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糖尿病の合併症

執筆者:

Erika F. Brutsaert

, MD, New York Medical College

最終査読/改訂年月 2017年 9月
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糖尿病では、体の様々な部位に重篤で長期に及ぶ多くの合併症がみられます。

糖尿病も参照のこと。)

糖尿病には、以下の2つの種類があります。

いずれの糖尿病でも、血液中の糖分(ブドウ糖)の量が増加します。

1型または2型のいずれの糖尿病でも、血糖値が上昇する結果、合併症が生じる可能性が高くなります。しかし、2型糖尿病では、診断されるまでに時間がかかるため、2型糖尿病が発見されたときには、合併症がより重篤化または進行している場合があります。

糖尿病の人は、多くの重篤で長期に及ぶ合併症を経験することがあります。合併症は糖尿病になって数カ月のうちに始まるものもありますが、大半は数年が経過してから現れます。合併症の多くは徐々に悪化します。血糖値を厳密にコントロールしている人ほど、合併症の発生や悪化が少ない傾向にあります。

原因

糖尿病によるほとんどの合併症は、血管の損傷によって発生します。長期にわたって血糖値が高いと、太い血管も細い血管も狭くなります。それにより体の各部への血流が減少し、障害が起こります。血管が狭くなることにはいくつかの原因があります。糖の複合物質が細い血管の壁に蓄積すると、血管が厚くなり血液が漏れ出します。また、血糖値のコントロールが不十分だと、血液中の脂質の値が上昇して動脈硬化を引き起こし、太い血管の血流が減少します。

糖尿病の合併症の種類

糖尿病における血管合併症

動脈硬化は、心臓発作脳卒中の原因となります。糖尿病の人はそうでない人に比べて動脈硬化が2~4倍多くみられ、若い年齢から動脈硬化になる傾向があります。

長期間にわたり血管が狭い状態が続くと、心臓、脳、脚、眼、腎臓、神経、皮膚が傷害され、狭心症心不全、脳卒中、歩行時の脚の筋けいれん(跛行[はこう])、視力低下、慢性腎臓病、神経の損傷(神経障害)、皮膚の崩壊などが起こります。

糖尿病における皮膚の合併症

皮膚の血液循環が悪いと、潰瘍(かいよう)と感染症が起こりやすく、傷は治りにくくなります。糖尿病では特に下肢の潰瘍や感染症を起こしやすく、これらの傷は治りにくいか、まったく治らず、治らなかった場合には、壊疽になる可能性があり、足や脚の一部を切断しなければならないこともあります。

糖尿病の人は細菌や真菌にしばしば感染し、それが皮膚に典型的に現れます。血糖値が高いと、白血球は体を感染から効果的に守ることができません。どんな感染症でも重症化しやすくなり、回復に時間がかかるようになります。

糖尿病における眼の合併症

眼の血管が損傷すると視力障害に至るおそれがあります(糖尿病網膜症)。レーザー手術によって眼の出血している血管をふさげば、恒久的な網膜の損傷を防ぐことができます。ときに、他の種類の手術または注射剤が用いられる場合もあります。したがって、糖尿病の人は、眼の合併症の初期徴候を調べる検査を毎年受けるべきです。

糖尿病における腎障害

腎臓が機能しなくなり慢性腎臓病になると、透析あるいは腎移植が必要になります。医師が糖尿病患者の尿をチェックするのは、腎障害の初期徴候として尿中のタンパク(アルブミン)の値が異常に高くなるからです。腎臓合併症の最初の徴候がみられたら、腎障害の進行を遅らせるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)が投与されます。

糖尿病における神経障害

神経の損傷にはいくつかの徴候があります。単一の神経が機能しなくなると、片腕または片脚の力が突然弱くなります。両方の手足や脚につながる神経が損傷すると(糖尿病性多発神経障害)、感覚が異常になり、腕や脚にチクチク感や灼熱痛、脱力がみられます。皮膚の神経が損傷すると圧力や温度の変化を感じなくなるため、外傷を頻繁に起こしやすくなります。

