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麻疹

(はしか;morbilli;9-day measles)

執筆者:

Mary T. Caserta

, MD, University of Rochester School of Medicine and Dentistry

最終査読/改訂年月 2014年 11月
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麻疹は,小児で最も多くみられる感染性の高いウイルス感染症である。発熱,咳嗽,鼻感冒,結膜炎,口腔粘膜の粘膜疹(コプリック斑),および頭尾方向に拡大する斑状丘疹状皮疹を特徴とする。診断は通常,臨床的に行う。治療は支持療法による。予防接種が非常に効果的である。

世界全体では,毎年約2000万人が麻疹に感染し,小児を中心に約200,000人が麻疹により死亡している。これらの数値は,集団の予防接種状況に応じて,短期間で劇的に変化する可能性がある。ルーチンの小児予防接種により,米国では麻疹はまれとなっており,2000年から2007年までにCenters for Disease Control and Prevention(CDC:米国疾病予防管理センター)に報告された症例数は1年当たり平均63例であった。しかしながら,米国では2013年以降,症例数が増加してきており,輸入例からワクチン未接種集団に感染が拡大することが主な原因である。

病態生理

麻疹はパラミクソウイルスによって引き起こされるヒト疾患であり,病原体保有動物や無症候性キャリア状態の存在は知られていない。感染力が極めて高く,感受性の高い個人が曝露した場合の二次発症率は90%を超える。

前駆期または発疹期早期には,主に鼻,咽頭,および口腔からの分泌物により伝播される。感染性は発疹出現の数日前から生じ,発疹出現の数日後まで持続する。発疹の落屑が始まると,麻疹の感染性は失われる。

典型的には呼吸器からの大きな飛沫を介して伝播するが,飛沫は咳嗽によって放出され,短時間だけ近距離で空中にとどまる。また閉鎖空間(例,診察室)においては,最長2時間にわたり空中にとどまる(したがって吸入される可能性がある)エアロゾル状の小さな飛沫によっても伝播する可能性がある。麻疹ウイルスは乾燥面では短時間しか生存できないと考えられており,したがって,媒介物を介して伝播する可能性は飛沫感染より低いとみられている。

母親が麻疹の免疫(例,罹患歴または予防接種歴)をもっていた乳児は,母親から胎盤を介して移行した抗体を有しており,それらの抗体が生後ほぼ6~12カ月間にわたって感染を防御する。感染により終生免疫が獲得される。米国では,麻疹のほぼ全例が旅行者または移民による輸入例であり,その後は主に現地のワクチン未接種者に感染が拡大する。

症状と徴候

麻疹は7~14日間の潜伏期に続いて,発熱,鼻感冒,空咳(hacking cough),および瞼結膜炎を前駆症状として発症する。本疾患に特有のコプリック斑は,発疹が現れる前の前駆期に出現し,通常は第1および第2上臼歯の対側の口腔粘膜に認められる。それらの斑は,周囲に紅暈を伴う白い砂粒のように見える。広範囲に及んで,口腔粘膜のびまん性の斑点状発赤を呈することもある。咽頭痛が生じる。

発疹の出現は,発症から3~5日後,通常はコプリック斑の出現から1~2日後にみられる。発疹は顔面,耳介の前方および下方,ならびに頸部側面に不整な斑として始まり,間もなく丘疹が混在するようになる。病変は24~48時間以内に体幹および四肢(手掌および足底を含む)へと拡大し,同時に顔面からは消え始める。発疹が重度の場合には,点状または斑状出血が生じることもある。

重症度がピークの間は,体温が40℃を超えることがあり,さらに眼窩周囲浮腫,結膜炎,羞明,空咳(hacking cough),広範な発疹,極度の疲労,軽度のそう痒などがみられる。全身性の症状および徴候は発疹の重症度と流行の程度に比例する。3~5日以内に解熱し,不快感が軽減し,発疹は急速に消失していき,銅褐色の色素沈着を残して落屑がみられる。

易感染性患者では,発疹が生じないことがあるほか,重症かつ進行性の巨細胞性肺炎が起こりうる。

合併症

合併症としては以下のものがある:

  • 異型麻疹

  • 肺炎

  • 細菌の重複感染

  • 急性血小板減少性紫斑病

  • 脳炎

  • 一過性肝炎

  • 亜急性硬化性全脳炎

異型麻疹は通常,麻疹不活化ワクチンの接種歴を有する患者に発症するが,このワクチンは1968年以来使用されていない。旧来のワクチンは,野生型麻疹に感染した場合の臨床像を修飾する可能性がある。異型麻疹は,高熱,極度の疲労,頭痛,腹痛,および咳嗽で突然発症することがある。発疹は1~2日後に出現し,しばしば四肢から始まって,斑状丘疹状,小水疱,蕁麻疹,または紫斑状を呈する。手足に浮腫が生じることがある。肺炎,胸水,および肺門リンパ節腫脹が生じることもあり,胸部X線異常は数週間から数カ月間にわたって持続する。症候性の低酸素血症が起こりうる。

