乳房痛

執筆者:Mary Ann Kosir, MD, Wayne State University School of Medicine
レビュー/改訂 2020年 9月
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乳房痛はよくみられる症状であり,限局性またはびまん性,片側性または両側性の場合がある。

病因

限局性の乳房痛は通常,乳房嚢胞や乳房感染(例,乳腺炎,膿瘍)など,腫瘤を形成する局所的な疾患によって生じる。大部分の乳癌は疼痛を引き起こさない。

びまん性かつ両側性の乳房痛は,線維嚢胞性変化のほか,まれではあるがびまん性かつ両側性の乳腺炎が原因のことがある。ただし,びまん性かつ両側性の乳房痛は乳房に異常のない女性でも非常によくみられる。これらの女性における最も一般的な原因は以下のものである:

  • 乳腺組織を増殖させるホルモン変化(例,黄体期または妊娠初期,エストロゲンまたはプロゲスチンを使用している女性)

  • Cooper靱帯を伸展させる大きく下垂した乳房

評価

病歴

現病歴の聴取では痛みの時間的パターンおよび性質(限局性またはびまん性,片側または両側性)について質問すべきである。慢性または再発性の疼痛と月経周期の関係を確認すべきである。

システムレビュー(review of systems)では,妊娠(例,腹部腫大,無月経,朝の悪心)や線維嚢胞性変化(例,多数の腫瘤の存在)を示唆する他の症状がないか検討すべきである。

既往歴の聴取では,びまん性疼痛を起こす疾患(例,線維嚢胞性変化)およびエストロゲンやプロゲスチンの使用を対象に含めるべきである。

身体診察

診察は乳房と隣接組織を中心に行い,紅斑,発疹,正常な皮膚紋理の増強,およびときに橙皮状(オレンジの皮)と表現される圧痕性浮腫を含む皮膚変化,および紅斑,熱感,圧痛といった感染の徴候などの異常を調べる。

警戒すべき事項(Red Flag)

以下は特に注意が必要である:

  • 感染の徴候

所見の解釈

異常所見がなければ,疼痛はホルモン変化,または大きく下垂した乳房によることを示唆する。異常所見は他の特定の問題を示唆することがある。

検査

疼痛の原因が不明で持続が数カ月以内であり,特に妊娠と一致する他の症状や徴候がある場合は,妊娠検査を行うべきである。

他の検査が適応となることは少なく,身体所見から検査を必要とする他の問題が示唆された場合にのみ行う。

治療

月経に関連する乳房痛には,通常はアセトアミノフェンまたは非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)が効果的である。疼痛が重度の場合は,ダナゾールまたはタモキシフェンを短期間投与してもよい。これらの薬剤はエストロゲンプロゲステロンを阻害する。エストロゲンまたはプロゲスチンを服用している場合は,中止が必要になることがある。

妊娠に関連する乳房痛には,しっかりした補助的ブラジャー,アセトアミノフェンの服用,または両方が役立つ。

最近のエビデンスでは,イブニングプリムローズ(月見草)オイルが乳房痛の重症度を緩和する可能性が示唆されている。

要点

  • びまん性で両側性の乳房痛は,通常ホルモン変化または大きく下垂した乳房が原因であり,身体所見の異常を引き起こさない。

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