Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

読み込んでいます

急性腎障害(AKI)

(急性腎不全、急性腎機能障害)

執筆者:

Anna Malkina

, MD, University of California, San Francisco

最終査読/改訂年月 2018年 7月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
本ページのリソース

急性腎障害では、血液をろ過して老廃物を除去する腎臓の能力が急速に(数日から数週間のうちに)低下します。

  • その原因には、腎臓への血流が減少する状態、腎臓そのものが傷つく状態、腎臓からの尿の排出が妨げられる状態などが挙げられます。

  • 症状としては、腫れ、吐き気、疲労、かゆみ、呼吸困難などのほか、急性腎障害を引き起こしている病気の症状もみられます。

  • 重篤な合併症としては、心不全や高カリウム血症(血液中のカリウム濃度が高くなること)などがあります。

  • 診断は、血液検査と尿検査のほか、通常は画像検査の結果により下されます。

  • 治療では、急性腎障害の原因に対する治療と場合により透析が行われます。

腎不全の概要も参照のこと。)

急性腎障害が発生する原因としては、腎臓への血液の供給量が減少する病態、腎臓自体を侵す病気や有害物質(毒素)、または尿路のどこかで尿の流れが妨げられる病態などが考えられます。

多くの場合、急性腎障害の原因は特定することができません。

両側の腎臓が正常に機能している場合に片側の腎臓に損傷(腎結石による閉塞など)が起きても、残っている正常な腎臓が機能を肩代わりするため、通常は重大な問題は起こらず、腎機能に関する臨床検査でもほぼ正常な結果が出ます。このため、急性腎障害は検出が困難な場合があります。急性腎障害で顕著な問題が起こるときは、ほとんどの場合に、両側の腎臓が損傷しているか機能異常を起こしています。

icon

急性腎障害の主な原因

原因

背景にある問題

腎臓への血液供給の不足

出血

大量のナトリウムおよび水分の喪失

血管を遮断する物理的な損傷

心臓のポンプ機能の不足(心不全)

肝不全(肝腎症候群)

腎臓への血流を低下させる薬剤

腎臓の損傷

腎臓に損傷が起きるほどの長時間にわたる腎臓への血液供給量の減少

有害物質(薬物、画像検査で使用されるヨード造影剤、毒物など)

アレルギー反応(特定の抗菌薬に対するものなど)

腎臓のネフロン(血液のろ過機能を担う組織)を侵す病気(例えば、急性糸球体腎炎尿細管間質性腎炎、腎臓に損傷をもたらす腫瘍、血管の損傷[溶血性尿毒症症候群全身性エリテマトーデスアテローム塞栓による腎疾患グッドパスチャー症候群多発血管炎性肉芽腫症顕微鏡的多発血管炎に起因するものなど])

重篤な全身性の感染症(敗血症

尿流の閉塞

膀胱の閉塞(例えば、前立腺の肥大尿道の狭窄膀胱がんによるもの)

尿路を圧迫する腫瘍

腎臓内での閉塞(例えば、シュウ酸塩や尿酸などの結晶や結石に起因)

症状

症状は以下のものによって異なります。

  • 腎機能低下の重症度

  • 腎機能低下の速さ

  • 腎機能低下の原因

初期症状には以下のものがあります。

  • 体液の過剰な貯留による体重増加、足と足首のむくみ、顔と手のむくみ

  • 尿量の減少

しばしば尿量(大多数の健康な成人の尿量は1日当たり約750ミリリットルから2リットルです)が1日当たり約500ミリリットル以下まで減少したり、完全に尿が出なくなったりする場合もあります。尿の量が非常に少なくなった状態を乏尿、完全になくなった状態を無尿と呼びます。ただし、急性腎障害であっても通常通りの尿量が続く人もいます。

その後、急性腎障害が持続して老廃物が体内に蓄積するにつれ、以下の症状が起こる可能性があります。

  • 疲労

  • 頭を使う作業での集中力の低下

  • 食欲不振

  • 吐き気

  • 全体的なかゆみ(そう痒)

