身体的成長には,十分な身長および適切な体重の達成,ならびに全器官の大きさの増加(リンパ組織は例外であり,大きさは減少する)が含まれる。出生から青年期までの成長には,2つの異なる段階がある:
第1段階(出生から1~2歳頃まで):これは急速な成長がみられる段階であるが,その速度はその期間を通して次第に減少する。
第2段階(2歳頃から思春期発来まで):この段階では,毎年比較的一定した成長を示す。
思春期とは,小児から成人へと身体的成熟を遂げる過程である。青年期とは1つの年齢層を定義するものであり,思春期は青年期に起こる(青年の身体的成長および性的成熟 青年の身体的成長および性的成熟 青年期(通常は10歳から10代後期または20代初期)に,男児および女児とも成人の身長および体重に達し,思春期を経験する。男児については, 性分化,アドレナーキ(adrenarche),および思春期を参照のこと;女児については, 思春期を参照のこと。このような変化の起こる時期および速さは様々であり,遺伝と環境の両方の影響を受ける。 2歳以降では,CDCの成長曲線を用いて成長パラメータを記録する... さらに読む を参照)。思春期には2回目の成長スパートが起こるが, 男児 性分化,アドレナーキ,および思春期 男性の性発達とホルモン機能は,中枢神経系によって調節される視床下部‐下垂体‐精巣系が介在する複雑なフィードバック回路に依存している。 男性性機能障害は, 性腺機能低下症,神経血管疾患,薬剤,その他多くの疾患に続発することがある。 視床下部ではゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が産生され,60~120分毎にパルス状に分泌される。その標的... さらに読む および 女児 思春期 女性の生殖系は,視床下部,下垂体前葉,卵巣間でのホルモンの相互作用により調節されている。 視床下部は,黄体形成ホルモン放出ホルモンとしても知られるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)という小ペプチドを分泌する。 GnRHは下垂体前葉の特殊な細胞(ゴナドトロピン産生細胞)からのゴナドトロピン(... さらに読む ではその影響にわずかな違いがある。
出生から2歳までは,全ての成長パラメータをWHOの標準成長曲線を用いて記録することが推奨される。2歳以降では,CDCの成長曲線を用いて成長パラメータを記録する(1 参考文献 身体的成長には,十分な身長および適切な体重の達成,ならびに全器官の大きさの増加(リンパ組織は例外であり,大きさは減少する)が含まれる。出生から青年期までの成長には,2つの異なる段階がある: 第1段階(出生から1~2歳頃まで):これは急速な成長がみられる段階であるが,その速度はその期間を通して次第に減少する。 第2段階(2歳頃から思春期発来まで):この段階では,毎年比較的一定した成長を示す。... さらに読む )。
(発育不良 発育不良(failure to thrive[FTT]) 発育不良とは,年齢と性別に応じた体重に対して一貫して3~5パーセンタイル未満にあるか,体重が進行性に減少し3~5パーセンタイル未満になる,または短期間に2つの主要な成長指標のパーセンタイル順位が降下することである。医学的原因が明らかな場合もあれば,環境因子が関与する場合もある。いずれのタイプも不十分な栄養と関係している。治療は適切な栄養状態へ戻すことを目標とする。 病因が何であれ,発育不良(FTT)の生理学的基礎は... さらに読む および 小児健診[Well Child]による健康指導 小児健診による健康指導 小児健診の目的は以下の通りである: 健康の促進 定期予防接種および啓発による疾病予防 疾病の早期発見と治療 小児の情緒的および知的発達が最適なものとなるよう親を指導すること さらに読む も参照のこと。)
参考文献
1.Grummer-Strawn LM, Reinold C, Krebs NF, Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Use of World Health Organization and CDC growth charts for children aged 0–59 months in the United States.MMWR Recomm Rep 10(RR-9):1–15, 2010.Clarification and additional information.MMWR Recomm Rep 59(36): 1184, 2010.
