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遺伝学的評価

執筆者:

Jeffrey S. Dungan

, MD, Northwestern University, Feinberg School of Medicine

最終査読/改訂年月 2017年 3月
本ページのリソース

出生前遺伝カウンセリングも参照のこと。)

遺伝学的評価はルーチンの出生前ケアの一環であり,理想的には受胎前に行う。女性がどの程度までの遺伝学的評価を選択するかは以下の要因をどの程度重視するかに関係する:

  • 危険因子および以前の検査結果に基づく胎児異常の可能性

  • 侵襲的な胎児検査による合併症の可能性

  • 結果を知ることの重要性(例,異常が診断された場合妊娠中絶するのか,結果を知らないことで不安になるか)

これらの理由から,決定は個人的なものであり,たとえ同様のリスクがある場合であっても,全ての女性に一般的な推奨を行うことができないことが多い。

スクリーニング歴は評価の一部である。スクリーニング歴は家系図として要約される( 家系図作成のための記号)。情報には,両親,第1度近親者(両親,同胞,子)および第2度近親者(おば,おじ,祖父母)に関する,健康状態および遺伝性疾患の存在やキャリア状態,さらに民族的,人種的背景および近親結婚も含めるべきである。以前の妊娠の転帰に注意する。遺伝性疾患が疑われる場合,関連する医療記録を再検討すべきである。

遺伝子スクリーニング検査は受胎前に行うのが最善である。従来より,いくつかの一般的なメンデル遺伝病に関して,無症候性キャリアであるリスクが高い親に検査が勧められている( 特定の民族集団に対する遺伝子スクリーニング)。妥当であれば,特異的な異常に対する診断検査を親に勧める( 胎児の遺伝子診断検査の適応)。以前に考えられたよりも両親の民族は複雑で明確に定義しにくく,また出生前遺伝学的検査がはるかに安価で迅速になってきているため,挙児希望の(および妊娠中である)両親全てに対して,民族にかかわらずスクリーニングを始めている医師もいる(universal carrier screeningと呼ばれる)。どの疾患を検査すべきかに関するコンセンサスはまだ存在しない。検査と評価の量が増えることで検査前のカウンセリングの複雑性が増すことが予想される。

神経管閉鎖不全ダウン症候群(およびその他の染色体異常),およびその他の先天異常を検出するために,複数の母体血清マーカー(α-フェトプロテイン,β-ヒト絨毛性ゴナドトロピン[β-hCG],エストリオール,インヒビンA― 非侵襲的な母体のスクリーニング法 : 染色体異常に対する母体血清スクリーニング)を用いたスクリーニングを妊婦に勧めるべきである。このスクリーニングはanalyte screeningと呼ばれる。このスクリーニングは妊娠15~20週の間に行う。胎児のダウン症候群または18トリソミーを検出するための代替スクリーニングとして,母体血漿中の細胞フリー胎児DNA (cfDNA)の分析がある。

胎児の遺伝子診断検査

これらの検査は通常,絨毛採取羊水穿刺,またはまれに,経皮的臍帯血採取によって行われる。これにより,全てのトリソミー,多くの他の染色体異常,および数百のメンデル遺伝病が検出できる。顕微鏡で観察できない染色体異常は,従来の核型検査では見逃され,アレイCGHや一塩基多型(SNP)アレイのようなマイクロアレイ技術によってのみ同定できる。

胎児染色体異常のリスクが高い場合には,通常,検査が推奨される。( 胎児の遺伝子診断検査の適応)。胎児の遺伝子診断検査は,スクリーニング検査とは異なり,通常,侵襲的で胎児のリスクを伴う。したがってこれらの検査は,過去には危険因子のない女性に対してルーチンに推奨されていなかった。しかし今日では,胎児の遺伝子診断検査が広く普及し安全性が向上しているため,リスクにかかわらず全ての妊婦に胎児の遺伝子検査を勧めることが推奨されている。出生前検査におけるアレイCGHの役割は研究中である;これは構造的異常のある胎児の評価に最も頻用されている。

