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糸球体腎炎

(腎炎症候群)

執筆者:

Navin Jaipaul

, MD, MHS, Loma Linda University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2018年 7月
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糸球体腎炎は、糸球体(小さな穴が多数あいた微細な血管でできた球状の腎組織で、それらの穴を通して血液がろ過されます)が侵される病気です。糸球体腎炎は、むくみ(浮腫)、高血圧および尿中での赤血球の検出を特徴とします。

  • 糸球体腎炎は、感染症、遺伝性疾患、自己免疫疾患など、様々な病気が原因で発生します。

  • 診断は、血液検査と尿検査の結果に基づいて下され、場合によっては画像検査や腎臓の生検も行われます。

  • 腎機能が改善するまでは、塩分やタンパク質の摂取を控え、利尿薬や抗菌薬を服用する必要がしばしばあります。

糸球体疾患の概要も参照のこと。)

糸球体腎炎は以下のように分けられます。

  • 急性:短期間で発生するもの

  • 慢性:緩やかに発生し、ゆっくり進行していくもの

急性糸球体腎炎の患者では、小児で1%、成人では10%の割合で、急速進行性糸球体腎炎と呼ばれる状態へ発展しますが、その場合には大半の糸球体が破壊され、最終的には腎不全に至ります。

原因

糸球体腎炎は以下のように分けられます。

  • 原発性:腎臓から発生するもの

  • 二次性:様々な病気によって発生するもの

二次性糸球体腎炎の原因になる病気には、腎臓以外の部位が侵されるものもあります。

急性糸球体腎炎

急性糸球体腎炎は、ほとんどの場合、細菌の一種であるレンサ球菌による咽頭または皮膚の感染症の合併症として発生します。レンサ球菌の感染後に発生する急性糸球体腎炎(溶連菌感染後糸球体腎炎)は、典型的には2~10歳の小児が感染症から回復した後に発症します。ブドウ球菌や肺炎球菌などのその他の細菌感染症、水痘などのウイルス感染症、マラリアなどの寄生虫感染症もまた、急性糸球体腎炎の発生につながることがあります。このような何らかの感染によって発生する急性糸球体腎炎は、感染後糸球体腎炎と呼ばれています。

急性糸球体腎炎は感染以外の原因によって起こることもあり、膜性増殖性糸球体腎炎、IgA(免疫グロブリンA)腎症、IgA関連血管炎全身性エリテマトーデスクリオグロブリン血症グッドパスチャー症候群多発血管炎性肉芽腫症などが挙げられます。急速進行性糸球体腎炎に発展する急性糸球体腎炎は、そのほとんどが異常な免疫反応に関係した病態によって発生したものです。

慢性糸球体腎炎

慢性糸球体腎炎の多くは、IgA腎症や膜性増殖性糸球体腎炎など、急性糸球体腎炎の原因である一部の病態から発生すると考えられています。ときには、急性糸球体腎炎が治癒しないまま、長期化(慢性化)する場合もあります。慢性糸球体腎炎はまた、遺伝性の病気である遺伝性腎炎が原因で引き起こされることもあります。しかし多くの場合、慢性糸球体腎炎の原因は特定できません。

糸球体腎炎の主な原因

症状

急性糸球体腎炎の人の約半数では、何の症状もみられません。症状がみられる場合は、体内への水分の蓄積によるむくみ(浮腫)、尿量の減少、血液の混入による尿の黒色化などが最初に認められます。浮腫は最初のうちは顔面やまぶたのむくみとして現れることが多いものの、その後は脚のむくみが目立つようになります。腎機能が低下してくると、血圧の上昇( 血圧の制御:レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)がみられるようになります。眠気や混乱が起こる場合もあります。高齢者では、吐き気や全身のだるさ(けん怠感)といった特徴のない症状の方が多くみられます。

急速進行性糸球体腎炎では、筋力低下、疲労および発熱が最もよくみられる初期症状です。そのほかに食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、関節痛などもみられます。約50%の患者は、腎不全を発症する1カ月ほど前にインフルエンザに似た症状を経験しています。このような人では、浮腫がみられるほか、通常は尿がほとんど出なくなります。高血圧になることはまれで、みられたとしても重度の高血圧が起こることはめったにありません。

慢性糸球体腎炎では、ごく軽微な症状しか生じないのが通常であるため、ほとんどの人は病気に気づかないまま長期間が経過します。浮腫がみられることがあり、高血圧はよくみられます。この病気は腎不全に進行することがあり、その場合はかゆみ、食欲不振、吐き気、嘔吐、疲労、呼吸困難などが生じます。

