Msd マニュアル

Please confirm that you are not located inside the Russian Federation

honeypot link

致死的な病気で生じる症状

執筆者:

Elizabeth L. Cobbs

, MD, George Washington University;


Karen Blackstone

, MD, George Washington University;


Joanne Lynn

, MD, MA, MS, Altarum Institute

最終査読/改訂年月 2017年 8月
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します

多くの致死的な疾患により、痛みや息切れ、胃腸の障害、失禁、皮膚の損傷、疲労といった共通の症状が起こります。抑うつや不安、錯乱、意識不明、身体障害が生じることもあります。通常、症状は予測して治療することができます。

痛み

死に直面すると、大半の人は痛みを恐れます。しかし、ほぼすべての人が心地良く過ごすことができ、多くの場合、意識もはっきりとしていて、現実世界との関わりを維持することができます。ただし、積極的な疼痛治療によって、鎮静や錯乱が避けられない場合もあります。

痛み止め(鎮痛薬)の選択は痛みの強度や原因に大きく依存するため、医師は患者との話し合いや観察によって使用する薬を決定します。アスピリン、アセトアミノフェン、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)は軽度の痛みを和らげる作用があります。しかし、多くの人には、中程度から重度の痛みを治療するためにオピオイドなどのより強い痛み止めが必要になります。オキシコドン、ヒドロモルフォン、モルヒネ、メサドンなどの経口で投与されるオピオイドや、フェンタニルなどの舌下投与されるオピオイドは、手軽に痛みを抑えることができ、効果が長時間持続します。経口または舌下でオピオイドを投与できない患者には、皮膚パッチ、皮下組織または筋肉への注射、直腸への注入、もしくは静脈内への持続注入でオピオイドを投与します。

痛みに耐えられなくなるまで我慢するのではなく、早期から十分な薬物療法を行う必要があります。この種の薬物に常用量はありません。同じ効果を得るために、少量で足りる人もいれば、大量に必要な人もいるからです。オピオイドを少量投与しても効果がなければ、医師は増量する必要があると考え、多くの場合は倍に増やします。定期的なオピオイドの使用により薬物依存になることがありますが、突然使用を中止して不快な症状を起こさないようにすれば、死期を迎えた人では特に問題はありません。死が間近に迫った患者に、薬物依存の心配はありません。

オピオイドにより、吐き気、鎮静、錯乱、便秘、呼吸が遅いまたは浅い(呼吸抑制)などの副作用が生じる場合があります。通常、便秘以外のほとんどの副作用は、時間が経つか、他のオピオイドに変更すれば解消されます。オピオイドを投与する前であっても下剤投与を開始することで、しばしば便秘を最小限に抑えることができます。オピオイドはときに、せん妄やけいれん発作を引き起こします。重度もしくは持続性の副作用がみられる場合や鎮痛が不十分な場合は、しばしば痛みの専門医による治療が有益です。

オピオイドと他の薬を併用すると、しばしば快適さを向上させながらオピオイドの使用量や副作用を減らせることがあります。コルチコステロイド(プレドニゾン[日本ではプレドニゾロン]やメチルプレドニゾロン)は炎症や腫れの痛みを抑えます。抗うつ薬(ノルトリプチリンやドキセピン)やガバペンチンは、神経や脊髄、脳で生じた異常による痛みの管理に有用です。ドキセピンなどの一部の抗うつ薬は、患者がよく眠れるよう夜間に投与されます。ベンゾジアゼピン系の薬(ロラゼパムなど)は、不安によって痛みが悪化している患者に有用です。

一箇所にのみ強い痛みがある場合は、麻酔医(手術中の痛みの管理と患者のサポートを専門とする医師)が神経やその周辺に局所麻酔薬を注射し(神経ブロック)、少ない副作用で痛みを軽減します。

痛みを緩和する技法(誘導イメージ療法、催眠、鍼治療、リラクゼーション療法、バイオフィードバック法など)が有用な場合もあります。スピリチュアルな面に対する聖職者のサポートと同様に、ストレスや不安に対するカウンセリングが非常に役立つこともあります。

知っていますか?

