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小児の成長ホルモン欠損症

(下垂体性低身長症)

執筆者:

Andrew Calabria

, MD, The Children's Hospital of Philadelphia

レビュー/改訂 2020年 7月
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成長ホルモン欠損症は,小児において最もよくみられる下垂体ホルモン欠損症であり,単独欠損の場合もあれば,他の下垂体ホルモンの欠損が合併することもある。成長ホルモン欠損症は,一般に成長の異常な遅れおよび正常な均整が保たれた状態での低身長をもたらす。診断では,下垂体ホルモン測定および下垂体の構造異常または脳腫瘍を検出するためのCTまたはMRIを行う。治療では通常,特定のホルモンの補充および原因となる腫瘍があればその除去を行う。

汎下垂体機能低下症 汎下垂体機能低下症 汎下垂体機能低下症は,下垂体前葉機能の部分的または完全な喪失により内分泌機能が低下して生じる症候群である。欠乏しているホルモンによって多様な臨床的特徴が生じる。診断には,画像検査,ならびに下垂体ホルモンの基礎値および様々な誘発刺激後の値の測定を要する。治療は原因により異なるが,一般に腫瘍切除およびホルモン補充療法が行われる。 (下垂体の構造および機能,ならびに視床下部と下垂体との関連については... さらに読む を伴う成長ホルモン欠損症患者は,他の下垂体ホルモン(例,卵胞刺激ホルモン[FSH],黄体形成ホルモン[LH],副腎皮質刺激ホルモン[ACTH],甲状腺刺激ホルモン[TSH],抗利尿ホルモン[ADH])の欠乏が1つ以上みられる。下垂体機能低下症は,原発性(下垂体疾患)のこともあれば,下垂体前葉ホルモン(GH,FSH,LH,ACTH,TSH)の産生を制御する特定の視床下部放出ホルモンの分泌阻害に続発することもある。

病因

成長ホルモン(GH)欠損症は単独の場合もあれば,汎下垂体機能低下症を合併することもある。いずれの場合も,成長ホルモン欠損症は後天性または先天性(遺伝性の遺伝子異常に起因するものなど)である。まれに,GHが欠乏しているわけではなくGH受容体の異常(GH不応症)のことがある。

成長ホルモン単独欠損症は,小児の1/4000~1/10,000に発生すると推定される。通常は特発性であるが,患者の25%に同定可能な病因がある。先天的原因として,GH放出ホルモン受容体の異常,GH1遺伝子異常,および特定の中枢神経系奇形などがある。後天的原因として,治療目的での中枢神経系への放射線照射(高線量照射によって汎下垂体機能低下症が起こりうる), 髄膜炎 髄膜炎の概要 髄膜炎は髄膜および,くも膜下腔の炎症である。感染症,その他の疾患,または薬剤への反応によって起こりうる。重症度および急性度は様々である。典型的な所見には,頭痛,発熱,項部硬直などがある。診断は髄液検査による。治療は適応に応じて抗菌薬を投与する他に,補助的手段などがある。 ( 脳感染症に関する序論および... さらに読む ,組織球症,および脳損傷などがある。脊柱の放射線照射は,予防目的であれ治療目的であれ,椎骨の成長能をさらに障害し身長の伸びをさらに低下させる。