体外受精を用いるカップルに対しては着床前遺伝子診断が利用可能な場合がある。

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特定の民族集団に対する遺伝子スクリーニング

民族集団

疾患

親のスクリーニング検査

出生前診断

全て

最もよくみられる23種類のCFTR変異(それぞれ米国人口の0.1%以上にみられる)に関するDNA分析

遺伝子型決定のためCVSまたは羊水穿刺*

アシュケナージ系ユダヤ人

Canavan病

DNA分析により最もよくみられる突然変異を検出

DNA分析のためCVSまたは羊水穿刺

家族性自律神経失調症

DNA分析により最もよくみられる突然変異を検出

DNA分析のためCVSまたは羊水穿刺

血清ヘキソサミニダーゼAを測定し欠損をチェック;場合によりDNA分析

ヘキソサミニダーゼAをチェックする酵素活性測定または分子解析のため,CVSまたは羊水穿刺;DNA分析

黒人

ヘモグロビン電気泳動

遺伝子型決定のためCVSまたは羊水穿刺(DNAの直接分析)

ケイジャン人

テイ-サックス病

血清ヘキソサミニダーゼAを測定して欠損をチェック;場合によりDNA分析

ヘキソサミニダーゼAをチェックする酵素活性測定または分子解析のため,CVSまたは羊水穿刺

東南アジア人,インド人,アフリカ人,地中海地方および中東出身の人

血算;MCV < 80fLの場合,ヘモグロビン電気泳動

遺伝子型決定のためCVSまたは羊水穿刺(DNAの直接分析または連鎖分析)

東南アジア人,カンボジア人,中国人,フィリピン人,ラオス人,ベトナム人

血算;MCV < 80fLの場合,ヘモグロビン電気泳動

遺伝子型決定のためCVSまたは羊水穿刺(DNAの直接分析または連鎖分析)

*確定診断が常に可能であるわけではない;民族集団により感度が異なる。

アシュケナージ系ユダヤ人に対して,一部の専門家はゴーシェ病,ニーマン-ピック病A型,ファンコニ症候群C群,ブルーム症候群,およびムコリピドーシスIV型のスクリーニングも勧めている。大部分(90%)のユダヤ人はアシュケナージ系である;したがって,自身がアシュケナージ系かどうか不明なユダヤ人にはスクリーニングを行うべきである。

CFTR = 嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子;CVS = 絨毛採取;MCV = 平均赤血球容積。

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胎児の遺伝子診断検査の適応

適応

備考

検査に対する希望

リスクにかかわらず,全ての妊婦に検査を勧めるべきである【訳注:日本では厚生科学審議会の見解により勧めてはならないことになっている】。

分娩予定時の母体年齢が35歳以上である

ACOGは母体年齢にかかわらず全ての妊婦に,胎児の核型を評価する侵襲的検査を勧めるべきであると推奨している。

反復自然流産の既往がある

両親共に染色体分析が適応となることがある。

前児に染色体異常を認める

両親共に染色体分析が適応となることがある。

父親が50歳以上である

検査の必要性については議論がある。

親に染色体異常がある

親の染色体再構成全てが子孫のリスクに関連しているわけではない。

親に伴性遺伝のメンデル遺伝病が疑われる

両親に常染色体劣性遺伝のメンデル遺伝病が診断されているか疑われる

母体の血清マーカーの測定値*から21トリソミーまたは18トリソミーが示唆されている

第1トリメスターに絨毛採取または第2トリメスターに羊水穿刺を施行する。

母体血漿を用いた細胞フリー胎児DNA分析で異常を認める

第1トリメスターに絨毛採取または第2トリメスターに羊水穿刺を施行する。

母体のα-フェトプロテインが高値となり,かつ超音波検査で不確定な結果が得られた

羊水穿刺を行う。

超音波検査で胎児の構造的異常(第1トリメスターのNT肥厚を含む)が検出された

胎児の染色体異常のリスクは具体的な解剖学的所見により異なる。

*第1または第2トリメスターに測定。

ACOG = American College of Obstetricians and Gynecologists

手技

遺伝性疾患を診断する全ての手技は,超音波検査を除いて侵襲的であり,胎児へのわずかなリスクを伴う。検査で深刻な異常が検出された場合,妊娠中絶を行う場合があり,また一部の症例では異常は治療可能(例,二分脊椎を修復する胎児手術)である。可能性のどちらもが予想されていない場合でも,出生前に胎児の異常を知りたいと望む女性もいる。

