癒着胎盤では,正常時のように胎盤絨毛が脱落膜細胞内にとどまらず,筋層まで侵入する。
関連する異常としては以下のものがある:
これら3つの異常はいずれも同様の問題を起こす。
病因
癒着胎盤の主な危険因子は以下のものである:
米国では,癒着胎盤は前置胎盤の妊婦,および以前の妊娠で帝王切開の既往のある妊婦で最も頻繁に起こる。癒着胎盤の発生率は1950年代の約1/30,000から,1980年代と1990年代には約1/500~2000,および2000年代までには3/1000と上昇した;現在は約2/1000の範囲にとどまっている。前置胎盤を有する女性でのリスクは1回の帝王切開の場合の約10%から,4回を超える帝王切開の場合は60%超にまでに上昇する。前置胎盤のない女性では,帝王切開の既往はごくわずかにリスクを上昇させる(4回の帝王切開までは1%未満)。
その他の危険因子としては以下のものがある:
症状と徴候
診断
治療
分娩への準備をするのが最善策である。通常,妊婦が反対しない限り,34週で帝王切開とそれに続く子宮摘出術を施行する;このアプローチは母体と胎児の転帰に最善のバランスをもたらす傾向がある。
帝王切開とそれに続く子宮摘出術を施行する場合(経験豊富な骨盤外科医によることが望ましい),子宮底部切開を行い,分娩後直ちに臍帯をクランプすれば失血を最小限にするのに役立つ。子宮摘出の術中は,胎盤はその場においたままとする。大動脈または内腸骨血管のバルーンによる閉塞が術前に行われることがあるが,血管造影に熟練した医師が必要であり,重篤な血栓塞栓性合併症を起こす可能性がある。
まれに(例,癒着胎盤が限局性,底部,または後方である場合),医師は子宮の温存を試みることができるが,急性出血がみられない場合に限る;例えば子宮を残し,胎盤遺残に対し高用量メトトレキサートで治療する)。子宮動脈塞栓,動脈結紮およびバルーンタンポナーデもときに用いられる。