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慢性静脈不全症と静脈炎後症候群

執筆者:

James D. Douketis

, MD, McMaster University

最終査読/改訂年月 2018年 3月
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慢性静脈不全症は、脚の静脈が損傷し、血液が正常に流れない状態です。静脈炎後症候群は、静脈内の血栓によって生じる慢性静脈不全症です。

  • 慢性静脈不全症は、脚の不快感、腫れ、皮膚の発疹、変色、潰瘍を引き起こすことがあります。

  • 静脈炎後症候群は、静脈の血栓を原因とする慢性静脈不全症です(深部静脈血栓症)。

  • 診断には、デュプレックス法による超音波検査を用います。

  • 治療には、下肢の挙上(脚を上げておくこと)、圧迫ストッキングの着用、傷口の慎重な治療が必要です。

静脈系の概要も参照のこと。)

慢性静脈不全症は米国人の約5%でみられます。静脈炎後症候群は、深部静脈血栓症患者の20~70%で起こり、通常は1~2年以内に発生します。

原因

血液は、表在静脈と深部静脈を介して脚から戻ります。脚の筋肉が収縮することで血液が押し出され、深部静脈の中を流れます。静脈内の弁の働きにより、血液は心臓へと上方向に流れます。慢性静脈不全症は、何らかの理由で静脈が拡張するか、静脈内の弁が損傷した際に起こります。これらの変化により静脈内の血流が減少し、静脈内の圧力が高まります。圧力の上昇と血流の低下により、体液が脚に蓄積し、その他の症状が起こります。

慢性静脈不全症の最も一般的な原因は以下のものです。

血栓に起因する瘢痕(はんこん)組織によって静脈の弁が損傷し、その結果、慢性静脈不全症が起きる場合があります。深部静脈血栓症はときに静脈炎と呼ばれるため、慢性静脈不全症を静脈炎後症候群と呼ぶこともできます。

慢性静脈不全症のその他の危険因子としては、脚のけが、加齢、肥満、長時間の座位または立位、妊娠などがあります。

静脈の一方向弁

一方向弁は、互いに端が合わさる2枚のふた(弁尖または弁葉)で構成されています。弁は静脈の血液が心臓へ戻る手助けをします。血液が心臓へ向かって流れると、弁尖が両開きのドアのように押し開かれます(左図)。重力によって血液が引き戻されたり血液が静脈にたまり始めたりすると、押された弁が閉じて逆流を防ぎます(右図)。

静脈の一方向弁

静脈炎後症候群

脚に血栓が生じても、必ずしも静脈炎後症候群が起こるわけではありません。脚の血栓が生じた後の静脈炎後症候群のリスクは、以下のことがある場合に上昇します。

  • 同じ脚に血栓が数回できたことがある

  • 脚の上部または骨盤領域での血栓

肥満の人も静脈炎後症候群のリスクが上昇していると考えられます。

症状

立っているときや座っているときには、血液が心臓に戻る過程で重力に逆らって上に向かって流れなくてはなりませんので、慢性静脈不全症のある人では、典型的には1日の終わりに近づくほど、脚のむくみ(浮腫)がひどくなります。脚が水平な状態では静脈内で血液が流れやすくなるため、一晩経つとむくみは解消されます。むくみは症状をまったく引き起こさない場合もありますが、脚に、張った感覚、重い感覚、うずく痛み、筋けいれん、痛み、疲労、チクチク感がみられる場合もあります。

また、静脈瘤が形成されることもあります。

その後、足首の内側の皮膚がうろこ状にかさついて(鱗屑)、かゆくなり、赤褐色に変色します。この変色は皮膚内の拡張した静脈から赤血球がしみ出てくることが原因です。変色した皮膚は傷つきやすく、ひっかいたりぶつかったりしただけでも傷口が開き、潰瘍になることがあります。潰瘍はけがをした覚えがなくとも起こる場合があり、一般的には足首の内側でよくみられます。通常、潰瘍はわずかに不快なだけです。潰瘍が非常に痛む場合は、感染している可能性があります。

慢性静脈不全症でみられる皮膚の異常の例

むくみがひどくなり長期間持続する場合は、瘢痕組織が形成され、その組織内に体液がたまります。結果として、ふくらはぎが永久的に腫れたままになり、硬い感触になります。このような状態になると、さらに潰瘍が発生しやすくなり、治りにくくなります。

診断

  • 医師の評価

  • ときに超音波検査

慢性静脈不全症は通常、外見と症状に基づいて診断できます。

ときに、脚の超音波検査を行い、むくみが深部静脈血栓症によるものではないことを確認します。

予防

脚の静脈内の血圧を低く保つためには、体重の減量、定期的な運動、食事中の塩分制限が有用です。

深部静脈血栓症が起きた人は、静脈炎後症候群を予防するため、抗凝固薬を服用する必要があります。圧迫ストッキングは、慢性静脈不全症の発症を予防できませんが、治療には有用です。

治療

治療では以下のことを行います。

  • 下肢の挙上

  • 包帯、ストッキング、間欠的空気圧迫装置などを用いた圧迫

  • 創傷ケア

脚を心臓より高い位置まで挙げること(下肢の挙上)で静脈の圧力が低下しますが、30分以上の挙上を1日3回行う必要があります。

圧迫は、すべての患者に効果的で、むくみと不快感を軽減するのに役立ちます。最初は弾性包帯を使用します。むくみが軽減し、潰瘍が治癒し始めたら、市販の弾性ストッキングを使用できるようになります。弾性ストッキングには、様々な圧力のものがあります。圧力の高いストッキングほど重度のむくみに対してより効果的ですが、不快感も大きくなります。ストッキングは、活動により脚のむくみがひどくなる前の起床時に装着し、1日中履いたままで過ごします。ストッキングを使用し続けることには、多くの人が困難を感じます。人によっては、そうしたストッキングは恰好が悪いと感じます。若い人や活動的な人は、ストッキングを邪魔あるいは窮屈と感じる場合があります。高齢者では装着が難しい場合があります。

間欠的空気圧迫法では、空気で膨らむ装置(カフ)を脚に巻いてから、電動ポンプでカフの膨張と収縮を繰り返します。間欠的空気圧迫法では、脚の下部の血液や体液を押し上げることができますが、手間がかかります。間欠的空気圧迫法は、圧迫ストッキングで効果が得られない場合や、患者が圧迫ストッキングの使用に耐えられない場合に用いられます。

脚の潰瘍を治癒させる上では創傷ケアが重要です。傷口を覆う素材(ドレッシング材)としては、弾性ストッキングを上から履いて数日間から1週間そのまま使用できるものが色々と開発されています。ウンナブーツと呼ばれるドレッシング材は、酸化亜鉛をしみ込ませた包帯を使用しています。その他のドレッシング材には、傷の治癒のための湿潤な環境を作り、新たな組織の増殖を促進するものがあります。

薬剤や手術は慢性静脈不全症では役立ちませんが、その他の手段では治癒しなかった潰瘍に対しては、最後の手段として皮膚移植があります。しかし、患者が下肢の挙上(脚を上げておくこと)と圧迫の指示を常に守っていないと、移植された皮膚で潰瘍が再発します。

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