麻疹ウイルスが肺に感染することで生じる肺炎肺炎の概要)は,約5%の患者に起こり,一見して合併症のない感染例でも生じていることがあり,乳児では頻度の高い死因の1つとなっている。

細菌の重複感染としては,肺炎,喉頭気管気管支炎,中耳炎などがある。麻疹は遅延型過敏反応を一過性に抑制するため,活動性結核が悪化して,皮膚テストでツベルクリン反応およびヒストプラスミン抗原反応が一時的に抑制される可能性がある。細菌の重複感染は,関連のある局所徴候や発熱の再発,白血球増多,または極度の疲労により示唆される。

急性血小板減少性紫斑病は感染の消失後に発生し,自然に軽快する軽度の出血傾向を引き起こすが,ときに出血が重度となることもある。

脳炎脳炎)は1000~2000例当たり1例の頻度で発生し,通常は発疹の出現後2日から2週間で生じ,しばしば高熱の再発,頭痛,痙攣発作,および昏睡で始まる。髄液検査では通常,リンパ球数が50~500/μLで,タンパク濃度は軽度の上昇を示すが,初期には正常のこともある。脳炎は約1週間以内に軽快するか,あるいは遷延して後遺症を残すか,死に至る。

一過性肝炎および下痢が急性感染中に起こることがある。

亜急性硬化性全脳炎(SSPE— 亜急性硬化性全脳炎 (SSPE))は,進行性で最終的には死に至る,まれな麻疹の晩期合併症である。

診断

  • 臨床的評価

  • 血清学的検査

  • 培養または逆転写PCR法によるウイルス検出

典型的な麻疹は,鼻感冒,結膜炎,羞明,および咳嗽を呈する曝露患者で疑うことができるが,通常は発疹が出現して初めて疑われる。診断は通常,コプリック斑または発疹の同定により,臨床的に行われる。血算は不要であるが,行った場合には相対的リンパ球増多を伴う白血球減少を認めることがある。公衆衛生およびアウトブレイクの制御を目的として,検査室での同定が必要である。最も容易な方法は,急性期血清検体での麻疹IgM抗体の確認か,咽頭拭い液,血液,鼻咽頭拭い液,または尿検体でのウイルス培養または逆転写PCRである。急性期および回復期血清でのIgG抗体価の上昇は精度の高い所見であるが,これを待っていると診断の遅れにつながる。麻疹が疑われる症例は全て,検査室での確定診断を待つことなく,地域の保健局に報告すべきである。

鑑別診断には,風疹( 風疹),猩紅熱( レンサ球菌感染症 : 猩紅熱),薬疹(例,フェノバルビタールまたはスルホンアミド系薬剤によるもの),血清病( 蕁麻疹の原因),突発性発疹( 突発性発疹),伝染性単核球症( 伝染性単核球症),伝染性紅斑( 伝染性紅斑),ならびにエコーウイルスおよびコクサッキーウイルス感染症( 主な呼吸器系ウイルス)が含まれる。臨床像が川崎病( 川崎病(KD))にも類似することがあるため,麻疹が非常にまれな地域では,診断に混乱が生じる。異型麻疹は病像が非常に多彩であるため,典型的な麻疹よりさらに多くの疾患に類似する可能性があり,具体的にはロッキー山紅斑熱,毒素性ショック症候群,髄膜炎菌血症などが挙げられる。

こうした疾患の一部は典型的な麻疹と以下のように鑑別できる:

  • 風疹:前駆症状を認めず,発熱などの全身症状はないか重症度が低く,耳介後部および後頭部リンパ節が腫大し(通常は圧痛も伴う),罹病期間が短い。

  • 薬疹:薬疹はしばしば麻疹の発疹に類似するが,前駆症状はみられず,頭尾方向の進行や咳嗽もみられず,通常は最近の薬剤使用歴がある。

  • 突発性発疹:麻疹と類似する皮疹が生じうるが,3歳以上の小児に発生することはめったにない。初期の体温が通常高く,コプリック斑および倦怠感を欠き,解熱と発疹が同時にみられる。