汎下垂体機能低下症には,下垂体細胞に影響を与える遺伝性または散発性の変異が関与する遺伝学的原因がみられる。そのような症例では,他の器官系,特に 口蓋裂 口唇裂および口蓋裂 口唇裂,口唇口蓋裂,および単独の口蓋裂を総称して,口腔裂と呼ぶ。口腔裂は最も頻度の高い頭頸部先天奇形であり,全体での有病率は出生1000人当たり2.1例である。環境因子と遺伝因子の両方が原因として推定されている。出生前の母親による喫煙および飲酒によってリスクが増大する。罹患児が1人いると,2人目の罹患リスクが高くなる。このリスクは,受胎前から第1トリメスターにかけて葉酸を摂取することで低減できる。... さらに読む 口唇裂および口蓋裂 または 中隔視神経形成異常症 中隔視神経形成異常症 中隔視神経形成異常症は,胎生1カ月目の終盤にかけて発生する脳前部の奇形であり,視神経低形成,透明中隔(左右の側脳室前角を隔てる膜)の欠損,下垂体機能障害などを引き起こす。 原因は複数考えられるが,中隔視神経形成異常症の患児の一部で特定遺伝子(HESX1)の異常が発見されている。 中隔視神経形成異常症の症状としては,片眼または両眼の視力低下,眼振,斜視,内... さらに読む 中隔視神経形成異常症 (透明中隔の欠如,視神経萎縮,および下垂体機能低下症を伴う)などの正中線欠損(midline defect)がみられることもある。汎下垂体機能低下症は,視床下部または下垂体を侵襲する多くの種類の病変により後天的に生じることがある(視床下部の病変は放出ホルモンの分泌を阻害する);例として, 腫瘍 下垂体腫瘍 大半の下垂体腫瘍は腺腫である。症状としては,頭痛や内分泌障害などがあり,内分泌障害は腫瘍によるホルモンの産生またはホルモン産生組織の破壊によって生じる。診断はMRIによる。治療法としては,内分泌障害がある場合のその是正,手術,放射線療法,ドパミン作動薬などがある。 ( 下垂体病変も参照のこと。) 下垂体および鞍上部に生じる腫瘍の大半は下垂体腺腫である。まれに下垂体腫瘍が癌腫であることがある。髄膜腫,頭蓋咽頭腫,転移性腫瘍,および類皮嚢胞... さらに読む 下垂体腫瘍 (例,頭蓋咽頭腫が最も多い),感染症(例, 結核 結核 結核は,しばしば初感染から一定期間の潜伏期を経て発症する慢性進行性の抗酸菌感染症である。結核は肺を侵すことが最も多い。症状としては,湿性咳嗽,発熱,体重減少,倦怠感などがある。診断は喀痰の塗抹および培養によることが最も多いが,分子生物学に基づく迅速診断検査の利用も増えてきている。治療では複数の抗菌薬を少なくとも6カ月間投与する。... さらに読む 結核 トキソプラズマ症 先天性トキソプラズマ症 先天性トキソプラズマ症は,Toxoplasma gondiiの経胎盤感染によって引き起こされる。みられることのある臨床像は,未熟性,子宮内胎児発育不全,黄疸,肝脾腫,心筋炎,肺炎,発疹,脈絡網膜炎,水頭症,頭蓋内石灰化,小頭症,痙攣である。診断は血清学的検査またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査による。治療はピリメタミン,スルファジアジン,およびロイコボリンによる。... さらに読む 先天性トキソプラズマ症 ,髄膜炎),および浸潤性疾患などがある。骨または頭蓋の溶解性病変と尿崩症との組合せは ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症 ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)は,臓器へ局所性またはびまん性で浸潤した樹状単核球の増殖性疾患である。ほとんどの症例は,小児にみられる。症状として,肺浸潤,骨病変,発疹のほか,肝臓,造血,内分泌の機能障害がみられる場合がある。診断は生検に基づく。予後不良の予測因子として,年齢2歳未満と播種があり,特に造血系,肝臓,脾臓,またはこれら複数の部位への播種が重要である。治療法としては,支持療法に加え,化学療法または病変の範囲により適応とな... さらに読む ランゲルハンス細胞組織球症 を示唆する。

症状と徴候

成長ホルモン欠損症の臨床像は患者の年齢,基礎にある病因,および欠乏している特異的なホルモンによって異なる。

成長ホルモン欠損症自体は通常,発育不全を示し,ときに歯の発育遅延を伴う。身長は3パーセンタイル未満で,年間成長速度は4歳までが6cm未満,4~8歳が5cm未満,思春期前が4cm未満である。下垂体機能低下症の小児では,小柄ながら上半身と下半身の正常な均整が保たれている。骨年齢判定により評価される骨格の成熟は暦年齢よりも2年以上遅れている。

