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肥満

執筆者:

Adrienne Youdim

, MD, David Geffen School of Medicine at UCLA

最終査読/改訂年月 2017年 6月
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本ページのリソース

肥満とは、体重が過剰な状態です。

  • 複数の要因が組み合わさって肥満に影響を及ぼします。複数の要因が組み合わさった結果、体に必要な量よりも多くのカロリーを摂取することになります。

  • そうした要因には、運動不足、食事、遺伝子、生活習慣、民族的背景、社会経済的背景、ある種の化学物質への曝露、特定の病気、特定の薬の使用などがあります。

  • 肥満になると、糖尿病、高血圧、心疾患、特定のがんなど多くの病気になるリスクが高まり、早期の死亡につながる可能性があります。

  • 肥満の治療には運動量を増やしてカロリー摂取量を減らすことが必要不可欠ですが、薬の服用も有益な場合があります。

  • 体重の5~10%を減らすだけで、糖尿病、高血圧、コレステロール高値などの体重に関連した問題を減らすのに役立つことがあります。

  • 肥満や過体重に加えて体重に関連する問題(糖尿病など)のある人には、減量薬で治療が行われる場合があります。

  • 重度の肥満の人や、体重に関連した深刻な問題がある人には、減量手術が有益なことがあります。

青年期の肥満も参照のこと。)

過体重や肥満の定義にはBMI(ボディマスインデックス)が用いられます。BMIは、体重(キログラム)を身長(メートル)の2乗で割った値です( 脂肪と脂肪以外の組織:身体組成)。

  • 過体重は通常、BMI値25~29.9と定義されています。

  • 肥満はBMI値30~39.9と定義されています。

  • 重度の肥満はBMI値40以上と定義されています。

アジア人やその他の一部の民族集団では、正常および過体重とみなされるBMI値はやや低めに設定されています。

BMIでは脂肪と筋肉(脂肪以外)の組織を区別しません。そのため、BMIだけに基づくと、一部の人では体脂肪の割合が非常に小さいのに肥満に分類されてしまうことがあります。例えば、ボディービルダーなどの一部の人では、筋肉(脂肪より重い)が大量にあるため脂肪がほとんどなくてもBMIが高くなります。そうした人は肥満とはみなされません。

肥満は世界中でますます増えています。米国では、肥満は非常に多くみられます。成人の3分の1以上(36.5%)が肥満で、小児と青年の25%以上が過体重または肥満です。さらに、重度の肥満が増えてきています。

肥満は治療するよりも予防する方がはるかに簡単です。いったん体重が増えすぎると、体は体重が減らないように抵抗します。例えば、ダイエットをしたりカロリー摂取量を減らすと、体はこれを補うために食欲を増したり、安静時のカロリーの燃焼量を減らしたりします。

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BMI(ボディマスインデックス)の算出

身長(cm)

体重(kg)

45.4

49.9

54.4

60.0

63.5

63.0

72.6

77.1

81.6

86.2

90.7

95.3

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104.3

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30

体重のカテゴリーの定義は以下の通りです。

  • 低体重 = 18.5未満

  • 正常 = 18.5~24.9(アジア人では18~22.9)

  • 過体重 = 25~29.9(アジア人では23~29.9)

  • 肥満 = 30~39.9

  • 重度の肥満(病的肥満) = 40以上

原因

肥満は、運動する機会が少ないこと、高カロリーの食品が手に入れやすくなっていること、肥満になる可能性を高める遺伝子をもっていることなど、複数の要因が組み合わさって起こります。しかし究極的には、肥満は体に必要な量よりも多くのカロリーを長期間にわたって摂取することで起こります。

余分なカロリーは脂肪(脂肪組織)として体内に蓄わえられます。必要なカロリー量は人によって異なり、年齢、性別、運動量、代謝率によって変わります。安静時に体が燃焼するカロリーの量である安静時(基礎)代謝率は、筋肉(除脂肪)組織の量と総体重によって決まります。筋肉が多いほど、代謝率は高くなります。

