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スポーツ心臓

執筆者:

Robert S. McKelvie

, MD, PhD, Western University

最終査読/改訂年月 2020年 10月
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スポーツ心臓とは、激しい有酸素運動(高強度のランニングや自転車競技)を定期的に行っている人や高強度でウェイトトレーニング(重量挙げ)を行っている人の心臓に生じる正常な変化のことです。

スポーツ心臓の人には以下の特徴がみられます。

  • 心臓が大きい。

  • 心臓の壁が厚い。

  • 心室や心房がいくらか大きい。

このように、心臓が大きく、壁が厚くなることにより、1回の拍動で送り出せる血液の量が多くなります。1回の拍動で送り出される血液の量が多いため、心臓はより緩やかに拍動することができ、その結果、脈は遅く強くなり(手首だけでなく体のいたる所で感じられます)、ときに心雑音が聞かれる場合もあります。心雑音は、血液が心臓の弁を通過するときに生じる独特の音です。心雑音は 心臓弁膜症 心臓弁膜症の概要 心臓弁は、4つの心腔(心臓の上部にある比較的小さな丸い空洞である左右の心房と、心臓の下部にある比較的大きな円錐形の空洞である左右の心室)を通過する血液の流れを制御しています。それぞれの心室には、その入口側と出口側に、一方向に開く弁が1つずつあります。それぞれの弁は複数の薄い組織(弁尖)で構成され、一方向だけに開閉できるようになっています。... さらに読む 心臓弁膜症の概要 の徴候である可能性もありますが、スポーツ心臓でみられる心雑音はまったく正常であり、危険なものではありません。スポーツ心臓の人の心拍は、安静時に不規則になることがありますが、運動が始まると規則的になります。血圧は健康な人とほとんど変わりません。年齢、体格、およびトレーニング量が同じ条件であれば、典型的には男性より女性の方が心臓の変化は小さいものです。

スポーツ心臓で起こる心臓の変化は、特定の心疾患で起こりうる変化と似ています。例えば、心臓が大きくなる変化は 肥大型心筋症 心筋症の概要 心筋症とは、心臓の壁を構成する筋肉の構造と機能が障害される進行性の病気です。 心筋症の主な病型としては、以下の3種類があります。 拡張型心筋症:心室(心臓内部の下側にある2つの部屋)が拡大(拡張)する病型 肥大型心筋症:心室の壁が厚く硬くなる病型 拘束型心筋症:心室の壁が硬くなるものの、必ずしも厚くならない病型 さらに読む 心筋症の概要 心不全 心不全(HF) 心不全とは、心臓が体の需要を満たせなくなった状態のことで、血流量の減少や静脈または肺での血液の滞留(うっ血)、心臓の機能をさらに弱めたり心臓を硬化させたりする他の変化などを引き起こします。 心不全は心臓の収縮や弛緩が不十分になることで発生しますが、これらの変化は一般的に、心筋が弱ったり硬くなったりすることが原因で起こります。... さらに読む 心不全(HF) でもみられます。心雑音は 心臓弁膜症 心臓弁膜症の概要 心臓弁は、4つの心腔(心臓の上部にある比較的小さな丸い空洞である左右の心房と、心臓の下部にある比較的大きな円錐形の空洞である左右の心室)を通過する血液の流れを制御しています。それぞれの心室には、その入口側と出口側に、一方向に開く弁が1つずつあります。それぞれの弁は複数の薄い組織(弁尖)で構成され、一方向だけに開閉できるようになっています。... さらに読む 心臓弁膜症の概要 で起こりますし、不規則な脈は 不整脈 不整脈の概要 不整脈とは、一連の心拍が不規則、速すぎる(頻脈)、遅すぎる(徐脈)、あるいは心臓内で電気刺激が異常な経路で伝わるなど、心拍リズムの異常のことをいいます。 不整脈の最も一般的な原因は心臓の病気(心疾患)です。 自分で心拍リズムの異常に気づくこともありますが、ほとんどの人は、脱力感や失神などの症状が起きるまで不整脈を自覚しません。... さらに読む 不整脈の概要 を示唆している可能性があります。スポーツ心臓と異常な心臓の主な違いは、スポーツ心臓の以下の特徴にあります。

  • 心臓とその弁が正常に機能している。

  • 心臓発作や他の心疾患のリスクは高まっていない。

症状はみられません。通常、定期的なスクリーニングまたは無関連の症状で診察された際に、スポーツ心臓が疑われます。

診断

  • 心電図検査

ほとんどの運動選手は徹底的な検査を必要としませんが、心疾患がないことの確認は重要であるため、通常は 心電図検査 心電図検査 心電図検査は心臓の電気刺激を増幅して記録する検査法で、手早く簡単に行える痛みのない方法です。この記録は心電図と呼ばれ、以下に関する情報が得られます。 心臓の1回1回の拍動を引き起こしている、ペースメーカーとしての部分(洞房結節、洞結節) 心臓の神経伝導経路 心拍数や心拍リズム 心電図では、心臓が拡大していること(通常の原因は... さらに読む 心電図検査 を行います。心電図検査では心臓の様々な電気的変化が検出されます。それらの変化は、運動選手ではない人の場合は異常とみなさるでしょうが、運動選手の場合は完全に正常です。

胸痛 胸痛 胸痛は非常によくみられる症状です。鋭い痛みと鈍い痛みがありますが、胸に病気がある人が使う表現は、不快感、締めつけられる感じ、圧迫感、ガスがたまった感じ、焼けつくような痛み、うずくような痛みなどです。ときに、背部、首、顎、上腹部、腕などにも痛みが生じることがあります。胸痛の原因によっては、吐き気、せき、呼吸困難などの他の症状が現れることもあ... さらに読む や心疾患の他の症状がみられる場合は、 心エコー検査 心エコー検査とその他の超音波検査 超音波検査では、周波数の高い超音波を内部の構造に当てて跳ね返ってきた反射波を利用して動画を生成します。この検査ではX線を使いません。心臓の超音波検査(心エコー検査)は、優れた画像が得られることに加えて、以下の理由から、心疾患の診断に最もよく用いられる検査法の1つになっています。... さらに読む 心エコー検査とその他の超音波検査 運動負荷試験 負荷試験 心臓に(運動や心拍を速く強くする薬剤で)負荷をかけると、 冠動脈疾患を特定しやすくなります。冠動脈疾患では、心筋に血液を供給する冠動脈の血流が、部分的に、または完全に遮断されます。冠動脈の一部だけがふさがっている場合、安静時には心臓に十分な量の血液が供給されていても、心臓が激しく働いているときには供給が不足することがあります。したがって、... さらに読む 負荷試験 、ときに心臓MRI検査(CMR)など、より詳細な検査が必要になります。それらの検査では、心臓の構造と機能を評価します。

治療

  • 治療は必要ありません

治療は必要ありません。運動選手がトレーニングをやめると、スポーツ心臓の特徴は徐々に消えていき、心臓の大きさと心拍数は一般人と同程度までゆっくりと戻っていく傾向があります。この過程には数週間から数カ月を要します。ときに数カ月間トレーニングを減らしたり中止したりして、心臓の変化が消えるかどうか、または心疾患のさらなる評価が必要かどうかを判断することが必要な場合もあります。

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