出生前超音波検査

一部の専門家は,全ての妊婦に対してルーチンの超音波検査を勧めている。疑われる遺伝的または産科的異常を調べたり,母体の血清マーカー値異常の解釈に役立てるなど,特異的な適応に対してのみ超音波検査を用いる専門家もいる。超音波検査を熟練した検者が行う場合,重大な先天奇形に対する感度は高い。しかしながら,状態(例,羊水過少,母体の肥満,胎位)によっては最適な画像が得られないこともある。超音波検査は非侵襲的で,妊婦または胎児への既知のリスクはない。

基本的な超音波検査は以下のために行う:

  • 在胎期間の確認

  • 胎児生存の判別

  • 多胎妊娠の発見

  • 妊娠第2または第3トリメスターにおいては,場合により胎児の頭蓋内構造,脊髄,心臓,膀胱,腎臓,胃,胸郭,腹壁,長管骨,および臍帯における重大な奇形を確認

超音波検査で得られるのは構造的情報のみであるが,一部の構造的異常は遺伝子異常を強く示唆する。多発奇形は染色体異常を示唆する可能性がある。

高分解能超音波機器を用いた先天異常検出目的の超音波検査(targeted ultrasonography)が一部の紹介医療センターで行われており,基本的な超音波検査よりもより詳細な画像が得られる。この検査は,先天奇形(例,先天性心疾患口唇口蓋裂幽門狭窄)の家族歴,特に出生前(例,巨大膀胱を伴う後部尿道弁)や分娩時(例,横隔膜ヘルニア)に効果的に治療しうる奇形の家族歴を有するカップルに適応となる場合がある。さらに,母体血清マーカー値が異常な場合にも使用されることがある。高分解能超音波検査により以下を検出できる:

第2トリメスターに,胎児染色体異常のリスク上昇と統計学的に関連がみられる構造を同定することでより正確なリスクの推定に役立つ。

羊水穿刺

羊水穿刺では,化学的マーカー(例,α-フェトプロテイン,アセチルコリンエステラーゼ)測定などの検査のため,超音波ガイド下で針を経腹的に羊膜腔に挿入し,羊水および胎児細胞を吸引する。羊水穿刺に最も安全な時期は妊娠14週以降である。羊水穿刺の直前に,超音波検査を行って胎児の心拍動を評価し,在胎期間,胎盤の位置,羊水の所在,および胎児数を確認する。母親がRh陰性で未感作の場合,処置後にRh0(D)免疫グロブリン300μgを投与し,感作の可能性を低下させる( 胎児赤芽球症 : 予防)。

35歳以上の妊婦ではダウン症候群やその他の染色体異常がある児が生まれるリスクが上昇するため,そうした妊婦には従来から羊水穿刺が勧められている。しかしながら,羊水穿刺が広く普及し安全性が向上しているため,American College of Obstetricians and Gynecologistsでは胎児の染色体異常のリスクを評価するために全ての妊婦に羊水穿刺を勧めることを推奨している。

ときに,採取した羊水は血性である。通常,血液は母親由来であり,羊水細胞の増殖には影響しない;ただし,血液が胎児由来である場合,羊水中α-フェトプロテイン濃度が見かけ上,上昇することがある。暗赤色または褐色の羊水は羊膜内で出血があったことを示し,胎児死亡のリスクが大きいことを示唆する。緑色羊水(通常胎便による羊水混濁により生じる)は,胎児死亡のリスク上昇を示唆するわけではないようである。

羊水穿刺により,母体に重大な疾患(例,症候性の羊膜炎)が生じることはまれである。経験豊富な術者では,胎児死亡のリスクは約0.1~0.2%である。少量の性器出血または羊水の漏れが検査を受けた妊婦の1~2%で起こる(通常,自然治癒する)。羊水穿刺が在胎14週前,特に13週前に行われると,胎児死亡率がより高くなり,内反尖足(内反足)のリスクが上昇する。

