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単一遺伝子疾患の遺伝

執筆者:

David N. Finegold

, MD, University of Pittsburgh

最終査読/改訂年月 2017年 8月
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本ページのリソース

胎児が男性と女性のどちらになるかは、性染色体 性染色体 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む 性染色体 によって決まります。男性はX染色体とY染色体を1本ずつもっています。X染色体は母親から、Y染色体は父親から受け継いだものです。女性は2本のX染色体をもっています。1本のX染色体は母親から、もう1本のX染色体は父親から受け継いだものです。

  • 優性

  • 劣性

優性形質は、その形質の遺伝子が2本の染色体のどちらか一方にあるだけで発現します。

常染色体上にある劣性形質は、その劣性形質の遺伝子が対になった染色体の両方にある場合にのみ発現し、片方にしかなければ、通常はその形質を示さない方の遺伝子が発現します。劣性形質の異常遺伝子を1つだけもつ人(障害は現れません)は、キャリアと呼ばれます。

共優性形質では、両方の遺伝子がある程度発現します。共優性形質の例として血液型があります。A型とB型の遺伝子コードを1つずつもっている人では、血液型についてA型とB型の両方の形質がみられます(AB型)。

X連鎖(伴性)遺伝子とは、X染色体上で受け継がれる遺伝子のことです。X連鎖遺伝子であることは、その発現も決定されます。男性では、発現を抑える対の遺伝子がないため、形質の優性、劣性にかかわらず、X染色体上のほぼすべての遺伝子が発現します。

浸透度と表現度

浸透度とは、ある形質の遺伝子をもつ人のうち、その形質が現れる割合のことです。浸透度は完全な場合と不完全な場合があります。不完全な浸透度の遺伝子は、その形質が優性でも、形質が劣性で両方の染色体にある場合でも、発現するとは限りません。仮にある遺伝子をもつ人の半数がその形質を示す場合、浸透度は50%です。

表現度は、形質によりその人が受ける影響の程度(重度、中等度、軽度)を表します。

遺伝子がどのように人に影響を及ぼすか:浸透度と表現度

同じ遺伝子をもつ人でも影響が異なる可能性があります。浸透度と表現度という2つの言葉でこの違いを表します。

遺伝子がどのように人に影響を及ぼすか:浸透度と表現度

浸透度は、遺伝子が発現するかどうかを指します。すなわち、ある遺伝子をもつ人のうちどれくらいがその遺伝子の形質を備えているかをいいます。ある遺伝子をもつ全員にその形質がみられる場合、浸透度は完全(100%)です。遺伝子をもつ人の一部でしか形質がみられなければ、浸透度は不完全です。例えば、50%の浸透度とは、遺伝子をもつ人の半数だけにその形質がみられることを意味します。

遺伝子がどのように人に影響を及ぼすか:浸透度と表現度

表現度は、形質がその人に影響を及ぼしている(その人において発現している)程度を表します。形質は、はっきりと分かる場合やほとんど気づかない場合、その中間の場合があります。遺伝子構成、有害物質への曝露、その他の環境の影響、年齢など、様々な因子が表現度に影響を及ぼします。

浸透度と表現度はどちらも変化する可能性があります。遺伝子をもっていても、その形質が現れる人とそうでない人がいます。また、形質が現れている人でも、その程度は様々です。

遺伝形式

多くの遺伝性疾患、特に複数の遺伝子で制御される形質が関与する遺伝性疾患や、環境の影響を非常に受けやすい遺伝性疾患に、明らかな遺伝形式があるわけではありません。しかし、一部の単一遺伝子疾患は、特に浸透度が高く表現度が完全な場合、特徴的な遺伝形式を示します。このような場合は、形質が優性か劣性かと、遺伝子がX染色体上またはミトコンドリアゲノム ミトコンドリアDNA 遺伝子とは、DNA(デオキシリボ核酸)のうち、細胞の種類に応じて機能する特定のタンパクの設計情報が記録された領域のことです。染色体は、細胞の中にあって複数の遺伝子が記録されている構造体です。 遺伝子は染色体内にあり、染色体は主に細胞の核にあります。 1本の染色体には数百から数千の遺伝子が含まれています。... さらに読む ミトコンドリアDNA 上にあるかどうかに基づいて形式を特定することができます。

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性染色体を介さない遺伝

性染色体以外にある遺伝子は、22対ある常染色体の各ペアの片方または両方とともに子孫に受け継がれます。

優性遺伝疾患

X染色体以外の優性遺伝子によって決まる優性遺伝疾患には、一般に以下の原則が当てはまります。

  • 片方の親に疾患があり、もう一方の親にはない場合、子どもに疾患が遺伝する確率は50%です。

  • 疾患のない人は通常、この遺伝子変異をもっておらず、形質を子孫に受け継ぐことはありません。

  • 発症する可能性は男女で同等です。

  • 疾患のある人のほとんどは、両親の少なくとも1人が同じ疾患を抱えていますが、この疾患が親には明白に現れていない場合や、診断すら受けていない場合があります。ただし、新たな遺伝子突然変異として疾患が現れることがあります。