消化器系内に通常存在している細菌(腸内菌叢)の変化は、肥満リスクを増加させる可能性があります。通常、これらの細菌は食物などを消化する働きを担うことによって、体の機能を助けています。消化器系の細菌の量や種類の変化は、体が食物を消化する方法に変化を引き起こすことがあります。

運動不足

先進国では運動不足がよくみられ、肥満増加の一因となっています。エレベーターや自動車、リモコンなどの技術の進歩によって体を動かす機会が減っています。コンピュータの操作やテレビ鑑賞、コンピュータゲームなど、座ったまま行うことに使う時間が増えています。また仕事も、肉体労働が事務仕事やデスクワークに置きかえられることで、座って行うものが増えています。座っていることの多い人は運動量の多い人よりカロリーの消費量が少ないため、食事に必要なカロリーの量も少なくなります。それに従ってカロリーの摂取量を減らさなければ、体重が増加します。

食事

先進国の食事は、エネルギーの密度が高くなっています。つまり先進国の食事は、比較的少ない量にカロリーが多く含まれる食品で構成されています。そのような食品の大半では、精製された炭水化物と脂肪が多く、食物繊維はあまり含まれていません。脂肪は本質的にエネルギー密度が高いものです。脂肪は1グラム当たり9キロカロリーですが、炭水化物とタンパク質は1グラム当たり4キロカロリーです。

自動販売機やファストフードレストランで購入できるエネルギー密度の高いスナックなどの手軽な食品は、肥満の増加の一因です。ソーダ、ジュース、多くのコーヒー飲料、アルコール飲料などの高カロリー飲料も、大きな原因となっています。例えば、約350ミリリットルのソーダやビール1本には150キロカロリー、約350ミリリットルのコーヒー飲料(乳製品と砂糖を含むもの)やフルーツスムージーには500キロカロリー以上が含まれています。高果糖コーンシロップ(多くのボトル入り飲料に含まれる甘味料)は、特に肥満を引き起こす可能性が高いものとして指摘されることがよくあります。しかし最近の研究では、高果糖コーンシロップが肥満を引き起こす可能性は、糖で同じカロリーを含む食品と同程度にすぎないということが示されています。

分量が多い食事や飲みもの(例えば、レストランでの食事やパッケージ入り食品、大容量ボトルの飲みものなど)は、食べすぎを助長します。さらに、レストランでの食事やパッケージ入り食品は、カロリーが増えるやり方で調理されていることがよくあります。結果として、思っているより多くのカロリーを摂取している可能性があります。

遺伝子

肥満は遺伝する傾向があります。しかし、家族は遺伝子だけにとどまらず、環境も共有しており、この2つの影響度合いを分けることは困難です。遺伝子は、安静時および運動中に体がカロリーを燃焼する速度に影響を及ぼすことがあります。また、食欲(ひいては食事の量)にも影響することがあります。遺伝子は体脂肪が蓄えられる量よりも蓄えられる場所(特にウエスト周りと腹部)に大きく影響する可能性があります。

体重に影響を与える遺伝子は数多くありますが、それぞれの遺伝子がもつ影響力は非常に小さなものです。単一の遺伝子のみが異常である場合、肥満はめったに生じません。

まれに、以下の遺伝子の突然変異が肥満を引き起こします。

  • メラノコルチン4受容体遺伝子:受容体とは、細胞の表面にある構造で、特定の物質(化学伝達物質など)と結合すると細胞の活動を阻害したり促進したりします。メラノコルチン4受容体は主として脳にあり、体のエネルギー消費の制御を助けます。この遺伝子の突然変異が、小児の1~4%における肥満の原因となっている可能性があります。