急性腎障害では、胸痛、筋肉のひきつり、さらにけいれん発作などのより重篤な症状が起こることもあります。肺に体液が貯まると、息切れするようになります。

尿がコーラ色の場合、腎臓のろ過ユニットである糸球体が損傷される、いくつかの腎疾患が疑われます。茶色は、血液がろ過ユニットを通過した結果であり、糸球体腎炎(ろ過ユニットの炎症)と呼ばれる病態の最初の徴候である可能性があります。例としては、感染後糸球体腎炎、抗糸球体基底膜抗体病、ループス腎炎が挙げられます。

急性腎障害の原因が詰まり(閉塞)の場合には、腎臓に尿が貯まっていき、腎盂(じんう)と腎杯が拡張します(この状態を水腎症と呼びます— 水腎症:拡張した腎臓)。尿路閉塞では、多くの場合、肋骨の下の方に持続的な鈍痛が生じますが、けいれん性の痛み(程度は軽いものから非常に激しいものまで様々です)が、主にわき腹(側腹部)に沿って生じる場合もあります。水腎症になると、血尿がみられる場合もあります。閉塞の位置が膀胱より下にある場合は膀胱が膨張しますが、膀胱が急激に膨張すると、骨盤内の恥骨のすぐ上辺りに激しい痛みが生じる可能性が高くなります。一方で膀胱が徐々に膨張した場合は、痛みは軽微ですが、膨らんだ膀胱によって下腹部が膨らむことがあります。

入院中に発生した急性腎障害には、最近の外傷、手術、薬物、病気(感染症など)などが関係していることがよくあります。また、急性腎障害を引き起こした病気自体による症状が顕著となる場合もあります。例えば、高熱や生命を脅かす血圧低下(ショック)心不全または肝不全の症状などが腎不全の症状より前に現れ、より顕著で緊急を要する事態となる場合もあります。

急性腎障害を引き起こす病気の中には、腎臓以外の部分にも影響を及ぼすものがあります。例えば、腎臓の血管を損傷する病気であるグッドパスチャー症候群の発症につながる多発血管炎性肉芽腫症では、肺の血管にも損傷が生じて、喀血(せきとともに血が出る症状)がみられることがあります。顕微鏡的多発血管炎全身性エリテマトーデス、毒性のある一部の薬剤への曝露など、急性腎障害の一部の原因では、発疹がよくみられます。

診断

  • 血液と尿の検査

  • 画像検査

知っていますか?

  • 腎不全が起きるためには両側の腎臓が病気に侵される必要があります。

医師は急性腎障害が起きているかどうか、また極めて重要な点として、その原因を評価します。

身体診察

身体所見が急性腎障害の原因特定に役立つ場合があります。例えば、腎臓に腫大や圧痛が認められれば、尿路閉塞による水腎症の可能性が疑われます。

血液検査

診断を確定するには、血液中のクレアチニンと尿素窒素の濃度を測定する血液検査が必要です。クレアチニン濃度が日毎に上昇していく場合は、急性腎障害があることを意味します。

クレアチニン濃度は、腎機能の低下の程度や重症度を示す上でも最適の指標です。クレアチニン濃度が高いほど、腎機能の低下がより重症である可能性が高くなります。

その他の血液検査では、血中の酸性度の上昇(アシドーシスと呼ばれ、重炭酸塩濃度の低下を引き起こす状態)、カリウム濃度の上昇(高カリウム血症)、ナトリウム濃度の低下(低ナトリウム血症)、リン濃度の上昇(高リン血症)など、腎機能低下が重症の場合に発生する代謝機能のバランスの乱れを検出することができます。

尿検査

尿検査として、一般的な検査や特定の電解質濃度(ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン酸)の測定などを行うことで、腎障害の原因が腎臓への血液供給の不足なのか、腎臓の損傷なのか、尿路の閉塞であるかを判別できる可能性があります。

画像検査

超音波検査CT検査による腎臓の画像診断も有用で、ときに水腎症や膀胱の膨張を特定できる場合もあります。画像検査では腎臓の大きさを計測することも可能です。

血管の閉塞が原因として疑われる場合は、腎臓に出入りする動脈や静脈のX線検査(血管造影検査)が行われることがあります。ただし血管造影検査は、腎臓をさらに傷つけるおそれのあるヨウ素を含んだ造影剤を使用するため、ほかの方法では十分な情報が得られない場合にだけ行われます。

