破傷風・ジフテリア(Td)混合ワクチンは、細菌そのものではなく、破傷風菌とジフテリア菌が作る毒素から体を守るためのものです。これに 百日ぜき 百日ぜき 百日ぜきは、百日ぜき菌 Bordetella pertussisという感染力の強い グラム陰性細菌によって引き起こされる感染症で、せき込みが起こり、通常はそれに続いて、息を深く吸い込む際に長く高い音(笛声)が出るという一連のせきの発作がみられます。 百日ぜきは通常、小児と青年にみられます。 軽いかぜのような症状に続いて、激しいせきの発作が起こり、徐々に回復します。... さらに読む を予防する成分を追加した混合ワクチン(ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチンは、この3つの病気を予防するためのワクチンです。 ジフテリアにかかると、通常はのどや口の中の粘膜に炎症が起きます。ジフテリアの原因菌は毒素を放出し、心臓、腎臓、神経系を侵すことがあります。ジフテリアはかつて小児の死因の上位を占めていました。 破傷風(開口障害)では、細菌が作る毒素のために重度の筋肉のけいれんが起こります。破傷風菌は通常、傷口から体内に入ります。... さらに読む )もあります。
一般的には、 破傷風菌 破傷風 破傷風は、嫌気性細菌の破傷風菌 Clostridium tetaniが作り出す毒素によって引き起こされる病気です。この毒素によって筋肉が不随意に収縮し、硬くなって動かせなくなります。 破傷風は通常、傷口や皮膚を突き破るようなけがなどが汚染されることで発生します。 診断は症状に基づいて下されます。 ワクチン接種と適切な創傷ケアにより破傷風を予防できます。 治療では、破傷風免疫グロブリンを投与して毒素を中和し、治まるまで症状を... さらに読む は傷口から体内に侵入し、増殖して毒素を作ります。この毒素により激しい筋肉のけいれんが起こり、死に至ることもあります。そのため、予防接種は非常に重要です。
ジフテリア ジフテリア ジフテリアは、ジフテリア菌 Corynebacterium diphtheriaeという棒状の グラム陽性細菌(図「 主な細菌の形」を参照)による上気道の感染症で、死に至ることもある病気です。一部の種類のジフテリア菌 Corynebacterium diphtheriaeは、強力な毒素を出して心臓、腎臓、神経系に損傷を与えます。 細菌感染によって発症し、現在、先進国ではまれにしかみられません。... さらに読む にかかると、通常はのどや口の中の粘膜に炎症が起きます。さらにジフテリアの原因菌が毒素を放出し、心臓、腎臓、神経系に損傷を及ぼすこともあります。定期予防接種が行われるようになるまでは、ジフテリアは小児の主な死因の1つでした。
詳細については、CDCによるTd(破傷風、ジフテリア)ワクチン説明書(Td (Tetanus, Diphtheria) vaccine information statement)を参照してください。
(予防接種の概要 予防接種の概要 予防接種(ワクチン接種)を行うことで、特定の細菌やウイルスが原因で起こる病気に対する体の抵抗力を高めることができます。免疫(特定の細菌やウイルスによって引き起こされる病気から自らを守る体に備わった能力)は、細菌やウイルスにさらされることで自然に生じる場合と、予防接種を受けることで人為的に得られる場合があります。ある病気に対して免疫ができる... さらに読む も参照のこと。)
接種
ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチン ジフテリア・破傷風・百日ぜき混合ワクチンは、この3つの病気を予防するためのワクチンです。 ジフテリアにかかると、通常はのどや口の中の粘膜に炎症が起きます。ジフテリアの原因菌は毒素を放出し、心臓、腎臓、神経系を侵すことがあります。ジフテリアはかつて小児の死因の上位を占めていました。 破傷風(開口障害)では、細菌が作る毒素のために重度の筋肉のけいれんが起こります。破傷風菌は通常、傷口から体内に入ります。... さらに読む (DTaP)の接種は小児期に行われます。この混合ワクチンは米国では5回(生後2、4、6、12~18カ月と4~6歳時)に分けて接種し、その後、破傷風ワクチンは同量のまま、ジフテリアと百日ぜきのワクチンの量を減らしたワクチンを追加接種します。追加接種は11~12歳で行います。百日ぜきに対する免疫は弱まっていくため、16歳以上でTdapの追加接種を受けたことのない人は、これを受けるべきです。
11~12歳でTdapワクチンの追加接種を受けた後、破傷風・ジフテリア混合(Td)ワクチンまたはTdapワクチンの追加接種を10年毎に行います。また、皮膚に傷を負った後に接種が必要になる場合があります。
特定の条件によって、ワクチンを接種するかどうかと接種を受ける時期が変わる場合があります(CDC:ワクチンを受けるべきでない人[Who Should NOT Get Vaccinated With These Vaccines?]も参照)。対象者が一時的に病気にかかっている場合、ワクチンの接種はその病気が治まるまで待つのが通常です。
副反応
注射部位が赤くなり、痛みや腫れが生じることがあります。重篤な副反応はまれですが、重度のアレルギー反応が起こることがあります。
破傷風ワクチンの接種後6週間以内に ギラン-バレー症候群 ギラン-バレー症候群(GBS) ギラン-バレー症候群は、筋力低下を引き起こす多発神経障害の一種で、筋力低下は通常は数日から数週間かけて悪化し、その後ゆっくりと自然に回復します。治療を行えば、もっと早く回復します。 ギラン-バレー症候群は、自己免疫反応によって引き起こされると考えられています。 通常、筋力低下は両脚で最初に起こり、それから体の上の方に広がります。 筋電図検査と神経伝導検査が診断の確定に役立ちます。... さらに読む が発生した場合は、以降もそのワクチンの接種を受けるべきかどうか、主治医と相談してください。
さらなる情報
役立つ可能性がある英語の資料を以下に示します。こちらの情報源の内容について、MSDマニュアルでは責任を負いませんのでご了承ください。
米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention (CDC)):Tdワクチン説明書(Information statement about Td vaccine)
CDC:Tdワクチンを接種すべきでない人に関する情報(Information about people who should NOT get vaccinated with Td vaccine)