  • ob遺伝子:この遺伝子は脂肪細胞が作るホルモンであるレプチンの分泌を調節します。レプチンは脳に到達すると、視床下部(食欲の調節を助ける脳の部分)にある受容体と相互作用します。そしてレプチンは、食物の摂取量を減らし、カロリー(エネルギー)の燃焼量を増やせという指示を脳に伝えます。ob遺伝子に突然変異が生じると、レプチンの産生が阻害され、その結果、重度の肥満が引き起こされます。これはごく少数の小児にみられます。このようなケースでは、レプチンを投与することで体重が正常値まで減少します。

背景

特定の特徴によって、過体重や肥満になるリスクが増大する可能性があります。具体的には以下のものがあります。

  • 黒人、ヒスパニック、太平洋諸島系など、一部の人種的および民族的背景

  • 教育水準が低い

  • 小児期の肥満(成人期も持続する傾向がある)

妊娠と閉経

妊娠中の体重増加は正常で、必要なことです。しかし、出産後に妊娠前の体重に戻らない場合、妊娠をきっかけにして、体重に関する問題を抱えてしまうことがあります。女性の約15%で、妊娠を経験する毎に体重が約9キログラム増加していきます。数人の子どもを短い間隔で出産すると、この問題がさらに悪化することがあります。授乳が妊娠前の体重に戻す助けになります。

妊婦が肥満であるか喫煙する場合は、子の体重調節に乱れが生じることがあり、小児期以降の体重増加の一因になります。

閉経後は多くの女性で体重が増加します。この体重増加は、運動量の減少が原因である可能性もあります。ホルモンの変化により体内の脂肪の分布が変わり、ウエストの周囲に脂肪が蓄積することがあります。この場所の脂肪は健康問題のリスクを増大させます(メタボリックシンドロームなど)。

加齢

肥満は年齢が上がるに従って増えていきます。年齢を重ねるにつれて、筋肉組織が減少して身体組成が変わることがあります。その結果として体脂肪率が増加し、基礎代謝率が低下します(筋肉の方がカロリーを多く燃焼するため)。

生活習慣

睡眠不足(通常は一晩に6~8時間以下だと睡眠不足とみなされます)によって体重が増加することがあります。不眠により、ホルモンが変化して食欲が増したりエネルギー密度の高い食品が食べたくなったりします。

喫煙をやめると通常は体重が増えます。ニコチンは食欲を減退させ、代謝率を高めます。ニコチンを摂取しなくなると、食物の摂取量が増加して代謝率が減少することがあり、それにより燃焼されるカロリーが少なくなることがあります。その結果、体重が5~10%増えることがあります。

ホルモン

内分泌系の病気によってまれに肥満が生じることがあります。最も多くみられるものの例としては、以下のものがあります。

  • クッシング症候群が、体内の コルチゾールの濃度が過剰になることで起こります。これは、下垂体の良性腫瘍(下垂体腺腫)や、副腎またはその他の部位(肺など)の腫瘍が原因で生じます。クッシング症候群では一般的に、顔面に脂肪が蓄積することで顔が腫れて見えたり(満月様顔ぼう)、首の後ろに脂肪が蓄積したり(野牛肩[buffalo hump])します。

  • 多嚢胞性卵巣症候群が、女性の約5~10%に起こります。患者は、過体重か肥満である傾向があります。 テストステロンやその他の男性ホルモンの血中濃度が上昇し、脂肪がウエストや腹部に蓄積しますが、この脂肪は全身に分布する脂肪よりも有害です。

知っていますか?