劣性遺伝疾患

X染色体以外の劣性遺伝子によって決まる劣性遺伝疾患には、一般に以下の原則が当てはまります。

  • 疾患のある人では、ほぼ必ず両方の親が異常な遺伝子のコピーをもっていますが、通常はいずれの親にも疾患は現れていません(異常遺伝子が発現するにはその遺伝子が2コピー必要であるため)。

  • 優性遺伝疾患に比べ、単一の突然変異で疾患が現れることはあまりありません(劣性遺伝疾患の発現には一対の遺伝子の両方が異常である必要があるため)。

  • 片方の親に疾患があり、もう一方の親は異常遺伝子を1つもっているものの疾患がない場合、その子どもの半数に疾患が現れる傾向があります。残りの子どもは1つの異常遺伝子のキャリアとなります。

  • 片方の親に疾患があり、もう一方の親が異常遺伝子をもっていない場合は、どの子どもにも疾患は現れませんが、全員が異常遺伝子を受け継いでキャリアとなり、子孫に遺伝する可能性があります。

  • 本人に疾患がなく両親にもないが、兄弟姉妹に疾患がある場合、本人が異常遺伝子のキャリアである確率は66%です。

  • 発症する可能性は男女で同等です。

非X連鎖劣性遺伝疾患

一部の疾患は非X連鎖劣性形質として表れます。通常、発症するには異常遺伝子が2つ必要で、両親から1つずつ受け継ぎます。両親ともに異常遺伝子と正常遺伝子を1つずつもっている場合、両親は発症しませんが、各親から異常遺伝子が子どもに遺伝する確率はそれぞれ50%です。したがって、子どもでの確率は以下のようになります。

  • 25%の確率で異常遺伝子を2つ受け継ぐ(そのため疾患を発症する)

  • 25%の確率で正常遺伝子を2つ受け継ぐ

  • 50%の確率で異常遺伝子と正常遺伝子を1つずつ受け継ぐ(そのため両親と同様にその疾患のキャリアになる)

したがって、子どもで疾患が発生しない(正常またはキャリアである)確率は75%です。

非X連鎖劣性遺伝疾患

X連鎖遺伝

X染色体とともに受け継がれる遺伝子をX連鎖遺伝子といいます。

優性遺伝疾患

X染色体の優性遺伝子によって決まる優性遺伝疾患には、一般に以下の原則が当てはまります。

  • 発症している男性の場合、その疾患が娘全員に遺伝しますが、息子には遺伝しません。(発症している男性の息子は、父親のY染色体を受け継ぎますが、その染色体には異常遺伝子がありません。)

  • 異常遺伝子を1つだけもち、発症している母親の場合、男女に関係なく平均して子どもの半数に疾患が遺伝します。

  • 異常遺伝子を2つもち、発症している母親の場合、すべての子どもに疾患が遺伝します。

  • 多くのX連鎖優性遺伝疾患は、男性で発症すると致死的です。女性では、問題の遺伝子が優性であっても他方のX染色体上の正常な遺伝子が優性遺伝子の影響をある程度まで相殺するため、疾患の重症度が軽減されます。

  • 疾患は男性より女性で多くみられます。男性で致死的な疾患の場合、この性別による違いがさらに大きくなります。

優性X連鎖の重度の疾患はまれです。例として、家族性くる病(家族性低リン血症性くる病 低リン血症性くる病 低リン血症性くる病は、電解質の一種であるリンの血中濃度が低下するために、骨の痛みと軟化が生じ、骨が曲がりやすくなる病気です。 (先天性の尿細管疾患に関する序も参照のこと。) この非常にまれな病気は、ほぼ常に遺伝性で、最も一般的にはX染色体(2種類ある性染色体の一方)にある優性遺伝子を介して遺伝します。 腎臓の尿細管の遺伝的な異常により、多量のリンが尿中に排泄される結果、血液中のリン濃度が低下します。骨の発育と強化のためにはリンが必要です... さらに読む )や遺伝性腎炎 遺伝性腎炎 遺伝性腎炎は、糸球体腎炎が発生する遺伝性疾患で、腎機能の低下と血尿がみられるほか、ときに難聴や眼の異常も生じます。 (糸球体疾患の概要と糸球体腎炎も参照のこと。) 遺伝性腎炎は通常、X染色体(女性の性染色体)にある特定の遺伝子の異常が原因で発生しますが、ときに常染色体にある別の遺伝子の異常によって引き起こされることもあります。この遺伝子をもっている人での重症度には、他の要因が影響を及ぼします。遺伝性腎炎は慢性腎臓病を引き起こす可能性があ... さらに読む (アルポート症候群)などがあります。遺伝性くる病の女性は、男性に比べると、骨に関する症状があまりみられません。遺伝性腎炎の女性は通常は症状がなく腎機能の異常もほとんどないのに対し、男性は成人期の初期に腎不全を発症します。

