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鎌状赤血球症

(ヘモグロビンS症)

執筆者:

Evan M. Braunstein

, MD, PhD, Johns Hopkins School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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鎌状赤血球症は、鎌状(三日月形)の赤血球と、異常な赤血球の過剰破壊による慢性貧血を特徴とする、遺伝性のヘモグロビン(酸素を運搬する赤血球内のタンパク)の遺伝子異常です。

  • 必ず貧血がみられ、ときとして黄疸がみられます。

  • 貧血、発熱、息切れなどが悪化し、長管骨、腹部、胸部などに痛みを伴うと、鎌状赤血球症の疼痛発作(症状が急速に悪化する危険な状態)が疑われます。

  • 電気泳動法と呼ばれる特別な血液検査を使用して、鎌状赤血球症かどうかを判定することができます。

  • 疼痛発作の原因になるかもしれない行動を避けること、感染やその他の病気を治療することが、疼痛発作の予防に役立つ可能性があります。

貧血の概要も参照のこと。)

鎌状赤血球症は、ほぼ黒人にしかみられない病気です。米国では、黒人の約10%が鎌状赤血球症の原因になる遺伝子を1つ保有しています(言い換えれば、鎌状赤血球形質をもっています)。鎌状赤血球形質をもっている人は、鎌状赤血球症を発症するわけではありませんが、尿に血液が混じるといった一部の合併症のリスクが高まります。黒人の約0.3%がこの遺伝子を2つ保有しています。このような人は鎌状赤血球症を発症します。

赤血球の形状

正常な赤血球は柔軟性のある円盤型で、周辺が厚く中央が薄くなっています。一部の遺伝性疾患では、赤血球が変形し、球形(遺伝性球状赤血球症)、楕円形(遺伝性楕円赤血球症)、鎌形(鎌状赤血球症)になります。

赤血球の形状

鎌状赤血球症では、赤血球に含まれるヘモグロビン(酸素を運ぶタンパク質)の形状が異常です。異常な形状のヘモグロビンは、ヘモグロビンSと呼ばれます。赤血球に大量のヘモグロビンSが含まれている場合は、赤血球が変形して鎌状になり柔軟性が失われることがあります。ただし、すべての赤血球が鎌状になるわけではありません。感染を起こした場合や血液中の酸素レベルが低下した場合は、鎌状の赤血球の数がさらに多くなります。

鎌状赤血球は壊れやすく、すぐに分解してしまいます。鎌状赤血球は柔軟性に乏しく、最も細い血管(毛細血管)を通過することができないため、結果として血流を遮断し、毛細血管がふさがった組織への酸素供給量が低下します。血流が阻害されると痛みを生じることがあり、長期にわたると、脾臓、腎臓、脳、骨などの臓器にも損傷を与えます。腎不全心不全が発生することもあります。

症状

鎌状赤血球症の患者では必ずある程度の貧血がみられ(疲労、筋力低下、蒼白がよく生じます)、軽度の黄疸(皮膚や白眼が黄色くなる)がみられることもあります。それ以外には、ほとんど症状がみられない場合もあります。著しい身体障害や早期の死亡を引き起こすような重い症状が繰り返し現れる人もいます。

鎌状赤血球形質

鎌状赤血球形質をもつ人では、赤血球がもろいことはなく、簡単に壊れることもありません。鎌状赤血球形質でも疼痛発作が生じることはありませんが、まれに、軍事訓練やスポーツトレーニングなどの重度の脱水を起こすような極めて激しい運動をしているときに、突然死亡することがあります。

鎌状赤血球形質をもつ人では、慢性腎臓病肺塞栓症のリスクが高まります。まれに、尿に血液が混じっていることに気づくことがあります。鎌状赤血球形質をもつ人では、ごくまれな型の腎臓がんのリスクも高まります。

鎌状赤血球症の疼痛発作

激しい運動、登山、酸素供給が不十分な状態での高空飛行、病気など、血液中の酸素量が減少するようなことがあると、鎌状赤血球症の疼痛発作(増悪とも呼ばれる)を起こすことがあります。鎌状赤血球症の疼痛発作(血管閉塞症)は、症状が強くなる発作で、貧血の急激な悪化、痛み(腹部、腕や脚の長管骨が多い)、発熱などのほかに、ときには息切れがみられます。重度の腹痛や嘔吐がみられることもあります。ときとして、疼痛発作に以下のような合併症が伴うことがあります。

  • 無形成発作:一部のウイルスに感染していると骨髄での赤血球の産生が止まります。

  • 急性胸部症候群(acute chest syndrome):肺の毛細血管が詰まることで生じます。

  • 限局性肝壊死(hepatic[liver] sequestration):肝臓が急速に腫大します。

急性胸部症候群は、どの年齢層にも起こりますが、小児に最も多くみられます。胸部症候群の特徴は、激しい胸の痛みと呼吸困難です。胸部症候群の発作が繰り返し起こると、肺高血圧症(心臓から肺に血液を送る血管内の圧が高くなる)になりやすくなります。急性胸部症候群により死に至ることもあります。