基礎にある欠乏に応じて他の異常もみられ,また思春期発達が遅れるかまたはみられないことがある。体重の増加が成長と不釣り合いであり,そのため相対的肥満となる場合がある。下垂体または視床下部の先天異常を有する新生児は,低血糖(より年長の小児でも発生),高ビリルビン血症,正中線欠損(例,口蓋裂),または小陰茎,および他の内分泌腺機能不全の症状がみられる可能性がある。

診断

  • 成長の基準および他の病歴などの,臨床的評価

  • 画像検査

  • インスリン様成長因子1(IGF-1)値およびIGF結合タンパク質3(IGFBP-3)値

  • 通常,誘発試験により確定

  • 他の下垂体ホルモンの評価および発育不良の他の原因の評価

成長ホルモン欠損症診断の現在のコンセンサスガイドラインでは,成長基準(成長曲線),病歴,臨床検査および画像検査結果から総合的に行うことが求められている。

成長を評価する;全ての小児で身長および体重の発育データを成長曲線上に記入すべきである(成長学的評価)。(0~2歳児では世界保健機関[World Health Organization:WHO]のGrowth Chartを参照のこと;2歳以上の小児では米国疾病予防管理センター[Centers for Disease Control and Prevention:CDC]のGrowth Chartを参照のこと。)

IGF-1およびIGFBP-3値の測定によってGH/IGF-1軸の評価を始める。IGF-1はGHの活性を反映し,IGFBP-3はIGFペプチドの主な担体である。GH分泌は拍動性で,濃度が極めて変動しやすく解釈が困難であるため,IGF-1およびIGFBP-3の値を測定する。

IGF-1値は年齢によって異なるため,暦年齢ではなく骨年齢と比較して解釈すべきである。乳児期から小児期早期(5歳まで)にかけて,IGF-1値は最も低くなるため,この年齢群では正常範囲内と正常範囲未満が確実に識別されることはない。しかしIGFBP-3はIGF-1と違い,低栄養の影響をあまり受けず,若年の小児で正常範囲内と正常範囲未満とを識別することができる。思春期にはIGF-1値が上昇するため,IGF-1濃度が正常範囲内であればGH欠損症の除外に役立つ。より年長の小児でIGF-1が低ければGH欠損症が示唆される;しかし,IGF-1値は,GH欠損症以外の病態(例,心理社会的剥奪, 低栄養 評価 低栄養は栄養障害の一種である。(栄養障害には栄養過多も含まれる。)低栄養は,栄養素の不十分な摂取,吸収不良,代謝障害,下痢による栄養素の喪失,または栄養必要量の増大(がんや感染症などで起こる)に起因する。低栄養は段階的に進行する;食欲不振による場合にゆっくりと発生することもあれば,ときにがん関連の急速に進行する悪液質による場合のように非常... さらに読む セリアック病 診断 セリアック病は,遺伝的感受性を有する者に免疫を介して発生する疾患で,グルテン不耐症によって引き起こされ,粘膜炎症および絨毛萎縮が生じ,その結果,吸収不良を来す。症状としては通常,下痢や腹部不快感などがみられる。診断は小腸生検により行い,生検では特徴的であるが非特異的な病理的変化である絨毛萎縮が示され,この変化は厳格なグルテン除去食で消失する。 セリアック病は 吸収不良を引き起こす疾患である。... さらに読む 診断 甲状腺機能低下症 診断 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。乳児の症状としては,哺乳不良や発育不全などがある;児童および青年の症状は成人の症状と類似するが,それらに加えて発育不全,思春期遅発,またはこの両方もみられる。診断は甲状腺機能の検査(例,血清サイロキシン,甲状腺刺激ホルモン)による。治療は甲状腺ホルモンの補充による。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 乳児および幼児における甲状腺機能低下症は,先天性または後天性の場合がある。... さらに読む )でも低下するため,これらの疾患を除外しなければならない。