  • 苦痛を伴う終末期症状の大半は、かなりの程度まで軽減することができます。

息切れ

死期が近づいた人にとって、息が切れたり息ができない(呼吸困難)ときの感覚は特におそろしいものですが、多くの場合、これらの症状は軽減することができます。例えば、貯留している水分を取り除く、胸腔ドレーンを挿入する、姿勢を変える、酸素補給を行うなど、様々な方法で呼吸困難を緩和できます。サルブタモールの吸入やコルチコステロイドの経口投与または静脈内投与により、喘鳴(ぜんめい)と肺の炎症が緩和される場合があります。軽度の呼吸困難が続いている患者には、痛みがない場合でも、オピオイド(モルヒネなど)が役立つことがあります。寝る前にオピオイドを摂取すれば、息苦しさとの闘いで何度も目を覚ますことがなくなるため安眠が促されます。ベンゾジアゼピン系の薬(ロラゼパムなど)は呼吸困難による不安の軽減に有用です。その他に、窓を開けたり扇風機を回して涼しい風を送ったり、患者を落ち着かせるような態度を保つことも役立ちます。

ホスピスプログラムの大半の医師は、こうした治療が効果を示さない場合に、呼吸困難に苦しむ患者が息切れを感じなくなるほどの多量のオピオイド投与を望むのであれば、たとえ意識不明になる可能性があっても投与すべきであると考えています。終末期の呼吸困難を避けたい患者は、たとえ治療が原因で意識不明になる可能性や死期が多少早まるおそれがある場合でも、呼吸困難の治療を十分に行ってもらうよう医師に確認しておきます。

消化器の障害

口腔乾燥、吐き気、便秘、食欲不振といった消化器の症状は、重病患者に多くみられます。これらの症状の中には、病気が原因で生じるものがある一方、便秘など、薬の副作用で起こる症状もあります。

口腔乾燥

口腔乾燥(口の中の乾燥)は、湿らせた綿棒や氷片、あめ玉などで和らげることができます。唇の荒れを和らげる製品もたくさん市販されています。歯の問題が生じないように、介護者は患者の歯を磨き、マウススポンジで歯、歯ぐき、頬の内側、舌を小まめに掃除してください。

吐き気と嘔吐

吐き気や嘔吐の原因は、薬、腸閉塞、胃の障害、化学物質の不均衡、頭蓋骨内の圧力上昇(特定の脳腫瘍で発生)、多くの病気の進行などです。通常は、特定できる原因を治療します。場合によっては、薬の変更や吐き気止め(制吐薬)の処方も必要です。

腸閉塞は、吐き気や嘔吐の原因になります。終末期に生じる腸閉塞の最も一般的な原因はがんです。腸閉塞によって起こる吐き気と嘔吐は、制吐薬やコルチコステロイドなどの薬剤を投与すると軽くなることがあります。しかし、症状の軽減は一時的です。薬が効かない場合は、鼻から胃にチューブ(経鼻胃管)を通し、継続的に胃液を吸引する方法がとられることがあります。閉塞を解消する手術が必要な場合もありますが、患者の全体的な病状や推定される余命、閉塞の原因によっては、手術は有効でなく、むしろ有害かもしれません。痛みを和らげるにはオピオイドが有用です。

便秘

便秘は非常に不快で、死期の患者によく起こります。飲食物や食物繊維の摂取制限、運動不足、特定の薬が原因で、腸の活動が停滞します。腹部にけいれんが起こることもあります。便秘を緩和するために、便秘薬、下剤、坐薬、浣腸を使用することがあり、特にオピオイドが原因の場合はそうした処置が必要です。末期の病気でも、便秘を和らげることは有益です。

嚥下困難

嚥下困難(食べものをうまく飲み込めなくなる障害)は、特に脳卒中を起こした人などにみられるほか、認知症が進んだ人やがんで食道(のどと胃をつなぐ管)が閉塞した人などにも起こります。食事中に特定の姿勢を保つ、あるいは飲み込みやすい食べものを選ぶことによって、安全に嚥下できるようになる場合もあります。嚥下困難が生じているが死期の迫っていない患者は、担当医に栄養チューブの利点と問題点を尋ねて検討することができますが、通常は終末期の人や重い認知症の人に栄養チューブは使用しません。

