最もよくみられる病型は、口、腟、皮膚の表面に感染が起きるもので、白や赤の斑点が生じ、かゆみや刺激感、またはその両方を引き起こします。
免疫機能が低下している人では、食道やほかの内臓に重篤な感染症が起こることがあります。
感染物質のサンプルを採取し、顕微鏡で観察して培養します。
抗真菌薬を感染部位に塗ったり内服したりしますが、重篤な場合は、静脈内投与を行う必要があります。
カンジダ Candidaは、正常な場合でも皮膚、腸管、女性の陰部に存在しています。通常は、カンジダ Candidaがこのような部位で症状を引き起こすことはありません。しかし、この真菌がときに 皮膚 カンジダ症(真菌感染症) カンジダ症は、カンジダ属の真菌による感染症です。 カンジダ症は湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向があります。 カンジダ症では、発疹、鱗屑(りんせつ)、かゆみ、腫れなどがみられます。 診断では、患部を診察するとともに、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べたり、培養して観察したりします。 通常は、抗真菌薬のクリームや経口薬による治療で治癒します。 さらに読む 、 口 症状
(粘膜が侵されます)、 腟 腟感染症の概要 米国では、腟感染症は女性が主治医を受診する理由のうち最も多いものの1つとなっていて、その受診件数は年間何百万件にも上ります。 腟感染症は微生物によって引き起こされますが、体を締めつけない吸収性の高い下着を着用するなどの対策を講じることで、感染症にかかるリスクを減らすことができます。... さらに読む に感染症を起こす場合があります。このような感染症は免疫機能が正常な人にも起こりますが、糖尿病、がん、エイズの人や妊婦に多くみられ、長引く傾向があります。口と食道のカンジダ症は、エイズ患者によくみられます。またカンジダ症は、抗菌薬を使用している人にもよくみられます。抗菌薬により、正常な状態で体内に生息しカンジダ Candidaと競合している細菌が死んでしまうことで、カンジダ Candidaの増殖に歯止めがきかなくなるためです。
カンジダ症は不快ですが、生命を脅かすことはまれです。しかし、いくつかの種類のカンジダ症は重篤です。具体的には以下のものがあります。
侵襲性カンジダ症
カンジダ血症(侵襲性カンジダ症の最も一般的な病態)
(真菌感染症の概要 真菌感染症の概要 真菌は植物でも動物でもなく、その大きさは顕微鏡でようやく見えるものから肉眼で容易に見えるものまで様々です。かつては植物と考えられていましたが、現在では独自の区分(界)に分類されています。一部の真菌は人に感染症を引き起こします。 真菌の胞子は空気中や土壌中に存在することが多いため、真菌感染症は通常は肺や皮膚から始まります。... さらに読む 、皮膚の カンジダ症 カンジダ症(真菌感染症) カンジダ症は、カンジダ属の真菌による感染症です。 カンジダ症は湿潤部位の皮膚で発生しやすい傾向があります。 カンジダ症では、発疹、鱗屑(りんせつ)、かゆみ、腫れなどがみられます。 診断では、患部を診察するとともに、皮膚のサンプルを顕微鏡で調べたり、培養して観察したりします。 通常は、抗真菌薬のクリームや経口薬による治療で治癒します。 さらに読む 、 腟の真菌感染症 腟の真菌感染症(腟カンジダ症) 腟にカンジダ Candidaという真菌(通常はカンジダ・アルビカンス Candida albicans)が感染すると、 カンジダ症と呼ばれる真菌感染症になります。 妊娠、糖尿病、または免疫機能の低下があると、真菌感染症のリスクが高まります。 腟や外陰部にかゆみが生じることがあり、多くは、カッテージチーズ状の濃く白色の分泌物がみられます。 症状から腟感染症が疑われる場合は、おりもののサンプルを検査するか、子宮頸... さらに読む も参照のこと。)
侵襲性カンジダ症では、心臓弁、脳、脾臓(ひぞう)、腎臓、眼などの部位に感染が広がります。侵襲性カンジダ症は、主に免疫機能が低下している人や入院患者にみられます。カンジダ症は病院内で発生する最も一般的な感染症の1つです。
食道のカンジダ症は、HIV感染症が エイズ 後天性免疫不全症候群(エイズ) ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症とは、ある種の白血球を次第に破壊し、後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすことのあるウイルス感染症です。 HIVは、ウイルスやウイルスに感染した細胞を含む体液(血液、精液、腟分泌液)と濃厚に接触することで感染します。 HIVはある種の白血球を破壊し、感染症やがんに対する体の防御機能を低下させます。... さらに読む に進行したことを示す病気(エイズ指標疾患)の1つです。