絨毛採取

絨毛採取(CVS)では,絨毛を注射器に吸引して培養を行う。CVSにより,胎児の遺伝子および染色体の状態に関して羊水穿刺と同様の情報が得られ,精度も同等である。しかしながら,CVSは妊娠10週~第1トリメスター終わりに実施されるため,より早くに結果が得られる。そのため,必要な場合により早期に(またより安全かつ容易に)中絶が可能で,結果が正常の場合は,親の不安をより早くに解消できる。羊水穿刺とは異なり,CVSでは羊水を得ることはできず,α-フェトプロテインを測定することはできない。したがって,CVSを受けた女性には,胎児の神経管閉鎖不全のリスクを評価するために,16~18週で血清α-フェトプロテインの母体スクリーニングを勧めるべきである。

胎盤の位置(超音波検査によって確認する)に応じて,カテーテルを子宮頸部から通すか,針を妊婦の腹壁に挿入することによりCVSを実施できる。CVS後,Rh陰性の未感作の妊婦には,Rh0(D)免疫グロブリン300μgを投与する。

母体細胞の混入による診断のエラーはまれである。ある種の染色体異常(例,四倍体)の検出は,胎児の真の状態ではなく,むしろ胎盤に限局したモザイク現象を反映していることがある。CVS検体の約1%に胎盤限局性モザイクが検出される。これらの異常に詳しい専門家のコンサルテーションが勧められる。まれに,さらなる情報を得るために追加の羊水穿刺を行う必要がある。

CVSによる胎児死亡率は,羊水穿刺の胎児死亡率(すなわち,約0.2%)と同様である。横断性の四肢欠損および口腔顎肢発育不全症は,CVSが原因とされているが,経験豊富な術者が妊娠10週以降にCVSを行う場合には,極めてまれである。

経皮的臍帯血採取

胎児の血液検体は,超音波ガイドを用いて臍帯静脈を経皮的に穿刺(臍帯穿刺)することで採取できる。染色体分析は48~72時間で完了する。この理由から,経皮的臍帯血採取(PUBS)は結果が早急に必要な場合に,以前はしばしば行われていた。この検査は妊娠第3トリメスター後期に,特に,この時期に胎児の異常が初めて疑われた場合に,非常に有用であった。現在では,蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)法を用いた羊水細胞または絨毛の遺伝子解析で,24~48時間以内により一般的な染色体異常の暫定的診断(または除外)が可能であるため,PUBSが遺伝子検査のために適応となるのはまれである。

PUBSに伴う処置に関連した胎児死亡率は約1%である。

着床前遺伝子検査(PGT)

体外受精が行われた場合,着床前遺伝子検査がときに可能である;卵母細胞からの極体,6~8細胞胚からの卵割球,または胚盤胞からの栄養外胚葉検体を使用する。このような検査は専門のセンターでのみ利用でき,費用も高い。しかしながら,新しい技術によって費用が軽減され,より多くのカップルがこのような検査を利用できるようになる可能性がある。特定の遺伝性疾患を調べるために行う着床前遺伝子診断(PGD)は,主に特定のメンデル遺伝病(例,嚢胞性線維症)または染色体異常のリスクが高いカップルに用いられる。異数性を調べるための着床前遺伝子スクリーニング(PGS)は主に高齢女性の胚を対象として主に用いられるが,妊娠成功の可能性を高めることはなさそうである。

非侵襲的な母体のスクリーニング法

非侵襲的な母体のスクリーニングは,侵襲的検査と異なり,検査に関連する合併症のリスクがない。胎児異常のリスクをより正確に評価することで,非侵襲的な母体のスクリーニングは女性が侵襲的検査を受けるかどうかを決定するのに役立つ。胎児の染色体異常に対する非侵襲的な母体スクリーニングは,羊水穿刺またはCVSを受けるかどうかをまだ決めていない全ての妊婦に勧めるべきである。ただし,CVSを行う予定であっても,神経管閉鎖不全の有無を調べるために母体血清スクリーニングを勧めるべきである。