IGF-1濃度およびIGFBP-3濃度の低い小児では,GH濃度を測定することによって通常はGH欠損症が確定する。GHの基礎濃度は一般に低値または検出限界未満であるため(睡眠開始後を除く),GH濃度の随時測定は有用ではなく,GH濃度の評価には 誘発試験 誘発試験 成長ホルモン欠損症は,小児において最もよくみられる下垂体ホルモン欠損症であり,単独欠損の場合もあれば,他の下垂体ホルモンの欠損が合併することもある。成長ホルモン欠損症は,一般に成長の異常な遅れおよび正常な均整が保たれた状態での低身長をもたらす。診断では,下垂体ホルモン測定および下垂体の構造異常または脳腫瘍を検出するためのCTまたはMRIを行う。治療では通常,特定のホルモンの補充および原因となる腫瘍があればその除去を行う。... さらに読む が必要である。しかしながら,誘発試験は非生理的な負荷を与えるものであり,検査室でのエラーに影響を受けやすく,再現性が乏しい。また正常反応の定義は年齢,性,試験施設,によって多様であり,限定的なエビデンスに基づいたものである。

発育が異常なときには画像検査を行うが,左手のX線像(慣習による)で骨年齢を判定すべきである。GH欠損症では,骨格の成熟が通常は身長と同じ程度に遅延している。GH欠損症の場合,石灰化,腫瘍,および構造的異常を除外するためにMRIによる下垂体および視床下部の評価が適応となる。

発育不良の他の可能性のある原因を検索するために,以下の項目についてスクリーニング臨床検査を行う:

  • 甲状腺機能低下症(例,甲状腺刺激ホルモン,サイロキシン)

  • 腎疾患(例,電解質,クレアチニン値)

  • 炎症性疾患および免疫疾患(例,抗組織トランスグルタミナーゼ抗体,赤沈,C反応性タンパク[CRP])

  • 血液疾患(例,白血球分画を含む血算)

パール&ピットフォール

  • 多くの内分泌機能不全ではホルモン濃度が診断に役立つが,それとは異なり,成長ホルモン濃度の随時測定は成長ホルモン欠損症の診断においてほとんど役に立たない。

誘発試験

甲状腺または副腎の機能が低下した患者ではGHの反応が一般に異常であるため,これらの患者では十分なホルモン補充療法後にのみ試験を実施すべきである。

インスリン負荷試験は,GH放出を刺激する最良の誘発試験であるが,そのリスクのためまれにしか行われない。他の誘発試験のリスクはやや低いが,信頼性も劣る。そのような試験には,アルギニン負荷試験(500mg/kg,30分かけて静注),クロニジン負荷試験(0.15mg/m2,経口投与[最高0.25mg]),レボドパ負荷試験(小児10mg/kg,経口投与;成人500mg,経口投与),およびグルカゴン負荷試験(0.03mg/kg,静注[最高1mg])がある。使用薬剤に応じて投与後様々な時点でGH濃度を測定する。

1回でGH放出を100%確実に誘発する試験はないため,2つの誘発試験を行う(典型的には同日)。GH濃度は一般に,インスリン投与またはアルギニン静注開始の30~90分後,レボドパ投与の30~120分後,クロニジン投与の60~90分後,グルカゴン投与の120~180分後に最大値に達する。正常と判断されるGH反応はやや恣意的である。一般に,いずれかの刺激によるGH濃度が10ng/mL(10μg/L)を超えればGH欠損症を除外できる。2つの薬剤刺激に対する反応が10ng/mL(10μg/L)未満(より低いカットオフ値を使用する施設もある;例,7ng/mL[7μg/L])であればGH欠損症と判定されるが,成長曲線と併せて結果を解釈しなければならない。GH濃度は思春期に上昇するため,思春期前にGH刺激試験で陰性であった多くの小児は,思春期後または性腺ステロイドの前投与を受けた場合,結果が正常となりうる。

誘発試験はGH放出調節の軽微な欠陥を検出しない可能性がある。例えば,GH分泌機能不全に続発する低身長症の小児では,GH放出誘発試験結果は通常,正常である。しかし,12~24時間にわたって連続的にGH測定を行うと,12時間または24時間の総GH分泌量が異常に減少している。ただし,この検査は高価で不快感を伴うため,GH欠損症に対する第1選択の検査ではない。

