ほとんどの場合、原因は以下のものです。
食道の損傷の進行
腫瘍の増殖
閉塞に進行する損傷は、胃からの胃酸の逆流(胃食道逆流症[GERD] 胃食道逆流症(GERD) 胃食道逆流症では、胃酸や胆汁を含む胃の内容物が胃から食道に逆流し、食道の炎症と胸部の下部の痛みが生じます。 逆流は、正常な場合に胃の内容物が食道に逆流しないように防いでいる輪状の筋肉(下部食道括約筋)が正しく機能していないと起こります。 最も典型的な症状は胸やけ(胸骨の裏側の焼けつくような痛み)です。 診断は症状のほか、ときに食道pH検査の結果に基づいて下されます。 引き金になる物質(アルコールや脂肪分の多い食物など)を避け、胃酸を減ら... さらに読む )が繰り返し起こったために食道が損傷することで、通常は何年もかけて、生じることがあります。また、閉塞は 腐食性物質 腐食性物質による中毒 腐食性物質を飲み込むと、その物質が接触した唇から胃までの組織すべてに熱傷(やけど)を負います。 症状は、痛み(特に飲み込むとき)、せき、息切れ、嘔吐などです。 医師は内視鏡(観察用の柔軟な管状の機器)を食道に挿入して熱傷がないかを調べ、損傷の程度を判断します。 治療は損傷の程度により決定され、手術をすることもあります。 ( 中毒の概要も参照のこと。) さらに読む を飲み込んだ後に起きる食道の損傷(びらん性食道炎)によって生じる場合もあれば、まれですが、食道内に一定時間とどまった錠剤によって食道に炎症が起きた後に生じる場合もあります。
腫瘍は狭窄の深刻な原因で、食道の 悪性腫瘍 食道がん 食道がんは、 食道(のどと胃をつなぐ管)の壁の内側を覆っている細胞から発生します。 特定の種類の食道がんでは、タバコの使用と飲酒、ヒトパピローマウイルス感染、特定の食道の病気が主要な危険因子です。 典型的な症状としては、嚥下(えんげ)困難、体重減少、後に痛みがよくみられます。 診断は内視鏡検査の結果に基づいて下されます。 早期に発見されないかぎり、ほぼすべてのケースで死に至ります。 さらに読む と 良性腫瘍 食道の良性腫瘍 食道(のどと胃をつなぐ管)に良性の腫瘍(がんではない腫瘍)ができることはまれです。多くの腫瘍は嚥下(えんげ)に問題を起こし、まれに潰瘍(かいよう)や出血、またはその両方が生じます。通常、害があるというよりも、できると厄介なものです。 良性腫瘍で一番多い種類は、平滑筋の腫瘍である平滑筋腫です。30~60歳の人に最も多くみられます。大半の平滑筋腫は小さく、治療の必要はありません。しかし一部の平滑筋腫は食道が部分的に閉塞するほど大きくなり、閉... さらに読む があります。
狭窄(きょうさく)は、食道が外側から何かに圧迫されて起こる場合もあります。圧迫の原因はいくつかあり、以下のようなものが挙げられます。
心臓の左心房の拡大
甲状腺の異常
脊椎から増大した骨の突起
ときに、遺伝性の原因がみられる場合もあります(例えば、 下部食道輪 下部食道輪 下部食道輪は、下部食道に狭窄(きょうさく)を起こし、ほとんどの場合は生まれたときから存在します。 食道は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。( 食道閉塞の概要も参照のこと。) 一部の下部食道輪は、 胃酸逆流や飲み込みが不完全だった錠剤に起因する食道の炎症(びらん性食道炎)によって生じることがあります。 正常な下部食道の直径は約2センチメートルです。しかし、下部食道輪(硬い組織の輪)によって直径が約1... さらに読む や 食道ウェブ 食道ウェブ 食道ウェブは、食道の上部に形成された薄い膜で、 嚥下困難を引き起こすことがあります。 ( 食道閉塞の概要も参照のこと。) 食道は、のど(咽頭)から胃までをつなぐ中空の管です。 食道ウェブはまれにしか起こりませんが、重度の 鉄欠乏性貧血を治療しなかった人で最も多く起こります。貧血に食道ウェブが合併する理由は不明です。上部食道にウェブがあると、通常は固形物が飲み込みにくくなります。... さらに読む
)。それらの病気では通常、部分的な閉塞しか起こりません。
いずれも食道の内径が狭くなるため、これらの病気がある患者では通常、固形物の食べもの(特に肉やパン)の 嚥下(えんげ)が困難 嚥下困難 飲み込みに障害が生じること(嚥下[えんげ]困難)があります。嚥下困難では、食べものや飲みものがのど(咽頭)から胃へと正常に移動しません。のどと胃をつなぐ管(食道)の途中で食べものや飲みものが動かなくなったように感じます。嚥下困難をのどのしこり( 球感覚)と混同してはならず、球感覚ではのどにしこりがある感じがしますが、飲み込みに支障はありません。 嚥下困難によって、口腔分泌物や飲食物を肺に吸い込む誤嚥(ごえん)が生じる可能性があります。誤... さらに読む になります。液体の嚥下困難は、起こるとしても、かなり後になってからみられます。
診断
上部消化管内視鏡検査
生検
食道造影検査
食道の閉塞の診断を下すには、上部消化管内視鏡検査を行います。この手法では、 内視鏡 内視鏡検査 内視鏡検査とは、柔軟な管状の機器(内視鏡)を用いて体内の構造物を観察する検査です。チューブを介して器具を通すことができるため、内視鏡は多くの病気の治療にも使うことができます。 口から挿入する内視鏡検査では、食道(食道鏡検査)、胃(胃鏡検査)、小腸の一部(上部消化管内視鏡検査)が観察できます。上部消化管内視鏡検査を受ける場合は、のどの感覚をなくすために液体またはスプレー状の麻酔薬が検査前に使用されることがあります。... さらに読む と呼ばれる柔軟な管状の機器を用いて食道を調べます。内視鏡検査中に、医師は顕微鏡で調べるために組織サンプルを採取します(生検と呼ばれる)。
食道造影検査 消化管のX線検査 消化器系の問題の評価にはX線検査がよく使われます。標準的なX線検査(単純X線検査)では、特別な準備は何も必要ありません( 単純X線検査)。消化管に閉塞や麻痺がある場合や、腹腔内のガスの分布が異常な場合は、通常は標準的なX線検査で明らかになります。また、肝臓、腎臓、脾臓の腫大も標準的なX線検査で明らかになります。 バリウムを用いたX線検査では、多くの場合、標準のX線検査より多くの情報が得られます。味つけした液体バリウムまたはバリウムでコー... さらに読む も行うことがあります。この検査では、バリウムという液体状の造影剤を飲んでもらってから、X線撮影を行います。バリウムによって食道の輪郭が描き出され、異常が見やすくなります。
治療法とその結果は、狭窄や閉塞の原因によって異なります。