正常値は在胎期間により異なる。母体の体重,糖尿病,人種,および他の因子により補正が必要なことがある。スクリーニングは第1トリメスター,第2トリメスター,またはその両方(sequential screeningまたはintegrated screeningと呼ばれる)に行うことができる。3つのアプローチのいずれも可能である。神経管閉鎖不全を調べるため,母体のα-フェトプロテイン値を第2トリメスターに測定すべきである。

パール&ピットフォール

  • 予定されている他の検査やそれら検査の時期にかかわらず,神経管閉鎖不全を調べるために母体のα-フェトプロテイン値を第2トリメスターに測定する。

第1トリメスターのスクリーニング

従来,第1トリメスターの統合スクリーニングは以下の測定を含む:

  • 母体血清β-hCG (総または遊離)

  • 妊娠関連血漿タンパクA(PAPP-A)

  • 胎児のNT測定(超音波検査による)

胎児のダウン症候群は,典型的にはβ-hCG高値,PAPP-A低値,および胎児のNT肥厚と関連する。NT肥厚は胎児ダウン症候群のリスク上昇と関連するが,診断的とみなされるNTの閾値はない。

様々な年齢の女性を含む米国での大規模な前向き試験では,ダウン症候群の検出についての全体的な感度は約85%で,偽陽性率は5%であった。このレベルのスクリーニング精度を達成するためは,専門的な超音波検査のトレーニングおよびNT測定における厳密な質保証のためのモニタリングの遵守が必要である。

全ての妊婦に第1トリメスターのスクリーニングを勧めるべきである【訳注:日本では厚生科学審議会の見解により勧めてはならないことになっている】。これにより情報が早く提供され,CVSにより確定診断を行うことができる。第1トリメスターにスクリーニングを行うことの重要な利点は,第2トリメスターよりも第1トリメスターの方が中絶を安全に行えることである。

細胞フリー胎児DNAを用いる検査

用いられる機会が増えつつある無侵襲的出生前スクリーニングまたは細胞フリー胎児DNA(cfDNA)スクリーニングと呼ばれるアプローチでは,母体血中に循環する細胞フリー胎児DNAの分析により,単胎妊娠において胎児の染色体異常を同定することができる。この検査は在胎10週という早期から行うことができ,第1および第2トリメスターに行う従来の非侵襲的スクリーニングに取って代わる可能性がある。

細胞フリー胎児DNAは,DNA断片である場合が最も多く,胎盤栄養膜細胞が正常に崩壊する際に母体循環中に排出される。特定の染色体に由来する断片の量的なばらつきによって,血清中の測定と超音波検査を併用する従来の第1および第2トリメスターのスクリーニングよりも高い精度で,胎児の染色体異常を予測できる。また,いくぶん精度は下がるものの,性染色体異常(X,XXX,XYY,XXY)も単胎妊娠では同定できる。初期のバリデーション試験では,高リスクの妊娠におけるダウン症候群(21トリソミー)および18トリソミーの同定について,99%を超える感度と特異度が報告された。13トリソミーも検出可能であるが,その場合の正確な感度と特異度は明らかにされていない(1)

細胞フリー胎児DNAによるスクリーニング(cfDNAスクリーニング)は,現在のところ,母体にトリソミーの危険因子が認められる場合に推奨されている。しかしながら,低リスク集団におけるcfDNAスクリーニングの有効性を検討した最近の大規模な多施設共同試験では,胎児のダウン症候群を検出する感度が高リスク集団でのそれと同等であった。比較的若年の妊婦では胎児のダウン症候群の発生率が低いことを考慮すると,特異度および陽性適中率は,高リスクの妊婦のみをスクリーニングする場合よりも低くなる。しかしながら,cfDNAスクリーニングは低リスク女性での全体的な成績において従来のanalyte screeningよりも優れていた。細胞フリー胎児DNAスクリーニングはserum analyte screeningに大きく取って代わりつつあるが,低リスク女性におけるスクリーニングアプローチは依然として,よりコストが低く血清中物質および超音波を用いた従来の第1および第2トリメスター統合スクリーニングに主に依存している(1)

cfDNAスクリーニングでの陽性結果は侵襲的方法で得られた胎児検体を用いた診断的核型分析により確定すべきである。cfDNAスクリーニングにおける陰性判定により,ルーチンな侵襲的検査の施行を減らせる可能性が高い。