GH放出の減少が確認された場合,他の下垂体ホルモン,および(異常があれば)標的である末梢内分泌腺からのホルモン分泌の検査と合わせて,下垂体画像検査も行う必要がある(未実施の場合)。

治療

  • 遺伝子組換えGH補充

  • ときに他の下垂体ホルモン補充

(Pediatric Endocrine Societyの小児および青年における成長ホルモン[GH]およびインスリン様成長因子1[IGF-I]の投与に関するガイドラインも参照のこと。)

明らかな成長ホルモン欠損症を有する全ての低身長児で遺伝子組換えGHが適応となる。用量は通常0.03~0.05mg/kg,1日1回皮下注射である。治療により身長成長速度はしばしば初年で10~12cm/年にまで上昇し,その後速度上昇は鈍化するが治療前の速度を上回ったまま維持される。満足できる身長に達するまで,または成長速度が2.5cm/年を下回るまで治療を継続する。

GH療法の有害作用はほとんどないが, 特発性頭蓋内圧亢進症 特発性頭蓋内圧亢進症 特発性頭蓋内圧亢進症は腫瘤性病変も水頭症も伴わない頭蓋内圧亢進であり,おそらく静脈還流の閉塞による;髄液の性状は正常である。 ( 頭痛患者へのアプローチも参照のこと。) 特発性頭蓋内圧亢進症は,典型的には妊娠可能年齢の女性にみられる。発生率は正常体重の女性で1/100,000であるが,肥満女性では20/100,000である。頭蓋内圧の亢進(>250mmH2O)がみられ,その原因は不明であるが,おそらくは脳静脈流出路の閉塞(静脈洞が正常よ... さらに読む (偽脳腫瘍), 大腿骨頭すべり症 大腿骨頭すべり症(SCFE) 大腿骨頭すべり症は,大腿骨端上における大腿骨頸部の上前方への移動である。診断は両股関節のX線による;ときに他の画像検査が必要となる。治療は外科的修復である。 大腿骨頭すべり症(SCFE)は通常青年期早期に起こり,選択的に男児に発生する。肥満が重大な危険因子である。遺伝因子も一因となる。SCFEは患者の5分の1で両側性であり,最多で患者の3分の2で片側性のSCFEが両側性になる。SCFEの正確な原因は不明であるが,おそらくは,外傷,ホルモ... さらに読む 大腿骨頭すべり症(SCFE) ,および一過性の軽度末梢浮腫が挙げられる。遺伝子組換えGHの出現までは,下垂体から抽出したGHが使用されていた。この製剤により,まれに治療の20~40年後に クロイツフェルト-ヤコブ病 クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD) クロイツフェルト-ヤコブ病(CJD)は,最も頻度の高いヒトプリオン病である。世界中で発生しており,いくつかの発症様式と病型がある。CJDの症状としては認知症,ミオクローヌス,その他の中枢神経系障害などがあり,CJDの発症様式と病型にもよるが,通常は発症後4カ月から2年で死に至る。治療は支持療法による。 ( プリオン病の概要も参照のこと。) クロイツフェルト-ヤコブ病には3つの発症様式がある... さらに読む が発生する恐れがあった。下垂体から抽出したGHが最後に使用されたのは1980年代である。

成長ホルモン欠損症の臨床的特徴は認められるが,GH分泌は正常でIGF-1値も正常範囲内にある低身長児にGH治療を行うべきかについては議論がある。多くの専門家が,GH療法を6~12カ月間試行し,身長成長速度が治療前の2倍になるか治療前よりも3cm/年上昇した場合にのみGHを継続することを勧めている。他の専門家は,高価である,実験的である,有害作用をもたらす恐れがある,低身長以外は健康な小児に異常のレッテルを貼る,「背の低い人に対する差別」を助長する倫理的かつ心理社会的な懸念があるなどの理由から,このアプローチに反対している。