食欲不振

食欲不振(食欲消失)は、死期が近づいている患者のほとんどに、いずれ現れます。胃の粘膜の炎症、便秘、歯痛、口腔の真菌感染症、痛み、吐き気など、飲食する意欲を低下させる多くの病態は、処置によって軽減できます。経口で投与するコルチコステロイド(デキサメタゾンまたはプレドニゾン[日本ではプレドニゾロン])、メゲストロール(megestrol)、ドロナビノール(dronabinol)などの食欲増進薬が有効な場合があります。死期が近づいている患者は無理に食事をとらなくてもかまいませんが、好きな家庭料理を少量だけ食べることは、大きな楽しみになるでしょう。

数時間または数日中の死亡が起こりそうになければ、静脈への点滴や経鼻胃管を介して人工栄養や輸液をしばらく試み、患者の気分、意識の明瞭さ、活力を改善する効果について確認します。改善はたいていみられないため、多くの人はこの処置を継続しません。死期を迎えた患者と家族は、こうした処置の狙いは何か、人口栄養や輸液で効果がない場合はいつ処置をやめるべきかについて、医師と明確に合意しておく必要があります。

人生の最期の数日間に食欲不振は極めてよくみられ、そのせいで新たに身体的な問題や苦痛が起こることはありませんが、病人が飲食しなくなる姿は家族にとってつらいものです。しかし、食欲不振には患者が穏やかな死を迎えるのに寄与する面があります。心臓と腎臓の機能が低下しているときに通常量の水分を取ると、その水分が肺の中にたまるため呼吸困難が生じます。食べものや水分の摂取量が減ると、のどにたまる水分も減るため吸引処置の必要性が減ります。また腫瘍の周りのむくみが減り、がん患者の痛みが和らぐことがあります。さらに、脱水によって鎮痛作用のある天然の化学物質、エンドルフィンが大量に放出されます。したがって、死期が近づいた患者に飲食を強いるべきではありません。特に、拘束や静脈チューブまたは経鼻胃管の使用、あるいは入院が必要な場合はなおさらです。

失禁

死期が近づいた患者の多くは、病気や全身の脱力のために、腸や膀胱の機能をコントロールできなくなります(失禁)。失禁には、成人用の使い捨ておむつや、入念な衛生処置で対応します。失禁がみられる場合は、頻繁に寝具やおむつを交換するなどして、できるだけ身の回りを乾いた状態に保つようにします。カテーテル(膀胱に挿入する細い管)は、布団やシーツなどの交換時に痛みが生じる場合や、患者と家族が強く希望する場合にのみ使用します。

床ずれ

死期が近づいた患者は床ずれ(褥瘡[じょくそう])を起こしやすくなります。床ずれは不快感を引き起こし、感染症の原因になるおそれがあります。重症の人やほとんど動かない人、寝たきりの人、失禁する人、栄養不良の人、ほとんど座って過ごしている人は、床ずれを起こすリスクが非常に高くなります。座っているときやシーツ上で動くときに皮膚に加わる普通の圧力で、皮膚が裂けたり傷ついたりすることがあります。床ずれの予防のためにできる限りのことをすべきであり、皮膚を守り、皮膚が赤くなったり傷ができたりしたら、すぐに医師か看護師に知らせるようにします。失禁がみられる場合は、できるだけ身の回りを乾いた状態に保つようにします。2時間おきに姿勢を変えれば床ずれは起きにくくなります。専用のマットレスや常に空気で膨らませておくベッドも役立ちます。

疲労

大半の致死的な病気では、疲労が生じます。死期が近づいた患者は、本当に大事なことのためにエネルギーを取っておくようにします。多くの場合、診療所を訪ねるとか、もはや役に立たない運動を続けるといったことは、必ずしも必要ではありません。そうした行動で疲れて、もっと大切な活動ができなくなるとしたら、本末転倒です。場合によっては、興奮剤が有用です。