  • 内分泌系の病気によってまれに肥満が生じることがあります。

摂食障害

以下の2種類の摂食障害が肥満に関連しています。

  • 過食性障害は、大量の食物を短時間のうちに食べてしまう過食と、通常は罪悪感、後悔の念、または制御不能な感覚を特徴とします。患者のほとんどは食べものの排出(例えば嘔吐、下剤や利尿薬の使用などによる)をしません。週2回以上の過食が6カ月以上にわたって起こると、過食性障害の診断が下されます。

  • 夜食症候群では、日中はあまり食べず、夜に大量の食物とカロリーを摂取し、深夜に起きてものを食べます。まれに、睡眠薬のゾルピデムを服用することで同様の問題が生じることがあります。

よくみられる病気の治療に使用される薬の中には、体重増加を促進するものが多数あります。例えばうつ病などの精神障害に使う薬の一部、けいれん発作の治療に使う薬の一部、高血圧の治療に使う薬の一部(降圧薬、例えばベータ遮断薬など)、コルチコステロイド、糖尿病の治療に使う薬の一部などです。

症状

肥満の最も明らかな症状は外見の変化です。

合併症

肥満であることによって多くの健康問題のリスクが高まります。実質的にすべての器官系が影響を受ける可能性があります。そのような体重に関連した健康問題により、息切れ、運動中の呼吸困難、いびき、皮膚の異常(皮膚がのびることでできる線など)、関節痛や腰痛などの症状が起こります。

肥満は以下のリスクを高めます。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に首の脂肪が気道を圧迫する場合に起こることがあります。短い間呼吸が止まることが、一晩に何百回もみられます。この病気は診断されないでいることがよくあります。大きないびきや日中の眠気が生じ、高血圧、不整脈、メタボリックシンドローム、心臓発作、心不全、脳卒中のリスクが高まります。

肥満は早期死亡のリスクを高めます。肥満が重度であればあるほど、そのリスクが高くなります。米国では、年間30万人が肥満が原因で死亡しています。肥満は予防可能な死亡の原因の第2位です(第1位は喫煙)。

肥満は、社会的、経済的、精神的な問題につながります。例えば、肥満の人が不完全雇用または失業中であったり、自分の体に対するイメージ(身体像)が悪く自尊心が低いことがあります。

診断

  • BMI

  • ウエスト周囲長

  • 場合により、身体組成の算出

肥満の診断はBMIを算出することによって下されます。ただし、BMIにはいくつかの限界があります。BMIは性別や年齢を考慮に入れておらず、人種に基づく調整をわずかしか行いません。アジア人やその他の一部の民族集団では、過体重とされるBMI値はやや低めに設定されています。

また、BMIでは脂肪組織と脂肪以外の組織を区別しません。そのため、高いBMIが筋肉によるものか(ボディービルダーなど)、過剰な脂肪によるものかについて医師は確信をもてない場合があります。このような場合、医師は身体組成(体脂肪と筋肉の割合)を測定します。

ウエスト周囲長を測定します。この測定値は腹部肥満(内臓肥満)、つまりウエストの周囲と腹部に蓄積した脂肪を特定して量をはかるのに役立ちます。腹部肥満は、全身の皮膚の下に分布している脂肪(皮下脂肪)よりもはるかに有害です。

身体組成は以下のような方法で測定することができます。

通常、皮下脂肪厚は二の腕の背中側にある上腕三頭筋の上の皮膚で測ります。皮下脂肪厚とは皮膚とその下にある脂肪の層のことで、皮膚をつまむことで測定します。

静水力学的計量は、体脂肪の割合を測定する最も正確な方法です。しかしながら、費用と時間がかかります。そのため臨床よりも研究でよく使用されています。

一般的には、血液検査が行われます。前糖尿病(Prediabetes)または糖尿病がないか確認するために血糖値を測定し、コレステロール高値や他の脂肪の異常な値がないか確認するためにコレステロールとその他の脂肪の値を測定します。高血圧がないか確認するために血圧も測定します。これらの検査は、患者がメタボリックシンドローム(上記の3つの病気がすべて含まれる)かどうかを医師が判断するのに役立ちます。

患者のBMIよりも、ウエストの長さとメタボリックシンドロームの有無が分かった方が、医師が特定の合併症(心疾患など)のリスクを推定するのに役立ちます。

医師はさらに、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、脂肪肝、うつ病など、肥満の人によくみられる病気がないかも確認します。