劣性遺伝疾患

X染色体の劣性遺伝子によって決まる劣性遺伝疾患には、一般に以下の原則が当てはまります。

  • 発症するのは、ほとんどが男性です。

  • 発症している男性の娘は全員、異常遺伝子のキャリアになります。

  • 発症している男性から息子に疾患が遺伝することはありません。

  • 遺伝子キャリアの女性は、異常遺伝子が両方のX染色体にあるか、正常な染色体が不活化されている場合を除いて発症しません。しかし、息子の半数にその遺伝子が受け継がれ、通常は発症します。娘は母親と同じく通常は発症しませんが、半数がキャリアとなります。

よくみられるX連鎖劣性形質の例として赤緑色覚異常があります。これは白人男性では約10%にみられますが、女性ではめったにみられません。男性の場合、色覚異常の原因となる遺伝子は母親に由来します。この母親は通常、色覚は正常ですが、色覚異常遺伝子のキャリアです。男性の色覚異常遺伝子が、父親のY染色体に由来することはありません。色覚異常の父親の娘が色覚異常になることはめったにありませんが、娘は全員が色覚異常遺伝子のキャリアです。X染色体の劣性遺伝子によって引き起こされる重篤な疾患の例として、過度の出血が起こる病気である血友病 血友病 血友病は、第VIII因子と第IX因子という2つの血液凝固因子のうち、いずれかが欠乏しているために起こる遺伝性の出血性疾患です。 異なった遺伝子異常がいくつかあると、この病気を発症することがあります。 不意に出血したり、わずかな傷で出血したりする可能性があります。 診断には血液検査が必要です。 輸血を行って、欠けている凝固因子を補充します。 さらに読む があります。

X連鎖劣性遺伝疾患

遺伝子がX連鎖ということは、その遺伝子がX染色体に存在するということです。X連鎖劣性遺伝疾患は通常、男性でのみ発症します。男性だけが発症するのは、男性がX染色体を1本しかもっておらず、異常遺伝子の影響を打ち消す対の遺伝子をもたないためです。女性にはX染色体が2本あるため、通常は2本目のX染色体に正常な遺伝子を受け継いでいて、それが影響を打ち消します。それらの遺伝子により、女性は発症を免れます(もう一方の対の遺伝子が不活化または欠損している場合を除く)。

父親のX染色体に異常な遺伝子があり(そのため発症しており)、母親がもつ対応する遺伝子が2つとも正常である場合、娘は全員、異常遺伝子1つと正常遺伝子1つを受け継ぎ、キャリアとなります。息子は父親からY染色体を受け継ぐため、異常遺伝子を受け継ぐことはありません。

母親がキャリアで、父親の遺伝子が正常な場合、その息子は50%の確率で母親から異常遺伝子を受け継ぎ、疾患を発症します。娘は50%の確率で異常遺伝子と正常遺伝子を1つずつ受け継ぎ(キャリアになります)、50%の確率で正常遺伝子を2つ受け継ぎます。

X連鎖劣性遺伝疾患

限性遺伝

一方の性にのみ現れる形質を限性といいます。限性遺伝はX連鎖遺伝とは異なります。X染色体によって形質が受け継がれることは伴性遺伝といいます。限性遺伝とは、より正確にはおそらく従性遺伝と呼ぶべき現象で、ある形質の浸透度と表現度が男女間で異なる遺伝のことです。男性と女性の体内で分泌される性ホルモンが異なることやその他の要因が関係して、浸透度と表現度の違いが生まれます。例えば、壮年性脱毛症(男性型脱毛症)は非X連鎖優性形質ですが、頭髪の脱毛(禿頭)は女性ではまれにしか発現せず、通常は閉経後にのみみられます。

異常なミトコンドリア遺伝子

父親のミトコンドリアDNAは子どもに受け継がれないため、異常ミトコンドリア遺伝子による疾患は、ほとんどすべて母親から受け継がれたものです。したがって、異常ミトコンドリア遺伝子をもつ母親の子どもはすべて、その異常遺伝子を受け継ぐリスクがありますが、父親のそうした遺伝子が子どもに遺伝するリスクはありません。しかし、すべてのミトコンドリア病の原因が異常ミトコンドリア遺伝子によるものとは限らず、細胞核内の遺伝子がミトコンドリアに影響を及ぼして引き起こされる場合もあります。したがって、父親のDNAが一部のミトコンドリア病に関与する場合もあります。

細胞核内のDNAと異なり、異常なミトコンドリアDNAの量は全身の細胞毎に異なります。したがって、ある体細胞に異常なミトコンドリア遺伝子が存在していればほかの細胞も病気になる、というわけではありません。2人の人が同じミトコンドリア遺伝子の異常をもっていると考えられる場合でさえ、それぞれの病気の現れ方が大きく異なることがあります。このような差があるため診断は難しく、また、ミトコンドリア遺伝子の異常が判明している人や疑わしい人を対象に、遺伝子検査や遺伝カウンセリングで発症の可能性を予測することも困難です。

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