うつ病と不安

人生の終わりを考えれば悲しくなるのは自然な反応ですが、この悲しみはうつ病ではありません。うつ病の場合は通常、今起きていることに興味がもてず、人生の暗い面ばかりを考え、感情が湧かなくなります。最善の治療法は通常、心理的支援を行い、患者が心配事や感情を表現できるようにすることです。訓練を受けたソーシャルワーカー、医師、看護師、聖職者が、このような場合に力になることができます。死にゆく患者と家族は、こういった気持ちについて医師に相談する必要があります。そうすることで、うつ病の診断と治療が可能となるからです。多くの場合に治療(通常は抗うつ薬とカウンセリングを併用)が有効で、たとえ人生最後の数週間であっても、残された時間の質を向上させることができるからです。

不安は、通常の心配より強い感情です。心配やおそれが極めて強くなり、日常生活に支障をきたすようになります。情報を知らされていないと感じる、あるいは精神的に打ちひしがれると不安になりますが、介護者に情報や助けを求めることで、不安は軽減します。ストレスがたまっているときに不安を感じやすい人ほど、死期が近づいたときにも不安になりやすいかもしれません。安心させる、薬を飲ませる、心配な気持ちを生産的な活動に振り向けさせるといった、それまでに効果的だった方法が死期を迎えた人にも役立ちます。不安に悩まされている死期の患者はカウンセラーに相談し、必要ならば抗不安薬を服用します。

錯乱と意識不明

重病患者は錯乱を起こしやすい状態にあります。錯乱は、薬や軽い感染症、化学物質の不均衡などによって起こりますが、生活環境が変わっただけで起こる場合もあります。安心させたり、改めて事情を説明することで錯乱は軽減しますが、医師は治療可能な原因が存在している可能性を評価する必要があります。錯乱がひどく、軽い鎮静や介護者の常時付き添いが必要な場合もあります。

錯乱した患者は、死期が近づいていることが分からない場合があり、しばしば錯乱していることにも気づきません。死期が近づくと、錯乱した患者が一時的に明瞭な思考を取り戻すことがあります。こうした出来事は家族にとって大きな意味をもちますが、病状が改善したという誤解を生むこともあります。患者の家族はこうした症状に備えておくべきですが、それが必ず起きるとは思わない方がいいでしょう。

死期が近づいた患者の約半数は、最後の数日間のほとんどを意識不明のまま過ごします。たとえ意識不明でも話が聞こえていると家族が考える場合は、患者が聞いているつもりでお別れを言うのもいいでしょう。意識不明のまま永遠の眠りにつくのは穏やかな最期です。やるべきことをすべてやり終え、患者も家族も心安らかにそのときを迎えられるならなおさらです。

ストレス

穏やかに死を迎えられる人は少数であり、死が差し迫った人と家族のほとんどは、その間、強いストレスを感じます。人と人の間に対立が起こり、患者と家族が最期の日々を安らかに過ごせないとき、死のストレスは特に大きくなります。こうした軋轢は遺族に強い罪悪感を与え、悲しむ気持ちを喪失させることがあり、死に直面した患者には苦悩をもたらします。自宅で死期の患者をケアしている家族は、肉体と精神の両面でストレスを感じることがあります。しかし、一般的に患者と家族のストレスはカウンセリングや短期的な精神療法でいくらか軽減することができます。地域のサービスを利用して、介護者の重荷を軽くできる場合もあります。介護者に鎮静薬が処方されている場合は、控えめかつ短期的な使用にとどめましょう。

パートナーが亡くなると、残された配偶者は、法的問題や経済的問題についての各種の決断や家庭の維持などが負担になって、くじけてしまうことがあります。また老齢のカップルの場合は、片方が死去すると、亡くなった方の支えでそれまで表立っていなかった配偶者の認知障害が発覚することがあります。そうした状況が考えられる場合、友人や家族は死が訪れる前にケアチームにそのことを伝え、必要以上の苦悩や行き詰まりを防ぐためのサポートが得られるようにしておきます。

ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
ここをクリックするとプロフェッショナル版へ移動します
よく一緒に読まれているトピック

おすすめコンテンツ

ソーシャルメディア

TOP