診断

  • 血液検査

  • 尿検査

  • 腎生検

急性糸球体腎炎を疑わせる症状がみられた場合、医師はこの病気の可能性を検討します。また、臨床検査の結果から腎機能障害や血尿の可能性が示唆された場合にも(多くの病気でみられる症状を評価するための検査や、決まって行われる医学的評価の一貫として実施された検査で、このような結果が出る場合もあります)、医師はこの病気の可能性を検討します。臨床検査では、尿中にタンパクと血球が様々な量で検出されるほか、しばしば腎臓の機能障害が(老廃物である尿素およびクレアチニンの血中濃度の上昇として)確認されます。

急速進行性糸球体腎炎では、尿のサンプルを顕微鏡で観察すると、しばしば尿円柱(赤血球や白血球が凝集したもの)が確認されます。血液検査では、通常は貧血が認められます。

糸球体腎炎が疑われる場合は、通常は腎生検を実施して診断を確定するとともに、原因を調べ、瘢痕化の程度と治癒の可能性を判定します。腎生検では、超音波検査またはCT(コンピュータ断層撮影)検査の画像を見ながら、片方の腎臓に針を刺して、腎臓の組織を少量だけ採取します。腎生検は体に負担をかける(侵襲性の高い)検査であり、ときに合併症が発生する可能性がありますが、通常は安全な検査法です。

慢性糸球体腎炎は徐々に発症するため、正確な発症時期を特定できない場合があります。健診の一環として行われた尿検査において、腎機能は正常で何の症状もみられない健康そうな人の尿にタンパクや血球が検出され、慢性糸球体腎炎と判明する場合もあります。通常は腎臓の画像検査(超音波検査、CT検査など)が行われます。

慢性糸球体腎炎とそれ以外の腎疾患を鑑別する上では、腎生検が最も信頼性の高い検査法です。ただし、進行した段階では生検はめったに行われません。このような場合には、腎臓の組織が萎縮して瘢痕も形成されているため、原因の特定につながる情報を得られる可能性が低くなるからです。腎機能が不良な状態が長期間続いていて、画像検査で腎臓が異常に小さく見える場合には、腎臓の萎縮と瘢痕の形成が疑われます。

糸球体腎炎の原因の特定

このほかにも原因の特定に役立つ検査があります。例えば感染後糸球体腎炎の診断では、のどの粘液を用いた培養検査(咽頭培養検査)で、レンサ球菌の感染を証明することができます。レンサ球菌に対する血液中の抗体の量が正常値よりも高くなっていたり、数週間にわたって継続的に増加したりする場合があります。レンサ球菌咽頭炎以外の感染症に続いて発生する急性糸球体腎炎では、感染症の症状が残っているうちに急性腎炎症候群の症状が現れる場合が多いため、その診断は比較的容易です。ときには診断を確定するために、感染症の原因菌を特定するための培養検査と血液検査が必要になることもあります。

糸球体腎炎の原因として自己免疫が疑われる場合、自己抗体(自身の組織の一部に向けられた抗体)について血液検査を行うとともに、補体系(身体の免疫系に関与しているタンパクのシステム)を評価する検査も実施します。

予後(経過の見通し)

溶連菌感染後急性糸球体腎炎は、ほとんどが完全に治癒し、小児では特にその可能性が高いものの、小児の約1%と成人の10%では慢性腎臓病の発生につながります。

急速進行性糸球体腎炎の予後(経過の見通し)は、糸球体組織の線維化の程度と基礎疾患(感染症など)が治療可能かどうかによって変わります。早期(数日から数週間以内)に治療が行われた場合には、腎機能が保持され、透析は必要ないことがあります。しかし、初期症状が軽微で漠然としているため、急速進行性糸球体腎炎の人のほとんどは、背景にある病気(基礎疾患)に気づくことなく、腎不全に発展するまで医療機関を受診しません。

治療の開始が遅れれば、腎不全を伴う慢性腎臓病に発展する可能性がより高くなります。腎不全は気づく前に進展している傾向があるため、急速進行性糸球体腎炎では、80~90%の人が透析に依存することになります。予後は、原因、年齢、別の病気の有無などの要因によっても変わります。原因不明の場合と高齢の場合には、予後はあまりよくありません。

急性糸球体腎炎から完全に回復しない小児および成人の一部では、無症候性タンパク尿・血尿症候群ネフローゼ症候群などの別の種類の腎疾患が発生することがあります。また急性糸球体腎炎から慢性糸球体腎炎に移行することもあり、特に高齢者で多くみられます。