他の下垂体ホルモン欠損症が成長ホルモン欠損症に合併する場合,追加のホルモン補充が必要である。コルチゾール( Professional.see page 治療 治療 アジソン病は潜行性で通常は進行性の副腎皮質の機能低下である。低血圧,色素沈着など種々の症状を引き起こし,心血管虚脱を伴う副腎クリーゼにつながる恐れがある。診断は臨床的に行われ,血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)高値および血漿コルチゾール低値の所見によってなされる。治療は原因に応じて異なるが,一般にはヒドロコルチゾンや,ときに他のホルモンを用いる。 ( 副腎機能の概要も参照のこと。)... さらに読む 治療 )および甲状腺ホルモン( Professional.see page 治療 治療 甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの欠乏である。診断は典型的な顔貌,嗄声および言語緩徐,乾燥皮膚などの臨床的特徴,ならびに甲状腺ホルモン低値による。サイロキシン投与などにより管理を行う。 ( 甲状腺機能の概要も参照のこと。) 甲状腺機能低下症は年齢を問わず生じるが,特に高齢者でよくみられ,その場合症状が軽微で認識しにくい可能性がある。甲状腺機能低下症は以下に分類される: 原発性:甲状腺の疾患に起因する... さらに読む 治療 )の血中濃度が低い場合には小児期,青年期,成人期を通じてコルチゾールおよび甲状腺ホルモンを補充すべきである。尿崩症では通常,錠剤または点鼻剤でのデスモプレシンによる治療が生涯必要である( Professional.see page 治療 治療 尿崩症は,視床下部-下垂体疾患によるバソプレシン(抗利尿ホルモン[ADH])の欠乏(中枢性尿崩症)または腎臓のバソプレシンに対する抵抗性(腎性尿崩症)に起因する。多尿および多飲が発生する。水制限試験で尿が最大限に濃縮されないことによって診断がつく;バソプレシン値および外因性バソプレシンに対する反応が,中枢性尿崩症と腎性尿崩症との鑑別に役立つ。治療はデスモプレシンによる。非ホルモン療法としては,利尿薬(主にサイアザイド系)の使用や,クロル... さらに読む )。思春期が正常に発来しない場合,性腺ステロイド治療の適応となる( Professional.see page 思春期遅発 思春期遅発 思春期遅発は,性的成熟が想定されている時期に起こらないことである。診断は,性腺ホルモン(テストステロンおよびエストラジオール),黄体形成ホルモン,卵胞刺激ホルモンの測定による。治療が必要な場合,通常は特定のホルモンの補充が行われる。 ( 男児の思春期, 女児の思春期, 体質性の思春期遅発も参照のこと。) 思春期遅発は,体質的遅れに起因することがあり,成長遅滞の家族歴を伴う青年にしばしば起こる。そのような小児はしばしば「おくて(late... さらに読む )。

がん治療目的で行った下垂体の放射線照射に起因する低身長の小児におけるGH療法は,がんの再発を引き起こす理論的リスクを伴う。しかし研究では,予測を上回る新規のがん発生率も高い再発率も認められていない。GHの補充は,抗がん剤による治療が奏効し完了してから少なくとも1年が経過していればおそらく安全に開始できると考えられる。

要点

  • 成長ホルモン(GH)欠損症は単独で起こることもあれば汎下垂体機能低下症と合併することもある

  • 原因として,先天性疾患(遺伝性疾患を含む)と,視床下部および/または下垂体のいくつかの後天性疾患が挙げられる。

  • GH欠損症によって低身長が生じるが,原因によって他の症状も多数現れる。

  • 診断は,臨床所見,画像検査,および通常はGH放出誘発試験などの臨床検査の併用に基づく。

  • 低身長でGH欠損症が確定した小児は,遺伝子組換えGHの投与を受けるべきである;下垂体機能低下症の他の症状も適宜治療する。

より詳細な情報

以下の英語の資料が有用であろう。ただし,本マニュアルはこれらの資料の内容について責任を負わないことに留意されたい。

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