予後

米国での死亡率は約2/1000であるが,発展途上国ではこの値よりはるかに高い。低栄養およびビタミンA欠乏症が死亡の素因となりうる。

治療

  • 支持療法

  • 小児にはビタミンA

治療は(脳炎に対するものも含めて)支持療法である。

麻疹の入院患者は,標準的な接触および空気感染予防策によって管理すべきである。個室の飛沫感染隔離室とN-95マスクまたは同様の個人防護具の使用が推奨される。その他の点では健康な麻疹の外来患者は,発疹出現後4日間が最も感染力が高く,罹病期間中は他者との接触を厳重に制限するべきである。

ビタミンAの補充は,発展途上国の小児において麻疹による合併症および死亡を減少させることが示されている。血清ビタミンA低値に麻疹による重症疾患との関連が認められているため,麻疹患児全例に対するビタミンA投与が推奨される。2日間にわたり1日1回経口投与するが,用量は患児の年齢に依存する:

  • 1歳以上:200,000IU

  • 生後6~11カ月:100,000IU

  • 生後6カ月未満:50,000IU

ビタミンA欠乏症( ビタミンA欠乏症)の臨床徴候がみられる患児には,2~4週間後に年齢に応じた用量でビタミンAを再度単回投与する。

予防

麻疹・ムンプス・風疹弱毒生ワクチンは,ほとんどの先進国で小児にルーチン接種されている( 麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチンおよび 0~6歳を対象期間とする推奨予防接種スケジュール)。2回接種が推奨される:

  • 1回目の接種時期は生後12~15カ月時点が推奨されるが,麻疹アウトブレイク発生時または国外旅行前であれば,生後6カ月時点のより早期に接種することも可能である。

  • 2回目の接種は4~6歳に行う。

1歳未満で予防接種を受けた乳児には,1歳の誕生日以降にさらに2回接種する必要がある。ワクチンは長期間持続する免疫を付与し,これにより米国における麻疹発生率は99%減少した。ワクチンを接種すると,感染力のない軽症または不顕性感染が生じる。ワクチン接種者の5~15%未満では,38℃を超える発熱が接種の5~12日後にみられ,続いて発疹が出現することもある。中枢神経系の反応は極めてまれであり,このワクチンが自閉症を引き起こすことはない。

ワクチンの禁忌としては,全身性の悪性腫瘍(例,白血病,リンパ腫),免疫不全,免疫抑制作用のある治療(例,コルチコステロイド,放射線照射,アルキル化薬,または代謝拮抗薬)などがある。HIV感染症は,免疫抑制が重度の場合(免疫不全のCDCカテゴリー3かつCD4陽性細胞15%未満)にのみ禁忌となり,そうでなければ,野生型麻疹ウイルスのリスクが生ワクチン由来の麻疹感染リスクを上回る。ワクチン接種を延期すべき理由としては,妊娠,重篤な発熱性疾患,未治療の活動性結核,最近の抗体の(全血,血漿,または免疫グロブリンとしての)投与などがある。延期の期間は投与される免疫グロブリン製剤の種類および用量に依存するが,11カ月という長期に及ぶ場合もある。

曝露後予防

感受性の高い接触者では,曝露後3日以内のワクチン接種により予防が可能である。ワクチン接種を延期すべき理由がある場合は,免疫グロブリン0.25mL/kg(最大用量15mL)の筋注を直ちに(6日以内)行い,医学的に適切と判断されれば(例,患者が妊娠を終えた場合),5~6カ月後にワクチンを接種する。曝露を受けた免疫不全患者でワクチン接種の禁忌がある場合は,免疫グロブリン0.5mL/kg(最大15mL)を筋肉内投与する。免疫グロブリンをワクチンと同時に投与すべきではない。

施設内アウトブレイク(例,学校)の発生時には,感受性の高い接触者のうち,ワクチン接種を拒否するか受けられない者と免疫グロブリンの投与を受けない者は,最終症例の発疹出現から21日後まで発生施設から隔離すべきである。感受性の高い医療従事者が曝露を受けた場合は,たとえ曝露後予防を受ける場合でも,最初の曝露後5日目から最後の曝露後21日目まで休職させるべきである。

要点

  • 対象集団のワクチン接種率によって,麻疹の発生率は大幅に異なる。

  • 麻疹が感染力が強く,感受性の高い接触者の90%以上が発症する。

  • 麻疹は発展途上国の小児を中心に毎年約200,000人の死亡を引き起こしており,その死因は肺炎が多く,脳炎は比較的まれである。

  • 治療は支持療法が中心であるが,ビタミンAサプリメントを投与すべきである。

  • 禁忌(例,活動性の悪性腫瘍,免疫抑制薬の使用,重度の免疫抑制を伴うHIV感染症)がある場合を例外として,全ての小児を対象とする予防接種が不可欠である。

  • 感受性の高い接触者には,曝露から3日以内に曝露後予防を行う;禁忌がなければワクチンを接種し,禁忌があれば免疫グロブリンを投与する。

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