身長
まだ立つことができない小児では頂踵長を測定し,立てるようになった小児は身長を測定する。一般に,正期産児における頂踵長は生後5カ月までに約30%の増加,生後12カ月までに50%を超える増加がみられ,乳児は生後1年目に25cm成長し,5歳の時点での身長は,出生時のおよそ2倍になる。ほとんどの男児では2歳頃までに成人の半分の身長に達し,ほとんどの女児では生後19カ月で身長が成人の約半分に達する。
身長の変化率(身長成長速度)は,時期特異的な身長測定よりも,感度の高い成長の指標である。一般的に,正期産の健康な乳児および小児では,出生から生後6カ月までの間に約2.5cm/月,生後7~12カ月では1.3cm/月,生後12カ月から10歳までの間に約7.6cm/年の速度で成長する。
生後12カ月までは身長成長速度は様々であるが,これは一部には周産期の要因(例, 未熟性 早産児 在胎37週未満で出生した児は早産児とみなされる。 未熟性は出生時点での 在胎期間により定義される。かつては,体重2.5kg未満の新生児であればいずれも未熟児と呼ばれていた。早産児は小さい傾向にあるが,多くの体重2.5kg未満の乳児は成熟している場合や 過期産児および過熟児である場合,および 在胎不当過小である場合もあるため,この体重に基づいた定義は不適切である;このような新生児は外観も異なれば,抱える問題も異なる。... さらに読む )によるものである。生後12カ月以降の身長はほぼ遺伝的に決定されており,身長成長速度は思春期までほぼ一定に保たれる;そのため小児の身長を友人と比較した場合に,差が一定となる傾向がある。
一部の 在胎不当過小児 在胎不当過小児(SGA児) 体重が在胎期間に対して10パーセンタイル未満の乳児は,在胎不当過小(small for gestational age)に分類される。合併症には,周産期仮死,胎便吸引,赤血球増多症,および低血糖がある。 在胎期間は,大まかには,最後の正常な月経がみられた日から分娩日までの週数として定義されている。より正確には,在胎期間は受胎日の14日前から分娩日までの期間を指す。在胎期間は実際の胎齢とは異なるが,産科医および新生児専門医が胎児の成熟を議... さらに読む (small-for-gestational-age infant)では,在胎期間相応の大きさである乳児と比べ,生涯を通じて低身長となる傾向がある。乳児期から小児期の間は,身長および成長速度に男女差はあまりみられない。
四肢は体幹より成長が速く,このため相対的な割合が次第に変化する;[頭頂から恥骨までの長さ]/[恥骨から踵までの長さ]の比は,出生時で1.7,生後12カ月で1.5,5歳で1.2,7歳以降で1.0となる。
体重
体重も同様のパターンをたどる。正期産児は,一般に分娩後数日のうちに5~8%の体重減少がみられるが,2週間以内に出生体重に戻る。その後生後3カ月までは14~28g/日,生後3カ月から12カ月の間に4000g増加し,生後5カ月までに出生体重の2倍,生後12カ月までに3倍,2歳までにほぼ4倍の体重になる。2歳から思春期までの間は,体重は2kg/年で増加する。近年増加している 小児肥満 小児 肥満とは,体重が過度に重い状態であり,BMI(body mass index)が30kg/m2以上である場合と定義されている。合併症として,心血管疾患(特に過剰な腹部脂肪のある人),糖尿病,特定のがん,胆石症,脂肪肝,肝硬変,変形性関節症,男女の生殖障害,精神障害,およびBMIが35以上の人での若年死などがある。診断... さらに読む では(NHANESによる肥満の有病率の変遷 NHANESによる肥満の有病率の変遷 の表を参照),非常に年少の小児においてさえ,これを顕著に上回る体重増加が認められている。男児は女児に比べ思春期の前により長い成長期間があり,思春期の成長スパートの期間における最大成長速度の増加や,青年期の成長スパートがより長いなどの理由から,成長終了時点で男児は概して女児より体重が重く身長が高くなる。
頭囲
頭囲は脳の大きさを反映し,36カ月まではルーチンに測定される。出生時,脳の大きさは成人の25%であり,頭囲は平均35cmである。頭囲は生後1年目に平均1cm/月の割合で増加する;最初の8カ月は成長速度が比較的速く,生後12カ月までには脳の出生後の成長の半分が完了し,成人の脳の75%の大きさに達する。頭囲は次の2年間で3.5 cm増加し,脳は3歳までに成人の大きさの80%,7歳までに90%に達する。
身体組成
