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大動脈縮窄症

執筆者:

Jeanne Marie Baffa

, MD, Sidney Kimmel Medical College at Thomas Jefferson University

最終査読/改訂年月 2016年 11月

心血管系の先天異常の概要も参照のこと。)

大動脈縮窄症は,大動脈内腔の限局的な狭小化によって上肢高血圧,左室肥大,ならびに腹部臓器および下肢の灌流不良が生じる病態である。症状は奇形の重症度に応じて異なり,頭痛や胸痛,四肢冷感,疲労,跛行などから,劇症性心不全やショックに至るまで様々である。縮窄部上で弱い血管雑音が聴取されることがある。診断は心エコー検査またはCTもしくはMR血管造影による。治療法は,ステント留置を伴うバルーン血管形成術,または外科的修復である。

大動脈縮窄症は,先天性心奇形の6~8%を占める。ターナー症候群の患者では10~20%に発生する。男女比は2:1である。

病態生理

大動脈縮窄は通常,胸部大動脈近位部のうち左鎖骨下動脈を少し越えた動脈管開口部より手前の位置で発生する。腹部大動脈の縮窄はまれである。したがって,分娩前と動脈管が閉鎖するまでの間は,心拍出量の大部分が動脈管に流入して縮窄部を迂回する。大動脈縮窄は単独で発生することもあれば,他の先天奇形(例,大動脈二尖弁,心室中隔欠損症大動脈弁狭窄症動脈管開存症,僧帽弁疾患,脳内動脈瘤)を合併することもある。

生理学的な影響として,次の2つの現象がみられる:

  • 縮窄部より近位の動脈循環における圧負荷

  • 縮窄部より遠位での血流低下

圧負荷により,左室肥大と脳を含む上半身の高血圧が生じる。

血流低下により,腹部臓器と下肢が障害される。腸管の灌流不良により,腸内微生物による敗血症のリスクが増大する。

最終的には圧較差の影響により,肋間動脈,内胸動脈,肩甲動脈,その他の動脈を介した腹部および下肢への側副循環が増加する。

縮窄を無治療で放置すると,成人期になって左室肥大,心不全,側副血管形成,細菌性心内膜炎,頭蓋内出血,高血圧性脳症,および高血圧性心血管疾患を来す可能性がある。無治療の患者では,後年になって,あるいは妊娠時の合併症として大動脈解離または大動脈破裂を起こすリスクが高くなる。解離または破裂が最も起きやすい部位は上行大動脈である。このリスクは縮窄の直接的な結果ではなく,大動脈二尖弁とそれに合併する大動脈障害に関連している可能性が高いことが,最新のデータから示唆されている。

症状と徴候

縮窄が有意な場合は,生後7~10日で腎機能不全(乏尿または無尿)を伴う循環性ショックと代謝性アシドーシスが発生することがあり,さらに敗血症など他の全身性疾患と類似の臨床像を呈することがある。重篤な(高度)縮窄を有する乳児では,動脈管が収縮または閉鎖すると急激に状態が悪化する可能性が高い。

比較的軽度の縮窄であれば,乳児期は無症状で経過することもある。幼児期になると,軽微な症状(例,頭痛,胸痛,疲労,身体運動時の跛行)が出現するようになる。しばしば上肢高血圧がみられるが,新生児期を過ぎてからの心不全の発症はまれである。まれに,脳内動脈瘤の破裂から,くも膜下または脳内出血を来すことがある。

典型的な身体所見としては,上肢の脈拍増強と高血圧,大腿動脈拍動の減弱または遅延,上肢と下肢の血圧差(下肢の動脈圧が低値または測定不能となる)などがある。

しばしば2/6~3/6度の収縮期駆出性雑音が胸骨左縁上部と左腋窩で聴取されるほか,ときに左側肩甲骨間部で最も著明となる( 心雑音の強度)。大動脈二尖弁を合併している場合は,心尖部で収縮期駆出音が聴取される。また拡張した肋間側副動脈により,肋間部に連続性雑音が生じることもある。

女児の場合は,足のリンパ浮腫,翼状頸,楯状胸,外反肘,乳頭間離開などを来す先天性疾患であるターナー症候群を有している場合がある。

診断

  • 胸部X線および心電図

  • 心エコー検査またはCTもしくはMR血管造影

診断は診察(全四肢の血圧測定を含む)で示唆され,胸部X線および心電図により裏付けを得て,カラードプラ法による2次元心エコー検査または(心エコー検査で至適な観察部位がない比較的年長の患児では)CTもしくはMR血管造影によって確定する。

