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能力(資格)および無能力

執筆者:

Charles Sabatino

, JD, American Bar Association

最終査読/改訂年月 2018年 7月

歴史的には「無能力(incapacity)」は主に臨床的所見とみなされ,「無資格(incompetency)」は法的所見とみなされた。その違いは,少なくとも用語としては,もはや厳密に認識されてはいない;これらの用語はしばしば互換的に使用されているが,現在ほとんどの州法では「無資格」よりむしろ「無能力」を使用している。現在では,医療に関する決定を下すための臨床的無能力と法的無能力の区別の方が,術語学的により有用である。

医療に関する臨床的および法的能力を有する人々は,医学的に必要なケアの拒否など,たとえその拒否が死亡につながる可能性があるとしても,医療に関する決定を下す権利を有する。この両能力が欠如している人々は,医療にかかわる決定を下すことができない。しかしながら,医師により臨床的能力が欠如しているとみなされた患者が医療上の決定に関する希望を表明した場合は,裁判所がその人物にその決断を下す法的能力も欠如していると裁定しない限り,医師にはその希望を無効とする権限がない。

臨床的能力

医療に関する決定を下すための臨床的能力とは,提案された医療の便益とリスクを理解し,可能な代替手段を理解し,医療に関する決定を下しそれを伝達する能力である。この能力のアセスメントには以下の評価を要する:

  • 医学的因子(例,患者の病状,感覚障害,薬剤の副作用,感情的および精神的問題)

  • 機能的能力(身体的,認知的,および心理学的)

  • 環境因子(例,リスク,支持,能力に対する障害)

適正な医療従事者は,必要に応じてこの種類の能力を判断し,その判断過程を記録する。州法により定義された資格を有する医療従事者は,ほとんど全ての州において事前指示書に関連する州法のもと,これらの判断を下す権限を法的に与えられている。裁判所は,判断自体またはその過程の他の側面において,患者または他の誰かによって異議の申し立てがなされたときにのみ関与する。

臨床的能力は,特定の医療上の決定に対して特異的であり,そのため,その決定にのみ限定される。医療に関する決定を下すために必要とされる臨床的能力のレベルは,その決定の複雑さに依存する。ある程度の能力低下が認められる患者は,かなり重度の認知障害のある患者であっても,直腸診または点滴の留置を許可するか否かなど,単純な医療上の決定を下す十分な能力を有している場合がある。しかしながら,その同じ患者が臨床試験に参加するか否かを決断するための能力には欠く場合がある。

患者を意思決定に関与させるために,可能な試みは全てなされるべきである。能力のある患者の決定を無視すること,または能力のない患者の決定を受け入れることは,非倫理的であり,民事責任のリスクを負うものである。決断を実行に移す上での患者の能力を医師が評価することもまた重要である。例えば,脚を骨折した患者は,帰宅することを決断することはできるが,回復中に自分で身の周りのことをする能力はない場合がある。決定を遂行するために必要な支援を提供することは,ケアの重要な目標となる。

能力は間欠的,変動的で,かつ環境の影響を受ける場合がある。中毒,せん妄,昏睡,重度のうつ病,興奮,または他の障害により能力が欠如している患者は,障害が解消すれば能力を回復しうる。臨床的能力の欠如した患者を治療するための同意を得るには,医療従事者は患者の医療判断代理委任状で指名された代理人または代理権者,もしくは他の法律上の権限を有する委任代理人に問い合わせなければならない(Professional.see page 同意および代理人による意思決定)。応急手当または緊急治療を要する場合(例,急性イベント後の意識喪失患者に対する),および指名された代理人がいないもしくは代理人に接触できない場合は,推定同意の原則(doctrineof presumed consent)が適用される:患者は必要とされるいかなる緊急治療にも同意するものとみなされる。自分自身で決定を下すことができない人のために,緊急医療に関する決断を下す過程が,訴訟に発展することはまれである。

法的能力

法的能力(法的資格[competency]とも呼ばれる)は法律上の状態であり,医療従事者によって決定できない。しかしながら,医療従事者はその評価過程において重要な役割を果たす。米国では,18歳以上で自身が受ける医療について決定を下す能力が法的にあると推定的にみなされる。成人年齢(通常18歳)に達していない人でも法的能力を有するとみなされる場合があり,こうした人を親権から解放された未成年者という。この集団の定義は,州によって様々であるが,一般的には結婚している未成年者,軍隊に属する未成年者,または裁判所判決により親権者からの独立を得た未成年者などが含まれる。

適切な権限をもつ裁判官が,一部または全ての領域の機能に関してある人が法的に無能力であると宣告するまで,その人は法的能力をもち続ける。この宣告は通常,裁判所において後見人制度または保佐人制度を介して下される。法的無能力を宣言するための法的要件は,州によって異なる。しかしながら,典型的には以下のもののいくつかの組合せの立証が必要とされる:

  • 生活に支障を来す状態(例,知的障害,精神障害,認知症または他の脳疾患,薬物の慢性使用)

  • 情報を受け取って評価するまたは決定を下したり伝達したりする認知能力の欠乏

  • 保護的な介入なしでは身体の健康,安全性,または自己管理のための基本的要求を満たす能力がないこと

  • その人物を保護するために後見人または保佐人を付けることが最も限定性の低い代替手段であるという所見

法的能力の低下に関する最も限定性が低い代替手段として,技術的支援の検討および意思決定支援(supported decision-making)などが増えている。意思決定支援は,法定後見人の代替となる手段であり,友人,家族,専門家など,支援者を務める信頼のおける助言者の助けを借りて,障害のある人が自身の権利および意思決定能力を維持できるようにするものである。

医師が個人の法的能力を疑問視する場合,医師は裁判所の判断を求めることがある。医師は,法的能力を判断するための審問で証言または文書の提供を求められる場合がある。

裁判所がある人を法的無能力と宣言するとき,裁判所は,裁判所が指定する範囲の全ての事柄または限定的範囲における事柄のいずれかに関して,その人の代わりに法的拘束力のある決定を下すための後見人または保佐人を指名する。裁判所は,係争中の特定の問題(例,特定の治療に関する決定やその人物のリビングウィルにある特定の指示の意味)に関しても裁定をすることができる。

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