身体組成(体脂肪と水分量の比率)は変化し, 薬物の分布容積 分布 薬物動態とは,薬物の吸収,分布,代謝,および排泄の過程を意味する。薬物動態には年齢に関連した重要な変動がある。 消化管からの吸収は以下のものから影響を受ける: 胃酸分泌 胆汁酸塩の形成 胃排出時間 さらに読む に影響する。脂肪の比率は,出生時の13%から生後12カ月までに20~25%へと急増するため,大抵の乳児はまるまる太った外観をしている。その後は青年期前までゆっくりと低下し続け,体脂肪率は約13%に戻る。思春期が始まるまで再びゆっくりと上昇するが,思春期には特に男児においては再び低下に転じることがある。思春期以降の体脂肪率は,女児では一般に一定であるが,男児ではやや低下する傾向がある。
体水分量は体重に対する割合として測定し,出生時の70%から,生後12カ月の時点で61%(成人とほぼ同じ割合)まで低下する。この変化は,基本的には細胞外液が体重の45%から28%に低下することによる。細胞内液は比較的一定に保たれる。生後12カ月以降は,細胞外液はゆっくりかつ様々な速度で成人レベルである約20%まで低下し,細胞内液は成人レベルである約40%に上昇する。乳児は,体水分量が相対的に多く,体水分の代謝回転が速く,体表面からの喪失量が比較的大きい(相対的に体表面積が大きいことによる)ため,より年長の小児や成人に比べて容易に脱水状態に陥りやすい。
歯の萌出
歯の萌出時期は様々であり( Professional.see table 歯の萌出時期 歯の萌出時期 ),その主たる原因は遺伝因子にある。平均的には,正常な乳児では生後12カ月までに6本,生後18カ月までに12本,2歳までに16本,そして2歳半までに全ての歯(20本)が生えそろい,5歳から13歳の間に乳歯が永久歯に生えかわる。乳歯の萌出に男女差はないが,永久歯は女児の方がより早期に生える傾向がある。家族性パターンにより,または くる病 低リン血症性くる病 低リン血症性くる病とは,低リン血症,小腸でのカルシウム吸収不良,およびビタミンD不応性のくる病または骨軟化症を特徴とする疾患である。通常は遺伝性である。症状は骨痛,骨折,および成長障害である。診断はリン,アルカリホスファターゼ,および1,25-ジヒドロキシビタミンD3の血清中濃度による。治療法はリンとカルシトリオールの経口投与であり,X連鎖性低リン血症に対してはブロスマブを投与する。... さらに読む や 下垂体機能低下症 小児の成長ホルモン欠損症 成長ホルモン欠損症は,小児において最もよくみられる下垂体ホルモン欠損症であり,単独欠損の場合もあれば,他の下垂体ホルモンの欠損が合併することもある。成長ホルモン欠損症は,一般に成長の異常な遅れおよび正常な均整が保たれた状態での低身長をもたらす。診断では,下垂体ホルモン測定および下垂体の構造異常または脳腫瘍を検出するためのCTまたはMRIを行う。治療では通常,特定のホルモンの補充および原因となる腫瘍があればその除去を行う。... さらに読む , 甲状腺機能低下症 乳児および小児における甲状腺機能低下症 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。乳児の症状としては,哺乳不良や発育不全などがある;児童および青年の症状は成人の症状と類似するが,それらに加えて発育不全,思春期遅発,またはこの両方もみられる。診断は甲状腺機能の検査(例,血清サイロキシン,甲状腺刺激ホルモン)による。治療は甲状腺ホルモンの補充による。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 乳児および幼児における甲状腺機能低下症は,先天性または後天性の場合がある。... さらに読む , ダウン症候群 ダウン症候群(21トリソミー) ダウン症候群は21番染色体の異常であり, 知的障害,小頭症,低身長,および特徴的顔貌を引き起こす。診断は身体奇形と発達異常から示唆され,細胞遺伝学的検査によって確定される。管理方針は具体的な臨床像および奇形に応じて異なる。 ( 染色体異常症の概要も参照のこと。) 出生児における全体の発生率は約1/700であり,母体年齢が上がるにつれてリスクが徐々に増大する。母体年齢別の出生児におけるリスクは,20歳で1/2000,35歳で1/365,4... さらに読む
などの状態により,歯の萌出に遅延が生じる場合がある。過剰歯や先天性欠損歯は,おそらく正常範囲内の変異である。
歯の同定
ここに示した番号による命名法は米国で最も一般的に用いられる方法である。 ![]() |