参考文献

第2トリメスタースクリーニング

第2トリメスタースクリーニングにはcfDNAや複数のマーカーによるスクリーニング方法があり,以下を含む:

  • 母体血清α-フェトプロテイン値(MSAFP):MSAFP は,ダウン症候群のリスクではなく,神経管閉鎖不全のみのスクリーニングとして独立して用いられることがある。値の上昇は開放性二分脊椎無脳症,または腹壁の異常を示唆する。MSAFPの原因不明の上昇は,死産または子宮内胎児発育遅滞などの,妊娠後期の合併症のリスク上昇と関連している可能性がある。

  • 母体β-hCG,非抱合型エストリオール,α-フェトプロテイン,およびときにインヒビンA値:このスクリーニングは第1トリメスタースクリーニングの代替または補助として用いられることがある。

第2トリメスターの複数マーカーによるスクリーニングは,ダウン症候群,18トリソミー,およびいくつかのまれな単一遺伝子症候群(例,Smith-Lemli-Opitz症候群)のリスク評価に役立てるために用いられる。母親の血清学的検査は広く行われているが,ダウン症候群の検出率は第1トリメスタースクリーニングまたはcfDNAのものほど高くない。また,中絶は第1トリメスターよりも第2トリメスターでリスクが高い。

第2トリメスターのスクリーニングには,以下を含めることもある:

  • 標的超音波検査

神経管閉鎖不全に対する母体血清スクリーニング

MSAFP値の上昇は開放性二分脊椎などの胎児奇形を示唆することがある。スクリーニングはおおよそ15~20週の間に実施できるものの,最初の検体を妊娠16~18週に得た場合に結果が最も正確となる。さらなる検査が必要かどうかを決定するカットオフ値を設定する際には,異常を見逃すリスクと,不必要な検査から生じる合併症のリスクとを比較する必要がある。通常,95~98パーセンタイルまたは正常な妊娠における中央値の2.0~2.5倍(中央値の倍数,すなわちMOM)のカットオフ値を使用する。この値は,開放性二分脊椎に対して約80%の感度,無脳症に対して約90%の感度である。閉鎖性二分脊椎は通常検出されない。最初にスクリーニングした女性の1~2%で羊水穿刺が最終的に必要となる。MSAFPのカットオフ値をより低くすれば,感度は高くなるが特異度は低下し,羊水穿刺の実施頻度が増える。胎児染色体異常を調べるためにcfDNAスクリーニングを受けた女性は,複数マーカーではなくMSAFPのみの血清スクリーニングを受けるべきである。

超音波検査はさらなる検査が必要な場合の次のステップである。羊水穿刺を併用または併用しない標的超音波検査は基本的な超音波検査で説明がつかない場合に行われる。超音波検査では,在胎期間(過小評価されていることがある)の確認や,多胎妊娠,胎児死亡,または先天奇形の検出が可能である。一部の女性では超音波検査によって,α-フェトプロテイン高値の原因を同定できない場合がある。経験豊富な検者が高分解能超音波検査を行い,それが正常であった場合,さらなる検査は不要と考える専門家がいる。しかしながら,この検査はときに神経管閉鎖不全を見逃すため,多くの専門家は超音波検査の結果にかかわらず,羊水穿刺によるさらなる検査を勧めている。

羊水穿刺と羊水中のα-フェトプロテインおよびアセチルコリンエステラーゼ値の測定はさらなる検査が必要な場合に行われる。羊水中のα-フェトプロテインの上昇は以下を示唆する:

  • 神経管閉鎖不全

  • 他の奇形(例,臍帯ヘルニア,先天性ネフローゼ,嚢腫状リンパ管腫,腹壁破裂,上部消化管閉鎖症)

  • 胎児血による検体の汚染

羊水中のアセチルコリンエステラーゼの存在は以下を示唆する:

  • 神経管閉鎖不全

  • 他の奇形

羊水中のα-フェトプロテイン値が上昇し,アセチルコリンエステラーゼが存在していれば,無脳症に対して実質的に100%,開放性二分脊椎に対して90~95%の感度となる。羊水マーカーの異常は,高分解能超音波検査(これらの奇形のほとんどを検出できる)で奇形が検出されない場合でも,奇形の可能性が高く,両親に知らせるべきである。