治療

  • 食事

  • 身体活動

  • 行動の修正

  • 減量薬

  • 肥満外科手術

肥満に対する主な治療は生活習慣の改善で、これには食事の変更、運動の増加、行動の変化などがあります。薬による治療や減量手術(肥満外科手術)が必要になる人もいます。体重の5~10%を減らすだけで、糖尿病、高血圧、コレステロール高値などの体重に関連した問題のリスクや重症度を減らすのに役立つことがあります。

体重減少の成功には動機と前向きな気持ちが必要です。最も成功する人は現実的な目標をもち、健康な減量が達成できるのは特効薬や長く続けられない流行のダイエット法ではなく、生涯にわたる生活習慣の改善だけだと認識しています。

栄養士や医師などの医療従事者のサポートを受けることが有益な場合もあります。家族からのサポートも非常に重要です。

ウェイト・ウォッチャーズ(Weight Watchers)など、定期的に交流する必要のあるプログラムに参加すると、責任感が増し、成功の可能性が高まります。一般的には、カウンセラー主導のミーティングが毎週行われ、さらに教育・指導用の教材で補足します。

知っていますか?

  • 体重の5~10%を減らすだけで、体重に関連する健康のリスクを減らすことができます。

食事の変更

体重減少のためのバランスのとれた健康的な食事には、摂取カロリーを減らすこと、そして十分な栄養が摂取できる様々な種類の食品を選択することが欠かせません。摂取カロリーを1日500~1000キロカロリー減らすことで、1週間につき約450グラム~約900グラムの体重減少(健康的な減量の速度)が期待できます。この方法では通常、1日当たり1200~1500キロカロリーを摂取することになります。しかし、カロリーの減少に対して体が適応することがあります(例えば代謝率が下がるなどで)。そのため、体重減少が期待より少ないこともあります。それでも、食物繊維が多い食事をとり、さらに1日600キロカロリーを減らし、炭水化物の一部をタンパク質で置き換えることが、減量とその継続のための最善の方法だと考えられます。非常に低カロリーの食事をとれば体重はより急速に減りますが、このような食事には医師の指導が必要です。

以下の食事の変更が推奨されています。

  • 食事の量を減らし、間食を避けるか慎重に選ぶ

  • 朝食を食べる(朝食を抜くと、後でその日のうちにカロリーをとりすぎることにつながる)

  • 果物や野菜を1日5サービング以上食べる

  • 精製された炭水化物や加工食品の代わりに、新鮮な果物や野菜、サラダを食べる

  • 魚や鶏むね肉などの脂肪の少ない肉や、大豆などの植物性タンパク質を食べる

  • 無脂肪乳製品に切り替える

  • ソーダ、ジュース、アルコール飲料などの高カロリーの飲料を排除して、代わりに水を飲む

  • レストランやファストフード店での食事を控える

  • 飲酒を控える

  • 飽和脂肪酸やトランス脂肪酸などの有害な脂肪から、一価不飽和脂肪酸(オリーブ油やキャノーラ油に含まれる)や多価不飽和脂肪酸(深海魚や植物油に含まれる)などのよい脂肪に切り替え、脂肪の摂取量を抑える

グリセミック指数の低い食品( 主な食品のグリセミック指数を参照)と、魚油を含む食品(サケやマグロなどの深海魚など)や植物由来の一価不飽和脂肪酸を含む食品(オリーブオイルなど)を食べると、心疾患と糖尿病のリスクが低下する可能性があります。

ビタミンDの欠乏の予防に役立てるため、無脂肪または低脂肪の乳製品(ビタミンDを含む)を食事に含めるべきです。

食事代わりの栄養補給食を、たまにか定期的に用いると、一部の人では減量とその継続に役立ちます。

身体活動

身体活動を増やすと、健康的な減量とその継続に役立ちます。身体活動には運動(体系的な身体活動)だけでなく、エレベーターの代わりに階段を使う、ガーデニングをする、可能な限り車ではなく徒歩で移動するなど、生活の中での活動も含まれます。生活の中での活動で、かなりのカロリーが燃焼できます。ダイエット中に運動をしない場合は、減らした体重が再び増える可能性が高くなります。