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糸球体腎炎を引き起こす原発性糸球体疾患

疾患名

説明

予後(経過の見通し)

細線維性糸球体腎炎

このまれな病気では、糸球体の周囲に異常なタンパクが沈着します。ネフローゼ症候群を引き起こすこともあります。

予後は不良です。約半数の患者では、4年以内に重度の腎機能低下(末期腎不全)がみられます。コルチコステロイドおよび免疫抑制薬を用いた治療が有効であるかどうかもはっきりとは分かっていません。

原発性の急速進行性糸球体腎炎

この疾患群では、糸球体に顕微鏡レベルの微小な損傷が生じ、急速に進行します。感染症やその他の治療可能な病気によって病態が引き起こされる場合もあります。診断には生検が必要です。

予後は不良です。治療が行われないと、80%以上の患者が6カ月以内に末期腎不全に移行します。60歳未満の場合と、糸球体腎炎の原因になっている基礎疾患が治療に反応する場合は、予後は比較的良好です。治療を実施した場合、43%の患者が12カ月以内に末期腎不全に移行します。

IgA(免疫グロブリンA)腎症

世界的に最も多くみられる種類の糸球体腎炎で、腎臓に免疫複合体(抗体と抗原が結合したもの)が沈着することで引き起こされます。

この病気は通常ゆっくりと進行します。20年後までに約25%の患者が末期腎不全に移行します。小児では、よりゆっくりと進行します。

膜性増殖性糸球体腎炎

まれな種類の糸球体腎炎で、発症年齢は主に8~30歳です。この病気は免疫複合体(抗原と抗体が結合したもの)が腎臓に付着することで起こりますが、複合体が腎臓に付着する理由はしばしば不明です。

原因が判明し、治療が可能であれば、部分的に回復する場合もあります。一方、原因不明の場合は、最終的な経過はそれほど良くありません。末期腎不全への進行が10年以内には約半数の患者で、20年以内には90%の患者で起こります。

治療

  • 原因疾患の治療

  • 急速進行性糸球体腎炎には、免疫機能の抑制

  • 慢性糸球体腎炎には、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬と食塩摂取量の制限

急性糸球体腎炎

多くの急性糸球体腎炎では、病気そのものに対する特別な治療法はありません。可能であれば、糸球体腎炎を引き起こしている病気を治療します。腎機能が回復するまで、タンパク質とナトリウムを制限した食事療法が必要になります。また腎臓で過剰なナトリウムと水分が排泄されるようにするため、利尿薬が処方されることもあります。高血圧がみられる場合は治療が必要です。

急性糸球体腎炎の原因として細菌の感染が疑われる場合、腎炎は感染の1~6週間後(平均2週間後)に発症し、それまでに感染症は治癒していることが多いため、抗菌薬は通常効果がありません。ただし、急性糸球体腎炎と診断がついた時点でまだ細菌感染症の症状が持続している場合は、抗菌薬療法が行われます。原因がマラリアである場合は、抗マラリア薬の使用が有益です。

糸球体腎炎を引き起こす自己免疫疾患の一部は、コルチコステロイド、免疫抑制薬、またはこれらの薬剤の併用により治療します。

急速進行性糸球体腎炎

急速進行性糸球体腎炎の場合は、速やかに免疫抑制薬の投与が開始されます。通常は高用量でのコルチコステロイドの静脈内投与を約1週間継続した後、内服薬に切り替えます(内服薬の服用期間は人によって様々です)。免疫抑制薬のシクロホスファミドを投与する場合もあります。さらに、血液中の抗体を取り除くために血漿交換が行われる場合もあります。治療を早く開始するほど、腎不全に進行する可能性や透析の必要性は少なくなります。腎不全を伴う慢性腎臓病に移行した人には、ときに腎移植が検討されますが、移植された腎臓で急速進行性糸球体腎炎が再発する場合もあります。

慢性糸球体腎炎

アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とアンジオテンシンII受容体拮抗薬のどちらかを服用することで、しばしば慢性糸球体腎炎の進行を遅らせることができ、血圧が低下して尿中へのタンパクの排泄量が減少する傾向がみられます。血圧を下げることとナトリウムの摂取量を減らすことも有益であると考えられています。またタンパク質の摂取量を制限することが、腎機能の低下を遅らせるのにある程度有用です。末期腎不全は透析か腎移植で治療します。

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