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肺塞栓症

(PE)

執筆者:

Victor F. Tapson

, MD, Cedars-Sinai Medical Center

最終査読/改訂年月 2015年 8月
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肺塞栓症は、血液のかたまり(血栓)や、まれに他の固形物が血液の流れに乗って肺の動脈(肺動脈)に運ばれ、そこをふさいでしまう(塞栓)病気です。

  • 肺塞栓症は、一般に血栓によって発生しますが、別の物質が塞栓を形成して動脈をふさぐこともあります。

  • 肺塞栓症の症状は様々ですが、一般に息切れなどがみられます。

  • 医師は、しばしCT血管造影検査や肺シンチグラフィーを行い、肺動脈のふさがりを見つけることにより肺塞栓症と診断します。

  • 肺塞栓症のリスクが高い場合は、予防のため、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)を使用することがあります。

  • 体内で血栓が自然に溶けるまでは、抗凝固薬を投与して塞栓が大きくならないようにしますが、死に至るリスクがある場合は、血栓を分解する薬剤の投与や手術といった別の手段が必要になることもあります。

肺動脈は心臓から肺に血液を送り込みます。血液は肺から酸素を受け取り、心臓に戻ってきます。そして、心臓は血液を全身へと押し出し、組織に酸素を供給します。肺動脈が1本でも塞栓でふさがれると、血液中に十分な酸素が得られなくなるおそれがあります。塞栓が大きいと閉塞が広い範囲に及ぶことがあるため、まだ開いている肺動脈を介して血液を送り出そうとする心臓に負担がかかります(広範な肺塞栓症)。心臓から送り出される血液の量があまりにも少ない場合や、心臓に過度の負担がかかった場合は、ショック状態に陥り、死に至ることもあります。ときには、血液の流れが阻止されることによって、肺組織が壊死し、肺梗塞と呼ばれる状態になることもあります。

通常、小さな血栓は、大きな血栓より素早く分解されるため、損傷は最小限に抑えられます。血栓が大きいほど分解されるまでの時間が長くなるため、損傷が広範囲に及びます。

米国では毎年、35万人が肺塞栓症にかかり、8万5千人が肺塞栓症で死亡しています。この病気は主に成人に発生します。

原因

最も一般的な肺塞栓症は以下のものです。

  • 血栓性

通常、血流が滞ったり止まったりしたときに、骨盤静脈または脚に血栓が形成されます。例えば、けが(股関節骨折など)または大きな手術の後、長時間同じ姿勢を取り続けたときに、脚の静脈の流れが滞って血栓が生じることがあります。その他の原因には、血栓ができやすくなる病気や、血流内の異物(例えば、静脈内カテーテル)などがあります。

血栓ができやすい素因

静脈内に血栓ができる原因は、判然としない場合もありますが、多く場合、血栓ができやすくなる明らかな要因(危険因子)があります。具体的には以下のものがあります。

  • 高齢(特に60歳以上)

  • 血液凝固障害(血栓ができるリスクが高まる状態[凝固亢進状態と呼ばれる])

  • がん

  • 薬剤または栄養を投与するためのカテーテルが太い静脈に挿入されている(静脈内カテーテル留置)

  • 心不全

  • 体を動かせない状態

  • 骨盤、股関節、または脚のけが

  • ネフローゼ症候群と呼ばれる腎疾患

  • 過去3カ月以内の大きな手術

  • 血液の粘り気を高める骨髄の病気(過粘稠度[かねんちょうど]症候群)

  • 肥満

  • 妊娠中または出産後の一定期間

  • 血栓の既往歴

  • 鎌状赤血球症

  • 喫煙

  • 脳卒中

  • エストロゲン製剤の使用(例えば、更年期症状の治療として使用したり、避妊のために使用したりする場合で、35歳以上の女性や喫煙習慣のある女性では特にリスクが高くなる)

  • エストロゲン受容体モジュレータの使用(ラロキシフェンやタモキシフェンなど)

  • テストステロン補充療法の使用

飛行機に乗っているときのように長時間動き回らずに座っている場合は、リスクがやや高くなります。

ごくまれに、腕の静脈または心臓の右側部分に血栓ができることもあります。血栓が砕けて血流に乗ると、通常は肺に到達します。

特殊なタイプの塞栓

肺動脈の突然の閉塞は、血栓によるものとは限りません。ほかの物質も塞栓を形成することがあります。

  • 脂肪:長い骨が折れたときや骨の手術中に骨髄から血液中に漏れ出して、塞栓を形成することがあります。

  • 羊水:難産の場合に骨盤部の静脈内へ押し出され、塞栓を形成することがあります。

  • がん細胞:腫瘍塊から分離して血液の流れに乗り、腫瘍塞栓を形成することがあります。

  • 空気の泡:太い静脈(中心静脈)の1つに留置したカテーテルが不注意で開放された場合に侵入して、塞栓を形成することがあります。また、静脈の手術中(血栓を取り除いているときなど)に空気塞栓が形成されることもあります。さらに、潜水時も空気塞栓のリスクが高くなります(減圧症)。

  • 感染物質:これも同様に塞栓を形成して、肺に達することがあります。原因には、薬物の静脈内投与、ある種の心臓弁感染症、血栓形成や感染を伴う静脈の炎症(敗血症性血栓性静脈炎)などがあります。

  • 異物:通常は注射薬物使用者がタルクや水銀などの無機物質を静脈内注射することで血液中に入り込む可能性があり、それが塞栓を形成して、肺に達することがあります。

症状

症状は、ふさがった肺動脈の範囲や、患者の全般的な健康状態によります。例えば、慢性閉塞性肺疾患冠動脈疾患といった他の病気があると、生活に支障をきたす症状が現れやすくなります。

塞栓が小さければ、まったく症状がみられないこともありますが、症状が起こるときはしばしば突然発生します。

肺塞栓症の症状には以下のものがあります。

  • 息切れ

  • 胸痛

  • ふらつきまたは失神

息切れ以外の症状がみられないこともあります。特に肺梗塞が起こっていない場合はその傾向が強くなります。多くの場合、呼吸が非常に速くなり、不安を感じて落ち着かず、不安発作を起こしているように見えます。

胸に痛みを感じる場合もあります。心拍が速くなったり、不規則になったりすることがあります。

一部の人、特に非常に大きな塞栓がある人では、肺塞栓症の最初の症状が、ふらつきまたは意識喪失である場合もあります。患者が突然意識を失うと、体がふるえ、けいれんを起こしているように見えることもあります。血圧が危険なほど低くなったり(ショックと呼ばれる状態)、皮膚が冷たくなり青みを帯びたりすることがあり(チアノーゼ)、突然死亡することもあります。

高齢者では、肺塞栓症の初期症状として、錯乱や精神機能の低下がみられる場合もあります。これらの症状は一般に、酸素を豊富に含んだ血液を脳やその他の器官へ送る心臓の能力が突然低下するために生じます。

肺梗塞

肺梗塞とは、肺塞栓によって肺の血管がふさがれ、一部の肺の組織が壊死することです。通常、肺塞栓症による肺梗塞は軽度です。肺梗塞の症状は、数時間後に現れます。肺梗塞になると、せきが出て、たんに血が混じることもあり、息を吸うときに鋭い胸の痛みを感じたり、場合によっては発熱することもあります。これらの症状は、数日間続くことが多いものの、通常は日毎に軽くなります。

塞栓の再発

小さな肺の塞栓が繰り返し発生すると、肺の血管の血圧が上昇することがあります。息切れ、足首や脚のむくみ、脱力などの症状が、数週間ないし数カ月、あるいは数年にわたって、徐々に悪化する傾向がみられます。

診断

  • パルスオキシメトリーと胸部X線検査

  • CT血管造影検査、脚の超音波検査、肺血流シンチグラフィー、またはこれらの組合せ

医師は、患者の症状に加え、最近の手術歴、長期間の寝たきり状態、または血栓形成傾向などの危険因子に基づいて、肺塞栓症を疑います。肺の塞栓が大きい場合、比較的容易に診断できることがあり、特に、脚にみられる血栓の徴候など、肺塞栓症の原因となりうる明らかな病態があれば、診断しやすくなります。しかし、多くの場合、症状がみられなかったり、典型的でなかったりします。これは、肺塞栓症の診断がしばしば困難になる重要な理由の1つです。実際、肺塞栓症は、医師にとって発見や診断が最も困難な重篤疾患の1つです。

日常的に行う検査によって、肺塞栓症の手がかりをつかめることもあります。しかし、これらの検査により、本当に肺塞栓症が存在するかどうかを確実に診断することはできません。

肺塞栓症を示唆する検査

胸部X線検査で、塞栓後に起こる血管陰影の微妙な変化や、肺梗塞の徴候が明らかになることがあります。しかし、X線検査の結果は正常なことが多く、異常があっても、確実な診断を下せることはほとんどありません。

心電図検査で異常が認められることもあります。このような異常により、肺塞栓症の診断が支持または示唆されることがありますが、診断を確定することはできません。

指先にセンサー(パルスオキシメーター)を取り付けて、血液中の酸素レベルを測定することもあります。肺塞栓により肺動脈がふさがれるため、血液中の酸素レベルが低下していることがあります。

肺塞栓症の危険因子、症状の重症度、初期に行った検査(例えば、胸部X線や血液中の酸素レベル)の結果などの情報を基にして、医師はまず肺塞栓症の可能性がどの程度あるかを判定します。

肺塞栓症の可能性が低いと思われる場合、通常は血液検査によりDダイマーと呼ばれる物質を測定します。肺塞栓症の可能性が低そうな人では、この検査だけで十分のことがあります。このような人でDダイマーの値が正常であれば、肺塞栓症が発生している可能性は極めて低くなります。このような人でDダイマーの値が低ければ肺塞栓症の可能性は低くなりますが、値が高いからといって肺塞栓症の可能性が高いわけでもありません。Dダイマーは、感染症やけがなどでも上昇することがあるため、診断を確定するには、追加検査が必要です。

肺塞栓症の可能性が高いと思われる場合、またはDダイマーの値が異常な人には、以下のうちの1つまたは複数の検査を追加で行います。

脚の超音波検査は非侵襲的な検査で、これにより肺塞栓の一般的な原因である脚の血栓を確認できます。この検査で血栓が認められなくても、肺塞栓症ではないとはいえません。しかし、超音波検査で血栓の存在が明らかになれば、通常はさらに検査することなく、肺塞栓症を想定して治療を開始します。なぜなら、脚の血栓に対する治療も肺塞栓症に対する治療も同じであるためです。

肺塞栓症を診断するための検査

CT血管造影検査は、CT検査の一種です。迅速かつ非侵襲的な検査で、かなり精度が高く、特に血栓が大きい場合に精度が高くなります。この検査では、まず造影剤を静脈に注射します。造影剤が肺に達したら、CTスキャナーにより動脈を流れる血液の画像を構成し、血液の流れを妨げている肺塞栓がないか判定します。CT血管造影検査は、肺塞栓症の診断に最も多く使用されている画像検査です。

肺血流シンチグラフィーも非侵襲的でかなり精度の高い検査ですが、CT検査より時間がかかります。まず少量の放射性物質を静脈に注射し、それが肺に達すると、肺への血液供給状況(血流)が映し出されます。検査の結果がまったく正常であれば、通常、重大な血管の閉塞がないことを意味します。検査の結果に異常があれば、肺塞栓症の可能性が疑われますが、他の病気を反映している可能性もあり、例えば肺気腫などでも、損傷を受けた肺組織への血流が減少することがあります。

一般に、肺血流シンチグラフィーは肺換気シンチグラフィーと同時に行われます。肺換気シンチグラフィーでは、ごくわずかな放射性物質を含む無害なガスを吸入することで、そのガスが肺の小さな空気の袋(肺胞)全体に広がります。すると、二酸化炭素の放出と酸素の取り込みが行われている領域が、画面に映し出されます。この肺換気シンチグラフィーの結果を、肺血流シンチグラフィーで得られた血液供給パターンと比較することにより、通常は肺塞栓症かどうかを判定できます。また、腎障害がある患者では、CT血管造影検査の代わりに肺血流シンチグラフィーが行われることがあります。腎障害がある患者に造影剤を用いると、腎臓がさらに損傷されるおそれがあるためです。

重篤な塞栓または再発性塞栓の検査

心エコー検査により、心臓の右心房または右心室に血栓が認められることがあります。このような検査結果は、血栓の向こう側へ血液を押し出そうとして心臓の右側部分に負担がかかっていることを示すため、塞栓の重症度を判定するのに役立ちます。

血栓が再発する患者では、血液中のタンパク質を測定して、原因として凝固障害がないかを確認することもあります。

予後(経過の見通し)

肺塞栓症により死亡する可能性は非常に低いものの、広範な肺塞栓症の場合は突然死の原因になることがあります。この病気が疑われる前に死亡することがほとんどで、塞栓が発生してから数時間以内の死亡がしばしばみられます。予後を判定する上で重要な要因としては、以下のものがあります。

  • 塞栓の大きさ

  • ふさがれた肺動脈の大きさ

  • ふさがれた肺動脈の数

  • 血液を押し出す心臓のポンプ機能

  • 患者の全般的な健康状態

心臓や肺に重篤な障害があれば、肺塞栓症により死亡するリスクが高くなります。心臓や肺の機能が正常であれば、塞栓が肺動脈の半分以上をふさがないかぎり、通常は命にかかわることはありません。

知っていますか?

  • 肺塞栓症は、説明のつかない死亡の原因として、最も多いものの1つです。

予防

医師は、肺塞栓症の危険性や治療法の限界を考慮して、リスクがある人には静脈内に血栓ができないような予防を試みます。すべての人についていえることですが、特に血栓ができやすい人は、体を積極的に動かすようにし、できるだけ動き回るようにすべきです。例えば、飛行機で長時間移動する場合は、2時間おきに立ち上がって歩き回るようにすべきです。

肺塞栓症に対する抗凝固療法

特定の患者には血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)が投与されますが、その場合、ヘパリンが最もよく使用されます。

ヘパリンには以下の2種類があります。

  • 従来のヘパリン

  • 低分子ヘパリン

従来のヘパリンと低分子ヘパリンには、同等の効果があるようです。すべての大手術の後、特に脚の手術の後、ふくらはぎの静脈に血栓ができる可能性を下げるために投与する薬剤として、最も広く使用されている薬剤がヘパリンです。通常は手術の後6~12時間後に、少量のヘパリンを皮下注射しますが、患者が起き上がって再び歩けるようになるまで適宜追加投与するのが理想的です。

肺塞栓症が発生するリスクが高い入院患者(心不全の患者、体を動かせない状態が続いている患者、肥満の患者、以前に血栓ができたことのある患者など)は、手術を受けなくても、少量のヘパリン投与が有益です。低用量のヘパリンであれば、重度の出血性合併症の頻度が高まることはありませんが、傷口から血液がにじみ出る軽い出血が増加することがあります。

ワルファリンは、経口の抗凝固薬で、危険因子が1つでもある患者に使用されることがあります。また、股関節骨折の手術や人工関節置換術など、特に血栓ができやすい手術を受けた患者にもワルファリンが使用されます。ワルファリンによる治療は数週間から数カ月にわたって続けなければならないことがあります。このような状況では、低分子ヘパリンも有効です。

最新の抗凝固薬には、フォンダパリヌクス、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン、ダビガトランなどがあり、これらはいずれも血栓の形成を促す物質の産生を阻害します。これらの薬剤は血栓の予防に効果的で、一部の患者ではワルファリンより安全に使用できます。

理学的な予防法

手術を受けた患者(特に高齢者)は、以下のような処置をとることで、血栓ができるリスクを低下させることができます。

  • 間欠的空気圧迫装置の使用または弾性ストッキングの着用

  • 脚の運動

  • 術後、できるだけ早くベッドから起き上がり積極的に動き回る

間欠的空気圧迫装置により、脚を外側からリズミカルに圧迫することで、脚の血液の流れを保つことができます。しかし、股関節や膝の手術を受けた患者では、こうした装置だけでは血栓の形成を予防するのに不十分です。

肺塞栓症の発生リスクが高いにもかかわらず、出血リスクが高いために抗凝固薬を使用できない患者では、下大静脈フィルターと呼ばれるフィルターを下大静脈(下半身からの血液を心臓に戻す太い静脈)の中に留置することがあります。このフィルターは血栓を捕らえ、血栓が肺に到達するのを防ぎます。

下大静脈フィルターによる肺塞栓症の予防

肺塞栓症を予防するには、通常は血液の凝固作用を抑える薬を使用します。しかし一部の人には、下大静脈の中にフィルター(傘の骨組みのような形状をしたフィルター)を一時的または永久的に留置する治療法が勧められます。一般的にこのフィルター装置は、血液の凝固を抑制する薬剤(抗凝固薬)が使用できない場合(例えば、出血がある患者など)に使用が推奨されます。このフィルターは、流れてきた栓子を心臓に入る前に捕らえますが、血液は自由に通過させることができます。フィルターに捕らえられた栓子は自然に溶解することもあります。

下大静脈フィルターによる肺塞栓症の予防

治療

  • 支持療法

  • 抗凝固薬

  • ときに下大静脈フィルターの留置

  • ときに血栓溶解療法(「血栓を溶かす」治療法)

肺塞栓症の治療は、対症療法から始めます。血液中の酸素レベルが低い場合は、酸素を投与します。痛みの緩和には鎮痛薬を使用します。血圧が低い場合は、水分を静脈内に投与し(輸液)、場合によっては、血圧を上げる薬を投与することもあります。呼吸不全に陥った場合は、人工呼吸器(挿管)が必要になることがあります。