ジョギング、速足のウォーキング(1時間に5~6キロメートル)、サイクリング、テニス(シングルス)、スケート、クロスカントリースキーなどの有酸素運動は、他の軽い運動に比べて多くのカロリーを燃焼します( 正しい運動を選ぶを参照)。例えば、速足のウォーキングは1分で約4キロカロリーを燃焼できるため、1日に1時間速足で歩けば約240キロカロリー燃焼することになります。ランニングは1分で約6~8キロカロリーを燃焼します(1時間で約360~480キロカロリー)。一般的な指針として、健康の増進のためには1週間に150分以上歩くことが必要です。減量とその継続のためには、適度な身体活動を1週間に300~360分行うか、激しい有酸素運動(ランニングや楕円運動のマシンを使うなど)を1週間に150分行うことが必要です。激しい有酸素運動がもたらす健康上のその他の利点には、冠動脈疾患のリスク低下や持久力の増加などがあります。

運動で最大限の効果をあげるには、筋力トレーニング(ウェイトなどの抵抗を利用するもの)をおよそ週3日行うべきです。筋力トレーニングは筋肉組織の量を増やし、これによって代謝率が増加して安静時の体のカロリー消費量が増えます。

行動の変化

減量を効果的なものにし長続きさせるには、最終的には行動を変えなければなりません。行動の変化を助ける減量プログラムが最も効果的です。行動を変えるには、以下のような特定の能力が必要です。

  • 問題解決

  • ストレス管理

  • セルフモニタリング

  • 随伴性マネジメント

  • 刺激の制御

問題解決をするのに、不健康な食事の可能性が高まる状況(夕食の外食、旅行など)や、身体活動の機会が減る状況(移動に車を使うなど)などを特定し、前もって計画します。

ストレス管理をするためには、ストレスの多い状況を特定できるようになったり、食べることを伴わずにストレスを管理する方法(散歩に行く、瞑想、深呼吸など)を考え出したりすることができます。

セルフモニタリングするのには、食事の記録(食品のカロリーを含む)をつけたり、定期的に体重をはかったりすることができます。食事をした場所と時間、食事中の気分、誰と食事したかを記録することもあります。この情報によって、行動と食事のパターンの観察と記録ができ、体重増加や不健康な食事につながる状況を避けられる可能性があります。

随伴性マネジメントは、減量や体重維持に貢献する行動に対して食品以外の報酬を与えます。例えば、歩く量を増やしたり特定の食品を食べる量を減らしたりしたときに、新しい服を買ったり映画に行ったりして自分に報酬を与えるということができます。報酬は、例えば家族や支援グループのメンバーからほめられるなど、他の人からもらうこともあります。

不健康な食事を誘発する刺激をコントロールするには、健康的な食事や活動的な生活習慣を妨げるものが何かを特定できるようにします。それにより、誘惑に打ち勝つための方法をつくりだすことができます。例えば、通勤中にファストフード店に立ち寄るのを避けたり、家の中に甘いものを置かないといったことが可能です。活動的な生活習慣をつくりだすには、活動的な趣味(ガーデニングなど)を始める、歩くことを増やす、エレベーターの代わりに階段を使うことを習慣にする、駐車する場合には遠くて端の方にある駐車スペースにとめる(より長く歩くことになる)といったことができます。

インターネットの情報源、モバイル機器のアプリケーション、その他の電子機器も、活動的な生活習慣をつくり減量を維持するために役立つ可能性があります。アプリケーションは、減量の目標の設定や、自分の進歩のモニタリング、食事内容の確認、身体活動の記録に役立ちます。

