がいないか確認するほか、検査室にサンプルを送って、種類を特定するために微生物を増殖させる検査(培養検査)を行うこともあります。

治療

機能障害の原因によって治療法が決定されます。しかし、原因にかかわらず、いくつかの一般的な対策が役立つことがあります。

  • 性行為に十分な時間を充てる:女性は複数の作業を同時に行うことに慣れており、仕事、家事、子どもや近所の雑用など他の活動に気をとられたり、注意をそらされたりすることがあります。性行為を優先させ、注意をそらされることがいかに非生産的であるかを認識することが役立つでしょう。

  • マインドフルネスを実践する:マインドフルネスでは、起こっていることに対して判断を下したり、観察したりすることなく、その瞬間に起こっていることだけに集中することを学びます。マインドフルネスを実践して現在に集中することで、注意をそらす物事から解放され、性行為の際に感覚に注意を向けることができるようになります。マインドフルネスの習得については、インターネットを使って情報を得ることができます。

  • セックスのことを含め、パートナーとのコミュニケーションを改善します。

  • 性行為にふさわしい時間と場所を選ぶ:例えば、女性が寝ようとしている深夜などはよくありません。見つかることや邪魔されることを女性が心配している場合は、その場のプライバシーが確実に保たれているようにすることが役に立ちます。十分な時間がとれるようにし、性的感情を呼び覚ます環境が役に立ちます。

  • 様々なタイプの性行為を行う:例えば、体が反応する部分をなでてキスをする、性交を始める前に十分に互いの性器を触ることにより、親密性が増し、不安が少なくなります。

  • 性行為以外にともに過ごす時間を作る:日常的によく会話をするカップルの方が、性行為を望み、ともに楽しみたいと感じる可能性が高くなります。

  • パートナーへの信頼、尊敬、情緒的な親密さが増すよう努力する:専門家の援助を得て、または自分たちの努力でこれらの感情を育てるべきです。女性が性的に反応するにはこれらの要素が必要です。パートナー関係にひびを入れるような衝突の解決方法を学ぶのに援助が必要になることもあります。

  • 望まない結果を避ける対策を講じる:妊娠や性感染症に対する恐れが性欲を妨げている場合は、このような対策が特に有用になります。

健全な性的反応を得るのに何が必要かに気づくだけで、自分の思考や行動を変えるのに十分役立つ場合もあります。しかし、複数のタイプの性機能障害がみられる女性も多いため、しばしば複数の治療法が必要になります。

精神療法が多くの女性に役立ちます。例えば、認知行動療法を行うことで、病気や不妊症から生じている否定的な自己像の認識を促すことができます。マインドフルネス認知療法(MBCT)は、認知行動療法とマインドフルネスの実践を組み合わせたものです。この方法では、認知行動療法のように否定的な思考に気づき、ただ思考を観察し、これらは現実を反映したものではなく、単なる思考であると認識することを促します。このアプローチにより、否定的な思考に気をそらされたり、邪魔をされたりすることが少なくなります。小児期からの問題が性機能を妨げている場合、さらに徹底した精神療法が必要になることもあります。

選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は複数のタイプの性機能障害の一因となりうるため、性的反応を妨げにくい別の抗うつ薬に置き換えることが有用でしょう。そのような薬剤としては、ブプロピオン(bupropion)、モクロベミド(moclobemide)、ミルタザピン、デュロキセチンなどがあります。また、ブプロピオン(bupropion)とSSRIの併用投与の方が、SSRIの単独投与よりも性的反応が良好となります。SSRIの服用を開始してからオルガスムを得られなくなった女性では、シルデナフィルの使用がオルガスムの回復の助けになることを示す科学的根拠が得られています。

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