合併症

鎌状赤血球症がある場合は、鎌状赤血球が脾臓に取り込まれるため、ほとんどが小児期に脾腫を発症します。青年期になるまでに脾臓はひどく損傷し、萎縮して機能しなくなります。脾臓は感染に対する防御を担っているため、鎌状赤血球症の人は、肺炎球菌性肺炎などの感染症にかかりやすくなります。特に、ウイルス感染を起こすと赤血球の産生が減少するため、貧血がさらに悪化します。

肝臓が生涯にわたって次第に大きくなることがあり(上腹部膨満感を引き起こします)、破壊された赤血球の色素から胆石が形成されることもよくあります。

通常は心臓が拡大し、拡大した心臓では全身に血液を送り出す力が低下するため、心不全に至る可能性があります。心雑音がよくみられます。

鎌状赤血球症の小児は比較的胴が短く、腕、脚、手指、足指が長くなります。骨と骨髄が変化することにより、特に手や足の骨に痛みが生じることがあります。発熱を伴う関節痛が起こり、股関節が損傷して、最終的には人工関節が必要になることもあります。

皮膚の血行が悪いと、脚の一部、特に足首の部分に潰瘍が生じることがあります。若い男性では、しばしば痛みを伴う持続性の勃起(有痛性持続勃起症)が起こることがあります。持続勃起症の発症により、陰茎が二度と勃起しなくなるほどの回復不能な損傷を受けることがあります。血管が閉塞して脳卒中を起こし、神経系に損傷が生じることもあります。高齢者では、肺と腎臓の機能が低下します。

診断

  • 血液検査

  • ヘモグロビン電気泳動検査

  • 出生前検査

若い黒人に貧血、腹痛や骨の痛み、吐き気がみられる場合は、鎌状赤血球症の疼痛発作が疑われます。鎌状赤血球症が疑われる場合は、血液検査が行われます。血液を顕微鏡で検査すると、鎌状の赤血球や壊れた赤血球の破片がみられます。

別の血液検査であるヘモグロビン電気泳動検査も行われます。電気泳動では、電流を流すと様々な種類のヘモグロビンが分離されるため、異常なヘモグロビンが特定されます。

鎌状赤血球症の疼痛発作でみられる症状によっては、さらに検査が必要になる場合があります。例えば、呼吸困難や発熱がみられる場合、胸部のX線検査を行います。

スクリーニング

鎌状赤血球症では、血縁者もこの病気であったり、鎌状赤血球形質をもっていたりする可能性があるため、血縁者にも血液検査が実施されます。家族計画を立てる上で、子どもが鎌状赤血球症になるリスクを判断するという観点から、鎌状赤血球形質の有無を知ることが重要になることがあります。

米国では、新生児には決まって血液検査によるスクリーニングを行います。妊娠の初期に胎児を調べる検査を行うことができ、子どもが鎌状赤血球症になるリスクがある夫婦に対する出生前カウンセリングが可能になります。羊水穿刺絨毛採取によって得られた胎児細胞で、鎌状赤血球症の原因遺伝子の有無を検査します。

治療

  • 疼痛発作の予防を目標とした治療

  • 疼痛発作とその原因に対する治療

治療の目標は以下のものです。

  • 発作の予防

  • 貧血の管理

  • 症状の緩和

幹細胞移植によって鎌状赤血球症が治癒することがあります。鎌状赤血球遺伝子をもたない家族や他の提供者から、骨髄や幹細胞が移植される場合もあります。このような移植により病気が治ることもありますが、高いリスクを伴うため、ほとんど実施されません。移植を受けた人は、生涯にわたって免疫抑制薬を服用しなければなりません。

前駆細胞(血球を産生する細胞)に正常な遺伝子を導入する遺伝子治療が、現在研究段階にあります。

鎌状赤血球症の疼痛発作の予防

鎌状赤血球症患者は、血液中の酸素量を減少させるような活動を避け、ウイルス感染などの軽い病気でも、すぐに医師の診療を受ける必要があります。感染のリスクが高いため、肺炎球菌髄膜炎菌インフルエンザ菌インフルエンザ菌b型のワクチン接種を受ける必要があります。小児では通常、生後4カ月から6歳までペニシリンを経口投与します。

鎌状赤血球症のコントロールに薬が役立つ可能性があります。ヒドロキシカルバミドは、主に胎児にだけみられるヘモグロビンの産生を増加させ、鎌状になる赤血球の数を減少させます。そのため、鎌状赤血球症の疼痛発作および急性胸部症候群の頻度が減少します。

貧血の管理

新しい赤血球を産生するのに役立つ葉酸(ビタミンの1つ)が投与されます。

貧血を改善するために輸血が行われることがあります。

鎌状赤血球症の疼痛発作の治療

鎌状赤血球症の疼痛発作では、入院が必要になることがあります。痛みを緩和するために、水分を静脈から補給したり(静脈内投与)、薬を投与したりします。貧血が重いために、脳卒中、心臓発作、肺の損傷などのリスクがある場合は、輸血や酸素補給が行われることがあります。感染症など、疼痛発作の原因と考えられる病気があれば治療します。

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