肥満や過体重に加えて体重に関連する病気のある人には、薬が有用です。薬は、食事の変更や身体活動の増加、行動の変化を含む体系的なプログラムとともに使用すると最も効果的です。

減量薬の一部は短期間の使用が意図されています。より長期間の使用が意図されているものもあります。

米国で現在利用可能な減量薬には、以下のものがあります。

  • オルリスタット

  • フェンテルミン(phentermine

  • フェンテルミン(phentermine)とトピラマートの併用

  • ロルカセリン(lorcaserin

  • ナルトレキソンとブプロピオン(bupropion)の併用

  • リラグルチド

これらの薬は、患者のBMIが30以上か、BMIが27以上で高血圧や糖尿病といった合併症がある場合に用いられます。減量薬を服用すると、通常は約5~10%の体重が減少します。

オルリスタットは、腸での脂肪の分解と吸収を制限するため、実質的に低脂肪食をとったことになります。オルリスタットは米国では市販薬としても処方薬としても入手できます。オルリスタットによって、消化管で脂肪が吸収されなくなります。吸収されなかった脂肪は、腹部膨満、ガス、ゆるい便の原因になりますが、これらの問題は時間が経つにつれて解消する傾向があります。オルリスタットは食事と一緒に服用するべきです。また、脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収を妨げることがあります。ビタミンDが十分に吸収されないと、骨粗しょう症が発生することがあり、骨折の可能性が高まります。オルリスタットを服用する場合は、これらの栄養素を含むビタミンサプリメントを併用するべきです。サプリメントはオルリスタット服用の2時間以上前または後に服用する必要があります。

フェンテルミン(phentermineは、脳内の食欲を制御する部分にある化学伝達物質に作用して、食欲を低下させます。これは処方薬だけが利用できます。血圧と心拍数が上昇し、不眠症、不安、便秘が生じることがあります。

フェンテルミン(phentermine)とトピラマート(けいれん発作と片頭痛の治療に使用される薬)は、処方薬だけが利用できます。この併用によって、最長で2年間の体重減少が起こります。しかし、先天異常の原因となるため、妊娠可能年齢の女性が服用するのは、避妊を行っていて妊娠検査を毎月受けている場合だけにするべきです。これらの薬は睡眠と集中力に関する問題を引き起こすことがあり、心拍数が上昇することもあります。

ロルカセリンlorcaserin)は、処方薬だけが投与されます。脳にある特定の受容体に作用して、食欲を抑えます。副作用には頭痛、吐き気、めまい、疲労、口腔乾燥、便秘などがありますが、これらは時間が経つにつれて解消する傾向があります。妊婦はロルカセリン(lorcaserin)を服用してはいけません。ロルカセリン(lorcaserin)を服用している人は特定の抗うつ薬(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、セロトニン- ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、モノアミン酸化酵素阻害薬)を服用してはいけません。

ナルトレキソンとブプロピオン(bupropion)の配合剤は処方によってのみ利用できます。食事と運動との併用により、減量に役立ちます。ナルトレキソンは、オピオイドの作用を阻害する目的や、アルコール依存症患者の禁酒を助けるために単独で使用されます。ナルトレキソンは空腹感を抑制する働きもあります。ブプロピオン(bupropion)はうつ病の治療や禁煙のために単独で使用されます。ブプロピオン(bupropion)は食欲を低下させる働きもあります。この配合剤による副作用には血圧の上昇、吐き気、嘔吐、頭痛などがあります。コントロール不良の高血圧、けいれん発作の既往、けいれん性疾患のある人はこの薬を服用してはいけません。

リラグルチドは2型糖尿病の治療に使用されます。リラグルチドは、胃からの食べものが出ていく速度を遅らせます。この薬は、注射により投与しなければなりません。副作用には頭痛、下痢、吐き気、嘔吐、膵臓の炎症(膵炎)、血糖値の低下(低血糖)などがあります。髄様がんと呼ばれる甲状腺がんの一種を患っている人は、リラグルチドを服用してはいけません。