カンジダ血症は重篤な血流感染症です。米国では、カンジダ Candidaが血流感染症の一般的な原因の1つになっています。この感染症の発生リスクは、以下のような特定の条件によって高まります。
大きな手術
静注ラインまたは点滴チューブの使用(特に首、胸の上部、鼠径部の太い静脈に挿入するチューブ[中心静脈カテーテル]や栄養補給[ 静脈栄養 静脈栄養 静脈栄養は、重い 吸収不良を引き起こす病気などで、消化管が十分に栄養素を吸収できない場合に用いられます。 潰瘍性大腸炎の特定の病期など、一時的に食べものを消化管に入れてはいけない場合にも用いられます。 静脈から投与される食物は、栄養所要量の一部を供給して(部分的静脈栄養)、口から食べる食物の栄養を補うことができます。または、栄養所要量の前部を供給する場合もあります(完全静脈栄養)。... さらに読む ]に使用するチューブ)
特定の抗菌薬の使用
カンジダ血症は、迅速な治療が行われなければ死に至ることがよくあります。
症状
口の感染症(鵞口瘡[がこうそう])では、次のような症状が現れます。
口の中にできるクリーム状の白くて痛みのある斑点
口の端のひび割れ(口唇炎)
舌が赤くなって痛みが生じ、滑らかになる
食道の斑点は、ものを飲み込んだときに痛みます。
皮膚に感染すると、焼けつくような痛みのある発疹が生じます。おむつ皮膚炎(おむつかぶれ おむつ皮膚炎(おむつかぶれ) 発疹とは、皮膚の性状や色の異常な変化を指します。 発疹の原因には、刺激のほか、細菌、真菌、ウイルスの感染などがあります。 症状として、赤み、白色や黄色のかさぶた(痂皮)、かゆみ、真珠のような丘疹や隆起、嚢胞などがあります。 発疹の治療には、刺激の少ない洗浄剤、保湿軟膏、抗菌薬やコルチコステロイドの軟膏、かゆみ止めなどが役に立ちます。 乳幼児に生じる発疹は、普通は重篤なものではなく、その原因は様々です。炎症を引き起こす刺激物、薬、アレルギ... さらに読む )の中にはカンジダ Candidaによるものがあります。
感染症が体のほかの部分に広がった場合は、より重篤です。発熱、心雑音、脾臓の腫大、危険な低血圧(ショック ショック ショックとは、臓器への酸素の供給量が低下し、生命を脅かす状態で、臓器不全やときには死亡につながります。通常、血圧は低下しています。 ( 低血圧も参照のこと。) ショックの原因には血液量の減少、心臓のポンプ機能の障害、血管の過度の拡張などがあります。 血液量の減少または心臓のポンプ機能の障害によってショックが起きると、脱力感、眠気、錯乱が生じ、皮膚が冷たく湿っぽくなり、皮膚の色が青白くなります。... さらに読む )、尿量の減少がみられることがあります。網膜や眼の内部の感染症では、失明の危険があります。感染症が重症の場合は、複数の臓器が機能しなくなり、死に至ることもあります。
診断
感染組織のサンプルの観察、ときに培養
ときに血液検査
カンジダ感染症の多くは症状だけですぐ分かります。
診断を確定するには、サンプルに含まれる真菌を顕微鏡で調べて確認することが必要です。血液や他の感染組織のサンプルを検査室で培養して観察して、真菌を確認することもあります。
血液中のカンジダCandidaを迅速かつ正確に検出するために、T2Candidaパネルと呼ばれる血液検査を行うことがあります。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法など、微生物の遺伝物質を検出する他の検査を行うこともあります。PCR検査では、微生物の遺伝子のコピーを大量に作り、その微生物をはるかに特定しやすくします。
カンジダ血症と診断したら、医師は眼を診察して、眼に感染がないかを調べます。
治療
抗真菌薬
皮膚、口、腟だけに生じたカンジダ症は、クロトリマゾールやナイスタチンのような抗真菌薬を患部に直接塗布することで治療できます。また、経口で服用する抗真菌薬のフルコナゾールが処方されることもあります。
食道の感染症には、経口の抗真菌薬(フルコナゾールやイトラコナゾールなど)が処方されます。それらの薬で効果が得られない場合や感染症が重症の場合は、他の抗真菌薬を使用します。選択肢としては、静脈内投与するアニデュラファンギン(anidulafungin)、カスポファンギン、ミカファンギン、アムホテリシンBや、経口または静脈内投与するボリコナゾール、経口投与するポサコナゾールなどがあります。
体全体に広がったカンジダ症の場合は、通常はアニデュラファンギン(anidulafungin)、カスポファンギン、ミカファンギンを静脈内投与するか、フルコナゾールを静脈内または経口で投与します。
カンジダ症は、糖尿病など特定の病気がある人ではより重篤で、治療の効果も低くなります。糖尿病の人は、血糖値をコントロールすることで感染症の治癒が促進されます。