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糖尿病の合併症

組織または器官

影響

合併症

血管

脂肪性物質(アテローム性プラーク)が形成され、心臓、脳、脚、陰茎にある大~中サイズの動脈の血流を妨げる。

細い血管の壁は損傷を受けて組織に酸素を正常に運べなくなり、血液が漏れ出す。

血液循環の悪化により傷が治りにくくなり、心臓発作、脳卒中、手足の壊疽(えそ)、勃起障害、感染症が起こる。

網膜の毛細血管が損傷した結果、出血しやすい脆弱な血管が新しく形成される。

視力が低下し、最終的に失明する。

腎臓

腎臓内の血管が肥厚する。

尿中にタンパク質が漏れ出る。

血液が正常にろ過されない。

腎機能が低下し、最終的に慢性腎臓病になる。

神経

ブドウ糖が正常に使用されず、血液の供給が不十分なために神経が損傷する。

突然または徐々に脚の力が低下する。

手足の感覚低下、チクチク感、痛みが生じる。

血圧や消化など、体内の機能を制御する神経が損傷する。

血圧が変動する(特に起立時)。

ものを飲み込みにくくなる(嚥下困難)。

消化機能が異常になり、ときに吐き気や下痢が生じる。

勃起障害が生じる。

皮膚

皮膚への血流が不足して感覚が失われるために負傷しやすくなる。

ただれや深部まで達する感染症(糖尿病性潰瘍)が生じる。

傷が治りにくくなる。

血液

白血球の機能が損なわれる。

感染症を起こしやすくなる(特に尿路と皮膚)。

結合組織

ブドウ糖が正常に代謝されず、組織が肥厚または収縮する。

手根管症候群やデュピュイトラン拘縮が生じる。

糖尿病と足

糖尿病は体に多くの変化をもたらします。足には次のような変化がよくみられ、その治療は困難です。

  • 神経の損傷(神経障害)によって足の感覚が影響を受け、痛みを感じなくなります。刺激や外傷に気づかず、痛みを感じる前に傷が皮膚を突き抜けてしまうことがあります。

  • 糖尿病の人は感覚の変化によって体重のかけ方が変わり、特定の部分に負荷が集中して、たこができます。たこができ皮膚が乾燥すると、皮膚が破れるリスクが増大します。

  • 糖尿病は足の血液循環を低下させ、皮膚が傷つくと潰瘍を形成して治りにくくなります。

糖尿病は感染に対する抵抗力にも影響するため、一度足に潰瘍ができると感染しやすくなります。神経障害が起きていると、感染症が悪化して治療が困難になるまで不快感を生じないため、壊疽に進行することもあります。糖尿病の人は、そうでない人に比べて、足あるいは脚の切断が必要になる可能性が30倍以上になります。

足のケアは非常に重要です( フットケア)。足を傷つけないように保護し、足の皮膚は保湿剤でうるおいを保つようにします。靴は足に合っていて、刺激を与えないものを使用するようにします。立つことによる足への圧力を分散できる適切なクッションがあるものを選ぶべきです。はだしで過ごすことは勧められません。足専門医(足のケアを専門とする医師[podiatrist])のもとで、定期的に爪切りやたこの除去などの処置を受けるのも有用です。足の感覚と血流の評価も定期的に受けるようにします。

糖尿病の合併症のモニタリングと予防

2型糖尿病の人は、腎臓や眼、神経の損傷などの糖尿病の合併症が発生していないか調べるため、診断時とその後少なくとも1年に1回診察を受けます。1型糖尿病の人では、診断から5年後にスクリーニング検査を開始します。典型的なスクリーニング検査には以下のものがあります。

  • 足の感覚を調べ、循環不良の徴候(潰瘍や脱毛)を探す

  • 眼科医による眼の診察

  • 尿検査と血液検査により腎機能を調べる

  • 血液検査によるコレステロール値の確認

  • ときに心電図検査

厳密な血糖コントロールや早期の薬物療法により、合併症が悪化するのを防止または遅らせることができます。血圧やコレステロール値の上昇など、心臓の異常につながる危険因子は、診察を受けるたびに評価され、必要に応じて薬による治療が行われます。その他、糖尿病の人には歯周病(歯肉炎)がよくみられるため、定期的に歯科で口内の清掃と予防ケアを受けることが重要です。

知っていますか?

  • 血糖値を厳密にコントロールすれば、糖尿病の合併症を最小限に抑えたり、発症を遅らせたりすることができます。

低血糖の予防

血糖値を厳密にコントロールするのが困難な理由の1つに、よく用いられる血糖降下薬( インスリンやスルホニル尿素薬など)の中には、血糖値が低くなりすぎる事態(低血糖)を引き起こす可能性があることが挙げられます。低血糖の治療は緊急を要するため、低血糖の状態に気づくことが重要です。空腹感、動悸、ふるえ、発汗、思考力低下などの症状がみられます。

低血糖が非常に重度の場合、恒久的な障害を防ぎ症状を緩和させるためには、数分以内に糖分を投与しなければなりません。ほとんどの場合、糖分を口から摂取して対応します。糖分の種類は問いませんが、ブドウ糖の方が食卓用の砂糖(典型的なものはショ糖)よりも速く作用します。そのため、糖尿病の人の多くがブドウ糖の錠剤やブドウ糖補給ゼリーを携帯しています。また、コップ1杯の牛乳(糖の一種である乳糖を含む)、砂糖水、果物のジュースなどを飲んだり、ケーキや果物、その他の甘いものを食べたりするのも有効です。さらに重篤な状況では、医療従事者に緊急でブドウ糖を静脈内注射してもらう必要があります。

このほかに、低血糖の治療法にはグルカゴンを使用する方法があります。グルカゴンが筋肉に注射されると、肝臓は大量のブドウ糖を数分以内に放出します。頻繁に低血糖になる人は、経口で糖を補給することができない緊急時に、グルカゴン入り注射器を収めた小型携帯用キットを利用できます。

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