以前はフェンフルラミン(fenfluramine)とフェンテルミン(phentermine)の組合せ(しばしばフェンフェンと呼ばれる)が最も効果的な薬物療法でした。しかし、この組合せで服用する人に心臓弁の問題が発生したため、フェンフルラミンは販売中止になりました。

薬用ハーブなど市販のダイエット補助薬の一部は、代謝や満腹感を高めることで減量を促進すると主張されています。そうしたサプリメントは効果的であることは証明されておらず、有害な添加物や刺激物(例えばマオウ、カフェイン、ガラナ、フェニルプロパノールアミンなど)を含んでいることがあり、使用を避けるべきです。

肥満治療用の新薬は現在開発中のものが多数あり、将来の肥満の治療法を変える可能性もあります。

加齢に関連する注意点:肥満

米国では、肥満の高齢者の割合が増加しています。高齢者の肥満には注意が必要で、その理由としては、過体重が例えば糖尿病、がん、血液中の脂肪(脂質)の値の異常(脂質異常症)、高血圧、心不全、冠動脈疾患、関節疾患など、加齢に伴って増える傾向がある特定の健康問題のリスクを増大させるからです。

次のように、加齢に伴う変化のいくつかが体重増加の一因となります。

  • 身体活動の減少:身体活動の減少の原因には、加齢に関連するものがあります。例えば退職、身体的に運動できなくなる、動く際に痛みを生じる病気(関節炎など)の発症、平衡感覚の問題などが挙げられます。そのほかにも身体活動を制限することのある要因があります。例えば、歩道がない、交通量が多すぎる、近隣の治安が良くないと思うなどの理由で歩きたがらないことがあります。

  • 筋肉組織の減少:成長ホルモンと性ホルモン(女性では エストロゲン、男性では テストステロン)の濃度の低下により筋肉組織の一部が失われます。しかし高齢者が筋肉組織を失う主な理由は、運動不足です。筋肉組織が少ないほど安静時に体が燃焼するカロリーも少なくなり、体重が増えやすくなります。

  • 体脂肪の増加:筋肉組織が減ると、体脂肪率が増加します。脂肪組織はカロリーを少ししか燃焼しません。また、脂肪の割合が高いと、体重と身長のみで算出するBMI(ボディマスインデックス)が正常な高齢者であっても、体重に関連する健康問題のリスクが予想よりも高くなることがあります。高齢者では、BMIよりもウエスト周囲長をもとにした方が、健康のリスクを正しく予測できます。

  • 体脂肪のウエスト周りへの移動:加齢に伴い、脂肪がウエスト周りに移動する傾向があります。殿部や大腿部ではなくウエストや腹部周りに蓄積した脂肪は、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患などの健康問題のリスクを高めます。

減量が必要な高齢者に対しては、医師は身体活動の増加と食事の変更を推奨しています。身体活動を行うことによって筋力、持久力、全体的な健康感が向上し、糖尿病などの慢性疾患が発生するリスクが低下します。活動には筋力トレーニングと持久力運動を含めるべきです。

高齢者では、若い人よりも低栄養のリスクが高くなります。そのため、高齢者が減量しようとする際は、健康的でバランスのとれた食事をとるように心がける必要があります。

減量薬は高齢者ではまだ研究が行われておらず、便益よりもリスクの方が大きい可能性があります。しかし、糖尿病または高血圧のある高齢者にはオルリスタットが有用なことがあります。健康で、機能がうまく働いている高齢者には、減量手術(肥満外科手術)が適切なことがあります。

高齢者の減量に健康のリスクがあるかどうかについてはまだ結論は出ていません。医師は、高齢者それぞれの状況に基づいて、高齢者が減量の方策を立てる手助けをします。高齢者が減量する場合は、医師の指導に従って行うのが最善です。

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