聴神経腫瘍(聴神経鞘腫とも呼ばれる)は,第8脳神経のシュワン細胞由来の腫瘍である。症状としては片側難聴などがある。診断は聴覚検査に基づき,MRIによって確定する。必要な場合の治療は,外科的切除,定位放射線治療,またはその両方による。
聴神経腫瘍はほとんどの場合,第8脳神経の前庭神経から起こり,全頭蓋内腫瘍の約7%に相当する。腫瘍が拡大するにつれて,腫瘍は内耳道から小脳橋角部に向かって突出し,第7脳神経および第8脳神経を圧迫する。腫瘍が拡大し続けると,小脳,脳幹,および近接する脳神経(第5脳神経および第9~12脳神経)も圧迫される場合がある。
両側性聴神経腫瘍は,神経線維腫症2型の一般的な特徴である。
聴神経腫瘍の症状と徴候
緩徐に進行する片側性の感音難聴が,聴神経腫瘍の特徴的な症状である。しかしながら,難聴は突然発症することがあり,障害の程度が変動することもある。その他の初期症状としては,片側の耳鳴,浮動性めまいと平衡障害,頭痛,耳の圧迫感または耳閉感,耳痛,三叉神経痛,顔面神経が侵されることによる顔面のしびれまたは筋力低下などがある。
聴神経腫瘍の診断
聴力検査
難聴が左右非対称の場合,ガドリニウム造影MRI
大抵の場合,聴力検査が聴神経腫瘍の診断評価の一環として行われる最初の検査である。通常,この検査で明らかになるのは,左右非対称の感音難聴,および難聴の程度から予想されるよりも強い語音弁別能の障害である。このような所見は,画像検査,望ましくはガドリニウム造影MRIの必要性を示唆する。しかし,他の理由で実施した脳画像検査で腫瘍が偶然発見されることもある。
その他の所見には,ティンパノメトリーでのアブミ骨筋反射の減衰などがある。聴性脳幹反応検査により,波形の消失および/または第V波の潜時の延長が示される場合がある。通常,非対称性感音難聴患者のルーチンの評価では必要とされないが,温度刺激検査を行うと,患側の前庭の著しい活動性低下(半規管麻痺)が明らかになる。
聴神経腫瘍の治療
経過観察
ときに,選択された症例で外科的切除または定位放射線治療
無症候性(すなわち,偶然発見される)で,増大しない小型の聴神経腫瘍は治療を必要としない;こうした腫瘍は,経時的なMRIにより経過観察し,増大し始めたり,症状が生じたりした場合に治療すればよい。定位放射線治療(例,ガンマナイフまたはサイバーナイフによる放射線療法)と従来のマイクロサージャリーのどちらを使用するかは,残聴,腫瘍のサイズ,ならびに患者の年齢および健康状態など,多数の要因によって決まる。定位放射線治療は,高齢患者,小型の腫瘍を有する患者,または医学的な理由により手術を受けられない患者に使用される傾向がある。マイクロサージャリーでは,聴力保存アプローチ(中頭蓋窩法または後迷路法)または残聴がほとんどなければ経迷路法が必要になる場合がある。
聴神経腫瘍の要点
聴神経腫瘍は通常片側性であるが,神経線維腫症2型では両側性の場合がある。
片側難聴にときに耳鳴および浮動性めまいを伴うのが典型的である。
大型および/または症候性の腫瘍は,定位放射線手術または従来のマイクロサージャリーにより治療する。
小型の腫瘍または増大しない腫瘍は,経時的なMRI撮影によって経過観察してよい。