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家族性地中海熱

執筆者:

Apostolos Kontzias

, MD, Stony Brook University School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 2月
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家族性地中海熱は,発熱および腹膜炎発作の反復を特徴とする常染色体劣性遺伝疾患であり,ときに胸膜炎,皮膚病変,および関節炎を,また極めてまれに心膜炎を伴う。腎アミロイドーシスを発症することがあり,ときに腎不全に至ることもある。他の民族集団と比べて,地中海沿岸に遺伝的起源をもつ人々において高頻度でみられる。診断は主として臨床的に行われるが,遺伝子検査も可能である。予防的コルヒチン投与による治療は,ほぼ全例の患者でアミロイドーシスだけでなく急性発作の予防も可能とする。治療を行えば,予後は極めて良好である。

家族性地中海熱(FMF)は地中海沿岸部に遺伝的起源をもつ人々の疾患であり,主にセファルディ系ユダヤ人,北アフリカのアラブ人,アルメニア人,トルコ人,ギリシア人,イタリア人が中心である。しかしながら,他の集団(例,アシュケナージ系ユダヤ人,キューバ人,日本人)の症例も十分にみられることから,祖先のみを基準にこの疾患を除外してはならない。症例の最高50%に本疾患の家族歴があり,通常は同胞が含まれる。

病因

FMFは,16番染色体短腕にあるMEFV遺伝子の変異が原因であり,常染色体劣性の形式で遺伝する。MEFV遺伝子は正常であれば末梢血中好中球に発現するピリンというタンパクをコードしている。このタンパクはおそらく,好中球の活性と走化性を阻害することにより炎症反応の抑制に働いていると推測される。遺伝子変異によってピリン分子に欠陥が生じ,仮説では,通常であれば正常なピリンによって抑制される軽微で未知の炎症誘発因子が,この変異したピリンでは抑制されないと考えられている。臨床的な続発症は腹腔および他の部位における好中球優位の炎症の自然的な発生である。

症状と徴候

家族性地中海熱の発症は通常5~15歳であるが,これよりはるかに早いことも遅いこともあり,乳児期の場合すらある。発作の反復に規則性はない。発作は通常,24~72時間続くが,それ以上続く場合もある。発作頻度は週2回から年1回までである(2~6週毎に1回が最も多い)。重症度および頻度は,妊娠中およびアミロイドーシス患者で低下する傾向がある。自然寛解が何年も続くことがある。

40℃にも及ぶ発熱が主な臨床像であり,通常は腹膜炎を伴う。患者の95%が腹痛(通常4分の1分画に始まり,腹部全体に広がる)を覚え,その重症度は発作毎に異なる。発作ピーク時には腸音減弱,腹部膨隆,筋性防御,反跳痛が起こる可能性が高く,身体診察では内臓穿孔との鑑別ができない。その結果,一部の患者に正しい診断がつく前に緊急開腹手術が施行されている。横隔膜病変を伴う場合は,胸郭固定と片側または両側肩部の疼痛が生じることがある。

FMFのその他の症状として,急性胸膜炎(30%),関節炎(25%,通常は膝関節,足関節,股関節が侵される),下腿の丹毒様発疹,精巣鞘膜の炎症による陰嚢の腫脹および疼痛などがある。非常にまれながら心膜炎も発生する。FMFの胸膜,滑膜,皮膚の症状は集団毎にその頻度が異なり,米国では他地域と比べ遭遇する頻度は低い。

急性発作中の重度の症状にもかかわらず,患者の大半は速やかに回復し,次の発作までは無症状の状態が維持される。

家族性地中海熱の合併症

最も重大な長期合併症は次のものである:

  • 腎臓へのアミロイドタンパクの沈着による慢性腎不全

アミロイドはまた,消化管,肝臓,脾臓,心臓,精巣,甲状腺にも沈着しうる。

腹腔骨盤癒着が形成され受精を妨げるため,FMFによって女性の約3分の1で不妊または自然流産が生じる。FMFの女性では妊娠の約20~30%は胎児死亡に至る。

診断

  • 臨床的評価

  • 遺伝子検査

家族性地中海熱の診断は主として臨床的に行われるが,遺伝子検査が利用可能であり,これは非典型例の評価において特に有用である。しかし現在の遺伝子検査は絶対確実なものではなく,表現型では間違いなくFMFである患者の一部で,変異遺伝子が1つしかない,もしくはときに明らかなピリン変異がないこともある。

非特異的所見には,好中球優位の白血球増多,赤沈亢進,C反応性タンパクおよびフィブリノーゲンの上昇などがある。タンパクの尿中排泄量が0.5g/24時を超える場合,腎アミロイドーシスが示唆される。

鑑別診断としては,急性間欠性ポルフィリン症,腹部発作を伴う遺伝性血管性浮腫,再発性膵炎,その他の遺伝性回帰熱などがある。

治療

  • コルヒチン

コルヒチンの0.6mg,経口,1日2回の予防投与(1日4回投与を必要とする症例や1日1回でよい症例もある)により,約85%の患者に完全寛解または明らかな改善がもたらされる。発作または無症状の炎症が持続する場合は,コルヒチンを増量すべきである。徐々に発症し発作回数の少ない患者では,初発症状が出るまでコルヒチン投与を控えてもよく,その後は0.6mg,経口,1時間毎4時間で開始し,2時間毎4時間,12時間毎48時間の投与とする。発作のピーク時にコルヒチンを開始しても,有益となる可能性は低い。効果的な予防効果を得るためには,小児患者でも成人量が必要となることがしばしばある。コルヒチンの予防投与が広く普及したことにより,アミロイドーシスとその結果として起こる腎不全の発生数は激減した。

コルヒチンによって女性患者の不妊や流産のリスクが増大することはなく,また妊娠中の服用によって催奇形性のある事象のリスクが上昇することもない。アドヒアランス不良のためにコルヒチンへの反応がみられないことがしばしばあるが,反応性の低さと末梢血中単球におけるコルヒチン濃度の低下の間に相関性があることも指摘されている。反応がみられない患者への代替療法には,anakinra100mg,1日1回皮下投与,rilonacept 2.2mg/kg週1回皮下投与,またはカナキヌマブ150mg,4週毎に皮下投与などがある(1)。

ときに疼痛緩和のためにオピオイドが必要となるが,依存を回避するため慎重に用いなければならない。

治療に関する参考文献

  • 1.Ozen S, Demirkaya E, Erer B, et al: EULAR recommendations for the management of familial Mediterranean fever. Ann Rheum Dis 75(4):644–651, 2016. doi: 10.1136/annrheumdis-2015-208690.

要点

  • 家族性地中海熱は,好中球における炎症反応の調節を助けるタンパクの常染色体劣性変異によって起こる。

  • 地中海沿岸に遺伝的起源のある人々でより高頻度にみられる(しかし必ずというわけではない)。

  • 発熱,腹痛,ならびにときに胸膜炎,関節炎,および発疹など他の症状の短期発作がみられる。

  • 腎アミロイドーシス(ときに腎不全を引き起こす)が最も頻度の高い合併症であるが,コルヒチン予防投与によりアミロイドーシス発生を防ぎうる。

  • 臨床的に診断するが,非典型例では遺伝子検査を考慮する。

  • コルヒチン連日投与によって,ほとんどの患者で発作をかなり予防できるが,anakinrarilonacept,またはカナキヌマブなどの免疫調節薬を必要とする患者も少数いる。

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