染色体異常に対する母体血清スクリーニング

第2トリメスター中のスクリーニングの最も一般的なアプローチはcfDNAまたは複数の血清マーカーの使用である。これらのマーカーは在胎期間により調整され,母体年齢に関連するリスク以上のダウン症候群のリスクをさらに正確に推定するために利用する。トリプルスクリーニング(すなわち,α-フェトプロテイン,hCG,非抱合型エストリオール)に関して,ダウン症候群に対する感度は約65~70%で,偽陽性率は約5%である。

クアッドスクリーニングはトリプルスクリーニングに,インヒビンAの測定を加えたものである。クアッドスクリーニングでは感度は約80%まで上昇し,偽陽性率は約5%となる。

母体血清スクリーニングによりダウン症候群が示唆される場合,在胎期間の確認のために超音波検査を行い,推定された在胎期間が不正確な場合にはリスクを再計算する。最初の検体採取が早過ぎた場合,適切な時期に再度検体を採取すべきである。リスクがあらかじめ設定された特定の閾値(通常1/270,これは母体年齢が35歳以上であるときのリスクとほぼ同じである)を超える場合は特に,羊水穿刺を勧める。

トリプルスクリーニングにより,18トリソミーのリスク(血清マーカー3つ全てが低値であることにより示唆される)も評価可能である。18トリソミーに対する感度は60~70%である;偽陽性率は約0.5%である。超音波検査と血清スクリーニングの併用により,感度は約80%まで上昇する。

cfDNAの分析は,在胎期間に依存しないため,日付に関する間違いによる影響は受けにくい。

標的超音波検査

標的超音波検査は一部の周産期センターで提供されており,胎児の異数性と関連する構造的特徴(ソフトマーカーと呼ばれる)の検索により染色体異常のリスクを評価するために用いられる。しかしながら,既知の染色体異常に対する構造的所見で診断的なものはなく,全てのソフトマーカーは染色体が正常な胎児にもみられることがある。それでもなお,このようなマーカーが見つかれば,染色体異常を確定または除外するための羊水穿刺が勧められることになる可能性がある。重大な構造的奇形が存在する場合には,胎児染色体異常の可能性がより高い。

短所としては,ソフトマーカーが検出された場合の不必要な不安や不必要な羊水穿刺などがある。一部の経験豊富なセンターでは高い感度が報告されているが,超音波所見が正常であることが,胎児の染色体異常のリスクの大幅な低下を示唆するかについては不明である。

第1および第2トリメスターの連続的スクリーニング(sequential screening)

第1トリメスターおよび第2トリメスターにおける非侵襲的なクアッドスクリーニングは,統合して連続的に行うことができ,第1トリメスターの検査結果が異常であってもなくても,第2トリメスターのスクリーニング結果が出るまで,侵襲的な胎児の遺伝子検査を控える。sequential screening後に高リスクパターンに対して羊水穿刺を行うことでダウン症候群の感度は95%まで上昇し,偽陽性率は5%にとどまる。

sequential screeningの変型である,contingent sequential screeningと呼ばれるものは,第1トリメスターのスクリーニングで示唆されたリスクのレベルに基づいている:

  • 高リスク:第2トリメスターのスクリーニングを行わずに,侵襲的検査を勧める。

  • 中間リスク:第2トリメスターのスクリーニングを勧める。

  • 低リスク(例,1/1500未満):第1トリメスターでのリスクが低いため,ダウン症候群に対する第2トリメスターのスクリーニングは勧めない。

第1トリメスター,第2トリメスター,またはそれに続くスクリーニングにおいて結果が異常であった女性は,胎児のトリソミー検出のためにcfDNA(細胞フリー胎児DNA)を用いた更なる検査を受けることを選択する可能性がある。cfDNAの検査結果によってリスクが低いことが示され,安心材料になる可能性があるが,検査結果は確定的なものではない。また,cfDNA検査の費用は法外に高い可能性があり,cfDNAの検査結果を待つことによって,CVSや羊水穿刺などの確定的な検査の施行が遅れる(1)

参考文献

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