抗凝固療法

抗凝固薬を投与して、すでにできた血栓が大きくなったり、新たな血栓ができたりするのを防ぎます。利用できる薬剤には、ワルファリンのほか、アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン、ダビガトランなどの新しい抗凝固薬もあります。しかし、エドキサバンまたはダビガトランを使用する際は、これらの薬剤を投与する前の5~10日間、ヘパリンを(静脈からまたは皮下注射によって)投与しなければならないため、場合によっては入院が必要になることもあります。ワルファリンによる治療を選択した場合、最初の5~10日間はヘパリンとワルファリンを両方投与し、その後ワルファリンだけを投与します。

ワルファリンによる治療を行う場合は定期的に血液検査を行い、血栓ができない程度に血液がサラサラで、かつ出血傾向がみられる(過剰な抗凝固と呼ばれます)程にはサラサラでないことを確認しなければなりません。血液検査の結果に基づき、ワルファリンの用量が頻繁に調節されます。また、ワルファリンは様々な食べものや他の薬剤と相互作用を起こし、その結果、血液がサラサラになりすぎたり、粘性が高まりすぎたりすることがあります。過剰な抗凝固作用が働くと、いくつかの器官で大量出血を起こすことがあります。

多くの薬剤がワルファリンと相互作用を起こす可能性があるため、抗凝固薬を使用する場合は、アセトアミノフェンやアスピリンのような処方せんなしで入手可能な薬剤(市販薬)、ハーブ薬、サプリメントを含め、他の薬剤を使用する前に必ず医師に確認すべきです。ブロッコリー、ホウレンソウ、ケールなどの葉物の緑色野菜や、レバー、グレープフルーツ、グレープフルーツジュース、緑茶といったビタミンK(血液凝固に影響を与える)を豊富に含む食べものは、避けるか、厳密に一定の量までと決めて食べる必要があります。

アピキサバン、リバーロキサバン、エドキサバン、ダビガトランなどの新しい抗凝固薬は、ヘパリンやワルファリンに比べて、いくつか優れた点があります。これらの薬剤は、ワルファリンのように経口摂取できますが、用量を調節したり、血液中の薬物濃度をモニタリングしたりする必要はありません。さらに、これらの薬剤は食べものや他の薬剤と相互作用することが少なく、ワルファリンに比べて重度の出血を引き起こす可能性が下がります。リバーロキサバンは、常に食べものと一緒に服用する必要があります。

抗凝固薬の投与期間は、患者の状況によって異なります。肺塞栓症の原因が、手術などの一時的な危険因子である場合は、3カ月間の治療が行われます。長期にわたる寝たきりなど、原因がある程度長期的なものであれば、通常、6~12カ月間の治療が行われますが、場合によっては、無期限に治療を続けなければなりません。例えば、肺塞栓症を何度も再発する場合は、遺伝性の凝固障害またはがんによるものが多く、通常は生涯にわたって抗凝固薬を使用します。

血栓溶解療法

ストレプトキナーゼ(streptokinase)やアルテプラーゼなどの血栓溶解薬は、血栓を分解して溶かします。これらの薬剤は危険な出血または死に至る可能性のある出血を引き起こすおそれがあるため、通常は、肺塞栓により死の危険があると考えられる患者にのみ使用されます。最も差し迫った状況を除いて、最近2週間以内に手術を受けた患者、妊娠している患者、最近脳卒中を起こした患者、過度に出血しやすい患者には通常使用できません。

物理的手段

施設によっては、広範な肺塞栓症により命の危険があると考えられる場合は、肺動脈にカテーテルを挿入して、塞栓の粉砕が試みられることもあります。重度の塞栓がある患者では、手術が必要になる場合があります。肺動脈から塞栓を除去することで、命が助かる可能性があります。肺動脈内に詰まった血栓が、長年にわたって持続的な息切れや肺動脈の高血圧(肺高血圧症)を引き起こしている場合も、血栓を取り除く手術が行われます。

腹部にある大静脈(脚や骨盤からの血液を心臓の右側部分へ送り戻す血管)の中に、手術でフィルターを留置することもあります。抗凝固薬による治療にもかかわらず塞栓が再発する場合、あるいは抗凝固薬が使用できないか、使用すると著しい出血を起こす場合に、このようなフィルターが使用されます。一般に、血栓は脚または骨盤に由来するため、通常はこのフィルターにより、血栓が肺動脈へ運ばれるのを防ぐことができます。最新のフィルターは取り外しが可能です。フィルターを恒久的に留置すると合併症が発生することがありますが、フィルターを取り外すことで合併症の予防に役立ちます。

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