胸部X線では,縮窄部が左上縦隔陰影内に「3の字」陰影として描出される。心不全を併発しない限り,心臓の大きさは正常である。拡張した肋間側副動脈によって第3~第8肋骨が侵蝕されることで,肋骨切痕(rib notching)が生じるが,これは5歳まではほとんど観察できない。

心電図では,通常は左室肥大を認めるが,正常のこともある。新生児および小柄な乳児の心電図では,左室肥大ではなく,通常は右室肥大を認めるの。

治療

  • 症状がみられる新生児には,プロスタグランジンE1の点滴

  • 高血圧に対してβ遮断薬

  • 外科的修復またはバルーン血管形成術(ときにステント留置を併用)

症状がみられる新生児には速やかに治療を行う。症状のない乳児では,根治術を施行するまで経過をモニタリングする。

縮窄の内科的管理

症状がみられる新生児では,プロスタグランジンE1の点滴(0.01~0.10μg/kg/分―最小有効量まで漸増)により心肺の安定化を図り,収縮した動脈管を再開通させることが必要となる。動脈管と大動脈膨大部を開通させることで,肺動脈血が大動脈の閉塞部を迂回して動脈管に向かう結果,下行大動脈の血流量が増加し,全身の灌流が改善され,代謝性アシドーシスが改善されることにより,いくらかの症状緩和が得られる。

利尿薬は心不全症状の治療に役立つ可能性がある。強心薬(例,ミルリノン,ドパミン,ドブタミン)の静脈内投与は,特定の状況(例,有意な左室機能障害を有する心不全の乳児)で有用となりうる。

緊急の状態でなければ,高血圧のある患者はβ遮断薬で治療してもよい;ACE阻害薬は腎機能に悪影響を及ぼす可能性がある。縮窄の修復後も高血圧が持続する場合や,修復から数年後に高血圧が発生する場合もあるが,そのような場合はβ遮断薬,ACE阻害薬,アンジオテンシンII受容体拮抗薬,またはカルシウム拮抗薬で治療可能である。

新生児に酸素を投与すると,肺血管抵抗の低下により肺血流量が増加して,その分だけ体血流が減少する可能性があるため,新生児への酸素投与は慎重に行うべきである。

外科的管理

望ましい根治的治療法については議論がある。バルーン血管形成術(単独またはステント留置と併用)を好んで選択する施設もあるが,ほとんどの施設では外科的修復が選択され,バルーンによる手術は,外科的修復後の再縮窄に対する治療や児童期または青年期における孤立性の縮窄に対する一次治療でのみ施行されている。バルーン血管形成術の初回成功率は,原発性縮窄の患者で約73%,縮窄再発の患者で約80%である。その後のカテーテル処置により,患児の成長に合わせてステントを拡張することができる。

外科的な選択肢としては,切除と端々吻合,パッチによる大動脈形成術,鎖骨下動脈フラップ法による大動脈形成などがある。生後早期に症状が出現する重度の縮窄例では,しばしば横行大動脈および大動脈峡部に低形成があり,大動脈のこの領域を外科的に拡張する必要がある。

手術手技の選択は解剖学的形態と施設毎の選好に依存する。手術死亡率は,症状のある乳児で5%未満,より年長の小児で1%未満である。縮窄の残存はよくみられる(6~33%)。まれに,術中の大動脈遮断のために対麻痺が発生することがある。

心内膜炎予防は,術前には必要ないが,修復後最初の6カ月間のみ必須である。

要点

  • 大動脈縮窄は,大動脈内腔の限局的な狭小化であり,典型的には胸部大動脈近位部のうち左鎖骨下動脈を少し越えた動脈管開口部より手前の位置で発生する。

  • 臨床像は縮窄の重症度に依存するが,典型的には縮窄部より近位で圧負荷が生ることで,心不全と縮窄部より遠位側の血流低下を来す。

  • 重度の縮窄では,新生児期にアシドーシス,腎機能不全,およびショックが生じうるが,軽度の縮窄は,青年期または成人期に高血圧に対する評価を受けるまで明らかにならない場合がある。

  • 典型的には上肢と下肢の間で血圧差が認められるほか,2/6~3/6度の収縮期駆出性雑音が聴取され,ときに左肩甲骨間部で最も著明となる。

  • 症状がみられる新生児には,収縮した動脈管を再開通させるためにプロスタグランジンE1を点滴で投与する。

  • 外科手術またはバルーン血管形成術(単独またはステント留置と併用)により縮窄部を修復する。

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