MRアンギオグラフィー検査は、血管造影検査と同じ種類の情報を提供することができます。しかし、MRアンギオグラフィー検査ではこれまで造影剤としてガドリニウムが使用されてきましたが、この物質はまれに腎性線維化性皮膚症(体内で瘢痕組織が作られるようになる病気)を引き起こすことがあります。そのため、MRアンギオグラフィー検査は以前ほど使用されなくなっています。ほかの検査を行っても腎障害の原因が判明しない場合には、生検を行って診断と予後(経過の見通し)を確定させる必要があります。

予後(経過の見通し)

急性腎障害とその直接的な合併症(体液の貯留、アシドーシス、高カリウム血症、血中尿素窒素値の上昇など)は、しばしばうまく治療できます。一般的に、出血や嘔吐、下痢など、治療により回復可能な異常によって体内の水分が失われたために血流量が減少して急性腎障害に至った場合、予後(経過の見通し)は良好です。同時に他の臓器(心臓、肺、肝臓など)でも臓器不全が起きている人では、予後は悪くなります。透析療法が必要になる期間(例えば、数日、生涯など)は、その人の全体的な健康状態と急性腎障害が起きる前の腎臓の状態によって変わってきます。

治療

  • 治療可能な原因疾患の治療

  • 腎臓を介して体外に排出される物質の摂取制限

  • ときに透析

急性腎障害の一部の合併症は重篤で、生命を脅かす場合もあります。集中治療室(ICUとも呼ばれる)での治療が必要になることもあります。

急性腎障害の原因が治療可能なものであれば、その治療をできるだけ速やかに行います。例えば、閉塞が原因の場合は、その閉塞を解消するために膀胱内へのカテーテルの挿入、内視鏡での処置、あるいは手術が必要になります。

腎臓の機能が自然に回復することも多く、特に腎障害の発症からの経過期間が数日のみで、かつ感染症などの合併症が認められない場合には、その可能性が高くなります。その間は、腎機能の低下によって深刻な問題が生じないように特別な対策を講じる必要があります。具体的な対応としては以下のものがあります。

  • 特定の薬剤の使用制限

  • 水分、ナトリウム、リン、カリウムの摂取制限

  • 良好な栄養状態の維持

  • カリウムやリンの血中濃度が高すぎる場合は薬剤の投与

  • 透析の実施

食事に関する対応

腎臓から体外に排出される物質(多数の薬物を含みます)の摂取は、すべて厳しく制限されます。塩分(ナトリウム)とカリウムの摂取も通常は制限されます。水分の摂取量は、腎臓への血流不足のために水分補給が必要になる場合を除いて、体から失われた分を補うだけの量に制限されます。体内の水分が過剰であるか過小であるかを評価する上で体重の変動が良い指標となるため、体重測定を毎日行います。

食事がとれる患者には健康的な食事が出されます。タンパク質の摂取はある程度まで許容され、通常は1日当たり体重1キログラムにつき0.8~1グラムとされます。リンを多く含む食品(乳製品、レバー、豆類、ナッツ類、大半の清涼飲料水など)の摂取量を制限することで、血液中のリン濃度を低下させることができます。

薬剤

高カリウム血症の治療としては、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムまたは同様の薬剤が経口または注腸で投与されます。高リン血症の予防または治療としては、カルシウム塩(炭酸カルシウムまたは酢酸カルシウム)かセベラマーが経口で投与されます。

透析

急性腎障害が長期化した場合には、老廃物と過剰な水分を体内から除去する必要があります。老廃物は透析によって除去することができ、通常は血液透析が行われます。腎機能低下の長期化が予想されるか、食事療法と薬物療法では効果がないと予想される場合は、透析が開始されます。透析は急性腎障害の合併症をコントロールするのに役立ちます。透析が必要になるのは腎臓が機能を回復するまでの一定期間だけの場合もあり、通常は数日から数週間で(ときに退院後に)回復に至ります。腎臓の機能が回復しない場合は、透析(血液透析または腹膜透析)を無期限で継続するか、腎移植を行います。

閉塞によって生じた急性腎障害の治療

閉塞が原因で発生した急性腎障害の回復期には、水分摂取は制限されません。この回復期には、腎臓においてナトリウムと水分が正常に再吸収されないため、閉塞が解消された後、しばらくは排尿量が普段よりも多いことがあります。また回復期には、水分とナトリウム、カリウム、マグネシウムなどの電解質の補給も必要です。

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP